式守総合病院、特別病棟。
VR治療試験室・紺野
そう書かれた病室の中。
病室の様子は蒼桜のそれと大分差があり、ガラスで仕切られてはおらず普通の病室と大差は無い。
窓とは反対の壁際に据えられたベッドに少女が横たわっている。
然し普通の病室と決定的に違うのは、少女が頭に被っているナーヴギアと何かを計測している機材だろう。
「木綿季くん、こんにちは。 具合はどうだい?」
白衣を着た男性がそう少女に声を掛ける。
「倉橋先生? どうしたんですか?」
少女ーー紺野 木綿季が医師に顔を向ける。
それに医師ーー
「いや、様子を見に来たんだよ。 それでどうだい?」
「はい! げんきですよ!」
「そう? なら良かった。 VR世界はどうかな?」
「んー…自分の足で動けるのは良いんですけど、狭くって…」
不満そうにぼやく。
「ふむ…それがネックか。でも…」
そこで言葉を区切り。
「どうしたんですか?」
「いやね? 同じこと云うんだなぁってね。 異口同音って位に」
誰かの事を思い出したのか、苦笑する。
「誰とですか?」
木綿季は首を傾げて尋ねる。
「ん? 木綿季くんと同じくVR治療を受けてる子だよ。 その子は散歩とかは難しいから、より期待してたみたいだしね」
「あぁ、ボクの他にもう一人受けてるんですよね、そういえば」
「そうだね。 詳しくは云えないけど…」
申し訳なさそうに言いよどむ。
「いえいえ、こっちこそすみませんでした」
「いやいや。 言い出したのはこちらだからね、木綿季くんは悪くないよ」
と、気持ちを切り替える様な仕草の後。
「木綿季くんはやっぱり広いところで目いっぱい動きたいかい?」
穏やかな笑みでそう問い掛ける倉橋。
それに木綿季は。
「そうですね…やっぱり、広いとこのが良いですね」
「ふむ…出来る。 と云ったら?」
意味ありげのな言葉。
「え? でも…」
当然木綿季は戸惑う。
現状狭い空間しか歩けないものしかVR世界にはなく、目いっぱい動き回れる様なものは今のところはないのだ。
「木綿季くんは[ソードアート・オンライン]というのは聞いたことあるかな?」
「ソードアート・オンライン…ですか?」
「そう、SAOとも云われるみたいだけどね。 世界初のVRMMOって事らしい。 勿論すごく広い世界であるらしいから思いっきり体を動かせる」
そう云い、ニコリと微笑む。
それを聞いた木綿季は。
「ホントですか!?」
思い切り身を乗り出す。
「あぁ、本当だよ。 それで、此処からが本題だ。
実はそのSAOの開発元からVR治療の一環としてソフトを提供してくれるらしくてね。
木綿季くんの分も申請出来るんだ。 どうかな?」
「やります! やらせてください!!」
それを聞くと倉橋はニコリと笑みを浮かべ。
「了解。 それじゃぁ木綿季くんの分も音邑に頼んでおくよ。 正式サービス開始は十一月だよ? 忘れないでね」
「はい! 楽しみだなぁ…」
嬉しそうに云う木綿季。と。
「そういえば。 音邑先生に、ってことはもう一人の被験者の子もSAOをやるって事ですか?」
「うん、そうだね。 それがどうしたのかな?」
「ううん、ただ会ってみたいなぁって思って。 それに、もしかしたら…」
それまでの嬉々とした雰囲気から一転、少しだけ悲しげな表情を浮かべる木綿季。
「どうしたんだい?」
「もしかしたら、蒼桜に逢えるかもって。 あ、蒼桜っていうのはボクの幼馴染なんです。 ボクが入院する前に病気で…でもボクは自分の病気の事が伝えられなくて。 それでボクも入院しちゃって、お見舞いなんかも出来なくて…」
悔しそうにそう云う木綿季。
後悔している様に。
「そうか、彼女が云っていたのは木綿季くんのことだったんだね」
小さく云う。
「え? それって?」
眼を閉じ、考え込む倉橋。
「先生? どういうことですか?」
期待と不安が綯い交ぜになっている様子の木綿季。
聞きたい、でも少し怖い。
そんな様子だ。
「ふむ。 本当は云っちゃいけないことだから、聞こえない振りをしてね?」
小さくそう云い、眼は閉じたままで。
「VR治療の被験者二人目は、八緑 蒼桜さん。 病名は特異性の白血病。 仲の良い女の子の友達が居て、優しくしてもらっていたと云ってたよ。 入院してから一度も会っていないそうだけど、今でも一番の友達だと云っていた。 因みにSAOでの治療も快諾してる」
そこまで云って、眼を開ける。
「…う、蒼桜…」
それだけ云い、俯く木綿季。
その様子を優しげな表情で見やり。
「さて、僕も戻るかな。 木綿季くん? 体調管理、しっかりね? それじゃ」
「はい…ありがとう、ございます…」
その声は小さかった。
………
蒼桜…。
また、いっしょに…!
待ってて。 逢いに行くから!!
木綿季がSAOに行く理由、的な感じの内容のつもりです。
若干キャラ崩壊してるかも?
倉橋先生のキャラが上手く掴めなかったorz
先生の下の名前は調べてないので、オリジナルです。
ってかあったっけ? なかったような?
ちと短いですね。
追記・一話と同じく病院名を変更。
2017.07.20.追記
一話と同じく病院名を変更。 >式守総合病院