前話・最初の一歩よりお読みくださいなw
では。どぞ。
広いな…。
数ヶ月振りの第一層ボス部屋だが、その時より広く感じた。
奥に伸びる長方形の空間。
そこを暫く進むと左右の壁の松明が燃え上がる。
照らされる部屋の最奥部、その玉座に座す巨大な影。
その姿を確認し、レイドリーダー・ディアベルが長剣を掲げ、振り下ろす。
合図だ。同時、ボス攻略部隊は盛大な閧の声を上げ、駆け出す。
最初の接触はA隊のタンカーたち。
その後方にエギル率いるB隊が続く。
続いてディアベル率いるC隊、それをD隊が追いキバオウのE隊とサポートのF・G隊が並走する。
殿は俺たちオマケ部隊だ。
先頭と玉座との距離が二十メートルを切った、瞬間。
微動だにしなかった巨大な影が高く跳び上がる。
空中で一回転し、地響きとともに着地。
悠然と立ち塞がる、威容。
《イルファング・ザ・コボルトロード》
その獣人の王はゆっくりとこちらを睥睨し、大音声で吠え上げた。
その声に呼ばれるかの様に左右の壁の高い位置に開いた穴から三匹のモンスターが飛び降りてくる。
取り巻きの《ルインコボルト・センチネル》だ。
そして、この世界で最初の、解放の時を目指す戦いが始まった。
in キルシュ side
(あちらは問題なさそうですね…兄様もキリトさんも流石の強さ。木綿季もすごい、な…あの人もすごい…あんなに綺麗な
「くおっ!?」
「させません…!」
パーティーメンバーの一人が体勢を崩し直撃を受ける軌道に立ってしまった。
即座に駆け出し、ソードスキルを発動。ボスの太刀筋に合わせ、弾く。
盛大な音と光が乱舞し、無事に軌道を逸らせた。
上手くノックバック出来たようだがこちらも三メートル程吹き飛ばされる。
「助かった!大丈夫か?」
「ん…はい、大丈夫です!それより下がってPOT飲んでください!」
「解った!すまん!」
小さく頷きHPを確認する。
大丈夫。大して減ってない。
硬直が切れると同時、即座に安全域まで退避し次に備える。
「B隊、下がれ!A隊前へ!」
その指示で一つ息を吐く。
(ふぅ…一旦休憩ですね…)
「girl、大丈夫か?」
「えぇ、問題ありません。エギルさんこそ平気なんですか?」
「おう、伊達にタンクはやってないからな。ほれ」
「…有難うございます」
差し出されたPOTを素直に受け取り、満タンに近かったHPをフル回復させる。
「ふぅ…どう見ます?」
「ん?まぁ順調だろう。このまま何もないと良いんだがな…」
「そうですね…」
ふと、兄様たちを見やる。と。
「あの人…」
「うん?どうした?って何か話してるのか?どうも険悪だが…」
「………」
会議で一悶着起こした人。確か…キバオウさん。
キリトさんに絡んでるけど、何してるのかな…?いくら余裕があるからって…!
なんだか少しモヤモヤする。
あの時兄様の事を間接的に当て擦ったからか。
でも、多分。兄様にああやって絡んだとしてもそこまでは気にならなかったと思う。
(なら、どうしてキリトさんに絡んでるのは気になるの?)
何故か、キリトさんが気になる。
何かが騒ぐ。これは、なんだろう…?
「話しは終わったみたいだな。なんかいちゃもんつけてる感じだったが…。girl?どうした?」
「…え?あ、いえ。なんでもありません」
「そうか?なら良いが…」
と、その時。前線で歓声が上がる。
見るとボスの四段あったHPゲージが最後の一本になったようだ。
「F隊、G隊下がれ!C隊、行くぞ!」
《イルファング・ザ・コボルトロード》が猛々しい雄叫びを上げる。
同時に情報通りならこれが最後の《センチネル》だろう。
「さて、最後の一踏ん張りかね!お前ら、回復は済んでるな!?」
問い掛けに力強く答えるメンバー。
それを受けいつでも交代できるように準備をしておこう、と思ったのだが。
(武器を持ち替える。情報通り…。って、あれ?
何かが違う。何が違うのか、それに思い至る…前に。
「だ…だめだ!下がれ!!全力で後ろに跳べーっ!!」
微かに聞こえる、声。
誰のものか。意識する前に状況は動く。
ボスが垂直に跳び上がり、空中でいっぱいに身を捻り、落下と同時にその『刀』を薙ぎ払う。
「なにぃっ!?」
ボスを囲んでいたC隊の人たち。その身から赤いライトエフェクトが迸る。
視界に小さく映るC隊のHPの平均値ゲージが半分以下にまで減り、
そこから解るのは、六人ともにほぼ同値のダメージを受けかつ等しくHPが黄色く染まっているという事。
「な、なんだ、あれは!?」
「あ!スタンしてるぞ!?」
「どうすれば…!」
「っく!皆さん!フォローに入りますよ!!」
「お、おう!」
だけど、それは少し遅かったようだ。
ボスが一つ鋭く吼え、両手で握る刀─野太刀─を床すれすれから高く斬り上げる。
それを受けたのは…ディアベルさんだった。
薄赤い光に引っ掛けられるかの様に金属鎧を着込んでいる体が高く浮いた。
その赤い光は途切れることなく、連なる。
ディアベルさんは空中で体勢を整えようとしたみたいだけど、それは叶わなかった。
そして刃がディアベルさんを襲う。
斬り上げ、斬り下げ。続けて鋭い突きが刺さる。
確実に…
最後の突きを受けて、勢い良く吹き飛ばされ、遠くで戦っていたキリトさんの傍に落ちる。
遠くからでもはっきりと見えた。
そのHPゲージが真っ赤に染まって、今なお急速に減り続け…。
in キリト side
「ディアベル!!」
「キリト!こっちは任せろ!早くディアベルを!!」
「ルニ!ボクもやるよ!」
「攻撃は任せて!あなたは早く彼を!」
「解った!任せる!」
その場をルニたちに任せ、俺はディアベルに駆け寄る。
右手をポーチに突っ込み、
その手を、ディアベルに押し返された。
その瞳には、自分がもう助からないと、解っていると云う様に。
「キリトさん…」
あの距離を駆けてきたのか、キルシュが傍に立っていた。
そちらに目をやることが出来ず、ただディアベルへと声を掛けようとし、出来ずにいる。
HPゲージはもう、何色にも染まっていなかった。
ディアベルはそれを受け入れ、一言。俺に届ける。
「…キリトさん…それに、君も。後は…頼む。ボスを…倒し…」
最後まで云い終える前に。
その《
呆気なく、その体を、青い破片へと変え、四散した。
in キルシュ side
目の前で、人が一人、消えた。
これが。この世界で。死ぬという事。
何故か、実感が湧かない。
ううん。当たり前か。だって。私はまだ、これが現実と認められてなかったのだから。
これは…現実。
これが…死ぬと謂う事。
私は漸く。それを知った。
同時に、これまで感じたことの無いほどの激情がココロから溢れ出す。
私は不治の病にかかっている。
だから、私はいつ死んでも良いと思っていた。
どうせ生きていけないのだから。
どうせ治らないのだから。
この世界に捕らわれて、良かったとさえ思っていた。
だから私は、全てが始まったあの日。独りで歩いていくと決めたのだ。
兄様や木綿季の居ないところで、誰にも顧みられぬ様に。
だけど。これは違うと思った。
これだけは違うと、強く思う。
何がどう違うのか?
言葉になんて出来ないけど。
その事を、ディアベルさんは身を以て教えてくれた。
そして託してくれたのだ。
『この先』を。
『戦うこと』を。
キリトさんと一緒に。
なら。私は戦う。最後の最期まで足掻いて、必ず生きてこの世界から解放される。
「キリトさん…」
「…。付き合ってくれるか?」
「勿論です!」
「なら、頼む!」
「はいっ!」
その時。前線で再びボスが暴れ始めたようだ。
彼らはまだ立ち直ってはおらず、混乱している。
まずはあれを何とかしないと…。
そして近くに立ち竦む男性。
キバオウさんだ。
「…何でや…ディアベルはん…何であんたが死んでまうんや…」
それを聞き、キリトさんが何かを云いかけ止める。
直ぐに気を取り直し。
「へたってる場合か!」
「な…なんやと…?」
「E隊のリーダーのあんたが腑抜けてたら仲間が死ぬぞ!良いか?センチネルはまだ追加で必ず湧く!そいつらの処理はあんたがするんだ!」
「…なら…ジブンはどうすんねん。逃げるんか!?」
「そんな訳あるか。決まってるだろ?─ボスのLAを取りに行くんだよ」
キリトさんがそうはっきりと告げる。
その姿が凄く堂々としてて、私は凄く安心すると同時に、心が高揚してくる。
この人と一緒なら、どんな困難にも打ち克てる。そう…無条件で信じられる。
不思議な感覚。もう怖いものなんて無いくらいに昂る。
「いきましょう、キリトさん。ボスを倒しに!」
「置いてくなよ、俺も行くぜ」
「ルニが行くならトーゼン、ボクもね!」
「わたしも行く。同じパーティーなんだから」
「解った、行こう!」
私たちは同時に体の向きを変え、ボスへと向き直る。
そして駆け出す、その前に。
襟元に右手を添え、被っていたフードケープを取り払う。
ここからは一瞬のミスが命取り。
視界を遮る可能性のあるものはない方が当然良い。
私がそうしたことで、レイピア使いの女性も同じ選択をした。
きれい…素直に思った。
呆けたのは、一瞬。
「わたしはアスナよ。貴女は?」
「キルシュです」
軽く名乗り、再び前を向く。
皆お互いに頷き、今度こそ駆け出す。
ボスに近付き、その距離に比例して周囲の混乱が一時的に収まる。
その機会を逃さず。
「全員、出口方向に下がれ!ボスを囲むな!そうすれば範囲攻撃は来ない!!」
まるでボスの攻撃を熟知しているかのような言葉。
うん、大丈夫。私たちは負けない!
キリトさんの言葉が響き、それが皆さんに届くと停滞していた時間が動き出す。
意志ある動きで最前線にいたプレイヤーたちが私たちの左右を一斉に後方へと抜ける。
「みんな!手順はセンチネルと同じだ!…勝つぞ!」
「はいっ!」
「おう!」
「任せて!」
「行くわ!」
前でコボルトの王が左の腰に構えようとしている。
(なにをする…!?)
キリトさんを見やると何かに気付いたのかソードスキルを始動させようとしていた。
咄嗟に私も同じ構えをとる。
左手の剣を右腰に。
利き手の関係でキリトさんとは逆の構え。
そして体を転倒する寸前まで前に倒す。
最後に左足を全力で踏み切る。
同時にボスの刀が緑色に輝き、見えない速度で振り払う。
「う…おぉ!」
「は…あぁ!」
私とキリトさん、同時に、そして重なるように突き上げた剣の軌道とボスの野太刀の軌道が交差する。
甲高いサウンドエフェクトと盛大なライトエフェクトが轟き、私たちとボスはお互いの
その生まれた隙を…私たちに迫る速さで追いかけてきたアスナさんが見事に捉える。
「せあぁ!」
速く、鋭く。意志を込めて放たれた《リニアー》がボスの体躯に突き刺さる。
続いて兄様が力強く斬り下ろす─《バーチカル》を放ち。
木綿季が袈裟懸けに斬りつける─《スラント》を放った。
それを見て頷き、次いでキリトさんに視線を向ける。
何かに気付き、その上で天秤に掛けているのが解った。
私を見つめ、声なき問いを向けてくる。
その視線をしっかり受け止め、はっきりと頷く。
頷き返してくれ、それに応えるために余計な一切の力を抜き、どんなことにも対応できるように構える。
「行くぞ、キルシュ!」
「合わせます!」
そこから、一瞬も気の抜けないタイトロープが始まった。
ふいぃぃ…何だかんだで突貫進行したから確認しきれてないです汗
のでおかしいとことかあるかもしれませんが、ぼちぼち直しとくと思いますのでよしなにw
では次。
連投三個め。
後編・二人のビーター
です。
(ありきたりなタイトルですねー汗
良いのが浮かばなかった…orz)
もしかしたらこの三連投はタイトル変わるかもですのであしからずーw