征南将軍リヴァ。職務怠慢の罪で捕られられその財産や官職の全てが剥奪される。
幸い新しく帝国の将軍となったエスデスの助命嘆願によりリヴァは、エスデスの配下としてその罪を購う事を命じられた。
帝都の民は、南部戦線を勝利に導いた英雄リヴァの転落を哀れみ名士達は、帝国の腐敗ここに極まれりと嘆いた。
しかしリヴァの転落を喜んだ者達が居た。
それは、南部異民族だった。
南部異民族に勝利した帝国は、南部異民族の帝国侵攻の拠点であったエイショウ城にリヴァ以下六万の兵を置き南部異民族への備えとした。
その南部の要たるリヴァが、いなくなった。
南部異民族は、リヴァとリヴァの右腕たる百人斬りのブラートによって多くの将や兵が討ち取られ軍は瓦解し敗北した。
しかしそのリヴァが失脚しブラートは、帝国軍を抜けた。
これは好機。
戦争に負け帝国の隷属となった彼らは、そう判断し帝国へと戦を挑んだ。
怒涛の勢いで南部異民族は、ナンボクトウという南部異民族の王に率いられエイショウ城に雪崩れ込んだ。
エイショウ城は、あっけなく陥落し南部異民族の手にエイショウ城が戻った。
エイショウに住まう帝国の民も大半は南部異民族との混血である事もあって帝国を寝返り南部異民族の味方となった。
これを見て帝国は、南征を決定。
十二万の大軍を編成し一人の男を征南将軍に任じる。
彼の名は、ヴィルフレド。
たった一人で反乱軍の拠点を壊滅した強者であり西の異民族との戦いで西の異民族の兵二十万を生き埋めにした人物である。
エイショウ城に到着したヴィルフレドは、城の四方に防御施設を築き、補給路を確保した上で交通路を全て抑える。十分な体制で城を包囲し、外界との接触を完全に遮断した。
それを見たナンボクトツは、打って出ようとした。しかし眼前に広がる野を埋め尽くす帝国軍とこちらに砲口を向ける重砲。それを見た彼と兵士達は、城外に打って出る意欲を完全に失ってしまった。
更に城中に帝都から更なる援軍が来るとの情報を流す。すると兵士達の志気は、最低までに下がりエイショウ城は、静まり返った。
そしてヴィルフレド率いる南征軍が到着して一ヶ月。
エイショウ城をジッと眺める者が居た。
その者は、雪のように白く長い銀髪を紐で一つに括り血の様に赤い瞳を爛々と輝かせシミ一つ無い白い肌を持つ人間味の無い冷たい美貌の青年であった。
彼こそが、征南将軍であり冷厳公と恐れられる強者ヴィルフレドであった。
「将軍。エイショウ城から内通書がきております」
部将の一人がそういってヴィルフレッドに内通書を見せる。
ヴィルフレッドは、その内通書を手に取り読み進める。
「なんと書いています?」
「色々言い訳の文言が書き連ねてあるが、要約すれば寝返る代わりに助命してくれと書いている」
ヴィルフレッドは笑い。
「この内通書を矢でエイショウに送り返せ。それと共に兵達に城中に裏切り者がいるぞと叫ばせろ………奴らを疑心暗鬼に陥らせてやる」
部将は恐怖した。何故ならヴィルフレドの浮かべるその笑みは三日月を逆さにした悪魔が浮かべるような笑みだったからだ。
「は、はっ!」
冷や汗を浮かべながらも部将は、ヴィルフレドの策を遂行すべく内通書を持ちその場を辞した。
「さて………このまま締め上げ相手が降伏するのを待つ。降伏しなければ弱りきった所を総攻撃をかけ終わらせるだけだ」
ヴィルフレドは、エイショウ城を見た。
城壁の番兵は、痩せ細りその身に生気が無い。城に忍ばせた間者の報告によれば、既に城中には食料は、ほとんど無く人が人を食うという事態にまで来ているらしい。
既に戦う力は、無に等しいだろう。なのに降伏しようとしないのは、南部を支配していた民としての誇りか帝国への憎悪か。あるいはその両方か………。
「どちらにせよ愚かなのは変らない。事を起こすのならばもっと機を見るべきだ。リヴァが消えただけで南部が獲れる程帝国は甘くない」
と言ってヴィルフレドは、自身の天幕に入り南部の地図を見る。
「この包囲で二度と帝国に逆らう気が起きなくなるように南部の民に見せ付けなければならない………優秀な領主が派遣されれば完璧だが望み薄だな」
本来ならば十二万もの帝国兵と重砲を用いれば直ぐに片がつく程度の物だ。
しかしそれでは、また同じ事が繰り返される。この包囲の狙いは、南部の民に皆殺しにあうよりも酷い光景を目にさせ反乱を起こそうという気を削ぎ恐怖を植えつけるのがこの包囲の狙いなのだ。
しかし無能が領主になればあまり意味は、無いかもしれない。
しかしそれでもある程度の効果は望める筈だ。
恐怖は、人を縛る鎖となる。
その恐怖を彼らに与え縛るのだ。
まあ。その恐怖の与え方を間違えれば、人はその恐怖の主を打倒しようと決起するのだが。
ヴィルフレドは、そう苦笑いしつつも今後の包囲に考えを巡らせた。
しかしヴィルフレッドのその考えは、帝都からの使者によって変えさせられる事になる。