ヴィルフレドが征す!   作:老けた人

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第二話 南征終了

 南征軍が包囲するエイショウ城。

 その城をヴィルフレドは、静かに見つめていた。

 

「ヴィルフレド将軍。早くしてくだされ」

 

 そう言ってヴィルフレドを急かす者が居た。

 醜く肥え太ったこの男は、帝都からの使者だ。

 

「ままならぬ物だ」

 

 ヴィルフレドは、そう呟き懐から一本の白い指揮棒を取り出しそれをエイショウ城に向ける。

 

 そして――

 

「地に命ずる――崩れよ」

 

 ヴィルフレドが、そう命じた瞬間それは起きた。

 

 大地が鳴動しエイショウ城の建つその地にヒビが入って行く。

 そのヒビは、大きくなって行きそして穴が大地に穿たれた。

 爆音と共に崩れ行くエイショウ城。

 

「これで良いかな使者殿」

 

 ヴィルフレドは、背後に居る使者を見て言った。

 目の前の光景を唖然と見つめていた使者はヴィルフレドの言葉に意識を覚醒させ大口を開け言葉を発する。

 

「す、すばらしいッ。オネスト大臣にその帝具の事を聞かされておりましたがこれ程とは………」

 

 と、その見苦しい顔を喜色に染め使者は言った。

 

「………では。帝都に伝えてくれますかな?これより勅命どおり征南将軍ヴィルフレドは迅速に南部異民族を征伐してみせると」

 

「えぇ!!えぇ!キッチリと伝えさせて貰いますっ」

 

 と、言って使者は頷いた。

 

「それは良かった。しかしまだ出立まで時がある。こんな所ではありますがごゆるりとお寛ぎください」

 

 ヴィルフレドは、そう言って部将に目配せする。

 それに頷き部将が片手を挙げると美しい女達が現れ使者を囲み使者の為の天幕へと連れて行った。

 

「………本当によろしいのですか?」

 

 部将が苦虫を噛み潰した様な顔でそう問いかけてきた。

 

「仕方あるまい。ただの使者ならともかく皇帝陛下の勅使だ。ここで出来る最高の持て成しをせんとな………それよりもだ」

 

 ヴィルフレドは、エイショウ城を見る。

 

「まさか北部異民族が侵攻して来るとはな。お陰でさっさとここを落とせと勅使が来てしまった………あと少しで締めだったというのに」

 

 そう言ったヴィルフレドの顔には、明らかな苛立ちがあった。

 

「しかし一撃でエイショウを滅ぼしましたこれで南部の民も恐怖するでしょうきっと………」

 

「それは、この私個人に向けられる恐怖であり帝国へ向けられる恐怖では無い。私が居なくなればこの南部で数年の内に反乱が起きるだろうよ」

 

 ヴィルフレドは、部将が話し終わる前にそう言った。

 

「帝国はもう無理だな………いや。今は南部の征服に集中するか」

 

 ヴィルフレドは、そう呟きその場を後にした。

 

 使者が帝都に帰り着いた時。

 ヴィルフレド率いる南征軍は、南部異民族の砦を全て突破し首都を総攻撃した。

流石に首都の守りは堅くその制圧に三日を要した。

 首都を制圧し最後まで抵抗した南部異民族の王ナンボクトツの子ガクトツを処刑して南征の完了を宣言した。

 

 その報せに帝都の民は、狂喜し凱旋するヴィルフレド率いる南征軍を向かい入れた。

 

 皇帝もまた反乱鎮圧を喜びヴィルフレドの功績を称え黄金一万を与えた。

 

 そして皇帝との謁見後。

 

 そこは、宮殿の中でも一際豪奢な作りであり皇帝の寝所と同等の警備の厚い部屋であった。

 

「さて………今回の南部異民族討伐ご苦労様でした。どうでしたか南部異民族は?」

 

 そう問いかけたのは、この部屋の主であるケーキを掴み貪り食う肥満体の男であった。

 彼こそが幼い皇帝を操り己の欲のままに動く怪物大臣オネストであった。

 

「弱い。その一言に尽きる」

 

 そう言って紅茶を飲んだのは、今回の南部異民族討伐の立役者であるヴィルフレドであった。

 

「そう言えるのは貴方ぐらいですよあの戦上手だった『元』将軍であるリヴァでさえてこずった連中ですよ?」

 

 やけに元の部分を強調してオネストはそう言った。

 

「リヴァの時は、そこそこ優秀な将が向こうに居たからな。苦戦ぐらいするさ」

 

 ヴィルフレドは、そう言って微笑んだ。

 

「………まあ。無駄話もここまでとして本題に移りましょう」

 

 つまらなさそうに溜息を吐いた後、オネストはそう言って部下に目配せした。

 すると部下が、一つの紙を机の上に広げる。ヴィルフレドは、それを見てほぅ感嘆の息を吐いた。

 ヴィルフレドが見て感心した物、それは帝国北部とその外である北の異民族領まで事細かに記された地図であった。

 

「ここまでの物を良く作れたな?」

 

「どうやら北の辺境にも中々優秀なのがいるようでしてね………さて。現在北部異民族共は、強固な城塞を基点として我が帝国の村々を襲撃して食料やら女やらを略奪しています。貴方には、ここショウキョウ要塞に貴方直属の兵五万と共に入ってもらい北部異民族への備えとなってください」

 

「備えで良いのか?あの程度の連中なら制圧できる自信があるが?」

 

「いえその必要はありません。北部異民族はまだ勢力がバラバラです。一纏めにして潰した方が効率が良いですからねぇ」

 

 オネストは、そう言って笑った。

 

「北の異民族が一つの勢力として機能したのならばエスデス将軍を派遣します。彼女と共に北の制圧を行ってください」

 

「わかった。その役目見事果たしてみせよう」

 

 ヴィルフレドは、そう言って立ち上がった。

 早速編成などを行うのだろう。

 

「期待してますよその帝具万物支配『エリュシオン』の所持者である貴方の力を」

 

「ふっ。任せろ北部の珍味でも土産にして帰って来よう」

 

 と言って笑みを浮かべた時、ヴィルフレドの腰に下げてある指揮棒が一瞬淡光ったのだった。

 

 彼の持つ帝具は、万物支配『エリュシオン』。

 アドラメレク、デモンズエキスと並び三強と謳われる帝具である。

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