「おかえりなさい、遅かったのね」
帰宅した僕に対し、彼女、アリス・マーガトロイドが笑顔を見せた。美しい笑顔、誰が見てもそれが何の変哲もないお迎えの挨拶としか見えないだろう。だが、僕にはそれが狂気の表情にしか見えない。
外出して帰ってくればいつもこれだ。僕は震えた声で返答を返す。
「ひ、人に会ってたんだ、友人にな?」
「そう、そんな震えた声で返答しなくてもいいのに相手は誰、女?」
ここで女、と言えばまた拘束されてしまうので、古い友人と会っていたという設定で行こう、そうしよう。勿論、会ってもいないしそんな友人は居ない。最近出来た団子屋の店員の女性が可愛かったからその為に毎朝早起きして出掛けているなんて口が裂けても言えない。言ったら今度こそアリスの人形コレクションにされる。
「まあ、古くからの付き合いでな」
「古い友人さん?是非あって見たいものね」
もう一度言っておくがそんなやつ居ない。長年付き添ってきたが、深く入り込まれた事は無い、ならば大丈夫だ。知らんけど。
「いやぁ……それは無理かなぁ。忙しそうだったし」
「あら、店の店主でもやっていらっしゃるの?尚更お尋ねしないと……」
「いやぁ、でもなぁ……」
こんだけ汗ダラダラ流してたらバレそう。てか、バレてるのではないか?
「……ねぇ、〇〇。私、好きな人にされて嫌いな事があるの……」
んん?????
「嘘を付かれるのは大嫌いなの。怒らないから正直に話してみなさい?」
ああ、終わった。さらば人生マイライフ。これ怒られる上に監禁されるやつや……
「嘘じゃないよ、ホントだよ。なあ、信じてくれよマイハニー」
「だって見たもの、貴方が人里で最近出来た、団子屋の女性と仲良さそうに話している所。それも、運悪く抱き合っている所をね?」
OMG。そんな所まで見られていたとは。いやまあ、普通付き合っている女の子がいるのに抱きつくかって話なのだが、決してやましいことを考えていた訳では無い。あれはあの店流の挨拶なのだ。帰り際には抱き合うという謎の挨拶なのだ。決して、僕は、悪くは、ありません。
「ち、違う。誤解なんだ。話を聞いてくれ!」
「そんな子は、お仕置きが必要になりそうね。ダーリン?」
駄目だ、目が死んでる。これダメなやつだ。
「さよなら、マイライフ……フォーエバー……」
「なんて、冗談よ。恋人にお仕置きなんてしないわよ」
いや、それは嘘やろ。あんさん拘束やらなんやらしてきたやないか。という言葉がでかかったが直前で抑えれた。言ってたら半殺しじゃ済まない。
「いや、なんと言いますか。ごめんなさい」
「正直に言ってくれたらいいのよ。でも、もう誤解する様な事はしないって約束してくれる?」
「あ、ああ。約束する」
その後、また同じ事を繰り返す事を過去の僕は知らないのだろう。