「よし、こんなもんかな。小悪魔、もう降りてきて良いぞー!」
その言葉に反応した小悪魔は、ゆっくりと降下し、〇〇の前に降りる。
「今ので全部ですか?」
「ああ、まさか俺の見たかったのが全部あるとは思わなかったよ」
この広い大図書館で目当ての本を見つけるのはかなり時間が掛かるものだ。
つい最近パチュリーに読書を勧められて読み始めたがなかなか読書も良いものだった。普段から本等は読まないが、これはこれでなかなかハマる。
「ところで〇〇さん。例の件はどうなりました?」
「例の件?ああ、新しい魔導書の事?もうじき出来るよ」
「今度はどんな凄い魔法を見せてくれるんですか?」
小悪魔はまるで幼い子供の様な笑顔で〇〇を見つめる。
「完成してからな?」
「えー……」
「完成したらあっと驚くものを見せてやるからさ」
「仕方ないですね」
少し納得がいかない小悪魔は、ぷくりと頬を膨らませる。
「ほら、パチュリーに呼ばれる前に作業してしまいな」
「はーい……」
小悪魔はトボトボとその場を離れた。正直、パチュリーに魔導書を書くことは勧められていなかった。
時折、禁書等に手を出して心配をさせていたからだ。むしろそれで身体に異変がなかったのが不思議な位だった。
「さてさて、パチュリー。盗み聞きは趣味が悪いな」
「あら、バレてたのね?」
「そりゃあね……で、何の用だよ」
「貴方、私の大切にしてる魔導書を勝手に読んだでしょう?」
パチュリーの大切にしている魔導書とは、パチュリーが一人の少年と結ばれるきっかけとなったものだった。
「貴方は何がしたいの?」
「んー……とりあえず今完成させたい魔導書には必要なんだよなぁ……」
「第一あの魔導書は……」
「わかってる。パチュリーとあの人の恋の……だろ?」
その言葉を聞いたパチュリーは顔を真っ赤に染め、そっぽ向いた。
つまり、パチュリーにとっては禁書という事だ。
「本当ずるいわね……あいつにそっくりなのがムカつくわ……」
「ま、パチュリーにとっては禁書なんだろうな」
「っ……!このっ……!」
パチュリーが〇〇に殴り掛かろうとした瞬間、小悪魔の声でパチュリーを呼ぶ声が聞こえた。
「……はぁ。まあいいわ」
そう言うとパチュリーは小悪魔の方に去っていった。
〇〇は息を吐くと、また魔導書を書き始めた。
日は暮れ、あれからかなり時間が経った。どれくらい経ったらだろうか。時間を忘れて書き続けていた気がする。後ろに気配を感じ、ぱっと後ろを振り向くと、小悪魔が立っていた。
「あ、あの、邪魔をするつもりではなかったんですが……」
小悪魔を見て〇〇は柔らかい表情を見せて口を開いた。
「いいよ、こっち来て一緒に話そうか」
「あ、はい……」
小悪魔は〇〇の隣に腰掛け、〇〇と目を合わせる。小悪魔の顔は真っ赤に染まっていた。
「えっと……魔導書は書けましたか?」
「うん、ばっちりだよ。後は実行するだけだな」
「あの……さっき聞こえてたんです。パチュリー様の魔導書の話。それって、つまり同じものを書こうとしてた訳ですよね?」
「うん、そうだよ。ではここで一つぱっと考えたお話を
しますか。短いけどな」
「……?」
その話は、一人の見習い魔法使いの少年が、一人の小悪魔と出会い、思い出を作り、最後はその小悪魔と結ばれるというベタな話だ。
「で、ここからだ。考えたのは俺だから、その後は幸せな時間を過ごす物語にも出来るし、片方が死んで悲しい物語にも出来る。そこでだ。」
〇〇は先程と同じ笑顔で小悪魔の頭を撫でた。
「お前はどちらの道を選ぶ?
その言葉に、小悪魔は俯きながら応えた。
「もちろん、二人が幸せな時間を過ごす事です……」
「じゃあ俺達でその先を作ってみようか二人の物語をさ……」
「……はい」
〇〇の言葉に、小悪魔は小さく頷いた。