「ふふふ……出来た!〇〇、喜んでくれるかな……」
外で雨が降る中、アリス・マーガトロイドはいつもの様に人形を作っていた。その人形は、毎回自分の人形劇を観に来る〇〇を模した人形だった。
だが、ここ最近になって〇〇は観に来る事がなくなり、人形を土産ついでに〇〇宅へ行く事にしていた。
家のドアを開け、傘をさして〇〇宅がある人里に向かう。だが、雨はかなり強く、今にも傘が壊れそうな勢いで風が吹いていた。
「ちょっとこれは厳しいかしら……明日にでも……いや、せっかく出たんだし行くしか……」
だが、風は容赦なくアリスに襲いかかる。顔にかかる雨水を拭うにも、雨は直ぐに降り注ぐ。
人里の前に着き、取り敢えずアリスは近くにあった茶屋で雨宿りをする事に。
あの雨の中にも関わらず、幸い人形の方は無事だった。しかし、地面に跳ね返った泥水が靴や服を濡らしていた。
「はぁ……服汚れちゃったなぁ……人形汚れずに持っていけるかしら……」
ハンカチで再度顔を拭い、再び歩く。ここからなら〇〇宅まではさほど遠くはない。これなら無事に届けられそうだった。
数分程歩くと、やっとの思いで〇〇宅へ到着する。
ドアをノックするが返事が無く、再度ノックをしても反応がない。出掛けているのだろうか。
瞬間、後から声が聞こえた。聞き覚えのある声だった。ゆっくりと後ろを振り返る。
そこには、〇〇の姿があった。
「そこで何をしている、アリス・マーガトロイド」
「あ……〇〇!?良かったぁ……しばらく見ないからどうしたのかなって、心配したのよ?」
「……取り敢えず入れ」
〇〇はアリスを招き入れると、タオルを投げ渡し、珈琲を手渡す。
「それで、用件は?」
「あ、えっと……最近〇〇は人形劇に来てくれないから飽きちゃったのかなって思ってね。だから見て〇〇、貴方の為に作ったのよ!」
アリスは満面の笑みで紙袋から人形を取り出す。幸い人形は濡れずに持ってくる事が出来た。急いでいた為、少し糸がほつれていたが原型は保っていた。
「お前が俺の為に……?何故だ」
〇〇は人形を手渡され、驚いた。まさか無愛想な自分の為にアリスが人形を手渡してくるなど思いもしなかったからだ。
「あ……えっとね、私〇〇が人形劇を見てる時、凄く嬉しかったんだ。真剣な目で、無愛想だけど見てくれてたのが嬉しかったの。だけど、でも〇〇が来なくなってから私、〇〇は飽きちゃったのかなって思ったの……」
「まあ、飽きたのも一つの理由だ。だが、日が経つにつれて、劇をするお前が遠くなっていった。それが嫌だっただけだ。だからアリス・マーガトロイド……いや、アリス。そんな目をするな」
〇〇はアリスの頭をそっと撫でた。
その手は大きく、自分を安心させる様な優しい感覚。
「ところでアリス。服を着替えろ」
「……あ、うん」
雨で濡れた服を脱ぎ、代わりの〇〇の服を着る。少し大きいが今はこれでいいだろう。
「それでどうかな?この人形、上手く出来たと思わない?」
「そうだな。ほつれた部分は抜いてだがな」
「そこはほっときなさい」
アリスは持ち合わせの道具でほつれを綺麗に直し、再度〇〇に手渡す。とはいえ、なかなかの出来ではないだろうか。〇〇は嬉しそうに人形を見る。
その日の夜は、綺麗な満月が見えた。