(前話の一部を改訂したゾ。「マーズ」→「マス」。なおこの文章は次話が投稿されると消えたり消えなかったりする)
気の置けない仲である友人と遊ぶのなら何を思い浮かべるだろうか。
近くのゲームセンターでガンダムをしながら台パン、評判いいけどちょっと遠い飲食店まで遠征、はたまた料理やお酒を持ち寄って誰かの家に集まるのもいいだろう。
人によってまちまちのそれは、陽炎たちにとってのキャンプだった。
「んん~、今日もいい天気ねっ!」
どこかにあるキャンプ場。その中のやや大きめのテントの隣で陽炎が顔を拭きながら空を見上げていた。
彼女に続いて黒潮と不知火がもぞもぞとテントから這い出てくる。その顔はぼんやりとしていて、あの不知火ですら崩れた顔をぶら下げていた。
「おはようさ~ん…」
「おはようございます…」
「ん?どーしたの?眠れなかった?」
「いえ…昨日ちょっと眠っている陽炎に悪戯をするのに夢中になってしまいまして」
「同じく」
「ええっ!?」
いったい何したの!?と自分の全身をまさぐる陽炎。悪戯といっても可愛いもので、寝ている陽炎の頬を定期的につついてその反応を楽しんでいただけである。当然卑猥は一切無い。アイスティーにホモコロリを混ぜ込んだり、次のカットで微妙に量を増やしたりしていた平行世界のうんことは次元も程度も違うのだ。
「そんなことより顔を洗いましょう」
「せやなー」
「そんなこと!?」
ギャーギャー騒ぐ陽炎を尻目に不知火と黒潮は水道の蛇口をぎゅっと捻った。が、水が出ない。
二人して顔を合わせるも出るものは出ず、とりあえずといった気持ちで限界まで捻っても水は一滴も出なかった。
「あ、水は出ないわよ。管理人さんに聞いたら水が来てないんだって」
「なんと」
「まあ近くに川があったから洗ってきなさいよ。このあたりの水質はかなりいいから飲まなきゃ大丈夫なんだって」
「飲んだらどーなるん?」
「しにます」
「こわい」
軽口を叩きながらキャンプ場を出発した二人。陽炎はんのほっぺ柔らかかったなぁ、などと話しているうちにあっという間に川に着いた。徒歩三分未満である。
さあ顔を洗おうとかがんだ矢先、下流に誰かいるのを不知火が見つけた。
「こんな平日の朝っぱらから川にいるとは…怪しさ満点ですね」
「お、そうやね(ブーメラン)」
とりあえず顔を洗って人物を見てみると、それは浅黒く日焼けした男だった。二人に気がつくこともなく、なにかを必死にスケッチしているようだ。
何を書いているのか気になった黒潮が一歩を踏み出すと、砂利の音に気がついたのか男が振り向いた。
「ヌッ!?……平日の朝から山に誰かいるとはたまげたなぁ…」
「お、そうやね(便乗)」
とまあ。二人と一人のファーストコンタクトはお互いを平日の朝っぱらから山を出歩く変なやつといった認識から始まった。
■■■
「不知火です」
「黒潮や」
「24キロです。170歳です。え~身長が74センチで、体重が田所です」
「なんやこの面白人間」
なぜか自己紹介をする流れになり、盛大に自爆をする浩二。それを聞いた黒潮はこらえきれないといった具合でくすくすと笑いを漏らしていた。
一方で不知火はスケッチブックが気になるようで、チラチラと視線を送っている。
「田所さん、それは?」
「スケッ…チブックのように見えます」
「そんなボケはいりませんから(良心)何を書いて居たんですか?」
「マスですねぇ!!」
「ああ、だから川を見ていたんですね」
「ん、そうですね…」
この流れをなんとかしようと放たれた田所浩二渾身の下ネタギャグが完スルーされ、肩を落とす浩二。一連の流れを見ていた黒潮は「んんwwww」と声を漏らしながら腹を抱えてうずくまっていた。
「秋だから何かしなきゃ(使命感)って感じでぇ…(フェードアウト)」
「だから絵を描いていたのですね。それで、描いてみた感想はどうです?」
「んにゃぴ…やっぱ自分…の芋でも焼いてる方がいいですね(クソレビュー)」
「芋ですか。そういえば最近道路で焼き芋をしていた一般通行クソザコナメクジが居ましたね」
「へーそうなんだ(震え声)あ、そうだ(唐突)おしりのおおきなペンギンの再放送あるから失礼するゾ~!(FF外)」
突然走り出した浩二を見送った不知火。最後まで変な人だったなあと後ろを見ると黒潮が腹を抱えて地面をバシバシ叩いていた。
友人の突然の奇行に呆れながらも手を引いて立ち上がらせて陽炎の元に戻る不知火。
どうやら結構話し込んでいたようで、時計を見てみると10分以上経過していた。
「おっそーい!二人とも何してたのよ!」
「少し変な人と話し込んでしまいました」
「変な人?」
それって変質者?陽炎は訝しんだ。
「はい。マスをかいていました」
「んっふwマスかいてたなぁ」
「変態だーーーー!!ちょっと二人とも何もされなかった!!??」
「……?なんだか愉快な人でしたが、別に何も」
「愉快!?!?!?」
「はい。自分のことを身長74センチで170歳と言ってましたよ。ダークエルフでしょうか」
「ダークエルフ!?!?ミニの!?」
「狂いそう…!」と頭を抱える陽炎。わかりにくいボケをかました不知火はどこか得意げな顔で陽炎を見ていた。ちなみに黒潮は笑いすぎて地面に転がって夏の終わり頃のセミのような動きをしていた。
「ところで陽炎」
「何!?」
「誰かにマスをかいているのを見られるのはいけない事なのですか?」
「グゥッフェェェッ!!(致命傷)そんなこと外でしちゃだめでしょ!(マジメ)見ても見せてもダメ!ダメ!」
「なら家の中でするものなのですね。不知火は一つ賢くなりました」
「ああああ…きれいな不知火が汚れていく…」
「とりあえず通報しなきゃ…」とスマホを取り出す陽炎。この時この行為が山城の首を絞めるハメになるとはまだ誰も思わなかったのである。
風が吹けば問屋が儲かるなどという言葉があるように、秋が来ると山城は崖っぷちに立たされるのかもしれない。