新一章 この辺にぃ、山城の噂流れてるらしいッスよ
夏が終わった。
町の景観からはスダレや風鈴といった物が取り除かれ、代わりに落ち葉が道を彩る。そして落ち葉を使って焼き芋を作るまでが秋の風情と言うものであろう。
「道端で焼き芋って酷いですね君!(レ)」
「いやほんと、ごめんなさい。このアホタレにはしっかり言い聞かせておきますんで…」
「†悔い改めなさい†(レ)」
「はい、申し訳ありません…」
「帰るよもうワロス(レ)」
そして道端で焼き芋をして怒られるまでが田所浩二という生き方である。追撃の山城平謝りで屑度はさらに加速した。
火事の通報でやってきていたガチムチ♂消防員が消防車に乗って帰って行ったのを見送った後で山城は振り返りざまに拳を握る。
「浩二ィ!!」
「おっぶぇ!」
山城お得意の腹パンは咄嗟の判断で避けた浩二の横を通り抜けてコンクリートの塀に激突した。ぶつかった山城の拳はズドンという音を鳴らして静止したものの、殴られた塀はゆったりとたわんで衝撃を隣の塀へと伝えている。
「こんなの食らったら死人がで、出ますよ…」
「じゃあ死ねっ!」
「ヌッ!?(刹那の見切り)」
逆の手で殴り掛かってきた山城の攻撃を頭を下げることでとっさに回避する浩二。二人はいつもこのような調子でちちくりあい、山城はハードパンチャーになり浩二はダッキングが上手くなった。全く持って成長するところがずれている二人である。
「変な噂が立ってる?」
「うん」
結局浩二にスマッシュブロウを二発与えて満足した山城を待っていたのは変な噂を耳にした萃香であった。ちなみに浩二は玄関前に放置されている。
「噂曰く、バランス崩壊系女子が彼氏をサンドバッグにしてるとか」
「えっ」
「さらにはアッパーカットで彼氏を物理的にぶっ飛ばす背の高いフラフラ美女がいるとか」
「えっ」
「あとはビデオカメラを持ち歩いてニマニマしてる長髪の美人ストーカーとか」
「……えっ?」
萃香から聞かされる噂の内容に山城は目を白黒させた。しかし話を理解していく内に心当たりはかなりあるが認めたくない事が含まれていることに山城は激怒した。なお最後の噂はスルーする(激ウマギャグ)
「彼氏ィ!?誰が誰の!?」
「にぃにが、山城の」
「そんな訳ないでしょ!いいかげんにしろ!!」
山城迫真の台バンによって食卓がフローリングに1.14514cm埋まった。
萃香はそれを気にした風もなく会話を続ける。
「逆に考えるんだよ。にぃにをホントに彼氏にしちゃえば扶桑とくっつくことは無くなるんだって考えるんだ」
「そんなこと考えなくていいから(本心)」
そしてジョースター流説得術を仕掛ける萃香だったが山城に完全ブロックされる。
萃香としてはどうせならよく知っている人物と兄がくっついてくれればいいと考えている。いつか誰かとくっつくなら早めに、親しい人とが萃香の方針だ。その考えは実際お母さんめいていた。
「じゃあもう扶桑とにぃにがくっついて終わりで良いんじゃない?」
「その考えは即刻中止しなさい!」
「じゃあ何か代案考えてよ~……」
「なんで!お姉さまか私が!浩二とくっつく前提になってるの!」
しかし萃香の考えは山城のお姉さまさえ居ればいいという考えに真向から喧嘩を売るものだった。どっちかに男が出来ようものならそれだけ二人は疎遠になるから。
箸にも棒にもかからない水掛け論をしていた二人はお互いの意見を出すことに夢中になりすぎて一人の性的倒錯者の存在に気が付かなかった。
「うふふふふふ……なにやらお゜も゜し゜ろ゜い゜こ゜と゜に゜な゜っ゜て゜る゜わ゜ね゜ぇ゜~」
長身長髪バランス悪しの山城の姉、扶桑である。山城の気苦労の加速が確定した瞬間であった。
■■■
翌朝。扶桑は白いワンピ-スに白いキャペリンという名前の帽子という、もう少し身長が高ければどこかの怪談とか麻雀漫画にでもいそうな格好で山城の前に現れた。
「どうかしら?」
「お似合いですお姉さま!!」
この問いに山城は当然のごとく即答。その答えに大変満足した扶桑は両手を合わせて微笑んだ。
「じゃあこれから浩二さんとお出かけしてくるわね」
「はい!……………はい!?」
「あら、言ってなかったかしら…?今日は浩二さんと一緒にお買いものに行こうと思っていたのだけれど…」
当然この事は初耳であるし扶桑も当然言ってない。
しかし突然のことで頭の回ってない山城は反射的に「私も行きます!!」と言ってしまった。
「そう、行くのね…」
そう言って扶桑はニンマリといい笑顔で笑った。
「この辺に、素敵な男物の服屋が出来たらしいの」
「はえ^~」
「そこに今から行きましょう?」
「お、そうだな(快諾)」
「…………」
駅前の大通り。そこで浩二と扶桑と山城がちょうど三角形になるような形で歩いていた。先頭を歩くのは扶桑で、残りの二人はその後をゆっくりと歩いていく。
浩二は当然のごとくハーフパンツにTシャツといういつもの格好だが、彼を呪い殺さんとしているほど眼光の鋭い山城は扶桑によってリブ生地のロングノースリーブハイネックセーターを着せられている。下はホットパンツなので穿いてないようにも見えるのがポイントだ。
山城は服屋に入って行く二人を追って店に入る。そこは当然と言うべきか男ばかりで、少々の居心地の悪さを感じられた。
「浩二さんはガッシリしてるから…こんな服なんてどうかしら」
「スケスケで乳首みえちゃうやばいやばい……」
「じゃあこれはどうかしら?」
「いやーキツイっす(素)お前どう?」
「ないわね(素)」
「自分から駄目そうなコーデしていくのか…(困惑)」
しかしそれ以上に目の前の光景に我慢ならなかった。楽しそうにする二人が妬ましくてしょうがないのだ。幸いにして扶桑は男物のコーデが壊滅的なので山城はその辺にあったスラックスとジャケットとYシャツを放り投げた。
「アンタはこれで十分でしょっ!さっさと着てきなさいよ!」
「あら、これは…」
山城に後ろから押されて「しょうがねえな~(悟空)」と試着室に消える浩二。そして一分後に出てきたのは都会とかにいそうな怪しいスカウトマン風の浩二だった。
「いっすかぁ~?」
「ないわ(素)」
「ないわね(素)」
「そういう素の発言が一番傷付くってそれ一番言われてるから」
結局普段の格好が一番という事でシャツとハーフパンツの替えだけを買った浩二は次の店を指さす。
「こ↑こ↓」
「あら、すっごく大きい」
そこは大きな小物ショップだ(矛盾)。ガラス張りの店内にはアクセサリーや雑貨が所狭しと並んでいる。
「あ、そうだ(唐突)山城ァ!」
「なによ」
「お前いっつも殴ってるから指とか気を付けた方がいいゾ」
中に入って小物を漁っていた浩二が山城にアーマーリングを渡した。やたら強そうなアレである。四本セットで黒ずんだ鋼製のそれは実際嵌めてみると、角度によってはメリケンサックのようにも見えた。
無言でレジに向かう山城。会計を済ませた後で浩二の襟首を掴んで店の外に放り出し、購入したばかりのアーマーリングを右手に嵌める。
「余計なお世話よっ!!」
「ヌッ!!??!?!?!?」
鬼の形相の山城は過去最速のうなりを上げるボディーブローで浩二を物理的に吹き飛ばした。そして一歩離れて見ていた扶桑はビデオカメラを回しながら恍惚の表情をしていた。
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「変な噂がまた立ってる?」
「うん」
浩二にボディーブローを決めてサッパリしてから田所邸に帰宅した山城を待っていたのは再び変な噂を目にした萃香であった。ちなみに浩二は玄関前に放置されている。
「ツブヤイターでさ、『バランス崩壊系女子、攻撃力+3』とか『フラフラ美女、三角関係だった』とか『美人ストーカー八尺様説』とかが写真付きで出回ってるんだよね」
「え゙っ」
山城は急いでスマホのツブヤイターを起動してみた。すると噂好きの鈴谷や瑞鶴、珍しいところではビスマルクや羽黒。果ては赤城からも「お熱いですね」とコメントが送られていた。
「ってこの写真撮ったの赤城だったの!?」
新事実が発覚して新たな敵の出現によって戦慄を隠せない山城である。なお扶桑は一足先に自宅に帰りビデオカメラで録った映像を見てニマニマしていた模様。
人の噂も75日というが、正直2か月半というのは酷である。まだ23歳であるこの女性は悪夢のような噂に耐える事が出来るでしょうか?それでは、ご覧ください。
山城の戦いはこれからだ!扶桑先生の次回策にご期待ください!