魔法使いと黒猫のウィズ×白猫プロジェクト スィー島アフターデイズ 作:烏丸
「で、どこいくー?リッタ」
城を出て、軽く伸びをしながらアリエッタに話しかける。後ろを見ると、先ほどまで付いてきていたはずのアリエッタの姿が無い。またか、とため息をつきアリエッタを探すと、既に先へ行きそこらじゅうに生えているポッキーをつまみ食いしていた
「シャルー!おいてくよー!わはは!」
「勝手に行くなっつーの!また迷子になるでしょうが!」
ずんずん進むアリエッタを追い、シャルも先へ進む。スィー島という名前は伊達じゃなく、本当に島そのものが巨大なスィーツになっているのだ。アリエッタと同じように、シャルも道のお菓子をつまみ食いしながら適当に歩く
「む?あれなんだろー?」
アリエッタが指をさす。その方向を見るとあったのは……巨大な山だった。しかしその山の形は、明らかに見覚えがある
「プリン、じゃね?」
「プリンだよねー」
あんな大きなプリンを、今まで見たことは無かった。いや、見たことある人がいるのだろうか?それは、バケツプリンとかそういう次元ではない、まぎれもない山のような大きさだったからだ。その迫力に、思わずぽかんとしてしまうシャルを置いて、アリエッタは走り出す
「よし!まずはあそこにいこー!わはは!」
「ちょ、待ちなさいリッタ!」
走り出すアリエッタを追い、プリンの山の麓へ着く。足元もぷるぷるで、全てがプリンで出来ているかのような場所だ。アリエッタに追いつく頃には、もうプリンで出来た小さな山を食べ始めている
「あまーい!おいしー!シャルもはやくはやくー!」
「わかったっつーの!……どれどれ」
山に近づき、触れてみる。触れたところがぷるぷると揺れ、甘いにおいが漂う。どんなもんかなー、とこの島に来て常備している紙スプーンを取り出し……
「あの~、すいませ~ん」
刺したところで、誰かに呼び止められた。今まさに至福の時を味わんとしていたシャルは、無視しようとプリンの山からひとかけら引き抜こうとして――――
「すいませ~ん」
……また、呼び止められる。人違いと無視し続けようかと思ったが、声が先ほどよりも近づいていたし、何より真後ろに気配を感じる。苛立ちを押えず、シャルは振り返る
「……何ですか?今私は―――」
振り返ったシャルの前に、皿に盛られたスライスされたプリンが出された。目の前に、兎のような耳を付けた女の子が立っている。突然のことにシャルは引くと、女の子は手に持ったプリンをシャルへと出し、笑みを浮かべる
「こちらのぷりんもおいしいですよ?おひとついかがですか~?」
突然の出来事に、驚くシャル。今すぐにでも後ろの山を食べつくしたい衝動に駆られているが、目の前に出されたプリンも負けず劣らず――――いや、それ以上においしそうだ
「……わかりました、じゃあ一つ……」
押し負け、口に一切れプリンを運ぶシャル。その瞬間、何かが体を走り抜けるような……それほどの衝撃に襲われた。思わず、うさ耳の女の子からかっさらうようにプリンを次々と口に運んでいく。
皿に乗ったプリンをすべて口に入れ終わり、シャルは一息ついた。まだ余韻が残っている
「はへぇ……まだこんなにおいしいものがあったなんて、城から出て正解だったわぁ……」
「気に入っていただけたならよかったです~。あの、まだ在庫が向こうの方にあるんですけど、どうですか?」
「え!行く!……あ、行かせていただきます」
あまりのおいしさに、シャルも普段の演技を忘れてしまう。うさ耳の少女についていく前に、アリエッタを探すがどこにもいない。
「どうしました~?行きますよ?」
「あ……はい!わかりました」
だが、プリンの魔力に抗えず、うさ耳の少女にシャルはついていく。このとき、シャルは気が付かなかった。アリエッタのいた場所のプリンの山、その部分がただの平地になっていたことに……
プリンの谷を歩きながら、少女とシャルは話す。少女の名はツキミというらしい。どうやらシャルたちと同じで異界へ連れてこられたらしい。ツキミは、ここでもう一人連れてこられた女の子とプリンを売っていたらしい
「もうすこしプリンを売ってから帰ろうと思うんですよ。おだんごも売らないといけないし……」
「ふーん」
近くのプリンをつまみながら、シャルは興味なさそうに話を流している。頭の中はプリンで埋め尽くされており、その味にすっかり魅了されてしまっている
「もうすぐ付きますよ~。山のようにありますから、いっぱい食べられると思います」
「じゅる……はっ、楽しみですね」
プリンの谷を抜け、大きな広場に出た。あのプリンをまた食べらるとシャルのテンションが上がりきったころに……
「つ、ツキミちゃん!大変なの!」
前から和服を着た女の子が走ってきた。何やら慌てており、息を切らしている
「あ、新しいお客さんですか?ああでも今は……ええと、とにかく大変なんです!こっちに来てください!」
言われるまま、ついていくツキミ。プリンを逃すかとシャルもついていく。そこには……
「はー、食べた食べた。満足満足~」
空になった大量の空き箱と、横になって満足そうな顔をして寝ているアリエッタがいた
「ちょ――――あんた、こらリッタ!起きろ!」
掴みかかる勢いで、シャルはアリエッタに迫る。ふぇ?と目を開けるアリエッタ
「あ、シャル。このプリンすっごくおいしいよ~」
「知ってるわ!そんなことよりリッタ!余りは!?他のプリンは!?」
「あ、あの~、すいません……」
和服の女の子が恐る恐る声をかけてくる。シャルは半ば興奮しながら振り返る
「この方が食べた分で全部なんですよ……在庫はもうないんです」
「そ、そんな……ちくしょ~……」
普段の御子の演技も忘れ、アリエッタを睨むシャル。だが当のアリエッタはというと、うとうとし始めている
「寝るな!こら!起きろ!」
「あらあら、全部なくなったんですか?ミコトちゃん」
ツキミが問う、ミコトと呼ばれた女の子はそうなの、と焦った様子で言う
「全部売れたなら、良かったじゃないですか~。在庫もなくなったし、そろそろ元の世界に帰れるかなぁ?」
「うーん……まだわかんないなぁ……あ、あの。ぷりんは全部なくなったので、すいません……」
ミコトが未だ荒れているシャルを慰める。シャルも観念し、アリエッタから手を放す
「……元の世界になら、そろそろ帰れると思うわよ。大元の敵は倒したし。ラヴリを探せば戻してもらえるんじゃない?」
「あ、そうなんですか!?どうしようか?ツキミちゃん」
「うーん、渡されたプリンは無くなったしもういいんじゃないかなぁ?」
「じゃあ、ラヴリちゃんをさがそっか?」
二人の話がまとまったところで、シャルもアリエッタを起こす
「ほら、次のとこ行くわよリッタ」
「はーい」
アリエッタが立ち上がったところで、ミコト達が尋ねる
「あの……ツキミちゃんから聞いたんですけど、お二人も別の世界から来たんですよね?」
「え?うん。そうだけど」
「よかったら、一緒に行きませんか?ラヴリちゃんを見つけなきゃ、帰れないですし」
ミコトに誘われる。特に断る理由がなかったシャルは、ミコト達と共に島を回ることに決めた
「次はどこに行くのー?」
アリエッタが問う、特に予定は無く、適当にぶらぶらしようと言いかけたところに、ミコトが小さく手を上げる
「あの……ウィズ様達が、向こうのジュースの湖から来たみたいで、そこが気になるのですが、いいでしょうか?」
「おー、いいね。よし、そこへ行こう!」
ミコトの提案で、四人はジュースの湖に向かうことにした