魔法使いと黒猫のウィズ×白猫プロジェクト スィー島アフターデイズ   作:烏丸

4 / 8
side:急ぐ者たち

場所は変わり、アイスで出来た城。城の中では、元気に走り回る誰かがいる

 

「こっちだよ!タロー!」

 

くぅーんという鳴き声と共に、女の子と犬が何かに向かって走って行った。そこにあるのは、小さなボールだ。先にボールを掴んだのは、女の子の方だ

 

「わんわん!コヨミの勝ちだね!タロー、クロ!」

 

残念そうに鳴く子犬二匹と、ボールを掴んだ少女が離れた人影に向かっていく。なにやら、翼のようなものが生えていた

 

「ルシエラねーね!また投げて!」

「仕方ないですねー。行きますよー?……それっ!」

 

ルシエラがボールを投げると、コヨミと子犬二匹がボールに向かって走り出す。またコヨミが一歩リードし、手を伸ばす

 

「またコヨミの勝ちー!……あれ?」

 

伸ばした先のボールが中に浮いた。ルシエラが羽を広げ、空を飛び先にボールを取ったのだ

 

「あー!ずるいよ!ルシエラねーね!」

「自分の特徴を活かしただけだからなにも問題ないですよーだ」

「むー」

 

空からコヨミ達をからかうルシエラ。そんなやり取りを遠巻きに見ている人が二人

 

「はー……あいつら、元気だなぁ」

「キワムさんは混ざらないんですか?」

「いや、俺は魔法使いたちと祭みたいなことやった後だからさ……コヨミもだけど。疲れたから今は少し休みたいかな」

 

キワムという青年と、ミレイユという少女がいた。二人はアイスの城の冷たい床に座り、話し込んでいた

 

「けど、まだそんなにこの世界に来てる人たちがいたんですね。魔法使いさんたちとは会いましたけど」

「ああ。俺も驚いたよ。しかもみんなペアでまとまってたからな。」

 

二人が話しているのは、先日行われていた魔導士の祭典、魔導杯というものについてだった。キワムとコヨミはその中のチームの一つとして参加していた。魔導杯が終わった後魔法使いたちがお菓子を島のみんなに配ってくるといい別れたので再びアイスの城に戻ってきたところ、ミレイユとルシエラがいたのである

ルシエラがコヨミたちと遊んでいる中、ミレイユはキワムとこの世界のことについてなどをいろいろ話しあっていた

 

「魔法使いに付き合っていろいろ魔物倒したりして疲れたよ。俺も年かな?」

「え?まだまだ若そうに見えますけど……」

「冗談だよ。冗談」

 

手を振って軽くごまかすキワム。まだ悩んでいるミレイユをよそに、コヨミたちが近づいてきた

 

「キワムにーにとルシエラねーねも遊ぼうよ!ほらほら!」

 

手を引っ張るコヨミに、困惑しながら二人は顔を見合わせる

 

「待ってくれよコヨミ。少し休んだらまたラブリ達を探して元の世界に戻してもらうよう頼みに行くって言っただろ?」

「私も、そうしようと思って少し休憩を……」

「お二人とも、体力ないですねー」

 

ボールを手に空からルシエラが下りてくる。コヨミは、キワムの服を強くつかむ

 

「……もうすぐ、離れ離れになっちゃうから、もうちょっと遊んでたいよ……」

「コヨミ……」

 

キワムは、コヨミの小さな頭を優しくなでた。すん。と鼻をすする音がする

 

「大丈夫だって。またいつか会えるさ。いつかコヨミのいる異界に遊びに行くって」

「……ほんと?」

 

ああ、とキワムは微笑みながら答える。そんな様子を見て、にやにやと笑うルシエラ

 

「へー、キワムさんてロリコンだったんですか?」

「なっ、ちが……」

「?キワムにーに、ロリコンってなに?」

「コヨミちゃん、それはですねー」

 

にぎやかになってきた城の片隅、そこに、城の扉が開く音が聞こえてきた。デザートンが倒れたということは知っているものの、四人はすぐに警戒し構えをとる

やがて、二人の男が入ってくる。一人は長身痩躯の男、もう一人はがっしりとしたこれまた身長の高い男だった。一見正反対のように見えるが、二人ともただならぬ雰囲気を携えている

ミレイユは構え、ルシエラも注意を向ける。そんな二人をよそに、コヨミは声を上げた

 

「あっ、この前の……えーと……」

 

どうやら知り合いらしい。体格のいい、魔人のような男が答える

 

「ほう、確かあの魔導杯とやらに参加していたな。我の名はヴィルフリート。こちらが我が相方ディートリヒだ」

「相方などではない」

「照れなくても良いのだぞディートリヒ。貴様と我が組めば世界を取れると……む、何処へ行く」

 

長々と話し始めようとするヴィルフリートをよそに、ディートリヒはキワムたちへと近づく

 

「相変わらず面白いな。あんたたちは」

 

冗談交じりに言うキワム。ディートリヒは露骨に顔をしかめる

 

「下らん。私はラヴリという小娘を探しているのだ。貴君ら、奴の居所について知っていることは無いか」

「なんですか?この偉そうな人は」

 

と、キワムとディートリヒの会話に割り込んだのはルシエラだ。ディートリヒの迫力にも物怖じず前に立つ。キワムはルシエラをいさめる、と言ってもディートリヒは一切気にしてないようだ

 

「知らないのなら、いい」

 

背を向け、城から出ていくディートリヒ。ヴィルフリートも付いていく。このまま別れようと思ったところで、コヨミが突然口を開いた

 

「ヴィルフリートにーに!ディートリヒにーに!二人も一緒に遊ばない!?」

 

何を、とキワムたちが驚く。ヴィルフリートは少し足を止めたが、ディートリヒは聞こえてもいないのか、無視して城から出て行った。ヴィルフリートも、続いて外へ出る。城の扉は閉じ、冷たい風だけが残された

 

「びっくりしたぁ……怖い人たちでしたね」

 

最初に口を開いたミレイユが、大きく息を吐く。確かにあの二人が並んでいると、とてつもない威圧感を感じる。しかしルシエラだけは「そーですかぁ?」と全く気にしていない様子だ

 

「怖い人たちなら魔界にたーくさんいましたからね。あれくらい普通ですよ」

 

ピンとこないミレイユとキワムは、魔界みたいな恐ろしいとこなのかな、と思った。キワムは、一つ気になることがありコヨミに問いかける

 

「コヨミ。なんで、遊ぼうだなんて言ったんだ?ヴィルフリートってやつはともかく、ディートリヒがうんと言うなんて全く想像できないけどな」

「うーん……コヨミもよくわかんないけど……寂しそうだったから……」

 

目を伏せ、考え込むコヨミ。自分でもなぜそう思ったかはわかっていないようだった

 

「で、どうするんです?これから私たちも魔法使いさんたちを探しに行きますか?」

 

ルシエラが口を開く。キワムがコヨミの方を見ると、少しは気持ちの整理がついたようで、コヨミは笑って言う

 

「だいじょうぶだよ。キワムにーににも、帰るところがあるもんね」

「……優しいんだな、コヨミは」

 

また、キワムは頭を撫でる。タローとじゃれていたクロも、コヨミの足元で顔を擦りつけている

 

「クロもありがとうね、タロー、いこ!」

 

タローを抱き、コヨミは駆け始める。あとを追うキワムと、それをどこか寂しそうに見つめるミレイユ

 

「あれー、ミレイユさんも、帰りたくなくなったんですかぁ?」

「い、いや、そんな……」

 

慌てるミレイユと、茶かすルシエラ。二人を追って歩き始め、ルシエラが言う

 

「別に二度と会えないって決まったわけじゃないですし、悲しむことじゃないですよ。まだまだ楽しんでいきましょう?」

 

励まされ、ミレイユは顔を上げる。ルシエラの顔は見えない

はい。と大きな返事をし、ミレイユは三人についていく。四人は、ラヴリを探し歩き始めた

 

 

 

「冷たい奴だな、ディートリヒよ」

 

城を出た二人は、ラヴリを探すため再び散策を続ける。ヴィルフリートは、からかいの意をこめディートリヒへ話しかける。ディートリヒは、表情を何一つ崩さない

 

「下らんことを」

 

この世界に来てから、ディートリヒは振り回されてばかりである。別に気に入らないというわけではないが、このどこか温い、甘い空気が気に障っていた。自分には、このようなことをしている暇はない

 

「貴様のその才能を埋もれさせるのは惜しい。どうだ?我と共に、笑いの世界も……ぬぉっ!?」

 

話すことに気を取られていたヴィルフリートは気づけなかった。地面にたまたまバナナの皮が落ちていたことに。そしてそれを勢いよく踏んだヴィルフリートは、まるでよくあるギャグストーリーのように空中で一回転し――――

 

「……ぬぅっ!?」

 

頭から落ちて、地面に角が刺さった。シュールすぎる光景に、二人の間に沈黙が下りる。真顔で見つめ合うが、ディートリヒは、笑うでも、呆れるでもなく、無言で立ち去っていく

 

「ぬ、せめてこの角を抜いてくれぬかディートリヒよ!おい!」

 

その背中を見守るしかできないヴィルフリート。どうしたものかと考えようとしたところで、近くの草むらから何やら人が飛び出してきた

 

「もー、何やってるのマールちゃん!」

「ご、ごめんなさーい!大丈夫ですか?」

 

飛び出してきたのは、二人の少女だった、一人は羽を生やしている。ヴィルフリートは、この二人を知っていた

 

「小娘らか……ここで何をしている?」

 

少女の一人がえいっとヴィルフリートを持ち上げると、すっぽりと抜けた。この力持ちな少女の名はユッカ・エンデ、もう一人の羽を生やした女の子の名はマール・アスピシャスという

 

「えっと……」

 

二人は、バツが悪そうにヴィルフリートにここまでのいきさつを簡単に話した。二人はいちごと抹茶の村できゅうりの栽培を助けたあと、魔導杯に参加し、そのあとはスィー島の人々にラッキーを分け与えていたのだという。その途中、つまり先ほどヴィルフリートとディートリヒを見つけ、なにやら険悪な雰囲気だったので、マールのラッキープレゼント――その名のとおり幸運を対象に分け与える技――をヴィルフリートにやってみたところ、今のような結果になったという

ふむ、とヴィルフリート

 

「二度とない体験をできたのだから不運ではないな。長く生きてきたがこのような経験は初めてだ。感謝する」

「そ、そーですか……」

 

予想外の反応に困惑するユッカとマール。ディートリヒを追わず、ここでのんびりとしている姿を見て、ユッカが問う

 

「追わないんですか?ディートリヒさんを」

「ああ。おそらくもう間に合わんだろう」

 

何のことかわからず顔を見合わせる二人。ヴィルフリートは、一人納得したようにディートリヒの歩いた方角を見ていた。その顔からは、諦めかも、満足したかもわからなかった

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。