魔法使いと黒猫のウィズ×白猫プロジェクト スィー島アフターデイズ 作:烏丸
「……いっちゃったねー」
マールとユッカの二人は、ヴィルフリートにラッキーを与え、送り出していた
「今度はちゃんと、届けられたかな……」
「大丈夫だよ!」
自信なく俯くマール、その肩を、ユッカが強くたたく
「きっと今度は大丈夫だよ!落ち込んでばっかりいたら、天使失格だよ!」
「えー、なにそれ~」
苦笑するマール。しかし、先ほどまでとは違い、少し元気をとりもどしたようだ
「ありがと、ユッカちゃん」
「私はなにもしてないよー、マールちゃんの力だよ」
「そーかなー……えへへ」
話し込む二人のもとに、新たな足音が近づいてきた、二人は素早く近くの木の後ろに隠れ、様子をうかがう。四人組が歩いてきた。何やらもめているようで、中心にいる男の人が慌てている
「マールちゃん、今だよ!」
「まっかせて!ラッキープレゼントー!」
マールが中央にいる男にラッキーを与えた。もちろん、そのことに男は気づいていない。男の前を歩く少女が振り向く。その瞬間、後ろにあった少しの段差に気が付かず転びそうになった、それを支えようと男は手を伸ばし――――
「――――うわっ!?」
「きゃあっ!」
そのまま倒れこみ、たまたま茂みで見えなかった坂を転がっていく。後ろにいた女性二人が駆け寄ってくる。ユッカたちも様子を見に行った。そこには……
「ったた……大丈夫か、コヨミ?」
「うん……」
歩いてきた四人組は、キワムたちだ。倒れたコヨミを気遣い声をかけると、何やら顔を赤らめている。何が起こっているかわからないキワムに、後ろからルシエラたちがよってきた
「二人とも大丈夫ですか!?」
「うわぁ、やっぱりキワムさんってロリコンだったんですね」
は……?とキワムはルシエラの言ったことに反論しようとする。しかし、冷静になり自分の状況を見てみた。キワムはコヨミに覆いかぶさるようにして倒れており、コヨミはキワムの下に押し倒されたようになっている。ようやく理解したキワムは、急いでコヨミの上から離れる
「す、すまん!大丈夫かコヨミ!?」
「コヨミは平気だよ、キワムにーに。ありがとう!」
すぐ元気を取り戻し、笑顔になるコヨミ。しかし、後ろにいる女性陣四人の視線が痛い
「……ん?四人?」
さっきより二人多いことに気が付いたキワムは、振り返り増えた人影を確認する。しかしそれより早く、翼を生やした少女と帽子をかぶった少女の二人がキワムの眼前に来ていた。「うおぉっ!?」と叫び声を上げ、少し後ずさるキワム。しかし、二人は近づいてくる
「「……どーお?」」
二人同時に聞いてくる。突然のことに、キワムは何も言い返せない。二人はさらに詰め寄ってくる
「「……ラッキー?」」
「ら、ラッキー?」
全く何のことかわからず困惑するキワム、相変わらずルシエラはにやにやと笑っている
「なぁ……なんのことだかわからないんだけど、さっきコヨミが転んだのはお前たちの仕業か?」
「そーだよー?」
翼を生やした女の子はあっけらかんと言う。無責任ともいえる態度に、キワムは怒る
「危ないじゃないか!俺が助けに入ったからよかったものの、もし……」
「あーっとちょっと待って!確かにその子を転ばせたのはマールちゃんだけど、悪気があったわけじゃないの!」
隣にいたもう一人の女の子が止めた、マールと呼ばれた女の子も、反省しているのか少し俯いていた
「マールちゃんはね、ちょっと不思議な力を持ってて、他の人をラッキーにすることが出来るの!ちょっと……ちょっとだけ失敗もあるけど、みんなをラッキーにしたいって気持ちは本物だよ!」
「ユッカちゃん、どうしてちょっとで迷ってるのさー」
と、ユッカと呼ばれた少女からフォローが入る。どうやら本当にわざとではないらしい、とキワムは軽く息を吐いて、泥を落としながら立ち上がった
「まあ、わざとじゃないならいいさ。でも、気を付けてくれよ?」
「「はーい」」
やけにいい返事をして、二人は謝った。コヨミを立たせて泥を払ってやり、改めて二人に自己紹介をする
「俺はキワム。キワム・ハチスカ、こっちはこの世界で知り合ったコヨミ、ルシエラ、ミレイユだ」
「キワムさん、ちょっと紹介が雑じゃないですかー?」
抗議するルシエラを置いて、二人の名前を聞く。コホンと咳ばらいをして、マールから口を開いた
「マール・アスピシャスだよー、見た目の通り天使だよ!」
「ユッカ・エンデです。エターナル・クロノスっていうところで時計技師をやってるんだよ。よろしくね!」
軽く自己紹介を終えると、特に目的の無かったマールとユッカは、キワムたちについていくことにした。二人は騒動が終わった後、道行く島の住人たちにラッキーを配って回っていたと話す。六人は、やがて大きな街についた。街の建物一つ一つも、お菓子で出来ている
「へー、こんなところもあるんだぁ……私たちがいたのは小さな村だったよ」
「俺たちがいたのは城だったけど、人の気配は無かったな」
「私たちもですねー」
各々が感想を述べていると、誰かが寄ってきた。コヨミは反射的にキワムの後ろへ隠れる
「ん?お嬢ちゃんたち、ここらで見ない顔だな。旅行者か?」
話しかけてきたのは、少し老けた男性だった。口ぶりから、どうやら街の人らしい。じろじろとキワムたちを見た後、酒のように見える飲み物をあおりながら続ける
「お前さんらは運がいいな。今旅の者が近くのホテルでいろいろ催し物をしててな、見に行ってみるといいぞ」
「はぁ……ありがとうございます」
なんのと手を振り、男性はどこかへ行ってしまう。互いに顔を見合わせたキワムたちは、とりあえずそのホテルへ行ってみることにした。街の中心部にある、大きな建物がそれらしい。外まで中の騒がしさが聞こえてきて、見つけるのに時間はかからなかった。扉を開け、中に入ると、何やら音楽が聞こえてくる。どうやら、ここに来た旅行者とは楽団のようなものだったらしい。ピアノの音と共に、歌声が聞こえてきた。綺麗な演奏と歌声で、思わず引き込まれる。小さな壇上には、ピアノを演奏する人と歌っている人が二人ずつ。そして横で踊っている人が一人
「あれ……?」
コヨミが声を上げる。キワムは壇上の歌手をよく見ると、歌っているのは黒猫の魔法使いと出会った時一緒にいた二人組だ。確か、アーモンドピークとアーモンドプレミオと言ったか……
キワムがそんなことを考えていると、コヨミが走り出した。キワムも、追いかけようとする
「どうした、コヨミ……!?」
「わ、わ、いたっ!?」
コヨミは小さく、するすると人の合間を縫って走っていく、キワムはそうはいかず、誰かにぶつかってしまう。ぶつかった女性がよろけ、手に持っていた何かを落としそうになり――――
「――――っ!」
上手く右手で女性が落とそうとしたものを掴む。そのまま女性を左手で抱え支える形になった
「ごめんよ、大丈夫か?」
「はい、大丈夫です。すいません。私いつもドジで……」
「気にすんなって。周りを見てなかった俺も悪かったんだからさ。ほら」
助けた女性をうまく立たせ手に持った盆を返す、上には団子のようなものが乗っていた
「今度はうまくラッキー分けられたね!マールちゃん!」
ユッカたちが駆け寄ってくる。どうやら、マールがキワムを助けてくれたらしい
「ありがとな、マール」
「へっへーん!お安い御用だよー」
「すいません。前を見てなくて」
「いや、こっちこそ悪かったよ」
マールに礼を言った後、ぶつかった女性に謝る。その後ろから、同じように盆に団子をのせた女性がやってくる
「ミコトちゃ~ん?叫び声が聞こえたけど、大丈夫?」
「あっ、うん!大丈夫だよ!ツキミちゃん」
ちょうど、ステージ上での演奏が終わる。拍手につつまれる会場の最前列で、大量にお菓子を抱える団体がいた
「たまにはこういうの見ながらだらだらするのも悪くないわね……こらリッタ!それ私が食べようとしたやつ!」
「早いもの勝ちだもんねー……あれ!?」
「隙あり~。もーらいっと」
お菓子を取り合う三人組を見て、ため息をつくウィズ
「ラブリにおすすめされた宿に来てみたら、まさかシャルたちがいるなんてにゃ」
隣にいた魔導士も苦笑する。お菓子に配り疲れたウィズたちはとりあえず今日はもう休もうと思いラブリに宿の案内を頼んだところ、その宿にはシャルたちが先にいた。テレーゼと愛がピアノを弾いてるのを見て、アーモンド姉妹は二人に歌わせてもらえないか頼み、即興のライブが始まった。シャルたちはというと、魔導士が抱えるお菓子の束を見て目を輝かせ、かっさらうようにしてお菓子を食べ始めていた
「今日は全然休める気がしないにゃ」
これにも、魔導士は苦笑で答えるしかなかった。二人は、ただ迷惑なことが起きないようにと祈るしかできなかった
「ありがとうテレーゼ、アイ。まさかこんなに人が集まるとは思わなかったよ」
「私もこういったステージは始めただから楽しかったわ」
「私も……うまく演奏できて、よかった。」
「そういってもらえると嬉しいなぁ。あら?コリンは?」
ステージでは、演奏し終えた四人が互いをたたえ合っていた。ピークがステージを見回す。さっきまで踊っていたはずのコリンがいなくなっていた。そのころコリンは、踊っている最中に見かけた人影を探し下へ降りていた
「見間違いかねぇ?この島にあの子がいるとは考えにくいんだけど……おっと」
コリンの足元に、子犬が一匹飛び込んできた。それは何度も見たことがある、妹のような存在の弟だ
「タローがいるってことは……」
「いた!コリンねーね!」
コリンを見つけたコヨミが、コリンの胸に飛び込む。それを支えたコリンは、優しく頭を撫でた
「まさかコヨミもこっちに来てたとはねー。よしよし」
「どうしたんだコヨミ、急に走り出して……?」
コヨミを追って、キワムたちがやってくる。そこにいたコリンを見て、少し戸惑う
「えーと……保護者さん、かな?よかったな。コヨミ」
「キワムさんはあっさり捨てられて残念でしたねー」
さりげなく毒づくルシエラに慌てて反論しようとするがうまく言葉が出てこない。コヨミはふふっと笑った
「この子の面倒見てくれたんでしょ?ありがとねー」
「いやいや、俺はそんな」
そんな風に話す二人の前に、ライブの終わった三人と見ていたシャルたちがやってくる。
「あれー?コリンの知り合い?」
「んーまあ知り合いというか……」
人の集まってきたところに、ツキミとミコトが盆を差し出してきた
「まあまあ、積もる話もあるみたいですし……」
「とりあえずおだんご食べて、ゆっくりしましょ~?」
とりあえずこの意見を受け、全員で広い部屋に移動することにした。夜は、まだ始まったばかり。互いにこの世界に来てからのことを話し合うことにした