魔法使いと黒猫のウィズ×白猫プロジェクト スィー島アフターデイズ   作:烏丸

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眠れない夜

キワムが帰った後、コヨミは部屋に戻ると、何かを隠すように布団にくるまって眠りについた。枕投げという名の乱闘に興じていたほかの女子は疲れきっていて、コリン以外はそのコヨミの様子に気づくことは無かった。が、何となく察したコリンは、何も言わずコヨミと共に眠りにつく。全員が寝静まったのを見て、アイは立ち上がり、外へ出る。丸い月を見て、ため息をついた。

 

「眠れないの?」

 

後ろに、テレーゼが立っていた。テレーゼは、アイの横に立ち月を見上げる。

 

「うん。私は、眠る必要はないから……」

「そう、だったの。ごめんなさいね」

「ううん。大丈夫」

 

会話が続かなくなり、静かな時間が流れる。テレーゼは、少し気になったことを聞いた。

 

「ねえ、あなたの探す綺麗なものって、こういう風景とかなの?」

「うん。アイと一緒に探しているの。だから、こうやって見た綺麗なものも覚えてアイに話したい」

 

アイは、ややこしいがアイというもう一人の機械で出来た女の子と共に美しいモノを求め旅をしているらしい。それを聞いていたテレーゼは、おもむろにピアノのような形をした弓を取り出す。

 

「テレーゼ……?」

「綺麗なものは風景だけじゃないわ。あなたに教えたこの演奏だってそうよ。それに、これなら元の世界に帰った後もあなたの家族に教えられるでしょう?」

 

テレーゼの演奏は、静かな夜に優しく響いていった。アイも、楽器を借りて演奏を行う。

 

「ありがとう。テレーゼ」

「ううん。こうやって知り合った仲だもの」

 

二人は、夜が明けるまで演奏を続けていた。

 

 

 

 

 

演奏が始まったころ、シャルロットは同じように旅館の外に出ていた。近くに湧き出ていたジュースの泉から適当なものを汲んで飲んでいる。

 

「相席、いいですか?」

 

声がする。前を見ると、ルシエラがすでに座っていた。シャルロットと同じようにジュースを飲んでいる。

 

「何勝手に座ってんのよ。許可はまだ出してないんですけど?」

「いいじゃないですか。減る物じゃないし。あ、これ持ってきたんですけど食べますか?」

 

反論もめんどくさくなり、手に持ったアイスの形をしたお菓子を受け取り食べる。

 

「そーいやさぁ、あんたは向こうの世界に戻りたいって思わないの?」

「私ですか?そうですねぇ。別にいいかなって思います」

 

なんとなくで質問する。それを、ルシエラはさらっと流した。

 

「むしろ、こっちに来て困らせる方が楽しそうですから」

「ふーん」

 

菓子を食べながら、二人はどうでもいい世間話をした。といっても、ルシエラはシャルロットの質問を流してばかりでまともに答えようとせず、イライラしたシャルロットはついに黙り始めた。すると、ルシエラが話し始める。

 

「シャルさんは、眠らないんですか?」

「眠れるわけないでしょ。エッタのいびきがうるさいのなんの。あんたは?」

「私ですか?そーですねぇ。そろそろ迎えが来ると思うんですよ」

 

迎え?とシャルが首を傾げたところで、突然魔導士が黒猫と一緒に走ってきた。よく見ると、何やら黒い穴がルシエラの近くに空き始めている。

 

「全く。もう少し自由にさせてくれてもいいのに」

 

そういうルシエラの顔はほころんでいる。魔導士が魔法で扉を穴を広げると、中から手が出てきた。手は、ルシエラの手をしっかりと握る。

 

「もう、そんな焦らなくてもすぐ行きますってば。じゃあ皆さん、私は先に帰りますね」

 

手を振って、ルシエラは穴の中へ入っていった。シャルロットと顔を見合わせた魔導士は、何が起こったかさっぱりだという顔をした。

 

 

 

 

 

「全く、急にいなくなったと思ったら……何をしていた。ルシエラ」

「別になにもしてないですよー?あ、クルスさんいたんですね」

 

ルシエラが帰った先は魔界。特にルシエラがいる場所は、魔王と呼ばれる魔界のトップが集まる場所だった。そこで何らかの方法でルシエラのいる場所に干渉できた魔族たちは、安堵の表情を浮かべていた。

 

「いたんですねっていうのはひどくないかな。何か用かい?」

「ええ。あなたにこれを渡したくて」

 

ルシエラが渡したのは、いくつかのお菓子だ。それは、どれもが魔界で見たことがない物ばかりだった。

 

「なんだいこれは?……ん、おいしい」

「それを大量生産したら売れると思いませんか?」

「確かに。考えてみよう」

 

そういってクルスと呼ばれた小柄な少年は去っていく。ルシエラの手を引いていた魔王が、突然の行動に驚いている。

 

「今のはなんだ?」

「気になるんですか?アルさん。残念ながら秘密ですよ-」

「おい」

 

魔王の呼びかけを無視し、ルシエラは部屋へと戻る。その途中、誰にも聞こえない声で呟いた。

 

「思い出、ですよ」

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