インフィニット・ストラトス〜最強への道〜   作:まどるちぇ

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後半です。
一夏は鈍感を超越した存在になりつつある……。
やめなさい、一夏君!人に戻れなくなる!


第13話

 

「アホ。そらお主が悪いわ」

 

「やっぱりそうなるのか……」

 

 1025室。再び頬に紅葉を付けた一夏が、扉の前で唖然としていた。箒は多分呆れて出て行ったんじゃろうな。

 ことの経緯を聞くと、一夏が鈴との約束の意味を履き違えていたらしい。誤解を解いてやると、一夏は心底動揺し、落ち込んだ。

 

「……普通『自分の料理を毎日食べてくれ』なんて、プロポーズ以外の何に聞こえるんじゃか……」

 

「俺、てっきり料理の腕が上がっていくのを確かめて欲しいのかと思って」

 

「はあ……一夏」

 

「な……なんだよ?」

 

「女心というのはイマイチ分からんが、今回のことは全て貴様が悪い。それをまず認めろ。そして今お前のすることは、鈴に謝ることじゃ。理由が分かろうが分かるまいが、とにかく謝れ。部屋にいなかったら探せ。そして謝って、許してくれたら……」

 

「許してくれたら……?」

 

「買い物にでも誘ってやれ。それでなんとなく上手くいくじゃろ。ほら、分かったらさっさと行けい」

 

「……刃、ありがとう。よく分かんないけど、俺、鈴にスゲー悪いことしたんだな。行ってくる!」

 

 一夏の顔つきが変わる。あの時対峙した、強者の眼差しであった。一夏は部屋を駆け出し、後にはワシだけが残された。

 

「……典型的な兵士タイプだの。平時と有事の振り幅がありすぎじゃ。さて、ワシも行くとするかのう」

 

 ため息を一つ吐き、部屋を出た。

 

 

 

 ☆

 

 

 

「はあっ、はあっ、はあっ……!」

 

 走る、走る、走る。

 時折左右を見回しながら、立ち止まる。

 

「鈴!…………鈴!」

 

 大切な幼馴染の名前を呼ぶ。

 心にあるのは、後悔。

 

「俺は、最低だ……」

 

 大切な幼馴染との約束を勘違いして、それに気付かないなんて。

 

「くそっ!諦めないぞ……」

 

 ちょっと乱暴だけど、優しくて。

 ちょっとせっかちだけど、面倒見が良くて。

 ちょっと感情的だけど、それは思いやりの裏返しで。

 そんな鈴を、俺は傷付けてしまった。

 償う為ならなんだってする!だから、俺に姿を見せてくれ、鈴!

 

 

 

 ☆

 

 

 

「…………」

 

「お、ワシが先か」

 

 廊下の端。自販機の側にある椅子に、鈴は座っていた。自販機の陰に隠れるようにぴったり貼り着き、体操座りをしている。

 

「刃……」

 

 鈴の弱々しい声が聞こえる。あの時、初めて会った時のような声だ。

 

「なんじゃ、情けない声出しよって。ま、情けないのは一夏の奴じゃがな」

 

「聞いたんだ……。ムカつくよね、一夏の馬鹿」

 

「そうじゃな。あーいうのは死んでも治らんタイプじゃのう。気にすることはないぞ。気長に攻めるしかあるまい」

 

「うん……そうだね」

 

 鈴は依然として目線を下に向けたまま顔を上げなかった。

 

「……なあ鈴よ。それでもまだ、一夏のことが好きなんじゃろう?」

 

「!……うん」

 

 鈴はビクッと体を強張らせ、小さく頷く。

 

「なら、改めて気持ちを伝えてみたらどうじゃ?遠回しな言い方じゃと、一夏は分かってくれんらしいしのう。ご存知の通り唐変木オブ唐変木じゃからな」

 

「……分かってるわよ」

 

 鈴の目が、足元から離れ、遠くを見る。

 

「本当に分かっとるのか?ワシが知っとる凰 鈴音なら、惚れた男の一人や二人私の美貌で落としてやるわ!と言って立ち上がると思うがな」

 

「何よソレ!?人を色女みたいに言わないでくれる?」

 

 鈴が勢いよく立ち上がる。

 

「だはははは!その調子じゃ!……一夏は掘り出し物じゃからの。いつ、誰とくっつくかは分からんが、精々離れていかんようにしとけよ」

 

「……ありがと、刃。ちょっとだけ元気出た」

 

 鈴は目尻を指で擦り、ワシに笑いかける。

 ワシが一番見たかった笑顔で。

 

「鈴!」

 

 遠くから一夏の声が聞こえた。少しずつ足音が近づいてくる。

 

「どうやら馬鹿が来たようじゃな。馬鹿が感染ると敵わんわ。ワシは先に寝るぞ。じゃあの」

 

「う、うん。おやすみ刃」

 

 後ろ手に手を振り、その場を去った。

 

 

 

 ☆

 

 

 

「鈴!やっと見つけた……」

 

 鈴を見つけた。走り疲れて膝に手を置いて呼吸する。鈴は腕を組んだままそんな俺を見ていた。

 

「……何か用?」

 

「ゴメン!俺、鈴との約束勘違いして、軽い気持ちで返事して!もっと、よく考えて答えなきゃいけない約束だったんだよな?ゴメン!本当にゴメン!ゴメンナサイ!」

 

 土下座。自然とこの姿勢になった。心から申し訳ないと思うと、やはりこんな姿勢になるんだろうか。

 

「……ぷっ!謝りすぎ!もういいわよ、気にしてないから」

 

 見上げると、鈴は笑っていた。

 良かった。そう思うと身体中の力が抜けた。

 

「いや、本当に悪い。結婚なんて、中学生の頃に決めるべきじゃないよな。鈴の冗談を真に受けた俺が悪かったよ」

 

「…………は?冗談?」

 

「だって、中学生だぜ?そもそもプロポーズの前に告白があるだろ!ってツッコむところだったんだよな!俺ってば冗談で言ったのを真に受けてたと思ったら更に勘違いまでしてるんだもんな!そりゃ鈴も怒るよ、うん!」

 

「……なんっっにも分かってないじゃない!このヴァカ一夏!」

 

 パッシィィィィン

 

 

 

 ☆

 

 

 

「……いや、ワシの説明のどこをどう聞いたらあの結論に至るんじゃ?分からん頭しとるのうアイツ……」

 

 余談じゃが、一夏の頬の腫れは三日続いたという。

 

 

 

 ☆

 

 

 

「え!?稽古は中止!?」

 

 翌日、放課後。

 生徒会室に行ったワシを待っていたのは、破門の通知であった。生徒会メンバー全員が忙しなく動いている。本音は相変わらずであったが。

 

「ゴメンね。これから行事の打ち合わせとかで忙しくなっちゃうの。セシリアちゃんには勝てたし、特訓は一旦終了ってことで、ね?」

 

「むう……仕方ありませんのう。そもそも無理を言って付き合ってもらっていた訳ですし。これからはセシリアや一夏と模擬戦でもすることにします」

 

「そうしてちょうだいな。手が空いたらまた再開してあげるから」

 

 師匠改めて楯無先輩はそう言うと、再び書類に目を通し始めた。

 

「では、失礼しました」

 

 そう言って生徒会室を出る。

 

「本当にここにいた」

 

 生徒会室の外には、何故か鈴が立っていた。

 

「鈴?どうしたんじゃこんなところで」

 

「それはこっちのセリフよ。一組の……セシリアさん、だっけ?に訊いたら放課後はここに足繁く通ってるって聞いたからね」

 

「あーなるほど。それで?ワシに何の用だったんじゃ?」

 

「聞いてよ!一夏ったら私との約束を勘違いしてたのを勘違いしてたって言うか!とにかく、全然分かってなかったのよ!」

 

「ああ、一夏か……。アイツのそういうとこは死んでも治らんと言うただろう?ストレートに告白したらどうじゃ?」

 

「なっ!?な、こ、告白……なんてそんないきなり……できるわけにゃいでしょ!?」

 

 鈴は赤くなって俯く。噛んだのが恥ずかしかったのか、それとも……。

 

「かあー!罪作りな奴じゃのう一夏は。こんなに慕われとるのに気付かんのか?」

 

「……刃もあんまり人のこと言えないと思うけど?」

 

「そうかのう?人の好意には敏感なつもりじゃったが?」

 

「はあ……。まあいいわ。それで、一夏の奴をボッコボコにしてやりたかったんだけど、クラス代表はアンタになったらしいじゃない?」

 

「ん?まあ、そうじゃの。次のクラスリーグマッチもワシが出るし」

 

「そうよね。という訳で、そのクラスリーグマッチでアンタボコボコにするから、覚悟してなさい」

 

「はいはい……ん!?え?何でじゃ?」

 

 明らかに論理的でロジカルなロジックが欠如しておったぞ。

 

「アンタ、一夏になんか吹き込んだでしょ?普段のアイツと挙動が違ったもの」

 

「ぐ。あんの大根役者め……」

 

「乙女心を計算で弄ぼうとした罰よ。来週のクラスリーグマッチ、楽しみにしてなさいよね」

 

 それだけ言って鈴は去っていった。相変わらずのハリケーン娘じゃこと。

 

「……退屈せんのう」




セシリアが刃の居場所を素直に教えるのだろうか?
まあいいや。次からが正念場だし。
次回予告
ついに始まるクラスリーグマッチ。やる気満々殺気ムンムンの鈴と、巻き込まれてやる気ダダ下がりの刃であった。が、鈴の強さを知った刃は態度を一転、より修行に熱中していくのであった。そして、決戦の火蓋は落とされる……。
次回【殺られる前に殺れ】
来週もまた見てくださいね〜。じゃん、けん、ぽん!(グッチョッパ)
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