インフィニット・ストラトス〜最強への道〜   作:まどるちぇ

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投稿ペースを少し落とします。
やっぱ寝かせないとコクは出ないってはっきりわかんだね。
さあ、アリーナ救出編スタート!


第16話

 

 試合が始まる少し前。

 

「暴走?」

 

「そうじゃ。もし暴走したら、ワシを止めてくれ」

 

 控え室から少し離れた場所にセシリアを呼び出し、一夏戦での暴走の一件を話した。

 

「一夏に聞いた話じゃと、『八極の黒い装甲が白い装甲を侵食する』のが目印らしい」

 

「は、はあ……」

 

 セシリアは訳がわからないといった風に首を傾げる。

 

 

 

 ☆

 

 

 

「一目見て分かりましたわ。暴走というのがどんなものか……」

 

 セシリアが戦慄したように呟く。

 

「ありがとの、セシリア。お主ならすぐに止めに入ってくれると信じておったぞ」

 

「こ、これくらい当然ですわ!」

 

 そう言ってそっぽを向くセシリアの表情は心なしか嬉しそうじゃった。素直に喜べばいいのに……。

 

「さて、と。セシリアと鈴。お主ら2人にアレを任せてもいいかの?」

 

「?それは多分大丈夫そうだけど……アンタはどうすんのよ?」

 

「どうやら観客席が混雑しとるようじゃからな。けが人がでないように誘導したい」

 

 観客席はシェルターで覆われている。中は見えなくてもパニックになっていることが容易に予想できる。

 

「別に刃さんが行かなくても……」

 

「アリーナは今閉鎖されておる。この場で動けるのはワシらだけなんじゃ。頼む!ワシに行かせてくれ!」

 

 あのままでは二次災害に繋がりかねん。それに、あの中には一組の生徒が大勢いる。見て見ぬフリはできん。それに、鈴との戦闘でシールドエネルギーの大半を費やしたワシが残るよりは2人に残っていてもらった方がいい。

 

「……分かったわよ。こっちは何とかしとくから行ってきなさい」

 

「ああ。ありが」

 

「ただし!」

 

 鈴が人差し指をビシッと上に掲げる。

 

「な、なんじゃ?」

 

「絶対に冷静でいなさい。特に避難中の人間は自分のことしか考えてないからね」

 

 そう言う鈴の表情は複雑だった。

 きっと、その手の何かがあったんだろうとワシは思ったが、今はそれどころではないと雑念を消した。

 

「……分かった。約束する」

 

 それだけ言うと、釣魚の鏃を日輪に変換する。

 

「うおおおお!」

 

 まずはアリーナのバリアに攻撃する。一撃目で亀裂が走り、二撃目でバリアが割れた。

 

「もういっちょ!」

 

 そのままの勢いでシェルターを突き破る。

 

「こ……これは!?」

 

 

 

 ☆

 

 

 

「さて。セシリア、だっけ?イギリスの代表候補生の」

 

「ええ。貴女は凰さん、でしたわよね?」

 

 セシリアが敬遠気味に鈴に応える。

 

「鈴でいいわよ。そっちのが短くて呼びやすいでしょ?」

 

 鈴が軽くウインクを飛ばす。

 

「そんなことより、あの機体を沈静化しませんと……」

 

 敵ISは静止しているが、停止した訳ではない。隙を見せれば襲ってくるかも知れない。

 

「分かってるわよ。でも、何か変なのよね、あの機体」

 

「ええ。全身装甲のISなんて……」

 

「それもそうだけど。ほら、私達が会話してる時は襲ってこないじゃない?まるで、私達の会話を聞いてるみたいな」

 

 鈴がそう言って敵ISを見ると、確かに会話に聞き入るようにこちらを見ていた。

 

「確かに……。貴女!何者なんですの?」

 

 シーン…………

 

「完全無視ね」

 

「ぐぬぬ……」

 

 セシリアは悔しそうに唇を噛む。

 

 

 

 ☆

 

 

 

「な、なんという……」

 

 観客席に入り、絶句した。

 

「う、うう…………」

 

「痛いよ……」

 

「開けて!開けてよ!」

 

 人の波に踏まれたのか、倒れて動けないでいる者。

 同じく足や腕を押さえて蹲っている者。

 扉に縋り付く者。

 

「これが……人間か」

 

 知っていた。

 知っていたつもりだった。

 知らなかった。

 

「ワシは……無知じゃな」

 

 八極を解除する。自然と握る拳に力が入った。

 怒り?憎しみ?そんなものでは無かった。

 

「情けないのう……」

 

 ただただ、虚無感。何に?この状況?人間の脆さ?違う。

 

「ワシは、こんな時に何をすれば良いのか分からん……」

 

 初めて遭う、絶望。

 対処すべき問題に対して、自分の無力さを痛感する。想像を絶する状況に、思考が処理を止めようとする。

 

「ぎ、ぎんぎん……?」

 

 その声に、はっとする。

 

「本音……?本音か!?」

 

 声の主を探す。

 

「こっち……」

 

 ようやく見つけた。本音は足を挫いたらしく、右足を押さえながら涙ぐんでいた。

 

「本音!大丈夫か!?」

 

 駆け寄る。が、それからどうするともなく立ち止まった。

 

「う、うん。ちょっと誰かに踏まれただけだから」

 

「そうか。さ、捕まれ」

 

 肩を貸そうとすると、本音は首を横に振った。

 

「わ、私は大丈夫だから。他の人を」

 

「本音……!」

 

 再三見る。強い目。他者を思う、強さ。

 

「……ワシは」

 

 何を迷う?何を思う?何をチンタラしておるんじゃ!

 

「おおおおおおおお!」

 

 ガンッ

 

 観客席の椅子を、思い切り殴りつける。

 

「ど、どうしたの?」

 

 本音が驚いたように体を強張らせる。

 

「……もう大丈夫じゃ、本音」

 

 深呼吸を、一つ。

 助けるのじゃ。皆を。例え出来なくても、最後まで諦めるものか。

 

「待っておれ、本音。ワシがなんとかする」

 

 覚悟を決め直す。弱くても、情けなくても。強いと思い込む。できると信じ込む。

 

「助けるぞ。お主も、他の者もな」

 

 それだけ言って、立ち上がった。

 

「えへへ……。ぎんぎんカッコイイ」

 

「ぎんぎんはよさんか、本音」

 

 本音に微笑みかけて、ワシは出入り口へと向かった。

 

 

 

 ☆

 

 

 

 出入り口は凄惨な状況だった。

 

「落ち着け!扉はロックされとる!押しても引いても開かんぞ!」

 

 誰もワシの言葉を聞こうとはしなかった。

 

「ええい!こうなったら八極で扉をぶち破って……」

 

『絶対に冷静でいなさい。特に避難中の人間は自分のことしか考えてないからね』

 

 鈴の言葉が脳裏をよぎる。今、扉を破壊すれば、近くの者に破片が飛んでしまうじゃろう。

 

「……よし」

 

 思い切り息を吸う。

 

 

「いい加減にせんかダァホ!」

 

 

 ビリビリとその空間が揺れる。生徒達が鎮まり返り、こちらを見た。

 

「自分だけ助かろうとするな!友を突き飛ばして生き残った先の人生は楽しいか?生きていてよかったと思えるか?まずは倒れている仲間に肩を貸してやることから始めろ!」

 

 女子生徒達がザワめきだす。

 

「この扉はワシが開ける!じゃから皆は友達の安否を確認するんじゃ!さあ、早く!」

 

 ワシの声に、女子生徒達は蜘蛛の子を散らすように観客席を見て回り始めた。

 

「よし。後は……」

 

 防護扉の方を向き、八極を呼び出す。

 

「ワシの出番じゃな」

 

 すぅーっと息を吸い、ゆっくりと吐き出す。決意、覚悟、信念……。様々なモノを、槍と共に握る。

 

「……太公槍衝!」

 

 一点を突き崩す。

 

「ぐ、う、うおおおおお!」

 

 バギン

 

 かなりの厚さだったが、全力の一突きの前に扉は切り裂かれた。

 

「やった!これで出られる!」

 

「ありがとう柳君!」

 

 女子生徒から歓声が上がる。

 

「さあ!最後まで他者を気遣って行動するんじゃ!落ち着いて、速やかに行動せよ!」

 

 ワシの号令で女子生徒達は列を成してアリーナを出て行った。

 

「……よし!ワシも戻るとするか!」

 

 女子生徒が一人もいなくなったのを確認し、自分が突き破ったバリアから再びアリーナ中央に戻る。

 

「……ありがとうの、本音」

 

 

 

 ☆

 

 

 

「遅かったわね、刃。こっちは片付いたわよ」

 

「そちらは問題ありませんでしたか?」

 

 アリーナ中央に戻ると、鈴とセシリアが敵ISを鎮圧し終わっていた。

 

「こっちは全員避難完了じゃ。流石は代表候補生。仕事が早いのう」

 

「へへーん!あったり前でしょ!」

 

「刃さんは代表候補生を甘く見過ぎですわ!確かに、戦績はあまり良くありませんけど……」

 

「さて。それじゃあ搭乗者とご対面してみるかの」

 

 そう言って沈黙している敵ISに近付く。

 

 キュゥゥゥゥン……

 

「!刃!そいつまだ動いてる!」

 

 敵ISの左腕が上がり、砲口が光る。

 

「くっ!黒ほ……」

 

 直後に、強い光。

 真っ白な世界の中、ワシは何かを掴んだまま、意識が遠のいていった。




とりあえず次で一旦区切ります。
シンフォギアのssを無性に書きたくなったからね、仕方ないね。
次回予告
危機は去った。刃は己の無力さを痛感し、また一つ大きく成長したのだった。
しかし、目を覚ました刃の目の前には、4人の少女が……。
次回【修羅場デート】
刮目して次回を待て!
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