インフィニット・ストラトス〜最強への道〜   作:まどるちぇ

22 / 35
ちまちま書いてたら5000字超えてた。
金髪に囲まれる刃に盛大な爆発をお贈りください。


第21話

 

 屋上には先客がいた。一夏、箒、鈴、シャルルだった。箒と鈴は分かるがシャルルは……一夏が連れてきたんじゃろうな。2人に同情の苦笑を贈っておく。

 

「あら。一夏さん達も屋上でランチを?」

 

「ああ。私が誘ったのだが……」

 

「た、大変ですわね」

 

 セシリアも苦笑で応えるのが精一杯のようじゃな。

 

「どうせなら皆で食うか。と言っても、男性陣は何も作ってきておらんが」

 

「仕方ないわよ。私らが勝手に作ってきたんだし。あ、刃は私の料理初めてだっけ?分けたげる」

 

「鈴の中華料理はどれも美味いんだ!刃も病みつきになるぜきっと!」

 

 一夏の一言で鈴の機嫌が良くなった。ニヨニヨとした顔でいそいそと紙皿に酢豚をよそう。

 

「他の皆は何を作ってきたんじゃ?」

 

「私は和食のものをいくつか……すまない。多めに作ってきたが全員で分けると少なくなってしまうな」

 

 箒はふたつの弁当箱をしょんぼりと見つめる。本来は一夏だけの為に作ったんじゃろうな。

 

「ふむ。ならばじゃんけんで勝った奴が箒の弁当箱にありつけるということにしよう。ちゅーわけで男性陣集合!」

 

 シャルルと一夏を招集し、じゃんけんを始める。シャルルはワシの計画を察知し、一夏の手元を注視した。

 

「じゃん……」

 

「けん……」

 

「ぽん!」

 

 結果は一夏の一人勝ち。一夏は先の競走での雪辱を多少は晴らせたのか「悪いな」と笑っていた。箒もそれを見てホッと胸を撫で下ろしていた。デカい。

 

「ジンサン?ドコヲミテイルノカシラ?」

 

「ドコモミテナイヨー」

 

 最近セシリアのワシの視線に対する感度がハイパークリアセンサー並になってきおる。

 それはさておき、箒の純情を無駄にせずに済んだ。ナイスシャルル。お互いにサムズアップで讃え合う。

 

「あ、ぎんぎん達だ〜」

 

 そんなことをしていると、屋上のドアが開き聞き慣れた声が。

 

「おう。いつもの3人か」

 

 ドアからひょっこり本音が。続けて相川さんと鷹月さん。

 

「鷹月さん。さっきはどうも」

 

「いいっていいって。私保健委員なんだし。それよりみんなでお弁当?私達も混ぜてよ!」

 

「あ〜〜、ワシは構わんが……」

 

 女性陣をチラリと見ると、諦めたように肩を竦めた。

 

「よし!では全員で食おう!ご馳走じゃな!」

 

「やった!ぎんぎんの隣げっちゅ〜♪」

 

「あはは、両手に花だね刃」

 

「じゃあ私等は……」

 

「デュノア君の両隣ゲット!」

 

 そう言えば綺麗に男1:女2か。全員が両手に花とは。楽しいランチになりそうじゃ。

 

 

 

 ☆

 

 

 

 箒の計画した昼食は予想外の大所帯となった。しかし箒の胸中には、一夏と2人きりの時間を奪われた悲しみよりも強い感情が芽生えていた。

 

(こうして大人数で楽しく食事を摂るのは何年振りだろうか……?)

 

 箒は一夏と別れてからずっと孤独だった。

 重要人物保護プログラムによって箒は『篠ノ之束の関係者』として丁重に扱われた。それは箒を守るために束が渋々承認したものであったが、箒にしてみれば天才の姉がいるせいで一夏はおろか友人らしい友人を作ることも許されず全国を転々とした。

 しかしIS学園には特記事項というものが存在する。それによって箒は保護プログラムを外れ、IS学園という新たな機関に保護されるようになった。

 初めは寡黙で口下手な自分には同年代の女子のテンションが合わないだろうと箒は思っていた。実際、騒がしさに多少の煩わしさを感じる部分もあった。

 しかし、一夏と再会して全てが変わった。一夏がIS学園に来ることなど想像だにしていなかった箒は大層狼狽した。女性のみが操縦できるIS学園に、男性が。そしてそれが自分の初恋の人。まるで奇跡や運命のように吸い寄せられたのだ。

 この機を逃してなるものか。そうして一夏に振り向いてもらえるよう躍起になる姿は、同年代の女子のソレと遜色なかった。箒はいつの間にかクラスに溶け込むことができていたのだ。

 

(ありがとう、一夏。ありがとう、皆)

 

 箒の屈託のない眩しい笑顔に、一夏は人知れず心臓の鼓動を一拍速くしていた。

 

 

 

 ☆

 

 

 

「まずっ」

 

 賑やかな昼食のひと時は、ワシの一言で破られることとなった。

 セシリアのサンドイッチを一口もらう。オーソドックスな卵サンドだった。

  しかし口に入れた瞬間、大量の羊羹を口に捻じ込まれたかのような不愉快な甘味に蹂躙された。いや、陵辱と言っていい。見た目とのあまりのギャップに、思わず口を突いて出てしまった。周りが「やべーぞ」という空気でワシとセシリアを見る。

 

「んなっ!」

 

 セシリアは立ち上がり、ひくひくと肩を強張らせる。余程自信があったのじゃろう。何故これで自信を持てたかは謎じゃが。

 

「なんかこう、甘い。尋常じゃないくらい。セシリア、これちゃんと味見したのかの?」

 

「そ、そんなもの必要ありませんわ!完璧な調理法を施せばそのような不要なプロセスは……」

 

「ん。食うてみい」

 

 そう言って卵サンドをセシリアの口に運ぶ。

 

「こ、これは間接キ……んっん!そこまで言うのであれば食べてあげないこともなくてよ!」

 

 セシリアは何事か呟くと卵サンドを食べた。しばらく誇らしげに咀嚼していると、みるみるうちに顔から血の気が引いていった。

 

「……な?」

 

 セシリアは力なく頷いた。その場にへなへなと座り込む。

 

「これは完璧な調理法を施して作ったとは思えんな。セシリアや。今後調理する時はワシが一緒に作ってやるから必ず呼べ。いいな?」

 

「はい……。こんな筈ではありませんでしたのに……でも、怪我の功名ですわね」

 

 セシリアはどんよりしていたかと思えば急に立ち直ってガッツポーズした。面白い奴じゃ。

 

「しかしこれだけ作って残すのは勿体ないの。これはワシが責任を持って食べようぞ」

 

「で、ですが刃さん!」

 

「食うかい?」

 

「いや、それは……」

 

 賢明な判断じゃ。ワシは懸命にこのサンドイッチのようなものを食すとしよう。

 

「この卵サンドあま〜い。確かに見た目に比べれば変だけど、そういうお菓子って思えば美味しいよ!」

 

 本音がいつの間にやらつまみ食いしていた。意外に好評のようじゃ。確かに甘菓子と捉えれば食えなくはないか。

 

「ほんとだ。見た目とのギャップでかなりビックリするけど味はそれなりだね。日本のアンコって奴に近いかも」

 

 なんとシャルルも一切れ齧った。勇者め。

 こうして一人、また一人とセシリアのサンドイッチに手を伸ばした。一夏が何気なく手に取ったトマトサンドは火を噴くような辛さだったとか。唯一マシだったのはチキンサンドじゃが、これも異様なまでのコク深い味だった。なんというか、ミソとデミグラスソースを足して2をかけたような味だった。味蕾が爆発し、脳がエンドルフィンをドバドバ出しているのが分かる。これが麻薬料理か。

 セシリアは終始申し訳なさそうにしつつも、徐々に減っていくバスケットを見て少し自信を取り戻した。

 

「今回は『少し』失敗してしまいたしたが、次回は皆さんの舌を唸らせる極上の一品を作ってみせますわ!」

 

 唸らせるというか、捻じ切らせる恐れが。

 

「ワシもついとるから安心せい皆の衆」

 

 全員がワシを憐れみの眼差しで見た。可哀想だけど、これから精肉されてお肉屋さんのディスプレイに並べられるのねって感じの目だ。

 各々の弁当箱が空になり、片付けを始める。一夏は箒や鈴に料理の感想をアレコレと言っていた。2人が上機嫌なのを見ると上手くいったらしい。よかったよかった。

 

「ねえねえ!今度はちゃんと待ち合わせしてさ!みんなでお弁当作ろうよ!」

 

 相川さんの提案に、皆も乗り気なようじゃった。特に箒。

 

「うむ!次は皆の分も作ってこよう!一夏にも大好評だったしな!」

 

「まだまだ中華のレパートリーはあるよ!皆を凰飯店の虜にしてあげるんだから!」

 

「うんうん!楽しみだね〜!」

 

 がやがやと会話しながら教室へ戻る。なんか、青春て感じがしてええのお。

 

「青春じゃなー」

 

「ぷっ!刃、今のなんかお爺ちゃんみたいだぜ?」

 

「僕もそう思った。刃って妙に老成した雰囲気あるし、本当はお爺ちゃんなんじゃないの?」

 

 失礼な。お主らと同じピチピチの15歳じゃ。

 まあ、人生経験は他人より豊富なような気はするが。

 

 

 

 ☆

 

 

 

 午後の授業を終え、ホームルームの終わりに山田先生がセシリアに話しかけてきた。

 

「オルコットさん。お引越しです」

 

「はい?」

 

 セシリアは突然のことで呆気に取られる。ワシもさりげなく近付いて話を聞くことに。

 シャルルの部屋割りの為にセシリアは他の部屋へ移動になるのだとか。なんでも学園側がスペースを捻出してくれたのと、自宅の近い寮住みの生徒に無理言って部屋を空けてくれたのだとか。

 

「なんだか優遇されてるようで肩身が狭いですな」

 

「仕方ないですよ。オルコットさんはイギリスの代表候補生。柳君は日本で2人目の男性IS操縦者なんですから」

 

 日本で、か。我が国も必死だの。いや、一番気が気でないのはフランスさんか。

 

「とにかく空いた部屋に移ってもらいます。男女がいつまでも同室というのは不健全ですからね」

 

 今更何を。と心の中で思っておく。

 

「仕方ありませんわね。先生の言うことにも一理ありますし。刃さん、今日でお別れですわ」

 

「何を大袈裟な。飯と学校では顔を合わせるじゃろうに」

 

「それはそうですけど……もう!刃さんは乙女心が分かっていませんわね!山田先生!早く済ませてしまいましょう!」

 

「は、はい!」

 

 こらこら。山田先生に当たるな。

 そんなこんなでセシリアはさっさと荷物を纏めて部屋を出て行った。妙に豪華な姿見や化粧台が無くなると、なんとも殺風景な部屋じゃの。やはり2人が1人になるというのは少し寂しい。いや、ずっとこのままが不味いのも分かってはおるが。

 

 コンコン

 

「刃?デュノアだけど。入ってもいいかな?」

 

 セシリアが部屋を出てすぐにドアがノックされた。シャルルか。……そうか、シャルルか。

 

「おう。構わんぞ」

 

「お邪魔しま〜す。へえ、結構片付いてるんだね。もっとゴチャゴチャしてるかと思った」

 

 シャルルは部屋の周りをキョロキョロ見回しながら入ってきた。空いているベッドに荷物を乗せる。

 

「わ。いい匂い。そう言えばついさっきまでセシリアさんが使ってたんだっけ?」

 

「そうじゃ。今夜はその匂いを堪能できるぞ。この幸せ者め」

 

「そ、そんな変態ちっくなことはしないよ……」

 

 シャルルは顔を赤らめてそっぽを向く。

 

「男なら普通するもんなんじゃがなあ」

 

「そ、そんなことするの!?刃のえっち!」

 

 何をそんなに怒ることがあるのか。シャルルは変な奴じゃな。

 

「まあセシリアの匂いを堪能する機会はこれまでに何度かあったしのお」

 

「そ、そうなんだ……。進んでるんだね」

 

 シャルルは見る見るうちに茹でダコのような顔になっていく。何を想像しているのやら。

 とりあえず茶を淹れ、2人で椅子に座った。

 そろそろ本題に入ろうか。

 

「はあ〜……これがグリーンティーかあ。なんだか不思議な感じだね」

 

「紅茶とはまた一味違うじゃろう?茶葉を発酵させるかどうかでかなり違うの」

 

 しまった。ついお茶の話に花が咲きかけてしまった。ええと、本題に……。

 

「刃はよく飲むの?」

 

「おう。コーヒーも紅茶も緑茶も飲むぞ。日本には色々と種類があるしの」

 

 い、いかん。本題に。

 

「へえ〜。あ、ほうじ茶ってのも飲んでみたいかも」

 

「任せろ。明日淹れてやろう」

 

 ほ、本題に……。

 

「ありがとう!僕楽しみだな!」

 

「う、む。期待して待っとれな!」

 

 負けました。笑顔がズルい。

 こうして話を持ち出す隙もなく夕食の時間になった。部屋を出るとセシリアが待っておった。

 

「お、すまん。待たせてしまったか?」

 

「ご冗談を。刃さんのお腹の空く時間は把握しておりましてよ」

 

 なにそれすごいこわい。

 まあ何ヶ月も同居しとればなんとなく分かるものか。ワシは分からんけど。

 

「すごいや。まるで夫婦みたいだね」

 

「ふ、ふふふふ夫婦だなんてそんな!デュノアさんはお上手ですわね!」

 

 セシリアはそう言ってバシンバシンとシャルルの背中を叩く。痛そう。

 

「さ、参りましょう」

 

 セシリアは当たり前のように腕を絡めてくる。そう言えばデートの後はずっとこんな感じじゃったか。完全に無意識じゃったわ。

 

「えへへ。見せつけてくれるね」

 

 シャルルは嫌味のない笑顔で囃し立てる。こうまで無邪気だと逆に怖い。

 

「どれ、シャルルにもやってやろう」

 

 そう言ってシャルルの腕を取ってセシリアが絡めてきた腕とは逆の腕に収める。

 

「わわ!いいってば!そういうつもりで言ったんじゃ……」

 

「デュノアさん!何を赤くなってますの?くっ!まさか性別を超えたライバルが登場するとは……」

 

「セシリアさんも勘違い……刃のバカ〜!」

 

「だーはっはっは!飯じゃ飯じゃ!」

 

 威風堂々に食堂に付くと織斑先生の手刀が飛んできた。避けたけど斬撃が飛んできた。マジで。




次回予告
ちゃっかりクラスの輪に溶け込んだシャルルに対し、ラウラは相変わらず周りを見下しているような態度を取る。
箒はそんなラウラに過去の自分を重ねる。
そして始まる学年別トーナメントで、とある噂が……。
様々な思惑が渦巻く中、刃に届いた謎の手紙。その送り主は……?
次回【最強とは】
お楽しみに!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。