インフィニット・ストラトス〜最強への道〜   作:まどるちぇ

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戦闘を入れると長くなりますね


第22話

 シャルルとラ……ウラが転校して早1週間が経った。気さくで誰とでも分け隔てなく話すシャルルはすぐにクラスの輪に溶け込んだ。が、もう片方はそうではなかった。

 

「…………」

 

 ラウラは腕組みをして窓の外を見ている。何かを目で追っているようだ。視線を追ってみると、その先には織斑先生が。

 

「一夏。ちょっと訊いて良いか?」

 

「?ああ。なんだ?」

 

「あのラウラとお前さん、もしくは織斑先生には何か深い関わりがあるのか?先日のことと言い、尋常では無さそうじゃが」

 

「……そうだな。何て言えばいいか」

 

 一夏は遠い目で窓から空を見上げ、ぽつぽつと語り出した。

 第2回モンド・グロッソにて織斑先生が棄権した理由。そしてその為にドイツ軍に教官としてISの訓練を施したこと。話している内に頭の中から滲み出すような痛みが湧いたが、真剣に語る一夏の話を最後まで聞いた。

 

「なるほどの。少し嫌なことを思い出させてしまったか?」

 

 自身が誘拐された時の記憶を語ってくれた一夏はその視線を徐々に落としていく。

 

「いや。まあ、ちょっとな……。でもいいんだ。あの時のことがあったから、俺は強くなりたいって思えるようになったんだ。千冬姉みたいに。千冬姉を守れるくらいに」

 

 一夏は落とした視線を持ち上げ、強く空を睨む。対峙した時と同じ、強者の眼差し。

 

「そう、か。ならば、益々強くならんとな……」

 

 断続的な頭痛に意識を揺さぶられる。座ったままの姿勢を保つのがやっと。

 

「大丈夫か?また頭が痛むのか?」

 

「ああ。何やら脳の奥をガンガン叩かれるような感覚じゃ……次は座学か。少し休むとするかの」

 

 フラフラと立ち上がり、保健室へ向かおうとする。覚束ない足取りにクラスの皆が心配そうにざわつく。

 

「柳君。大丈夫?また付き添ってあげようか?」

 

「鷹月さん。心配には及ばん。少し寝れば楽になるじゃろう。皆も騒がせてすまんの」

 

 なるべく元気に振る舞い、教室を出た。一体何だというんじゃまったく。忌々しい頭痛めが。

 

「や、柳君大丈夫ですか?」

 

 壁伝いに廊下を歩いていると山田先生が声をかけて来た。

 

「ええ。少し頭が痛むだけですので。すみませんが、保健室へ……」

 

「なら、私も同行します!生徒の無事を見届けなければ教師失格ですもんね!」

 

 山田先生は何やら張り切ってガッツポーズをする。その度に揺れる大きな果実は非常に目に毒なんじゃが。

 

「いえいえ。先生は早く教室へ。ワシのせいで皆の授業を遅れさせる訳には行きますまい。生徒全員のことを考えるのも教師の務めでは?」

 

「それは、そうですが……くれぐれも無理はしないでくださいね?今日は実習もありませんし、しばらく休んでいて構いませんよ?柳君の成績は先生バッチリ把握してますからね」

 

 山田先生は少し迷ったがワシの言い分を通してくれた。最後のウインクがとてもかわいらしかった。

 

「では、ワシはこれで」

 

「あ、そうだ!いけない忘れるところでした」

 

 山田先生はパンと手を打ってポケットから一通の手紙を差し出した。

 

「?ラブレターならまた今度に……」

 

「ちちち違います!教師と生徒でそんな……えっと!椿重工からの手紙です!一応、八極の製造元になっている所なんですが」

 

 そうか。あの叔父も相当な節介焼きじゃな。

 ところで、そろそろ頭痛に耐えるのも限界なんじゃが。

 

「そうですか。取り敢えず受け取っておきます。詳しい話はまた後ほどで」

 

 手紙を受け取り、フラフラと保健室へ向かった。山田先生が背後で心配そうに立ち往生していたが、予鈴を聞くと覚悟を決めて教室へと歩き出した。それでいい。1人より皆を。

 

 

 

 ☆

 

 

 

 保健室に着くと先生が「またか」という顔で出迎えてくれた。本当に何度もすみません。

 

「最近増えたわよね?梅雨が近いせいかしら?持病でもあった?」

 

「いやあ心当たりがありませんな。よっこいせ」

 

 ベッドにありつく。ふかふかで優しい。

 

「一体何が原因なのかしら……一度大きな施設で診てもらった方がいいんじゃない?」

 

「そうですなー……心当たり、か」

 

 頭痛の原因は分からない。が、シャルルとラウラが転校してきた日に起き始めた。シャルルは問題ない。となると……。

 

「あー……いいや、寝よう」

 

 頭痛で上手く思考がまとまらない。いつも一眠りすれば治るし、取り敢えず寝るとするかの。

 意識を暗闇に手放す。

 

 

 

 ☆

 

 

 

「お姉ちゃん?泣いてるの?」

 

 暗闇に響く少年の猫撫で声。

 

「ごめん、ごめんね刃ちゃん……怖かったね。痛かったね」

 

 少女の啜り泣く声。体に暖かい圧迫感が訪れる。

 

「俺は平気だよ。お姉ちゃんが撃たれなくて良かった……。お姉ちゃんのおっぱい柔らかいね」

 

「ぐすっ……ふふっ。人がこんなに心配してるのに。刃ちゃんは相変わらずおっぱい星人だなぁ」

 

 少女の声が暖かくなった。眼には見えないが、きっと笑顔になってくれたんだろう。

 

「お姉ちゃんは俺が守ってあげる。だから安心して…………を続けてね」

 

「うん、うん……!刃ちゃんは世界で最強になるんだもんね!お姉ちゃんを守ってくれるんだもんね!」

 

 再び暖かく柔らかい何かに締めつけられる。

 

「大丈夫。大丈夫だから……もう、泣かないでね。お姉ちゃんが泣いてたら、多分俺も泣いちゃうから」

 

 少年と少女はそう言って笑い合った。笑い声がどんどんと遠くへ消えて行く……。

 ああ、そうか。あの時ワシは。

 

「早速君の遺伝子を私の新作に移植させて貰おう。おい、C0037をこちらへ」

 

 男達の忙しない足音が遠くで響く。

 消え入りそうな音の中、男の呟きだけがぽつりと残った。

 

「そろそろ名前を考えねばな……ふむ。女型にしたし、ラウラで良いだろう。ラウラ・ボーデヴィッヒ」

 

 

 

 ☆

 

 

 

 刃が深い眠りに就いている間、箒は黒板を板書しながらラウラの方をチラチラと見ていた。ラウラは授業などそっちのけで外を眺めている。一度山田先生が当てた時も視線を動かすことなく正解だけ淡々と述べた。その態度に気を悪くする生徒もチラホラ出ているようだが、気弱な山田先生にラウラの手綱を握るのは至難の技だということは周知だった。

 

(似ている。アイツの目は、あの頃の私に)

 

 箒は中学時代を思い出していた。

 友人を作ることを諦め、剣道に没頭した。一夏と自分を繋ぐ唯一の絆。続けていればいつか一夏に巡り会えるかも知れないという淡い期待を胸に、箒はひたすらにのめり込んだ。元よりあった才能を開花させ、3年になる頃には全国大会で優勝する腕前にまで成長していた。

 しかし、それと同時に大切なモノを失っていたことに箒は気付いた。試合を終え、涙を流す対戦相手。負けたことに悔しいとか、最後の試合となって寂しいとか、そういう涙では無かった。ただ自身の努力を全否定され、絶対的な力に抑え込まれた遣る瀬無さ。

 それは箒自身が重要人物保護プログラムというものに、天才篠ノ之 束という人物に感じた理不尽さと相違ないものだった。

 自己を高める為に一切を切り捨て、否定する。

 それが自分のやりたかった剣道か。

 それが一夏と共に腕を磨いた日々への報いか。

 箒は迷った。否、現在も迷っている。

 最強とはなんだ。何を以って最強とする?

 力とはなんだ?力とやらが一番強い者を最強というのか?

 分からない。分からないが、身近に最強と呼ぶに値する人物がいる。

 織斑 千冬だ。彼女は間違いなく最強の部類に位置する。彼女に訊けば判るのか?最強というものが。彼女に師事すれば成れるのか?最強というものに。

 

(分からない。私は、今の私は、一夏の目にどう映っているのだろう……?)

 

 一夏をチラリと見る。ノートと睨めっこしながら唸っている。

 

(ふん。馬鹿者め。そこはこの間教えてやったばかりだろう。普段から予習復習を怠るからいざという時に使えないのだ)

 

 再会した時、一夏は箒が想像していたよりも弱くなっているように感じた。

 ヘラヘラと笑い、女子の見世物になっても堂々とするどころか縮こまって黙り込んでいる。情けないと思った。

 しかし、違った。一夏は、相も変わらず織斑 一夏を貫いていたのだ。柳 刃と出会い、セシリアと闘い、鈴という旧友と再会しようとも。一夏はいつもと同じように、仲間の危機にはいの一番に動こうとする。

 

(お人好しなところは変わっていないな。全く、また私が側で支えてやらねばな……)

 

 箒はやれやれと微笑み、気を取り直した。最強とは何か。それを今すぐ知らねばならない訳ではない。強くなる為、自分はここにいるのだ。ひたむきに勉学に励めば、きっと見えてくる。

 箒は板書を再開した。

 

 

 

 ☆

 

 

 

 ゆっくりと目を開ける。保健室特有の清潔な薬品の匂いと白い視界。上体を起こし、伸びをする。

 夢の中の記憶は、ある。

 アレは間違いなくラウラとワシの過去を結びつける事件じゃ。何故忘れていたのか。いや、誰かに意図的に記憶を封印されていた……?

 あんなに激しくワシを苛んでいた頭痛も何処へやら。すっきりとした目覚めじゃ。

 

「起きた?知り合いの先生がやってる病院まだ間に合うと思うけど、予約しておく?」

 

「いえ。それには及びません。どうやら原因ははっきり分かったようですし、恐らくもう頭痛が起こることはないでしょう」

 

 早く元気な顔を皆に見せてやらんといかんしな。

 

「ふーん?確かに、なんだかスッキリしたみたいだね。あ、スッキリってまさか……?」

 

「え?下ネタの類ですか今の?」

 

 この先生、案外そっち系イケる人か。というより、ワシが元気そうだから余裕が戻ったのかも知れぬ。

 

「冗談よ冗談。さ、まだ帰りのHRには間に合うでしょ。行って、元気な顔を見せてあげなさいな」

 

「ええ。ご厄介になりました。もうなるべく来ないようにしたいですな」

 

「それを言われると複雑だけど、それがいいわ。暇な時は遊びに来てくれてもいいんだけどね」

 

 先生とそんな会話をして、保健室を出た。目指すは一路、1-1教室。アップがてら軽く走って向かった。織斑先生に見られなかったのは僥倖じゃったな。

 

「刃さん!お戻りになられましたのね!」

 

 教室は今まさにHRが始まるかというところじゃった。無駄に注目が集まる。

 

「ぎんぎんお帰り〜♪」

 

「もう大丈夫か刃?あんまり無理すんなよ?」

 

「えへへっ。じゃあ皆。せ〜のっ」

 

 \お帰り、柳君!/

 

「お、お主ら……ワシは、ワシは果報者じゃあ!」

 

 ガツン

 

「ふむ。殴り心地も申し分なしだな。異常はないらしい。ホームルームを始めるぞ。席に着け。なんだ?ニヤニヤするな気持ち悪い」

 

 織斑先生からの熱烈な歓迎を受け、晴れやかな気分で席に座る。すぐ前にはラウラが。今は織斑先生の方をじっと見つめている。

 

「……という訳で、話が中断されたが学年別トーナメントを今週末行う。特に専用機持ちは他の生徒の手本になるような試合内容を期待している。いや、はっきり言おう。無様な試合はするな。もししたら……二度とそんな試合をしなくて済むようにしてやろう」

 

 鷹の目という奴か。捕食者を目の前にした餌の気分じゃ。専用機持ちはもちろん他の生徒も萎縮してゴクリと生唾を呑む。約1名、羨望の眼差しを向ける銀髪がおったが。

 

「尚、今回の学年別トーナメントはタッグ戦だ。より広い戦略性を持たせる為、自身の特性を把握して相性の良い者と組め。個人戦に慣れた連中も良い刺激になるだろう。以上だ。解散!」

 

 織斑先生が教室を出るや否や女生徒が男性陣に群がった。一夏にはなんと二組から鈴まで参戦している。

 

「柳君!私と組もう!」

 

「私、柳君の試合映像何百回も見て研究したんだ!きっといいコンビネーションできるよ!」

 

「あはは、ぎんぎん大人気だね〜♪私もよろしく」

 

「刃さんなら言うまでもなくこのイギリスの代表候補生セシリア・オルコットとタッグを組むことが最善の選択だと分かっていますわよね?私と刃さんの最強コンビで他のタッグなど蹴散らして差し上げましょう!」

 

 \よろしくお願いします!/

 

「うーむ。タッグかあ」

 

 考えたことなかったの。八極の性能からして遠距離砲を持つセシリアは確かに相性は悪くないか……。しかしフレンドリーファイア怖いのう。

 

「じ、刃!どうするよお前?」

 

「うひゃあ。女子のパワーってすごいねえ」

 

 一夏とシャルルが堪らずこちらに避難してくる。男同士なら遠慮なく互いにやりたいことやるだけで済んで楽なんだが。如何せん3人おる。ええい面倒な。

 

「じゃんけんで負けた奴が他の女子と組もう」

 

 なんとなくそう言うと、一夏とシャルルの目つきが変わった。

 

「いいのかよ?この間俺に負けたばっかなんだぜ?」

 

「負けられない闘いがそこにある!って奴だね!僕もあの群れに飛び込む勇気は無いから頑張るよ!」

 

 おお。露骨にやる気出しおって。というかシャルルが微妙に毒舌。

 さて、どうしたものか。

 勝敗はある程度操作できる。一夏に勝つなり負けるなりすればシャルルがあいこにしない限りはなんとでもなる。問題は、その結果がどうなるか。

 ①一夏が負ける場合。

 ワシはシャルルと組んで終わり。一夏は箒か、他の誰かと組めばいい。相性的には鈴がいるとバランスがいいか。

 ②ワシが負ける場合。

 一夏とシャルルのタッグ。組み合わせ自体は無難じゃが、ワシとのタッグで角が立つ。

 ③シャルルが負ける場合。ワシが一人勝ちしてその後2人がじゃんけんをすることになるな。前回の芸当からシャルルが自分から負けることはしないと思うが。

 う〜〜〜〜〜〜む。圧倒的①。一夏よ、強く生きよ。

 

「じゃん」

 

「けん」

 

「「「ぽん」」」

 

 一夏のグーは2人のパーによって包み込まれた。

 

「マ、マジかよ……」

 

「すまんな一夏。骨は拾ってやる」

 

「ご、ゴメンね一夏」

 

 一夏はがっくりとその場にorzした。固唾を飲んで見守っていた女子は項垂れる一夏を取り囲んだ。リンチか何かか?

 

「全く!私と組まなかったことを後悔させてあげますわ!」

 

「でゅっちーとぎんぎんのコンビか〜。中々強敵だね」

 

 セシリアは不満気で、本音はそこまで落ち込んではいないようじゃった。まあ簪あたりと組むじゃろ。それはそれで中々厄介な組み合わせか。

 

「何にせよ、これからパートナーじゃ。よろしくな、シャルル」

 

「うん!こちらこそよろしく頼むよ!」

 

 シャルルとガッチリ握手を交わす。柔らかく、華奢な手。

 ……やはり、そろそろはっきりさせておかんといかんかも知れんの。

 何はともあれ仮に決まったタッグで連携を確かめるため、一同でアリーナへ向かった。同じことを考える人間でアリーナはいつもより盛況だった。当然と言えば当然か。着替えの際にポケットに入っていた手紙を見つけたが、とりあえず後回しにすることにした。

 

「じゃあまずは軽く手合わせしてみよっか」

 

「組手か。望むところじゃな」

 

 一度シャルルとはやってみたかったんじゃよな。この間ラウラと闘った時も流してやっておったし、実力の程はまだ見えてこない。

 

「「よろしくお願いします!」」

 

 礼をして元の位置につく。互いに合図を送って開戦。日輪と月夜を展開し、接近を試みる。

 

「させないよ!」

 

 シャルルはサブマシンガンを抱えるように構え、威嚇射撃を交えながら距離を取る。

 

「ほいっと」

 

 タン

 

「!消え」

 

「双日輪【煌牙(きらめき)】」

 

 一対の日輪を構え、縮地のスピードを活かして突進。ヒットする瞬間に二本を交差させるように斬りつける。

 

「うあっ……!くっ!」

 

 凄まじい衝撃にシャルルは一瞬硬直する。しかしすぐさま体勢を整えてワシから離れる。

 

「ふむ。ハイパークリアセンサーと言えども受容する人間の知覚を大きく上回れば撹乱することは可能らしいの」

 

「これが噂の無影縮地かい?凄いや!全く見えなかったよ!でも、同じ手は通じないからね!」

 

 シャルルはサブマシンガンを仕舞い、二丁拳銃を取り出す。近接戦に対応させてきたか。

 

「上等!」

 

 縮地は使わず、通常のブーストで高速接近する。シャルルは無駄弾を避け、同じく前進しながら数発狙い撃ちしてくる。月夜で受け流し、ダメージを軽減させる。月夜は流石に固体までは吸収できないらしい。しかし被弾時の衝撃は吸収してエネルギーに変換してくれる。実弾相手では中々効率が悪そうじゃが。

 

「はあっ!」

 

 シャルルは懐に潜り込み、拳銃のグリップ底で殴ってきた。ガン・カタかい。両手で捌きつつ、ボディがガラ空きになったところで日輪でカウンターを叩き込む。

 

「ふっ!」

 

 シャルルは両腕を弾かれた勢いを利用してその場で縦回転し、日輪をかわした。そのまま回し蹴りで日輪を蹴り飛ばす。

 

「しまっ!」

 

「隙あり、だよ」

 

 シャルルが手甲剣(ガントレット・ソード)を展開して斬り上げた。ゴッソリとシールドエネルギーを削られる。

 

「そんな武器もあるのか」

 

殻蜂(シェル・ビー)って言うんだ。こんなこともあろうかとこういうのもちゃんと用意してあるよ」

 

 シャルルが勇ましくニヤリと笑う。武装の種類もさることながら、驚くべきはシャルルの換装速度と対応力。ワシも日輪や月夜を取っ替え引っ替えするが、一度粒子化させてから持ち替える。シャルルも理屈は同じだろうが、その速度たるや。まるで1つの武器が自在に変化するかの如く。賞賛の句が尽きぬ程の才能。いや、努力の賜物か。

 

「強いのう!強いのう!そうこなくちゃ張り合いが無いわ!」

 

 釣魚の条件は整った。月夜を仕舞い、釣魚を取り出す。槍と見るに、シャルルは再び大きく距離を取った。

 

「大きな槍だね。セシリアさんを倒したのもその槍だって聞いたけど」

 

「うむ。シールドエネルギーが一定値を下回らんと出てきてくれん頑固者じゃが、性能は申し分ないぞ」

 

 釣魚を目の前で高速回転させる。実弾を多用する相手ならこちらの方が効果的やも知れんな。

 

「けど、エネルギーの差は明確。このまま押し通らせてもらうよ!」

 

 シャルルはそう言うと右手に盾を装着した。盾というよりは大きめの手甲か。殻蜂とやらとはまた違う装備のようじゃが……。

 

「そろそろ行くぞ!」

 

 タン タン

 

 縮地の途中で更に縮地を行いシャルルを撹乱する。ISが無ければGの応酬で内臓が駄目になりそうなスピードじゃ。

 

「!また!」

 

 シャルルは盾を構えず、センサーに全神経を集中させる。方向転換してきたワシに対して正確に盾を突き出した。

 

「甘い!」

 

 突き、と見せかけて途中で横回転。横薙ぎにシャルルの盾を弾く。シャルルも読んでいたのか空いていた片方の手でハンドピストルをフルバーストさせる。槍を薙ぎ無防備になった懐に全弾撃ち込まれた。

 

「ぐぅ!おおおおおお!」

 

 すぐさま突きの姿勢を取り、脚部スラスターを槍と並行にする。

 

「太公槍衝!」

 

 スラスターの出力を全開にし、最短で、最速で、真っ直ぐ、一直線な刺突を打ち込む。

 

「うわああああああっ!」

 

 凄まじい一撃に耐え切れず、シャルルは後方へ吹き飛ばされる。視界にシャルルのISのエネルギー切れが表示される。

 勝ったか。残りシールドエネルギーは……2て。かなりギリギリじゃったのう。

 

「痛たた……。負けちゃった」

 

「良い試合じゃった。久々にヒヤリとしたわ」

 

 放課後の戦闘訓練自体このところ頭痛続きで、まともにできんかったしの。シャルルを起こし、軽く反省会をする。

 

「刃は中々隙のない立ち回りだったね。遠距離武器に対する体捌きも熟知してるみたいだったし」

 

「まあ身近におる優秀な長距離砲持ちが訓練相手じゃったしの。隙のなさで言えばシャルルもかなり手強かったぞ。近・中・遠距離と万能な武器のチョイス。そして換装速度たるや目にも留まらぬとはこのことかと心得たぞ」

 

「えへへ。ありがとう。高速切替は頑張って会得したものだから素直に嬉しいよ」

 

 シャルルはそう言って無邪気にはにかむ。

 うむ。タッグマッチのパートナーとしては最高と言って差し支えない。こんなに最高のパートナーとタッグを組むのじゃ。半端な試合なぞできるはずもない。

 未だ解決していない問題はそれなりにあるが、今度の学年別トーナメント。俄然やる気が出てきたの。

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