インフィニット・ストラトス〜最強への道〜   作:まどるちぇ

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ISABが落ち着いたのでひとまず投稿


第25話

 

 翌日。いつもよりモタついた目覚めに鬱屈としながらも、何はともあれ支度をして食堂に向かう。

 シャルルの正体。そして抱える苦しみ。それを知ることができたのはいい。いいが……。

 

「お、おはようございます」

 

 セシリアがいつも通り挨拶をしながら現れる。艶やかなキューティクルを讃える金髪。宝石のような碧色の瞳。制服を優雅に着こなすスタイル。

 ……イカンな。いつもより意識してしまう。

 

「お、おう。おはよう」

 

「デュノアさんはご一緒ではありませんの?」

 

「シャルルは寝かせてある。昨日色々あって疲れとるようじゃったからな」

 

 1人にしておくのに不安もあるが、アレから寝るまでに色々考えておったようじゃし、少しそっとしておこう。

 

「そうなんですの。そ、それでは私達だけで参りましょうか」

 

「う、うむ」

 

 セシリアと並んで食堂に向かう。いつものこと。いつもの日常。だのに2人ともまともに顔を見合わせることができない。気まずい沈黙のまま食堂に着き、メニューを選んで卓に座る。今日はきつねうどん。今日もきつねうどん。

 

「…………」

 

「…………」

 

 食器の擦れる音だけが嫌に耳に残る。誰かこの空気をなんとかしてくれ。

 誰でもいいっ・・・!

 悪魔でも・・・!

 

「あれ〜?ぎんぎんとせっしー喧嘩でもしたの〜?」

 

 天使降臨。本音が何の気なしに隣に座る。

 

「いや。喧嘩ではないよ。昨日……」

 

「んっん!私たちはいつも通りですわよ。ね?刃さん?」

 

 セシリアが咳払いをしていつも通りを装う。ああ、昨日のアレはあまり広めん方がいいか。

 

「お、おう…………」

 

 合わせて顔を見合わせるが、2人ともすぐさまトマトになって明後日を向く。

 

「あやし〜ね〜。原因はせっしーにあると見た!」

 

 ご名答。こういう時本音は案外勘が鋭い。セシリアは図星を刺されて閉口する。

 

「まあ、ちょっとな。あまり詮索せんでくれると助かる」

 

「どうしよっかな〜?最近せっしーやでゅっちーとばっかで私寂しかったしな〜」

 

 ぐぬぬ。本音、恐ろしい子。

 

「……購買の限定プリン2つで」

 

「おお〜!分かってるねぎんぎん〜。お主もワルよのう〜」

 

 本音が悪い笑顔で承諾する。どっちがワルやら。

 

「あ、刃!おはよう!」

 

 シャルルが盆を持って小走りにこっちに駆け寄ってきた。

 

「おはよう。ぐっすり眠っておったようじゃから起こさずに来たぞ」

 

「うん!起きた時は寝坊したかと焦っちゃったけど、お陰でバッチリ目覚められたよ!ありがとう」

 

「パートナーの体調管理も大事じゃからな。……そういえば、お主らはもうパートナーは決まったのか?」

 

「ええ。箒さんにお願いしましたわ。お互いに『分からせて』差し上げなければいけない相手がいるそうで、とても気が合いましたので」

 

 ダレノコトナノカナー。やる気はちゃんとあるようで安心した。

 

「私はかんちゃんと組むよ〜。2人で特製ISを作ってみんなをびっくりさせちゃうんだから〜」

 

 本音は簪とか。それにオリジナルのISときた。

 

「それは面白い。頑張って完成させてくれ。対戦を楽しみにしておるぞ」

 

 どうやら学年別タッグトーナメントへの意気込みは全員それなりにあるらしい。対峙するのは怖い気もするが、シャルルと一緒ならまあ大丈夫じゃろう。

 シャルルが朝食を終え、一同教室へと向かう。

 

「ぎんぎん」

 

 道中、本音が袖を引っ張りながら小声で呼びかける。

 

「なんじゃ?」

 

「後で時間ある〜?ちょっと相談したいことが〜なんて〜」

 

 珍しいの。そういえば簪と新作ISを作るんじゃったか。それに関して相談したいことでもあるのじゃろう。快諾すると、本音もご機嫌で喜ぶ。やはり努力して造るものならば渾身の傑作にしたいというもの。本音にもそうした熱意があったということじゃな。

 

 

 

 ☆

 

 

 

 教室に行くと、シャルルとラウラが転校してきた日よりも賑わっておった。一夏はまだ来とらんのか。

 

「おはよう」

 

 挨拶をしながら席に座ると、それまで姦しく騒いでいた生徒達がそそくさと解散していった。

 

「?何かあったのかの?」

 

「な、何も!?」

 

「???」

 

 何やら女子達が避けるように視線を逸らす。何か嫌われるようなことは……無いと思いたい。この時期にクラス全員から嫌われるのは流石にキツ過ぎる。

 と思ったが、一夏が教室に入ってきた時も皆同じように動揺していた。

 ……これは何かあるの。心当たりがあるとすれば。

 セシリアを見る。目が合うと露骨に明後日の方向を向きおった。

 箒を見る。一夏の方をチラチラ見ていたが一夏と目が合うと目を逸らした。

 間違いない。此奴らじゃ。後で問い質してやらんと。

 その日の授業はいつも以上に視線を感じたが、顔を上げても誰とも視線が合わなかった。

 

 

 

 ☆

 

 

 

「は、離せ!私達を何処へ連れていく気だ!?」

 

「じ、刃さん!私、こういう強引なのも決して嫌いではありませんが……もう少し優しく」

 

 休み時間に入るや否や箒とセシリアを引っ張り出して屋上へと連行した。セシリアが何故顔を赤くしているのか分からんが。箒もおるじゃろうに。

 

「さて、話してもらおうか」

 

 屋上に着くと単刀直入に尋ねる。

 

「な、なんのことだ?」

 

「一体何をお話しすればよろしいのですか?」

 

 セシリアは事情が掴めていないようじゃが、箒の方は訳知り顔じゃな。クロはこっちか。

 

「箒。女子に何を吹き込んだ?」

 

「な、何も吹き込んでなどいない!本当だ!」

 

「そうか。では何を聞かれた?一夏に『学年別トーナメントで優勝したら付き合ってくれ』とでも言ったのか?」

 

「な、なぜそれを!?あっ……」

 

 箒がしまったと口を噤むがもう遅い。

 なるほど。そういうことか。

 

「……箒。お主の口からちゃんと説明してくれるな?」

 

 箒は観念したように頷き、静かにことの真相を語り始めた。

 一夏への兼ねてからの想いを伝えるきっかけとして今回の学年別トーナメントをダシにして一夏に約束を取り付けた。しかし言った場所が悪く、他の女子生徒に聞かれていた。そこからは乙女の伝言ゲームで事実が都合のいいように歪められ、『トーナメントで優勝したら男子と付き合える』というような噂になった、と。

 

「な、なんですのそれは!?箒さん!貴女という人は大変なことをしてくれましたわね!」

 

「わ、私とて気が気でなかったのだ!周りに気を遣う余裕など……」

 

「あー分かった分かった。事故だったんじゃな。真相が分かればそれでええ」

 

 ふむ……しかしこの状況、使えるかも知れんな。

 怒りに猛るセシリアを宥め、教室へと戻る。一夏には『何故か優勝したら男子と付き合えるという噂が流れている』とだけ伝えておいた。無論箒の告白とは結びつくまい。いや、告白とすら思っていない可能性があるのか。唐変朴念仁め。

 

 

 

 ☆

 

 

 

「全く……箒さんたら」

 

 放課後:第3アリーナ。ブルー・ティアーズに身を包んだセシリアは箒に対して不満を漏らしていた。

 

「一夏さんやデュノアさんは好きに取り合ってくださって結構ですが、刃さんにまで被害が及ぶとなると黙ってはいられませんわ。ここは何としても優勝しないと!」

 

「随分やる気みたいね、セシリア」

 

 背後からの声に振り向くと、鈴がこちらに近付いてきた。その身には中国の第三世代型IS甲龍を纏っている。

 

「あら、鈴さん。あの噂は聞きまして?」

 

「ああ、アレね。全く大変よね他の皆は。そんなに必死にならないと一夏達とお近付きになることもできないだなんてね」

 

 鈴は余裕綽々といった様子で答える。

 

「あら、案外冷静ですのね。てっきりいつもの調子で躍起になって優勝を目指すと思っていましたのに」

 

「そりゃ優勝は目指すわよ?自分の実力を確かめたいし、い、一夏と付き合えるってなら尚のことよ!でもね、例え他の誰かが優勝して一夏と付き合うってことになっても私は諦めないから」

 

 鈴はそう言って力強い笑みをセシリアに見せる。惚れた男を諦めない。そんな覚悟をありありと見せつけられ、セシリアは尊敬と羨望の入り混じった感情を抱く。

 

「……凄いですわね鈴さんは。こんな噂に左右されてやきもきしていた自分が情けないですわ」

 

「まあね。どっかの誰かに『絶対に目を離すな』って釘刺されちゃったから。お節介な奴よね、アイツも」

 

 刃のことだ。セシリアは鈴の口ぶりからすぐに察した。鈴と一夏の騒動の始終は鈴本人から聞いている。その中で刃に励まされて吹っ切れたという心境も。

 

(本当にお節介な方。もう少し我が身を顧みてくださってもよろしいのに……)

 

 セシリアは鈴に説教する刃の姿を思い浮かべ、クスリと笑った。

 

「イギリスのブルー・ティアーズに中国の甲龍か」

 

「!」

 

 声の主を探すと、アリーナ出入り口にラウラを見つけた。腕組みをして2人を見下している。

 

「データ上の方が強く見えるな」

 

「何?喧嘩なら買うわよ?」

 

「まあまあ鈴さん。ボーデヴィッヒさんは日本にきたばかりで言語が不自由なんですわ。揚げ足を取っては可哀想ですわよ」

 

 安い挑発に同じく挑発で返す。

 

「ふん……所詮は古いだけの国と数だけの国か。私とシュヴァルツェア・レーゲンの敵ではないな」

 

「ふ〜〜ん?ジャガイモ農家で習った割には中々上手な日本語ね」

 

「庶民の戯言に青筋を立てるような器は持ち合わせておりませんが、言葉には気をつけないといけませんわよ?」

 

 鈴とセシリアの言葉が次第に刺々しくなる。

 

「ハッ!下らん種馬争いに必死になっている連中は腰抜け揃いのようだな?」

 

 この一言が決定打となった。セシリアはスターライトMkⅢの安全装置(セーフティー)を外し、鈴は龍砲の圧力を上昇させる。

 

「やっと解読できたわ。 『どうぞお好きなだけ殴ってください』ってことね!」

 

「この場にいない人間の侮辱をしてまで私達と遊びたいようですわね!」

 

 臨戦態勢に入った2人を見て、ラウラは静かに口角を吊り上げた。




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