インフィニット・ストラトス〜最強への道〜   作:まどるちぇ

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あけましておめでとうございます(遅)


第26話

 ラウラとセシリア・鈴の喧嘩はすぐにワシの耳に届いた。シャルルと連携について話していると噂好きの女子達が息急き切って何処かへ向かうのが見え、会話を聞くにラウラがセシリア達と模擬戦を行なっているらしい。

 

「すまんシャルル。急ぎの用事が」

 

「うん!急ごう!」

 

 言うが早いかシャルルはアリーナへ駆け出す。察しが良くて助かるわ。

 2人でセシリア達がいるアリーナへ走っていると、途中一夏と箒と合流した。

 

「刃!お前も聞いたか?」

 

「おう!急ぐぞ!」

 

 言葉少なに足だけ動かす。アリーナに到着すると、確かに戦闘が行われているらしい土煙と銃声が聞こえた。

 セシリアと鈴が二人がかりでラウラと交戦している。2対1であるにもかかわらずラウラは終始余裕の笑みを浮かべていた。

 

「セシリア、大丈夫か?」

 

 個人通信(プライベート・チャネル)でセシリアに語りかける。

 

「刃さん!?何故ここに!?」

 

 セシリアがスコープから目を離して周りをキョロキョロ見渡す。ワシの姿を捉えるとすぐに視線をラウラに戻した。

 

「手こずってるようじゃな。手を貸そうか?」

 

「それには及びませんわ!これは乙女のプライドを賭けた闘い!例え刃さんと言えど水を差すような真似はご遠慮願います!」

 

 何やらよく分からんが熱くなっておるようじゃ。そういう時セシリアは弱いんじゃがなあ。しかし本人がやる気ならそれを削ぐ訳にもいくまい。

 

「よう分からんが、そういうことなら頑張れ。邪魔したの」

 

 それだけ言って個人通信を切り、観客席に腰かけた。

 

「刃?2人の加勢にいかなくていいの?」

 

 どっかり座り込んだワシを見てシャルルが心配そうな声を上げる。そうか。個人通信だと皆には聞こえてないんじゃった。

 

「邪魔するな、とのことじゃ。見届けてやろう」

 

「鈴…………」

 

 一夏が鈴を見上げながらぽつりと呟く。恐らく同じように鈴に個人通信を飛ばしていたのじゃろう。

 4人で観客席に座り、固唾を飲んで見守る。ラウラのワイヤーブレードは一対多でも問題なく猛威を振るった。近接パワー型の甲龍に対して付かず離れずの距離を保ち、遠距離型のブルー・ティアーズに対しては有効射程距離よりやや近い間合いを位置取っている。中距離武器というのは中々厄介なものじゃな。

 

「しかしあの2人中々しっかり連携できとるの」

 

「セシリアに関しては当然だと言える。私とタッグを組むことを前提に後衛としての立ち回りを特訓したからな」

 

 箒が自慢気に言ってしきりに頷いている。

 

「鈴はそんなセシリアの特性を理解して前衛寄りに立ち回っておるようじゃな。どちらも流石は代表候補生といったところか」

 

「でも、そんなコンビネーションでもラウラ1人と互角か、もしくは……」

 

 一夏はその先の言葉を継ぐことができなかった。

 

 

 

 ☆

 

 

 

 中々面白い。ラウラは内心そう思いながら余裕の表情を崩さずに目の前の獲物を狩っていた。

 所詮はISをファッションか趣味のようにしか思っていない者ばかりのIS学園だが、やはり代表候補生ともなるとそれなりに歯ごたえがある。初めは安い挑発にまんまと乗ったことを笑ったが、いざ戦闘となると感心すべき所が見受けられた。『生まれながら』に好戦的な性格のラウラは本能的に強者を好む傾向にあった。故に第三世代型ISを持つ代表候補生の自分と同じ立場にあるセシリアと鈴に挑戦するのは時間の問題だったと言えよう。尤も、ラウラは意識的には2人を遊び相手か狩りの獲物程度にしか考えていない。

 予想外の抵抗を見せる獲物に対し、ラウラは次第に胸のざわめきを抑えきれなくなっていった。

 

 

 

 ☆

 

 

 

「厄介な武装ですわね」

 

「ほんと鬱陶しいったらないわよ!」

 

 セシリア・鈴の急造コンビは悪態をつきながらもラウラの猛攻を耐えしのいでいた。襲いくるワイヤーブレードをセシリアは躱し、鈴は双天牙月でいなす。

 

「中々やるじゃんセシリア!毎日刃と訓練してるだけのことはあるわね!」

 

「鈴さんこそ!流石は中国の代表候補生ですわね!ですが、それ以上に……」

 

「ええ。あの化け物のが上手ね」

 

 互いに息の合った連携を讃えると同時に、それでも拮抗するのが精一杯であるラウラの戦闘力に戦慄した。

 

「どうした?命乞いの打ち合わせか?」

 

 ラウラは不敵な笑みで2人を挑発する。2人の目に戦意の色が濃くなるのを見届け、ラウラの攻める手が苛烈さを増していった。

 

 

 

 ☆

 

 

 

「まずいな」

 

 ほとんど無意識に呟く。ラウラが遊ぶのをやめたらしい。目の色が変わった。

 

「マズい!鈴!」

 

 叫んだのは箒じゃった。鈴は前方からくるワイヤーに気を取られ、死角から伸びたワイヤーブレードに気付かない。箒が叫ぶとほぼ同時、鈴に凶刃が突き立てられた。

 

「きゃあっ!」

 

 鈴が悲鳴を上げて大きく体勢を崩す。その隙を見逃すラウラではない。レールカノン砲を構え、鈴に照準を合わせる。

 

「させませんわ!」

 

 セシリアがワイヤーブレードの猛攻から逃げ延び、ラウラの砲身に正確な射撃をする。ラウラが身を引いて躱した隙に鈴が体勢を立て直す。

 

「小賢しい!」

 

 ラウラは標的をセシリアに変更する。ワイヤーブレードで鈴を牽制し、一気にセシリアとの距離を詰めた。セシリアは鈴が動けないのを見届け、後退しながらビットを展開する。しかし……

 

「それは悪手じゃないかの?セシリア」

 

 ビット操作にはかなりの集中力を要する。鈴への誤射の心配をしなくて済むとは言え、後退に専念すれば回避に対して集中力を割かなくていいというのはラウラ相手にしては甘い考えなように感じる。

 

「くだらん。この局面では愚かな選択だ」

 

 ラウラは停止結界でセシリアの逃走を無理矢理止めた。突然身動きがとれなくなったことに焦ったセシリアは案の定集中力を切らし、ビットの操作もままならなくなった。

 

「くっ!この……」

 

 セシリアは辛うじてビットの一基で攻撃する。しかしそんな脆弱な攻撃はラウラのワイヤーブレードに弾かれた。

 

「中々楽しめたが、最後はお粗末なものだな」

 

「まだ私が……いるでしょうが!」

 

 鈴が遮二無二龍砲を叩き込む。

 

「チィッ!」

 

 ラウラは舌打ちをしてその場から離脱する。フラフラの鈴に容赦なくワイヤーブレードを叩き込み、鈴は黒い煙を上げながら墜落していった。

 

「「鈴!」」

 

「鈴さん!」

 

 一夏、箒、セシリアが同時に叫ぶ。ラウラはすかさずセシリアに追撃を迫る。セシリアは停止結果から逃れ、ラウラが接触する寸前に腰のミサイルビットを射出した。ラウラは難なく停止結果で止め、セシリアは再び距離を取った。

 

「ちょこまかと……片割れを失っては勝負あっただろう。とっとと諦めたらどうだ?」

 

「鈴さんとは成り行きでタッグを組んだに過ぎませんわ!同じ第三世代型を操る代表候補生として、簡単に遅れを取る訳にはいきませんことよ!」

 

 セシリアは気丈に振舞っていたが、意識は墜落した鈴に向いている。

 

「……フ。お仲間がそんなに心配か?」

 

「!?何を……」

 

 ラウラがニヤリと笑うと、セシリアに背を向けて急降下した。その先には鈴が……。

 

「イカン!」

 

 思わず飛び出そうとしたが、アリーナに貼られたバリアに阻まれる。

 

「一夏!2人でコイツ破るぞ!」

 

「ああ!ちょうどそう思ってたところだ!」

 

 一夏はそう言うと白式を展開し、即座に零落白夜を発動させる。ワシも八極を取り出し、両手に日輪を持つ。こんな時こそ釣魚の使用条件を恨めしく思う。

 

「ちょ、ちょっと2人とも落ち着い」

 

「おおおおおお!」

 

「りゃああああ!」

 

 シャルルの制止を無視し、2人でバリアの一点に集中攻撃を加える。硝子の砕け散るような音と共にバリアに穴が空く。

 

「ラウラはワシが!一夏は鈴を頼む!」

 

「そのつもりだ!」

 

 うむ。以心伝心で何より。一夏は瞬間加速で、ワシは無影縮地で標的に急接近する。

 

「柳 刃!貴様か!」

 

 ラウラは意外にも喜色満面でワシを迎え撃つ。

 日輪を思い切り振り上げたが停止結界に阻まれる。

 

「ワシを覚えているかの?10年ぶりくらいか?」

 

「?貴様と会ったのはIS学園(ここ)が初めてのはずだが……まあいい!一度貴様と刃を交えて見たかった!」

 

 ラウラはプラズマ手刀を装着し、停止結界で身動きの取れないワシに大きく振り下ろした。

 

「ぐぅ!ナメるな!」

 

 停止結界では全身は止められないらしい。もう片方の手に握っていた日輪を手首のスナップだけで投擲する。

 

「フン!くだらん!」

 

 ラウラは大きく身を翻して日輪をやり過ごす。

 その瞬間、停止結界が解除された。

 

「やはりか」

 

 一度距離を置き、ラウラの一撃のおかげで使用可能になった釣魚を装備する。

 ラウラの停止結界、AICはISの移動補助機構の一部を擬似的に強制ロックする技術。それを維持するには敵IS周辺の一定領域の物質を把握し、逐次固定していなければならない。それに必要な集中力はセシリアのビットの比ではない。例えラウラと言えども停止結界を発動しながら停止している物体以外に対する反応は普段よりも著しく遅れる。半身を翻すだけで避けられた日輪を大袈裟に躱した上に停止結界が解除されたのが良い証拠じゃな。

 

「刃さん!なんて無茶を……」

 

 セシリアが上空から回線も使わずに叫ぶ。やれやれ元気そうで何より。

 

「鈴がヤバそうだったんでな。今は一夏が連れて離脱しておるじゃろう」

 

 そう言って視線を遣ると、やはり一夏がバリアの穴から鈴を連れて観客席に避難していた。

 

「さて……ラウラ・ボーデヴィッヒ。お主はやってはならんことをしたな」

 

 緊急事態の収束を実感し、殺していた感情が静かに蘇ってくる。湧き水のように静かに染み出していた感情(それ)は、すぐさま間欠泉のように勢いよく噴き出した。

 

「……ッ!」

 

 ラウラが一瞬怯えたような表情で硬直する。

 理由があるとすれば一つじゃろうな。

 

 

 

「ワシの仲間に手を出して……無事で済むと思うなよ?」

 

 

 

 ワシの顔が修羅の如く怒りに歪んでいたから。




盛り上がって参りました
寒さに負けず頑張るぞい
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