UAも1000超えてすごく嬉しいんですの。
これからも適当にゆるゆる進めていきます。
「だはははは!なんじゃその顔は!」
食堂。一夏を見かけて声をかけたワシは、大きな紅葉マークを頬に見つけ、思わず吹き出した。
「……言うな。何も訊かないでくれ」
「大方、篠ノ之と同室になって張り手でも食らったんじゃろ?」
「なんで分かるんだよ!?お前はエスパーか!?あ……」
「えー!織斑君篠ノ之さんと同室なの!?」
「これはうかうかしてられないね!」
「柳君!今フリー!?一緒にご飯どう!?」
一夏の一言で女子達が色めき立つ。こっちに飛び火するのは想定しとくべきだったの。
「ワシもセシリア嬢と同じ部屋になったんじゃ。ま、締め出されて当分は廊下で寝るがの」
「ええー!?何それひどーい!」
「柳君私の部屋に来なよー!」
「……別にセシリアがひどいとは思わんの。16になろうという男女が同じ部屋で寝泊まりするなんて異常も異常じゃし、わしが言い出したことじゃしの」
「ちぇー。柳君って見かけに寄らずガード堅いんだねー」
「でもでも、貞操観念しっかりしてると、一緒に居ても安心だよねー!」
とほほ。女子の思考回路は都合がいいの。
「まあ、なんじゃ。そんな訳じゃから部屋の移動とか何とかは無しじゃな。飯は一緒してもええぞ」
「やったー!」
「……あ、あの」
食堂の入り口の方から声がした。
「む。セシリアか?何か用かの?」
「そ、その……」
セシリアはモジモジと指を交差させてどもる。
「……?ほれ。飯がまだなら一緒に食べながら話そうぞ。ここのきつねうどんは美味いぞ」
「!よ、よろしいんですの!?だって、私、あんなに酷いこと言って……」
「気にするな。たかだか15の小娘に思慮の行き届いた発言なぞ期待するか!謝るのは後でよかろう!さ、皆と楽しく飯じゃ、飯!」
謝ろうと思ったこと。それが成長なんじゃ。それで充分じゃ。
「は、はい!私のオススメはカルボナーラでしてよ!」
セシリアの表情が花が咲いたように明るくなる。
「うむ!今夜はそれを試してみようかの!」
こうして楽しい団欒のひと時は過ぎていった。
☆
「……お前もたかだか15の小僧だろうに。一丁前に悟ったようなことを言う」
食堂の片隅。そこに寮長を務める千冬の姿があった。
「しかしまあ、一夏並の人たらしが入学してくるとはな。いや、それこそが男のIS使いの条件なのかもな」
千冬はそう言って自嘲気味に微笑む。
(……私も他人のことは言えんか?)
騒がしく食事をする生徒達を今日は見逃してやるか、と思う千冬であった。
☆
「……しかしのう」
「わ、私がいいと言っていますの!」
夕食を終え、セシリアと共に部屋に帰ってきた。
本来は寝床の代わりを探す予定じゃったが、セシリアに呼び止められた。
「やはり同じ部屋で寝るというのは……」
「線引きさえちゃんとすれば問題は起きないはずですわ!それに!刃さんが体調を崩されては一ヶ月後の試合でハンデを負わせることになります!それで勝っても、私は嬉しくありませんの!」
「分かった分かった。じゃあここで寝させてもらうことにする。それでええじゃろ?」
何故にこうも意見が変わる?真逆ではないか。
「わ、分かればよろしいのですわ!」
セシリアは安堵したように胸を撫で下ろす。
「話は終わりかの?んじゃ、ワシは少し出かけるぞ」
「!ま、待って下さい!」
「安心せい。2〜3時間もすれば戻って来るわい。あ、そうじゃ。シャワーは使わせてもらって構わんのかの?」
「え?ええ。別に構いませんわ……」
「サンキューの。じゃ、そういうことで!」
ダッシュで部屋を出る。
「あ、ちょっと!話はまだ……もう!」
☆
「日本の殿方は皆あんなに話を聞かないんですの!?その癖自分の意見は押し通そうとするし!自分勝手過ぎますわ!」
独り取り残された部屋。セシリアはブツブツと愚痴を零しながら肌の手入れをしていた。机に巨大な鏡付きの化粧箱を置き、乳液を頬に擦り込む。
「大体、私と同じ部屋になれたというのに嬉しそうな素振りの一つでもしてみせればいいんですわ!」
パックを顔に貼り付け、砂時計をひっくり返す。
「……本当、意地っ張りね」
一瞬、素の口調が出る。それは、自分に向けた言葉であるから。セシリアはしばらく目を伏せて考え込む。
「素直に言えばいいのよ。『ごめんなさい。私が悪かったです』って」
鏡を見つめながらぽつぽつと呟く。
「……嫌われたのかしら?」
そう口にすると、頬が強張る。目と鼻の真ん中辺りがツンと痛くなる。胸の奥が締め付けられるような感覚を覚える。
「……紅茶の一杯でもご馳走してあげましょう」
そう言ってセシリアは立ち上がり、戸棚を物色し始めた。砂時計は、とっくに落ち切っていた。
☆
「始めるかの」
ジャージに着替え、寮の外に出る。
四月の薄ら寒い風が頬を撫でた。
「そうじゃな……20周、といったところか……」
そう呟き、走り出した。
「ふっ、ふっ、ふっ、ふっ……」
呼吸を整え、ペースを作る。
ワシのいつもの日課。ジョギング20kmとダッシュ5km。持久力と瞬発力を足腰に叩き込むには良い反復じゃと思う。
結果はどうあれ、この日課が精神的に大きな支えになっとる。
「はっ、はっ、はっ、はっ……」
15kmを超え、少し息が切れてくる。
少しくらい減らしても……。
1周くらい誤魔化しても……。
別にこんな辛いことしなくたって……。
そんな雑念を、振り切る。
ただひたすらに、走る。走る。走る。
やがて弱い自分も諦め、悲鳴も止まる。
そうして20kmを走り終える。
「あと、5km!」
そう言って今度は全力疾走。もうこうなると気力だけで持っていかねばならなくなる。
やる。出来る。やってみせる。やれば一つ強くなる。
自己暗示を何度もかけ、止まりそうな脚に鞭を打つ。
やがて5kmを超え、少しずつペースを落とす。最後は散歩気味に歩いて乳酸を流し、一息吐く。
「ああ、しんど……」
終わった直後は2度とやるか!と思う。
しかし、達成感を噛み締める内に病み付きになる。
「一種の……病気、だのう……」
立っているのも怠くなり、座り込む。
顎を上げると、綺麗な夜空が見えた。
「うむ!明日も良い天気じゃ!よし、次は……」
「明日の朝日を拝めれば、な」
夜空にヌッと現れたのは、織斑先生の顔だった。
「うげ。やっぱり見つかったか」
「ジョギングはいいが、時間と場所を考えろ。夜に、女子寮の周りを男子生徒がウロウロしているなど、問題にしか聞こえんだろう?」
「確かに、その通りですの。朝は駄目ですかね?」
「ふむ……。許可する。だが21時以降の外出は一切を禁ずる。分かったら規定時間を超えない内にさっさと戻れ」
腕時計を見ると、20:58を指していた。
「おおギリギリ。それじゃ、戻らせていただきます。おやすみなさい」
「ああ……。それと、何かする時は私や近くの教師に確認をとれ。お互い、無用なトラブルは避けるに越したことはない」
「分かりました。では」
「……イマイチ憎めん奴だ。毒気を抜かれてしまうな」
織斑先生が何か呟きながら夜空を見上げるのを尻目に、足早に寮へと戻った。
☆
「ただいま戻ったぞ」
部屋に戻り、ジャージを脱ぐ。
「お帰りなさいませ。丁度紅茶を淹れましたの。よろしければいかが?」
そう言うセシリアの手には、盆に乗ったティーポットと、カップとソーサーが2セットあった。
「……お主、待ち構えておったな?」
「ま!?まさか、そそそそんな訳ありませんわ!これはストレートとミルクティーで飲み分けようと思って2つ用意しただけでして……」
必死になって言い訳するセシリア。
「ぷっ。だはははは!そういうことにしておいてやろう!喉も乾いておったしの。本場イギリスの紅茶、いただくとしよう」
なんだかそんなセシリアが可愛く見えて、真実などどうでもよくなる。
「!そ、そんなに飲みたいのでしたら、仕方ありませんわね!」
セシリアは目に見えて笑顔になり、いそいそと紅茶をカップに注いだ。
「退屈せんのう。明日からも、楽しみじゃわい!」
こうしてセシリアと束の間のティータイムを過ごした。紅茶は勿論美味かった。
次回予告
ついに始まった地獄の特訓。
想像を絶するメニューの数々に刃が悪戦苦闘する中、一夏の専用機が届いたという知らせが届き……?
次回、【白無垢に奪われた少女】
セシリアの、卵サンドは、甘い(CV:銀河万丈)