日に3回の投稿て……。
「よろしくお願いします!」
「では、始めましょう」
翌日の放課後。第1アリーナで更織先輩との特訓が始まった。生徒会権限で無理矢理借りたらしい打鉄を貸してもらい、基本動作をこなす。
「なるほど。基礎はバッチリね」
「イメージトレーニング通りにコイツが動いてくれたからですよ」
そう言って左手で右の籠手をさする。
「そうね。よく馴染んでるわ。それじゃあ予定の30%増しでメニューをこなしていきましょうか!」
「……お手柔らかに」
それからはとんでもない特訓じゃった。
高度50mまで急上昇し、急ブレーキ。その後地上1m以内まで急下降し、急ブレーキ。それを10往復×3セット。
「しかし三半規管が狂ったり吐き気を催したりはないのう。ISのハイパークリアセンサーとやらのお陰かの。それでも多少キツいが」
「中々筋がいいわよ♪さ、次よ次」
素振り500回。ブレード装備で上下シャトルラン。銃弾の斬り落とし……。
「ぜぇ、はぁ……」
3時間に及ぶ猛特訓を終え、息が絶え絶えになる。
「よろしい。今日はここまで」
そう言う更織先輩の扇には【日々是精進】の文字が。
「ありがとうございました!」
礼を言い、控え室へと戻る。
打鉄は更織さんが返しておいてくれるそうな。サポートもしっかりした至れり尽くせりな特訓じゃ。
☆
「一夏に専用機が?」
着替えとシャワーを終えて控え室を出ると、更織先輩が待っていてくれた。先輩に依ると、データ採集の為に一夏の専用機が急遽作られることになったそうな。
「まあ、一夏は特別じゃからのう」
「男の子だから?それは君も一緒じゃないの」
「それもそうでしたわい!だはははは!」
「…………」
冗談は更織先輩には受けず、どことなく表情が暗い。
「……何かあったんですか?」
「えっ!?う、ううん。何にも無いわ。どうして刃君には専用機が来ないんだろうって思っただけよ」
そう言う更織先輩の目は明後日の方向を向いておる。
「……話したくないのでしたら、話さなくても良いです。が、師匠に支えられてばかりはいられませんぞ。ワシで良ければ相談に乗りますが?」
そう言って笑顔で語りかける。師匠だって人間。やはり悩みの一つや二つあるじゃろう。
「……その、一夏君のISが悩みの種なんだけど……」
そうして更織先輩はぽつりぽつりと相談し始めた。
話を整理すると、一夏の専用機を作っているのが倉持技研というところで、更織先輩の妹君である更織 簪という女子生徒が本来貰えるはずじゃった専用機も同じ倉持技研で作られる予定じゃった。が、一夏の専用機を作る為に開発が一時ストップしとるらしい。
「……おかしな話じゃな。それで詫びの一つも無しか?」
「まあ、それなりに詫びはあったと思うわ」
「?『思うわ』って……。師匠、その妹君に確認したのではないのか?」
「あ、う、ううん。簪ちゃん、私のこと嫌いだから……」
そう言って更織先輩は再び目線を落とした。
「……師匠はどうしたいんじゃ?」
「え?どうって……?」
「その妹君と仲直りしたいのかの?それできっかけを探してたら、今回の件で妹君の機嫌が悪くなってしもうて更に仲直りの機会を失ったと、そう思っておるのじゃな?」
「!そ、それは……」
「図星、ですかい。ワシには二人がどんな関係なのかは分からんし、敢えて聞かん。が、これだけは言わせて下さい」
「え?」
更織先輩が目線を上げてワシを見る。
「姉妹なら、話し合って喧嘩せい!」
怒気を込めて声を荒げた。ビリビリとそこら一帯が震え、更織先輩も萎縮したように体を強張らせる。
「仲直りのきっかけじゃと?そんなもん、探る暇があったら一言でも多く話すのが一番じゃ。例え傷付けてしまうようなことを言っても、お互いの傷を眺め合って手を加えないよりマシじゃろ!」
「……あ、貴方に私達の何が」
「何も分からん!分かりとうもないわ!余所者のように気を遣い合う姉妹など、もはや姉妹ではない!遺伝子が同じだけの、赤の他人に過ぎない!」
「!」
更織先輩が絶句し、両手で口元を押さえる。
「……悪いことをしたらごめんなさい、嬉しいことをされたらありがとう。これだけでええんじゃないですか?過去がどんなに重くても、未来を邪魔されて黙っとるようでは、ワシの師匠は務まらんですよ?」
そう言って、手を差し伸べる。
「さ、未来(まえ)へ」
「……私、分かってたの。あの子が私を嫌いになったのは、私のせいなの!」
更織先輩はその場に崩れ落ち、蹲って泣き始めた。
「私、あの子に『何もしなくていい』って、『無能のままでいなさい』って言っちゃったのよ!だから、あの子の気持ちなんて考えずに、やってあげてればいいなんて、自分勝手……」
「それはワシに言うことではないの」
崩れ落ちた更織先輩を抱き起こす。
「……そう、ね。簪ちゃんと話してみるわ」
更織先輩は涙を拭い、強い笑顔で頷いた。
「……そこで、師匠に訊きたいことがあるんじゃが」
「?」
「あそこにいる眼鏡の女子は、もしや……?」
「……!か、簪ちゃん!」
「お、お姉ちゃん……」
簪は通路の角で隠れながら今の話を聞いていたらしい。ばつの悪そうな顔で立ち往生している。
「今の、聞いて……?」
情けない姿を見せたせいか、更織先輩が少し赤くなり、やや突き飛ばすような形でワシを引き離した。
「わ、私、お姉ちゃんのこと、嫌い」
「!」
「でも、それはお姉ちゃんのこと全然分かってなかったから……!私が嫌いだったのは、『私の中のお姉ちゃん』だったの!今、その人の話を聞いて分かった!私は、本当のお姉ちゃんなら、これから好きになれる、と、思う……」
それだけ言って簪は下を向いた。
「……簪ちゃん!」
更織先輩は駆け出し、簪を抱きしめた。簪も戸惑いながら、おっかなびっくり更織先輩を抱き返す。
「ゴメン!ゴメンね、簪ちゃん!大好きな簪ちゃんを、危ない目に会わせたくなかっただけなの!守りたかったの!でも、それで、簪ちゃんを遠ざけちゃって……」
「も、もういいの、お姉ちゃん!ありがとう!守ってくれて、ありがとう!」
二人の姉妹は、抱き合って泣き合った。
「……姉、か」
そんな光景を見て、ワシの脳裏をよぎったのは、実の姉、柳 京香(きょうか)との日々だった……。
天才科学者にして、ISの産みの親、篠ノ之 束の学者仲間だった姉。
今はどこで、何をしておるのか……?
今は二人が収まるまで、蚊帳の外におるとしようかの。
☆
「……んー?」
どこかの孤島の謎の研究所。
「ふんふん。そろそろかなー?」
謎の女性は、タッチャブルディスプレイを手元にスワイプさせ、操作をする。
「はいはーい♪束さんだよー♪」
ディスプレイに表示されたのは、篠ノ之 束。ISの産みの親であり、天才科学者だ。
「あータビー久しぶりー」
「久しぶりだねー京ちゃん♪何年振りかなー?まあいいや。んで?何か用かな?」
束は捲したてるように会話を続ける。
「えっとねー。データ送るから察してー」
京香は別の画面を通話中の束の画面に飛ばす。
「相変わらずの口下手だねー♪うんー?ふんふん。なるほどー!OK!完成図できたら送るねー♪」
「お願い……じゃね」
京香はそれだけ言って通信を切った。
「タビーは……ウザい……」
京香はそう言ってディスプレイから目を離し、近くに立てかけてある写真を見る。
「……刃ちゃん。でへへ」
京香は刃と自分が写っている写真を見て、デレデレする。
かなりの、ブラコンであった。
という訳で、何故刃がISを起動できたかがなんとなく分かったかと思います。
次回予告
更織姉妹の和解を見届け、ほっとしたのも束の間。
熾烈を極める特訓の最中、刃に更なるトラブルの種が。
次回!インフィニット・ストラトス!
【陰と陽】
太正櫻に浪漫の嵐!