インフィニット・ストラトス〜最強への道〜   作:まどるちぇ

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それと、更織と表記していましたが、正しくは更識でした。楯無さんと簪好きの皆さん、失礼いたしました。


第8話

「一次移行……ということは、今までのは初期設定!?」

 

 セシリアが驚きの声を上げる中、煙が晴れていく。

 

「なるほど。フィッティングとは操縦者の体にISをフィットさせるだけでは無かったのか。いやあ、勉強不足に助けられるとは情けないの」

 

 一次移行した八極。

 八卦炉が両手の甲に描かれ、機体の右半分が白、左半分が黒という独特のカラーリングへと姿を変えた。

 大量のウインドウから一次移行で変化した八極の情報が流れ込んでくる。

 

「……なるほど。これは面白そうじゃ」

 

 思わず笑みが零れる。

 

「し、しかし!ダメージは確実に通っているはずですわ!付け焼き刃の能力でこの私を倒せるなどとゆめゆめ思わぬことですわよ!」

 

 セシリアの指示で再びビットが飛ぶ。

 

「……陽刀【日輪】(にちりん)。ここに」

 

 右手を肩の高さまで上げる。手に真っ白な短剣が握られた。逆手に握り、構える。

 

「陰刀【月夜】(つくよ)。頼むぞ」

 

 左手に黒い短剣が逆手で握られる。

 

 キュィィィン ダンッ

 

「うおっと!」

 

 縮地を使うと、そのあまりの出力に飛ばされ、逆にセシリアから距離を取ってしまう。

 

 ギャギャギャギャギャギャ

 

「!一瞬であの距離を……!?ですが、私の間合いでしてよ!」

 

 ドシュッ

 

「くっ!」

 

 とっさに月夜でガードする。

 

 バシュゥゥゥゥ

 

 直撃したが、強い衝撃は無かった。

 

「?これは……!シールドエネルギーが回復した!?」

 

 僅かだが、シールドエネルギーの数値が確かに上昇する。

 

「余波も完全に消えている……。この月夜は、相手の攻撃を吸い、回復する効果があるのか。なるほど」

 

「ノーダメージ!?直撃したのに!?なら、これはどうですの!」

 

 ビットと本体が交互に波状攻撃を仕掛ける。

 

「日輪。お主はどんなもんかの?」

 

 日輪を構え、縮地で回り込み、ビットを一撃で斬り落とした。

 

「くっ!小型・高機動がウリの私のビットを、そんな小刀で容易く……」

 

「新しい八極のスピードのお陰じゃな。……む?」

 

 キュゥゥゥゥン

 

 シールドエネルギーが減少した。先程月夜で回復した分よりも減り具合が多い。

 

「ふむ……。小刀で斬り落とすにはそれなりの代償が必要なようだの」

 

 強力な一撃の代わりに、与ダメージの何割かをシールドエネルギーから持っていくらしい。中々大食らいな刀じゃな。

 

「月夜で回復しつつ日輪で強攻撃。しかも日輪の消費エネルギー量は必ず月夜の回復エネルギー量を上回るようにできておる。長期戦は悪手と見た」

 

「そろそろいいかしら?お披露目会はここで終わりにしてさしあげますわ!」

 

 セシリアがビットを仕舞い、本格的な射撃体勢に入る。

 

 

 

 ☆

 

 

 

「シールドエネルギーを消費して攻撃を?」

 

 一夏が千冬に尋ねた。

 

「そうだ。自身のシールドエネルギーを与ダメージに変換することで、あんな小剣でも、大剣のような威力を出せるというシステムのようだな」

 

「なるほど。織斑先生の使っていたモノに通じるところがありますね」

 

 真耶がデータ整理をしながらそう呟く。

 

「私のはバリア無効化攻撃です。IS本体の絶対防御を利用した技能であるのに対し、柳のアレはビットや武器単体といったものにも強力な攻撃ができる。かなり融通の利く武器ですよ」

 

 千冬はそう言って真剣な眼差しでモニターから目を離さなかった。

 

 

 

 ☆

 

 

 

「はあっ!」

 

 セシリアが連続で射撃する。

 

「はっ!ほっ!よっと!」

 

 間一髪でかわし、距離を詰める。

 

「そこっ!」

 

 ビシッ

 

「ぐぅ!」

 

 右足にヒットし、スラスターの出力系統に異常が出る。

 

「機動力を削いでしまえば、ただの的ですわよ?」

 

「……ここまでかのう」

 

 停止し、小刀を仕舞う。

 

「?降参してしまいますの?」

 

 セシリアがスコープから目を外し、心配そうにこちらを見る。

 

「安心せい。切り札を隠すのをここまでにしよう、ということじゃよ」

 

 そう言って新たな武器を展開する。

 

「それは……ロッド?ランス?」

 

 ワシの手に握られていたのは、先端に小さな鏃が付いた大型の槍であった。長さは目算3〜4mくらいある。

 

「大槍【釣魚】(ちょうぎょ)というらしい。シールドエネルギーが一定値を下回るまで装備欄に出てこんかった。文字通り切り札という訳じゃな」

 

 釣魚を振り回し、感覚を確かめる。

 

「良い具合じゃ。手に馴染む。使用条件以外は、日輪や月夜のような強い癖も無いようだしの」

 

「……随分と手慣れてますのね。槍術をお使いに?」

 

 セシリアの声に多少の焦りが混じる。

 

「武道の中では一番嵌った。他は嗜む程度じゃが、こいつは段違いと思え」

 

 深呼吸を一つ。そして、槍を引く。

 

「来る……!」

 

 ダンッ

 

 片足で縮地をする。出力が足りず、ただの突進まがいになったが、それで充分じゃった。

 

「スピードが落ちてますわ!」

 

 セシリアがライフルを構える。

 

「遅い!」

 

 縦に一回転し、ライフルの砲身を釣魚の先端で叩き落とす。

 

「既に間合いでしたの!?」

 

「槍の長さはナメん方がいいぞ」

 

 ライフルの砲身をそのまま下に向かせ、棒高跳びの要領で釣魚を軸に回転蹴りを浴びせる。

 

「きゃあ!」

 

 セシリアが上に飛ばされる。

 

「トドメじゃ!」

 

 スラスターの出力を最大まで上げ、セシリアの背後にピタリとくっつく。

 

「まだですわ……!」

 

 セシリアが後ろを振り向こうとするが、もう遅い。

 

「【太公槍衝】(たいこうそうしょう)」

 

 両手で釣魚を握り、足を槍と並行に伸ばす。無影縮地のスピードを100%攻撃力に転換する。

 

 ガガガガッ

 

 セシリアの腰の辺りに直撃し、バリアを突き抜ける手応えを感じた。

 

「きゃあああああ!」

 

 凄まじい衝撃に耐え切れず、セシリアはアリーナの地面へと吹き飛ばされていった。

 

「ブルー・ティアーズ戦闘不能!勝者、柳 刃!」

 

「うおおおおおあああああ!」

 

 勝利を噛み締め、雄叫びをあげる。アリーナのギャラリーも惜しみない喝采をワシらに贈る。

 

「セシリア、大丈夫かの?」

 

 プライベートチャネルでセシリアに呼びかける。

 

「……完敗ですわ。でも、次はこうは行かなくてよ?」

 

 地面で仰向けになっているセシリアは、とても強く、美しい笑みを浮かべていた。

 

「うむ!ワシも精進しよう!これから、高め合っていこうぞ」

 

 セシリアに近付き、抱き起こす。

 

「はい!また明日から、よろしくお願い致しますわ!」

 

 こうして初めての戦闘はとても意義深い素晴らしいものとなった。勝敗を超えた何かを、互いに得ることができる。これ以上の喜びはそうそう無いじゃろう。

 

 

 

 ☆

 

 

 

「やった!お姉ちゃん!刃さんが勝った!」

 

「当然よ!私の弟子なんだもの!」

 

 控え室のモニターで、更識姉妹が刃の勝利を喜び合う。楯無は当然と言い放つが、簪と両手を握り合って喜んでいる。

 

「勝ってしまったか……。ここから先、良くも悪くも一目置かれる存在になるだろうな」

 

 千冬はそう言いながら、面白そうに笑みを浮かべる。

 

「一年のこの時期に、こんなレベルの高い戦闘ができるなんて!2人とも凄いですよ!」

 

 真耶が感極まって涙する。

 

「「……って、ん?」」

 

 更識姉妹がモニターに再び注目する。そこには、セシリアを抱き上げ、顔を見合わせて仲睦まじく会話する刃の姿があった。

 

「……なあんだ、余裕あるじゃないの。帰ったら特訓メニューを2倍にしてあげなきゃね♪」

 

「……お姉ちゃん。私も協力する」

 

 嫉妬メラメラの更識姉妹に襲われるとは、その時の刃は予想だにしていなかった。




八極強いな……。
というかブルー・ティアーズという単語をようやく使った気がする。
次回予告
セシリアを下し、勝利を掴み取った刃。次の対戦相手は、同じく男性操縦者の織斑 一夏。ぶっつけ本番で真価を発揮する一夏の強さを肌で感じた刃。互いに認め合ったライバルとの対決の最中、刃にある変化が……。
次回【戦闘衝動】
来週も、面白カッコイイぜ!
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