兎+ヘッポコ=
「よーし、それじゃぁ先生、午後の授業始めちゃうぞー!」
どうやら、午後の授業が始まる様です。様ですが、織斑先生の隣にいる人が、そのですね。
「ねぇ、ちーちゃん。あっちの日陰に移動しない?」
「却下だ!束よ、お前もいい加減に日光に慣れろ」
稀代の天災にして『IS 』の生みの親でありありとあらゆる分野で活躍している科学者『篠ノ之 束』さんが、初夏の日光により死にかけています。
顔面蒼白で膝をガクガクさせながら、なんとか自分の足で砂浜に立っていますが、あの様子では時間の問題でしょう。
「篠ノ之博士、点滴を換えましょう」
「あ、ごめーん。まややん」
山田先生が束さんの点滴を交換してますが、大丈夫なんですか?その点滴、なんかパッケージに蜘蛛とグラサンと酒瓶のマークが描かれてるんですが・・・
「それで姉さん、機体の方は?」
「ばっちオッケーだよ、箒ちゃん!」
どうやら、箒ちゃんの機体は完成した様です。その代償は束さんの有ってないような健康でした。窶れ頬はこけ、目の焦点は定まらず箒ちゃんのいる方角をフラフラと見つめています。顔色も合わさってかなり怖いですよ。
「これが最新にして最強の機体!『紅椿』だよ!」
束さんが大きな身振りと共に空を見上げ宣言しました。ということは、箒ちゃんに機体は空から降ってくるのですか。ド派手ですね!
「で、姉さん。その紅椿は?」
「あれ?打ち合わせと違う」
紅椿、降ってきませんでした。がっかりですよう。ほら、ラウラ。空を見ても何もありませんよ。しかしそれでは、何処から降ってくるのでしょう?
「姉さん?」
「いや、ちがくてね箒ちゃん」
「ね え さ ん ?」
ジリジリと箒ちゃんが、束さんとの間合いを詰めていきます。対する束さんはジリジリと詰められる間合いを、なんとかして維持しようと必死に逃げようとしますが、ヘッポコ束さんが箒ちゃんから逃げられる訳もなく、あわや、唐竹割りかと思われた次の瞬間です。
「はいっ!今週の商品はこちらっ!」
「最新型IS 『紅椿』になりま~す」
ラウラによく似た女の子が運転する軽トラの荷台に乗って、黒丸レンズのグラサンをかけた男性と茶髪の背の高い女性が酒瓶片手に、商品紹介的なポーズをとりながら紅くて格好いいIS を運んできました。
「オータムさん。なんとこちら、あの自宅警備兎が丹精込めて造った最新型なんですよ!」
「本当ですか、フェイゲンさん!」
「いや、あのくーちゃんも二人も何やってんの?」
どうやら束さんの知り合いみたいです。うわ!荷台の二人が凄い動きで束に振り向きました。
伝票ですか?束さんに渡してますね。
「え?何?何なの?受け取りのサイン?ここで良いの?」
宅配便ですか?最新型の機体がまさかの宅配便で届いたのですか?
「はい、これでいいっ!」
なんか束さんが伝票に受け取りサインを書いてフェイゲンさんとオータムさんの二人に、それを渡したらいきなりビンタされました。しかも、二人で左右に一発ずつ良い音のする奴を。
「ケッ!オーイ、クロエ出発だ」
束さんにビンタして満足したのか、三人が帰って行きますが、また商品紹介的なポーズをとってます、その軽トラの荷台はそのポーズをしないと乗れないのですか?あ、お酒呑んでる。いったい、なんだったのでしょうか?あの三人は。
「姉さん、これが『紅椿』ですか?」
「う、うん」
流石は箒ちゃんです。実の姉に振るわれた暴力を、無かったかのようにスルーしましたよ。
それにしても、『紅椿』ですか?私の『打鉄・甲』と違って全体的にスリムで格好いいですよう。しかも、手足には金の蒔絵があって綺麗で豪華絢爛です!
「そ、それじゃぁ、箒ちゃん。フィッティングとパーソナライズを始めようか」
「大急ぎの特急でお願いします」
「お、オッケイ!」
束さんにより、凄いスピードで各設定が終わっていきます。これを見ると束さんはやっぱり天災なんだなぁ、と思いますが普段が普段なのでやっぱりあれですね。
あれ?そう言えばなんで、箒ちゃんは急ぎでなんて頼んだのでしょう?こう言った事は、ある程度時間をかけてやるものなのに、不思議ですよう。
やっとだ!やっと、専用機が手に入った!この瞬間をどれ程まで待ち望んだことか、これで漸く真琴と共に空を飛べる!皆のいる場所に至るスタートラインに立てる!
待っていてくれ真琴!私はすぐにお前に追い付いてみせる。
「どうかな?箒ちゃん、違和感とか無い?」
「良好です」
「良かった~」
姉さんには感謝しなくてはならない。姉さんがIS を造ったから真琴に会えた、皆に会えたのだ。最初は恨んだが、今となってはグッジョブという気分だ。結果良ければ全て良し、世は事も無しだ。
「ふむ、問題無さそうだな。篠ノ之、飛んでみろ」
「はい」
独特の浮遊感が身を包む、悪くない気分だ。むしろ、素晴らしい気分だ。
『あれが最新型か~』
『妹ってだけで貰えるのはズルいな~って思うけど』
『姉御だから良いよね!』
『一年では近接戦最強クラスだしね!』
ふむ、私も専用機持ちになったのだ。それ相応の態度と姿勢で過ごさねばなるまい。力には責任が伴う、これを体現し更なる高みを目指し、皆の手本とならねばな。
だが、今この時だけは、私の我が儘を許して欲しい。
「織斑先生」
「なんだ?篠ノ之」
「ランデブーの相手が欲しいのですが、構いませんか?」
「フッ、許可しよう」
「ありがとうございます」
ありがとうございます、千冬さん。これは私の我が儘だ。私は、真琴、お前と飛びたい。
お~!箒ちゃんはやっぱり格好いいですよう。初めて会った時もそうでしたが、今もキリッとしてて憧れますよう。私もあんな風になりたいなー、無理ですかね?
あれ?箒ちゃんがこっちに来てますよ。
「真琴、私と飛んでくれないか?」
いきなりですよう!箒ちゃんと一緒に飛ぶのはいいのですが・・・
「私・・・遅・・いよ・・・?」
私の機体『打鉄・甲』は元が打鉄なので、スピードははっきり言って遅いです。だから、箒ちゃんと飛ぶのは難しいですよ?
「構わん、私はお前と飛びたいのだ」
「・・・あう・・・」
『やだ、姉御ったらイケメン!』
『ママが顔真っ赤にしてモジモジしてるわ!』
『あれは女の顔ですわ』
ううぅ、言いたい放題言ってくれます。だったら、貴女達はこのIS 学園が誇る最終兵器イケメンの箒ちゃんに、こんなこと言われて真っ赤にならないんですか?無理でしょう?
「・・えっと・・・ね・・箒・・・ちゃん・・」
「さあ姫、お手を」
はい、無理です!ひひひ姫!姫なんて初めて言われましたよう!
なんか、いつの間にか機体が展開されてますし!これはもう、箒ちゃんの手をとって行くしかないですよ!
気分は、舞踏会に行くお姫様ですよう!
「では諸君、姫は貰って行くぞ」
「「「どうぞどうぞ!」」」
「・・・あう・・う・・・」
「いってらっしゃい、母様!」
も、貰われました!私、貰われちゃいましたよう!ラウラ、お母さん箒ちゃんに貰われちゃいましたよう!
あれ?だとすると、箒ちゃんがお父さんになるのですか?
「行こうか、真琴」
「・・う・・・うん・・・」
箒ちゃんに手を引かれながら、ゆっくりと空へと上がっていきます。
ある程度の高さまで上昇すると、箒ちゃんが手をほどいて此方に振り向き、再度手を差し出してきました。
これって、もしかして・・・
「姫、宜しければこの私と踊っては戴けませんか?」
やっぱり、ダンスの御誘いですよう!ホアァァァッ!私の答えは一つですよう!
「私・・・で良かっ・・たら・・・いいよ・・・」
「そうか、では踊ろうか」
白猫¦『うわー!箒ったら大胆!』
蒼雫¦『それに応える真琴さんもなかなか』
熊兎娘¦『おお!見たか今の』
白夏¦『え、なに?』
すずね¦『一夏、あんた分かんなかったの?』
白夏¦『無茶言うなよ、俺IS 乗り始めて半年経ってないよ』
白猫¦『まあまあ鈴、一夏は置いといて』
蒼雫¦『二人のダンスを観賞しましょう』
すずね¦『そうね』
白夏¦『一夏です、皆が冷たいとです』
熊兎娘¦『一夏、よく見ておけ。母様と箒の機動は高等技術の塊だぞ』
白夏¦『(ToT)ラウラが救い!』
白猫¦『箒が真琴の腰に手を回したよ!』
約全員¦『おおぅ』
「よし、二人共そろそろ降りてこい!」
織斑先生の号令により、箒ちゃんとのダンスは終了しました。一時間に満たない時間でしたが、とても楽しかったですよう!
「篠ノ之、熊谷ご苦労。もうじきナターシャとイーリスが到着する、それまでに給水等を済ませておけ」
「はい」
「・・はい・・」
間に合うのですか?その二人は。さっき、山田先生が電話でタクシーが二十台目とか銃撃戦がどうとか言ってましたけど、その二人は日本には居ないのでは?
この時、私は暢気にこんなことを考えていました。けど、もしこの時に何か行動していれば、あんなことにはならなかったのでしょう。
どうしてこうなった、モッピーが明後日の方向に逝っちゃった!
次回
アメリカから来た二人のパイロット、ナターシャ・ファイルスとイーリス・コーリング。
この二人が熊さんと絡むとき、何かが起こる!
「はい、じゃあ時間内に私達のどちらかのエネルギーを半分に出来たら」
「熊谷を揉みし抱く権利をやろう!」
白熱する熊さん争奪戦
「待とうや皆、俺は仲間、仲間よー」
「面白い冗談だ」
何となく、原作再現( )される一夏
「何度でも言ってやろう!真琴とラウラは私のものだ!」
本格的に壊れる箒
次回
あれだよ、夏って怖いね