今回は、買い物に出掛けるまでとなります。
ウーン、銀の福音どうしよう?
モッピーはこの世界では大丈夫だし、紅椿無しでいいかな!
IS 学園1200号室、通称「熊兎図書館」。IS 学園内でも随一の蔵書量を誇る図書館である。
間違えた、真琴とラウラの部屋だ。
学園で本を捜すならまずはここに行け、ここに無ければ図書館だ。と言われる部屋だが、あくまでも、寮の一室である。
その1200号室に来客が来た。
「真琴ラウラ、居る?」
扉をノックし声をかけるのは、フランスの代表候補生『シャルロット・デュノア』だ。貴公子然とした少女で、編入当初はクマクマウサウサ色々あったが、今となっては何の問題も無く日々を過ごしている。
「あれ、居ないのかな?」
この「熊兎図書館」には、絶対のルールがある。これを守らなければ、ここを利用する資格無し。余りにいきすぎればここの主にクマーされる。
そのルールとは
一つ
「入る前にはノックと声かけを」
これは全室共通のルールだが、ここだけは何があっても絶対である。
何故なら、蔵書の整理の為に模様替えをしている時があり、最悪の場合、扉を開けた瞬間に本の濁流に飲み込まれ行方不明になる可能性があるからだ。
実際、ある生徒会長がやらかして二日程行方不明になっていた。
二つ
「本を捜す場合は事前に連絡を」
本は作者の名前で五十音順でシリーズごとにキッチリ整頓されているが、蔵書量が余りにあまりな量の為、素人では見付けるのに時間がかかりすぎるからである。
三つ
「本を読んだら感想とかくれると嬉しいな」
これは絶対ではないが、これをすると主がとても喜ぶ。場合によっては、その人に合ったクマクマ厳選シリーズもしくはウサウサ厳選シリーズが貸し出される。
この厳選シリーズはファンが多く、教員にも利用者がいる。
扉の前で首を傾げるシャルロットも、そのファンの一人である。因みに、シャルロットは恋愛小説や伝奇物を好む。
お気に入りは、世界の中心で叫んだり、アニメ化もされたある漬物の略称で親しまれる作品である。最近は、ライトノベルの皮を被ったヘビーノベルにも手を出している。
「真琴のことだから、休みは部屋に居る筈なのに」
あれー?と再度首を傾げていると、部屋から半袖短パンの小さな司書が顔を出した。
「シャルロットか、どうした?」
「あ、ラウラ。真琴居る?」
「母様なら、隣で本棚の整理をしている筈だ」
「そっちかー」
1200号室の隣、1201号室は「第二熊兎図書館」として絶賛稼働中なのだ。
一時期、増えすぎた真琴の蔵書が問題になっていた。処分しようにも個人の持ち物だし、これと言って問題のある書籍がある訳でもないし、おまけに哲学書や学術書もあるし、何故か歴史的に貴重な文書まで見付かる始末であり、寮長である千冬が頭を抱えていたが、読書仲間の学園長『轡木 十蔵』の鶴の一声により、使っていない隣の部屋を書庫として使用することになった。
近々、「第三熊兎図書館」が開設予定である。
「母様に何か用なのか?」
「ほら、もうすぐ臨海学校でしょ。だから、水着とか買いに行かないかなって」
「母様なら、臨海学校には行かないと言っていたぞ」
「はい?ラウラ、今何て」
「母様は、臨海学校には行かないと言っていたぞ」
「ラウラ、ごめん。ラウラが何を言ってるのか分からない」
「? 変なシャルロットだな。母様は臨海学校には行かないぞ」
臨海学校に行かない?何を言ってるんだ?
「えっと、ラウラどうして?」
「ふむ、シャルロットも知っているだろう。母様は露出をとても嫌うことを」
「うん」
確かに真琴は露出を嫌う。制服は皆(ノホホン=サン以外)半袖になり始めたというのにいまだに長袖だし、IS スーツも自分達のと違い露出は最低限、機体もほぼ全身装甲でこれまた露出は最低限。
一夏は装甲で押し上げられた胸に目がいっていたが、同性の自分達もそうだったのだから、異性で年頃の一夏は仕方無いとして赦してやった。
「いやでも、それなら水着にならなきゃ良いだけだよね」
「そうだな。だが、シャルロットよ、加えて母様は超インドア派だ」
「え?あ、うん」
確かに真琴は超がつく程のインドア派だ。休みの日はラウラにせがまれるか、自分達が誘いでもしない限り部屋若しくは図書館から出ない。加えて誘っても、気づけば本屋にフラフラと消えている。
「だから、行かないと?」
「うむ、因みに私も行かない!」
「いや、なんでそんなに誇らしげに言うのさ?」
「母様が行かないのであれば、私が行く理由は無いからだ!」
このお母さん大好きっ子め。誇らしげに胸に手を当て、フンスフンスと鼻を鳴らすラウラがだんだん子熊に見えてきたシャルロット。今学園では『ラウラ子熊派』と『ラウラ子兎派』による熾烈な争いがクマクマウサウサと繰り広げられている。
まあ、『熊兎図書館』の名から分かるように子兎派が優勢のようだが
「えっと、皆が臨海学校に行ってる間はどうするの?」
「うむ、私は母様に目一杯甘える!母様は本を読むか、第三図書館の開設の準備をするらしいぞ!」
ウーン、あの親にしてこの子ありといったところだろうか?
だが、このままではいけない!このままでは干物熊の出来上がりだ。若干手遅れな気もするが、まだ間に合う筈だ!
「ダメだよラウラ!」
「どうしたのだ?シャルロット」
「それじゃあ、親子揃って干物になっちゃうよ!」
「それの何が悪い」
「某フロムの死神のマネは良いから!鈴に借りてるんだね?次僕に貸して!」
「ふむ、鈴に頼んでおこう」
「お願いね、じゃなくて!」
「む、要らないのか?」
「いや、要るけど。それは置いといて、買い物に行こうよ」
「むう、母様に聞いてみるか」
「うん、そうだね」
二人で1201号室の扉をノックし、中に居るであろう真琴を呼び出す。
「母様、居るか?」
「・・・どう・・・したの?・・・ラウラ・・・」
「真琴、ヤッホ」
「・・・シャル・・・やっ・・・ほ・・・」
中から顔を出した真琴は白のブラウスに黒のロングスカート、その上に紺のエプロンという出で立ちであった。
「真琴、買い物に行こうよ」
「え・・・なん・・・で?」
「母様、臨海学校に行く為の水着を買いに行こうと、シャルロットから誘いを受けたのだ」
「・・・や・・・」
「いや、真琴。あのね?」
「・・・やなの・・・」
「母様」
「・・・やー・・・なの・・・」
拒絶の意思を示し、閉じられかけた扉の隙間にシャルロットの脚がダイナミックエントリーし、それを阻む。
「真琴、行こうか」
「・・・シャル・・・怖い・・・よ・・・?」
「行こうか」
「・・・う・・・うん・・・」
真っ黒な優しい笑顔を浮かべて、微笑みかけるシャルロットに従うしかない真琴であった。
余談だが、熊は蛇が苦手であるらしい。けっしてシャルロットの後ろに巨大な蛇が見えたとかそんなことはない。
少しだけ怯えながら、エプロンを外して外出の準備を進める真琴であった。
用語解説
熊兎図書館
真琴とラウラの部屋。学園において、ここと図書館に無い本は無いと言われるような蔵書量を誇る。
真琴の私物であり、代表候補生の月々の給付金の殆どを使いクマクマ買い集めている。
第二図書館の奥にある鍵つきの黒い本棚には、絶対に触れるなというルールがある。
中には、ネクロ何とかとか、黄衣の何とかとか真琴のヤバイ本コレクションが詰め込まれている。
一夏が第二図書館を訪れた際に、『何故か鍵が開いていた』本棚からおぞましい声が聞こえたとか
『鍵の管理者の真琴は鍵を開けていない』