そして、今回でチビママは終わり。
あとね、涙と鼻水の似合う兄貴分キャラって、白水さんが一位だと、バチバチ読みながら思ったりね…すき!
鉄桶嫁¦『さあ、どうしましょうか?』
元ヤン¦『なにをだ?』
鉄桶嫁¦『今日の夕飯です。皆、泊まりでしょう?』
邪気目¦『オッサンは……、動けないか』
「叔父貴、大丈夫か」
表示枠を横目に、榛名、摩耶、天龍の三人が見る先には、〝五百蔵冬悟〟が〝五百蔵冬子〟になって寝込んでいた。
木曾が心配そうに覗き込むが、当人は呻くばかりである。
「オヤジ、飯食えるか?」
「うぐ……」
「ダメだ。ダウンしてる」
ハードラックダイアモンド社新製品の試作品〝グングン飲む飲む肌若返る〟を間違えて飲んだ結果、五百蔵冬悟はどういった原理か、見事性転換を果たした。
「流石のオジサンも、年には勝てないか……」
「それ以外もあるがな」
そして、店を臨時休業とし自宅に帰ったまではよかったのだが、玄関に続く段差にて突如バランスを崩し転び、腰を強打。
性転換しても190オーバーの長身と、それを支える骨格と筋肉の重量は常人の倍以上の五百蔵。その自重が全て、
医者に掛かるにも、今の状態で行けばどうなるか解ったものではない。なので、元に戻っているという、明日まで自宅にて、腰の痛みと戦う事になった。
「一気に20cm近く身長が変わったんだ。寧ろ、さっきまで普通に動けてたオッサンがおかしいんだよ」
「身長だけじゃなく、バランスも変わってるだろうしな」
「あれ? そう言えば、吹雪ちゃんは?」
五百蔵家の似てない双子の睦月が、似てない双子の片割れの吹雪の不在に気付く。
「あ、ふぶっちなら、新しい湿布買いに行ったよ」
「古いのしか残ってなくてな」
「古いのは効きがいまいちだからな」
杖を突き歩く睦月の車椅子を片付けながら、鈴谷と天龍が答える。
榛名が氷嚢に氷を詰め、五百蔵の腰の打ち付けた部分に、折り畳んだ厚手のタオルを敷き、その上に置く。
「冬悟さん。骨は折れてないみたいですけど、明日も休みにしましょうか」
「ぐ、ぬう……。仕方ないか……」
苦し気に唸る五百蔵。榛名が彼の負担を減らすよう、甲斐甲斐しく世話をする。
年の離れた夫婦、二人の子宝に恵まれ、今では何やらと賑やかで穏やかな日々を過ごせている。
二人が出会い、ここに至るまでには、様々な事があった。
ズーやん¦『榛にゃんとオジサン、話に聞くとかなり危うかったらしいね?』
邪気目¦『総長から聞いたのか?』
船長¦『若い頃の叔父貴は、あの総長が態々警告に行く位に危うかったらしいぞ』
にゃしぃ¦『そんなに凄かったんだ……』
元ヤン¦『それが今じゃ、吹雪と睦月の親か』
摩耶が表示枠を避けて、テレビを点ける。すると、乾いた拍子木の音が、五百蔵家に木霊した。
「お、ちょうど始まった辺りか」
「今日の取り組み、空流の鮫島と柴木山の鬼丸だったろ?」
「お互い小兵なのに、引くタイプじゃねえからな」
「全盛期のオジサンと同じだよね」
「あ、始まったよ」
「まずは、白鯨力と大和号か」
超重量の肉がぶつかり合う音が響き、歓声が沸き立つ。
「あ~、懐かしい音が聞こえる」
「冬悟さんの生身の試合では、終始あの音が止みませんでしたね」
夫婦の過去を懐かしむ会話を他所に、テレビの前に白熱する娘達。玄関が開き、廊下を駆ける音が届く。
事件もあり、騒動もあるが、夫婦は平和な日々を謳歌していた。
〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃
ほーき¦『さて、諸君。そろそろ消灯時間となる訳だが、明日はどうする?』
すずね¦『あー、今吹雪と睦月から、明日から少しの間店休みって、連絡が来たわ』
白夏¦『マジか。あ、マジだ』
髪飾¦『え、じゃあどうする?』
蒼雫¦『遊びに行くのは変更無しですの』
白猫¦『ガンヘッド買いにいこう!』
シャルロットが表示枠で叫んだ瞬間、箒が開いていた表示枠が叩き割られた。
「お? どうした? おねむか、真琴」
「ヴー……」
「母様、私も眠いぞ……」
瞬発で表示枠を叩き割った真琴は、箒の膝に乗ったままで彼女の腹に顔を擦り付ける。
「そうか。なら、寝るか」
己にしがみつく真琴とラウラを、しっかりと両腕に抱き込み、ベッドへ向かう。
「ヴー、ほーきちゃ…」
「ああ、私はここだ」
しがみつき、己を擦り付け甘えてくる真琴に、柔らかな笑みを浮かべ、箒はその丸い背を優しく手のひらを置く様に叩く。
「ラウラ、ほら、布団をちゃんと着なさい。風邪をひくぞ」
「むう……」
ラウラを抱き寄せ、布団を被せる。
ほんの少しの間を置いて、静かな寝息が箒の耳に届く。
「ほーきちゃ…ほーきちゃ‥」
「ははは、どうした真琴……」
そこまで言った時、箒の頬に柔らかな感触があった。
咄嗟の事に、流石の箒も反応が遅れる。
「ほーきちゃ…すき……」
寝惚け眼で見上げる真琴が、頬を赤く染め、幸せそうに弛めた顔を、己を抱く箒に押し付ける。
「そうか、私も好きだぞ」
熱を持つ頬を撫で、柔らかな髪を櫛梳る。
その感触に身を任せ、真琴は眠気に誘われるままに目を閉じる。
「真琴、もしかしたら、この瞬間は夢幻に終わるのだろう。だがそれでも、この瞬間は嘘ではなく、この瞬間に嘘は無い。愛しているよ、私だけの愛し人」
灯りを消し、ゆっくりと小さな温もりを抱き寄せる。今にも壊れてしまいそうな、小さく弱々しい二つの温もり。
「おやすみ、そしてまた明日。目が覚めたら、また花の咲く笑顔を見せてくれ」
箒は二人に並び、ゆっくりと瞼を落としていった。
岩の藤と白鯨力、迷ったんや……