境界線上のホライゾン最終巻が7日に発売だよ!
そう、最終巻が7日に発売なのだよ!
さあ、今日は何日だ?
そうだよ6日だよ!
明日だよ……!
けど、高知は基本一日遅れだから、実質8日だよ……!
ンギィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィッッッ!!
イ゙ィ゙ン゙ッッッ!!
熊谷真琴は、約半年ぶりに見る母に、いつの間にか手を引かれ、少しだけ懐かしさを覚える家の中に入る。
「ほらほら、早く上がりなさいな」
言葉のままに、家に上がる。懐かしい、たった半年の時間で、そんな事を思うのはどうなのだろうか。
そんな事を真琴は考えていたが、ふと腕が軽い事に気付いた。
「というか、真琴、箒さん? このカワイイ娘は誰かしら?」
母、真尋の腕にいつの間にか、眠るラウラが抱かれていた。
確かに己にしがみつき、確りと抱き上げていた筈なのに、ラウラは現在母の腕に抱かれている。
「あらあら真琴? ダメよ、ちゃんとしないと」
手を伸ばす真琴を、ユラユラフラフラとした不確かな動きで避け、曲げた中指を親指で押さえながら、真琴に向ける。
「もう、ダメな子」
激突音、否、炸裂音が響いた。
白夏¦『ふと、表示枠を開いたら、砲撃音が響いたで御座る』
白猫¦『右に同じく』
すずね¦『更に右に同じく』
蒼雫¦『え、今の何の音ですの?』
髪飾¦『砲撃?』
ほーき¦『お義母様のデコピンの音だぞ』
すずね¦『デコピンの音じゃないわよ!』
ほーき¦『熊谷家ではよくある事だ』
白猫¦『え、毎日砲撃?』
白夏¦『なにそれこわい』
ほーき¦『ははは、よくあるよくある。その証拠に、ほら』
箒が表示枠を向ければ、片手で額を押さえる真琴が、しかし平然としながら、眠るラウラを抱き抱える真尋に、その長い腕を伸ばしていた。
ほーき¦『な?』
白夏¦『デコピンの概念壊れる』
白猫¦『マズイですよこれは』
蒼雫¦『なんだっていい、デコピンのチャンスですわ!』
すずね¦『というか、ラウラ起きないわね』
激音が響く中、平然と眠り続けるラウラ。唸りを挙げて真琴の腕が迫るが、真尋は何も気にせず回避。代わりに空いた手でデコピンを打ち込む。
「あう……」
「もう、相変わらず頑丈ね」
二連撃、激音が二回響けば、真琴の頭も二回後ろに弾かれる。だが真尋の言う通りに、真琴は止まらない。
「返…して……」
「ダーメ」
しかしそれは真尋も同じ。狭い廊下の中で、両者一進一退の攻防を続ける。だが、ここは家だ。
「真琴、御義母様。それ以上はいけない」
菷が両者の間に、するりと入り込む。足音無く、動きの機先すら見せなかった。呆ける真琴だが、真尋は違った。
「あら? あらあら?」
腕に抱いていたラウラを、真琴自身にも気付かせずに彼女の腕の中に戻し、いつの間にか自分達の間に居た菷の顔を覗き込む。
「あ、これ柳韻君の技ね。でも、芳泉君もちょっと入ってるかしら? 同じ三馬鹿でも、冬悟君は欠片も無いわね」
彼、そんな技使えないしね。父である柳韻の他の二人、一人は皆でよく行く喫茶店の店主で、もう一人は父とよく仕事している名前だった。
「御義母様」
「でも、少し更識も入ってるかしら? IS学園で学んでるみたいね」
菷の手を取り、その場でくるりと回る。踊る様に身を回す長身は、菷も自分も広くない廊下の、何処にも触れる事無く、追随する菷を見定める。
「ふふん、半年すれば目にもの見よかしら? ……一応は合格ね」
「御義母様には敵いません」
「当然、私は熊谷真尋よ? 〝荒熊〟熊谷真琴の母親、それで真琴?」
「……ピィ……!」
音も無く、まるで最初からそこに居た様に、真尋が真琴に詰め寄っていた。先程まで、菷と手を取り合っていた筈なのに、菷も呆気に取られて反応出来ていない。
そして、また気付けば、真尋の手が真琴の頬に添えられていた。
「貴女はなんで、技の一つや二つ、覚えてないのかしら?」
「おぶぶ……」
真琴の反論を許さぬと、真尋は真琴の顔を挟み、もみくちゃにする。
「まったく、仮にも熊谷の娘が自己の研鑽を疎かにするなんて、まあインドアの貴女が、〝荒熊〟なんて派手な名前で呼ばれてるから、少しはマシになったのかしら?」
「えぶぶ……」
なんとか離れようと、真琴がもがくが、一向に離れられる気配は無い。
むーむーと足掻く真琴を他所に、真尋はその剛力をものともせず、平然と言葉を続けていく。
「インドアなのはお父さん譲りね。やっぱり、似るわね」
「それならば、御義母様もでは?」
「あら、そうね。私には劣るけど」
いまだに脱出の兆しすら無く、自分より頭一つ低い真尋に頬を揉まれ続ける中、真琴の腕の中で眠るラウラが目を覚ました。
「ふぁ……、……母様が二人?」
「あらぁ?」
「……えぇ……」
「ふむ」
真尋と真琴は、母娘という事もありよく似ている。見分けるのは簡単だ。単純に真琴の方が背が高く、体つきも真琴の方が大きい。と言っても、真尋も普通よりは高く大きいので、それ程に差は無い。
故に、ラウラが見間違えても仕方ない事だ。
「あらあらあら、まあまあまあ」
そして、真尋が再びラウラをいつの間にか抱いていた。
音も無ければ、気配も無く、本当に気付けばラウラも、真琴から笑顔の真尋に抱かれていた事に驚いてる。
「真琴、菷さん。貴女達、いつの間にこんな大きな娘を?」
「だれー?」
まだ寝惚けているのか、眠たそうな口調のラウラ。その問いかけに、真尋はますます笑顔を深くし、ラウラを抱き締める。
「あらあらあら、何かしらこの娘ったら、私史上始まって以来の抱き心地……」
「うきゃー」
「…母さん……ラウラ…違う……」
「まさかの認知拒否……! 真琴、貴女に一体何があったの?!」
「いえ、御義母様。落ち着いてください」
目を見開いて、真琴に詰め寄る真尋と、それを宥める菷。ラウラがきょとんと、それらを眺める。
そして、ある言葉を口にする。
「母様に似てる」
「そうよー、私は真琴の母親よー」
「母様の母様……、婆様?」
瞬間だった。
「真琴、菷さん? 貴女達、この娘にどの様な教育を?」
笑顔の真尋がそこに居た。
熊谷真尋
〝荒熊〟熊谷真琴の母親。チート。
作中ではネイトママン的な立ち位置。
五百蔵冬悟、篠ノ之柳韻、荒谷芳泉とは同年代。因みに全員鼻フンでのしている。