お待たせしました。
あと申し訳ありませんが、今回は三人視点ではなく、キャラ目線となっております。
それではゆったりと。
突如アリーナの外で発生した衝撃。そして同時に視界に映る桃色の輝きとそれが防ぐ砲撃。先程から自分たちが避けている砲撃とは比べ物にならないほどの高威力のものを、誰かが何かしらの方法で完全に防いでいた。
ふと無人機にめをむけると、自分たちが相手をしている無人機も光に気を取られていた。
「鈴‼ 今のうちにやるぞ‼」
「え? ッ‼ わかったわ‼」
鈴も奴の状態に気がついたらしく、光から目を離した。自分たちも早くこの無人機を片付け、外の応援に行かなければ。
その思いを胸に、俺は『零落白夜』の準備を始めた。
だがその時だった。
《……にいるんだ‼ 避難指示は⁉》
《だ、誰!? 一年生!? どこから入って、それに扉はどうやって解除されたの!?》
《そんなことどうでもいい‼ 早く避難しろ‼》
《わ、わかったわ》
「この声は……箒か?」
そんな会話がアリーナに響いた。どうやら管制室の生徒が避難しきれていなかったところを、偶然かどうかは知らないが、箒が見つけたところらしい。加えてマイクのスイッチが入ったみたいで、アリーナ中に大音量で響き渡り、無人機は管制室に顔を向ける切っ掛けになってしまった。
「不味い‼ 箒が‼」
「衝撃砲を‼ ツ!? 一夏、何で前に出てくるの!?」
「いいから鈴‼ 俺を撃て‼」
「ああもうっ‼ どうにでもなれ‼」
鈴の衝撃砲を背中に受ける。
すさまじい痛みに襲われる。だがそれを俺は押さえ込み、己の専用機の白式にエネルギーを吸収させた。そしてそれを全て推進力に変換し、一気に無人機目掛けて疾走した。
無人機は寸前で俺に気がついたが、遅い。俺は無人機が動くよりも先に、『零落白夜』を発動した雪片弐型で一気に切り裂いた。
だが念には念をいれて。
「狙いは‼」
《完璧ですわ‼》
一筋の光弾がアリーナ端から放たれ、無人機に直撃した。それはアリーナの壁の上から放たれた、セシリアのライフルの弾である。
弾が直撃した無人機は、一つ大きな爆発を起こし、動かなくなった。
「流石セシリア、狙い違わずだな」
《フフッ、誉めても何も出ませんよ?》
「一夏~、何か一言言いなさいよ‼ 焦ったじゃない‼」
「わ、悪い悪い」
一体目の無人機を倒したことにより、先程の桃色の輝きのことも頭から抜け、俺たちは気を緩ませていた。
そこに千冬姉から通信が来た。
《……終わったようだな》
「おう、みんな無事に終わったぞ‼」
《馬鹿者‼ 今回は運が良かっただけだ‼ 特にお前はそうだぞ、一夏‼》
「……はい」
だが送られた言葉は称賛ではなく説教だった。
《まったく。兎にも角にも、三人ともよくやった。それと先程の外の無人機だが、無事に無力化された》
「え? あ、そうなのか」
すっかり失念していたことを言われ、俺たちはようやくその事を思い出した。けど千冬姉の話では無力化されたことから、心配する必要はないだろう。
ーー警告、敵機反応有リ。後方ヨリ砲撃注意。
突如目の前に警告画面が表示された。つられて自分の背後を見ると、沈黙したはずの無人機がこちらに砲口を向けていた。そして今にも砲撃を放とうとしていた。
考える余裕などない。
俺は咄嗟にスラスターを吹かし、無人機に向かって突撃した。
「《一夏(一夏さん)ッ‼》」
後ろから俺を呼ぶ声が聞こえた。だが俺はそれを振り切り、無人機に直進した。雪片を展開し、『零落白夜』を発動させる。
(俺は士郎を追い越して鈴を、箒を、セシリアを、千冬姉を。俺に関わる全てを、守る‼)
切りかかる俺が若干遅く、先に砲撃が放たれてしまった。だが俺は敢えて砲撃に飛び込み、そしてそのまま突っ走ろうとした。
ーー馬鹿者が
ふとそんな言葉が聞こえた。そして俺に砲撃が当たる直前、俺は横合いからものすごい衝撃で吹っ飛ばされた。
そして小さな赤い光が瞬くと、次の瞬間には無人機は抉られるように足だけを残して吹き飛んでいた。
「一夏!? 誰……よ……」
《し、士郎……さん?》
「……士郎?」
俺を吹っ飛ばしたのは士郎だった。
振り返った先の士郎顔は今まで見たことないほど険しく、目は冷たい眼光を放っていた。俺はそれがどうしようもなく恐ろしくなり、身動きがとれなくなった。
顔を逸らそうとしても、目は士郎の顔に釘付けになっている。
対称的に士郎の傍に立つカレンは少し悲しそうな顔をしていた。
「お前は自殺願望者か。いったい何がしたい」
「……」
「あのままお前に砲撃が直撃していればどうなっていた。お前は塵一つ残さずこの世から消えていたのかもしれんのだぞ」
士郎は怒気を隠そうともせずに、俺に言葉を投げ掛けてきた。体が動かない。だけど俺の口は反論しようと動いていた。
「で、でも‼ 結果的にはみんな生きていたか「だから貴様は馬鹿だといっているのだ‼」ツ!?」
でもその反論も士郎に潰された。近くに寄ってきたセシリアと鈴も、回線を開いたままだから話が聞こえているはずの千冬姉も何もしゃべらない。
「結果的にはよかった? ああそうだ、確かに今回は誰も負傷者が出なかった‼ だがそれはただの結果論にすぎん‼ 貴様は過程を一切考えていないのか‼ 最悪の事態を想定していないのか‼」
士郎の声がアリーナに響く。
「……俺は……俺に関わる全てを……守るために……」
自然に言葉が口をついて出てきた。でもその瞬間、何かが切れる音がした。同時に何故かカレンが俺に背を向ける形で士郎の前に立った。
「……カレン、退け」
「退いたらどうするの? まさかと思いますが、あなたは
「……この未熟者は何もわかっていない。ならば溺死する前に、現実を一度見せなければならん」
「その結果、彼が今潰れたらどうするのですか? あなたも彼がそうなることを、望んでいるわけじゃないでしょう?」
「……」
カレンと士郎の口論が続く。その間にセシリアも鈴も、コントロールルームから千冬姉も山田先生も俺の元に近づいてきた。気のせいか、千冬姉以外は皆顔を青ざめさせて士郎を見ている。
「士郎。あなたがそこまで怒るのは全てではないけど、私にも少しはわかります。でもここは抑えて。あなたと
「……」
カレンのその言葉を最後に、士郎は怒気を少し納めた。そして何も言わずにアリーナから一人出ていった。同時に場の空気が軽くなり、俺は思わず大きく息を吐いてしまった。
「……彼を、誤解しないで下さい」
「……え?」
残された俺たちにカレンが言葉を投げ掛けてきた。
「……士郎を誤解しないで下さい。彼は……」
「……過去に何かあったのだな?」
カレンの言葉に千冬姉が質問した。それに対して、カレンは無言を貫いた。それは士郎が過去に、人命に関する何か出来事があったという答えに他ならなかった。
でもそれは変だ。士郎とカレンは俺たちと同い年なはず。
「……詳しいことは言えませんが、そもそも彼には幼少の頃の記憶がありません」
「……記憶がないだと?」
「でもそれなら一夏も……」
「では一夏さんの、皆さんの最初に覚えていることは?」
最初に覚えていること? 俺も詳しくは思い出せないけど、初めから親はいなかった。その代わり、千冬姉や箒たち、教会に住まう士郎たちがいたから、楽しくないと言えば嘘になる記憶だ。
「……比較的明るいものではありませんか?」
「……まぁ」
「途中で色々あったけど」
「最も古い記憶は、楽しかったことですわ」
俺や鈴やセシリアはそう答え、千冬姉も山田先生も言葉こそ発しなかったけど、首肯で示した。するとカレンは先程と同じような、悲しそうな表情を浮かべた。
「……彼の最初の記憶、それは地獄の中心を一人歩いていたことです」
「……は?」
「地獄って?」
どういうことなんだ? 地獄の中?
「彼は幼い頃、都市一つ飲み込む未曾有の大火災に巻き込まれました。生き残りは確かにいました、ですが彼以外の生き残りのほとんどは、災害地の隅で炙り出された者」
「ちょっと待って‼ ということは……」
「……中心地付近で生き残ったのは……実質士郎さん一人?」
「俺たちに出会う前に、そんなことが……」
カレンから語られる士郎の原初を聞いて、俺たちは唖然とするしかなかった。
「だが変ではないか? それほどの火災ならば、全国ニュースになってもおかしくない」
だけど千冬姉一人は、それに異を唱えていた。でも確かに千冬姉の言うことは正論である。それほどの災害ならば、全国ニュースになっても、もしかしたら世界ニュースになる可能性もある。
「それにつきましては、私の一存で話すことはありません」
「何か理由があるのか?」
「ええ。ですが時が来れば、あなたたちに話すかもしれません」
カレンは千冬姉にそういうと、未だ地面に座り込んでいる俺に近より、目線を合わせてきた。
「……一夏さん。士郎はあなたが嫌いだから、あなたに敵意を向けたわけではありません」
「それは……まぁわかる」
「彼はその災害のとき、助けを求める人々を見捨てて自分だけ生きていると、未だもって自責の念に囚われています」
自責の念って、まだ六歳程度の子供がどうにかできるものではないだろう。
「それが原因で、彼も一時期あなたと同じような夢を追いかけていました。ですがその果てに彼は絶望を味わったのです。彼のあの怒りは、あなたを過去の自分に重ねているのもありますが、あなたに自分と同じように絶望してほしくないという思いからきています。それを忘れないで下さい」
カレンはそう言うと、それ以上口を開かずにアリーナから去っていった。でも残された俺たちも話をする気力も出ず、無言のまま各々の部屋に戻って行った。
◆
……はぁ。
間抜けか俺は。俺やカレンと違い、一夏はまだ四半世紀生きていない少年、加えて数ヵ月前前まで非日常とは無縁だったのだ。青い理想を持っていても仕方がない。
それを俺は……
「やはり
「……カレンか」
どうやら考え込み過ぎていたみたいだ。カレンが近づいていたのに気がつかないとは、気が緩みすぎているのだろうか。
「……すまんな」
「何がでしょう?」
「あいつらの、一夏たちのフォローをしてくれたのだろう。迷惑かけた」
「……」
背中から声をかけられているが、おそらくカレンは呆れた顔をしているだろう。現に今も後ろから盛大なため息が聞こえた。
「……あなたが今回やったことを責めるつもりはありません。ある意味で、あなたと
「……」
「ですが、流石に最後のはやり過ぎでした。もしや、体に精神が引かれ過ぎているのでは?」
「……否定できないな」
そうなのだ。実質俺は三十越えている男だが、体が若返ったせいなのか冷静さが幾らか欠けている。元の世界ならあのようなことは起こさないのだが。
「……徐々に馴らすしかないでしょう」
「……本当に迷惑かける」
「あなたと契りを結んだときから覚悟していたわ。だから覚悟なさい、私もそれなりの要求をしますので」
「ああ。こっちも覚悟している」
本当に、彼女には頭が上がらない。初めて出会ったときからそれは変わらない。
それに、いい感じに頭も冷えた。一夏たちには悪いことをしてしまった。明日の朝一に謝罪に行こう。
「……では早速」
「む? お、おいちょっと待て。なんか真っ赤な布がこちらににじり寄ってきているが? まさかと思うが……」
「あらつまらない。こんなにも早くわかってしまうなんて、早漏は嫌われるわよ?」
「関係ないだろう!? 兎に角逃げ「フィッシュ」ヌォウッ!?」
そしてズルズルと引きずられる俺。端から見れば情けない男であ……ちょっと待て、何故寝室に向かうのだ?
「今夜は寝かせませんよ?」
「んなッ!? ま、待て‼ 俺たちはこの世界ではまだ学生だぞ!?」
「うるさい駄犬ね。これは躾が必要かしら?」
「待て!? おい、やめ……ッ!?」
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翌朝。
重い体を動かし、朝早く教室に向かうと珍しく一夏と箒がいた。基本的に教室に最初に来るのは俺とカレンなのだが、今朝は違ったようだ。
俺は荷物を机に置き、一夏たちに近寄った。その際彼らが一度ビクついたのは、昨日のことを考えれば仕方がないだろう。
「……一夏」
「し、士郎か。お、おはよう」
「ああ、おはよう」
「「……」」
挨拶のあとに教室を包んだのは沈黙。互いに気不味い空気が流れる。
「……昨日は」
「えっ?」
「昨日は……すまなかった。どうにも感情を上手く制御できていなかったようだ」
「え、ああ、いや……俺も確かに考え無しのとこもあったから、お互い様にしようぜ?」
「そうか……寛大な心に感謝する。ありがとう」
昔から感じていたが、一夏は心は広い。それこそが、他の人から受け入れられる理由だろう。
「あ、そういや鈴や箒とも話したんだけど、近いうちに弾のところに行こうと思ってるんだ。良ければ士郎も一緒にどうだ?」
「そうだな。予定が合わされば頼む」
「おう‼ 弾にも言っとく」
そう言って誰もが目を向ける笑顔を浮かべる一夏。願わくば、この笑顔が絶望に染まらないことを。
と、そこで教室の扉が開かれ、次々に女子が入ってきた。中には俺を見つけるや否や、急いで荷物を置いて駆け寄ろうとする子もいる。恐らくアイアスのことだろうが、後で暗示をかけておくことにしよう。流石にISの装備というのは無理があるからな。
◆
「いったい彼は何者なの?」
わからないことだらけだ。
無人機が侵入してきたとの一報を聞いて、急いで専用機を纏って現場に向かったけど、肝心のアリーナは立ち入ることができなかった。加えて新しく反応がでた場所に向かうと、既に別の無人機が砲撃を放つ瞬間だった。
いくらISでも間に合わない。加えて砲撃の向く先には、まだ多数の生徒がいた。瞬時加速を使ってもギリギリ間に割り込めるかという猶予しか残されていなかったけど、私は迷わず瞬時加速を使った。
それでも出るのが遅く、先に砲撃が放たれてしまった。私は絶望した。私の判断がもう少し早ければ、生徒たちを犠牲にすることはなかった。
結局国家代表になっても、対暗部用暗部の当主であっても。私は生徒を守ることができない小娘でしかなかった。
そう思い、ならばせめて早くあの無人機を仕留めようと動こうとしたけど、私の目の前では信じられない光景が広がっていた。
「桃色の……大きな花」
先頭に立ち、右腕を翳しているのは二人目の男性IS操縦者、衛宮士郎。そしてその翳す手の先には、教室の床ほどの大きさはある、七枚花弁の桃色に光輝く巨大な花。その花は無人機の砲撃を漏らすことなく防いでいた。
加えて一枚一枚が薄いにも関わらず、罅一つ入らないふざけた頑丈さ。でもISの装備ではないもの。
ISを纏っていても負傷しないかわからない砲撃を、たった一人の少年がよくわからないもので完全に防御している。その現実を、初めは受け入れることが出来なかった。でも砲撃が止んでも生徒たちが無事であることを確認すると、彼が一人でどうにかしたという現実を受け入れざるをえなかった。
それからはあっという間だった。
彼がセシリアちゃんとの試合のとき同様消えたと思えば、空中にいた無人機はバラバラにされていた。加えて丁寧に元の形がわからなくなるほどに潰されていた。
使ったものは白黒の双剣。ISの機械じみたものではなく、惹き付けられるほど流麗な造りの剣。二振りの剣はまるで翼のように大きくなり、円を描くように振るわれた後には全て終わっていた。
「敵にはならないと言っていたけど、当主としては……」
あれほどの力を持っている存在は、危険である。それにこちらが彼らに敵対しなければいいとは言っているが、ある意味それは不安要素を抱えることと同義。一刻も早く排除すべきである。
しかし。
「私個人としては信用している」
無論私の考えなど、余計なもの以外のなんでもない。それでも、私は彼が信用できると感じている。まぁ相手がどう思っているかは知らないけど。
「まずは、信頼を勝ち取ることかしら?」
幸いあと二年はある。その間に、できるだけコンタクトをとろう。もし彼の思想と私たちの目的が合致すれば、亡霊の排除に一歩近づけるかもしれない。
はい、ここまでです。
ちょくちょく視点も変わり、尚且つ展開に疑問を覚える方も多いと思います。ですが現時点においてこれが精一杯です。
理由はスランプであるのも一つですが、ISの原作を最後に読んだのがざっと五年前、内容が結構抜けているのもあります。
その点につきましては御容赦願います、
さて、次回は番外編。その後書きでfateとハリポタ、どちらを更新するかを発表します。
それではこの辺で