連投ですね
それではゆったりと
士郎の用意したミルクティーとクッキー貰って、私は一先ず落ち着いた。そして改めて二人を見る。
何というか、本当に不思議な二人だ。
衛宮士郎。
日本人らしからぬ白髪と黒い肌、鋼色の瞳。服の上からでもわかる、鍛えられた肉体。交渉慣れしている風体。そして高い家事技術。
衛宮・O・カレン。
外国人なのはわかるけど、その中でも珍しい銀髪、そして金の瞳。自らをシスターと名乗るこの少女は、まさに神様に仕える聖女のよう。
二人は見た目は7歳前後、妹の箒ちゃんと同じぐらいだろう。でも感じる雰囲気は、私達よりもずっと年上のようだ。
「ねぇ二人とも」
「「なんだ(なんでしょう)?」」
「二人は何歳?」
私の問い掛けに、二人は一瞬だけ視線を通わせたのを、私は見逃さなかった。あれはアイコンタクトで会話している。
「「7歳だが(ですが)?」」
「嘘だね♪」
「「……」」
ほら、黙りこくった。
束さんを騙そうだなんて二万年早いよ。
束さんの泣き顔の代金は高いのだ。
「大丈夫、別に誰かに言いふらしたりとかしないから」
「「……」」
私が催促しても、二人は口を開かなかった。
……そっか。二人にとっては、あまり触れられたくない話なのかな?
「……わかった。7歳ってことにしといてあげる」
「……すみません」
「……こちらも助かる」
流石に今の束さんは常識を弁えるよ。
二人も、私が本当に触れられたくなかった部分は聞かなかったし。
あれ? でも7歳なら……
「……二人とも、学校はどうするの?」
「……通う必要性を感じていないので」
「少なくとも、大学卒業レベルの知識は有しているからな」
「……そうなの?」
これは驚いた。
大学卒業レベルだとしたら、今更小学校に行っても味気ないだろう。
今の私のような感じか。
あれ?
そう言えば二人とも、親はどうなんだろう?
「二人には両親はいるの?」
「「いないぞ(いないわ)」」
「……」
何か束さん、さっきから不発弾量産してるんじゃないかな?
私が質問する度に空気が重くなっているのは、けっして気のせいじゃあないよね?
気をとりなおして、本題に入ろうか。
「ああー、えっとー」
「「?」」
「あの~、さっきのラボ云々の話だけどね? あれいいよ」
「いいよ、とは?」
「だから、今回は引き下がるってこと。美味しい御飯もらっちゃったし、何か色々と吹っ切れることができたしね」
「……そうか」
「それはよかった」
二人して柔らかく微笑んで私を見る。
あっ、この感じ何かに似ていると思っていたけど、今ようやくわかった気がする。
まるでじゃれ合う私と箒ちゃんを見つめる両親みたいだ。
そう考えると、何だか二人の纏う空気も、自然に感じる。
「うん、そうする。それでだけど……」
「どうしました?」
「む?」
……今の私なら、ちゃんと出来るだろうか?
いや、絶対やるんだ。
「……今日話したこと、ちゃんと両親とも話してみる」
「……そう」
「うん。何か二人を見ていると、世の中敵ばかりって訳じゃあないと思えるきがするんだ」
「……そうか」
溜まっていたものを吐き出したからだろうか?
スッキリとした今なら、私の心そのままを、両親に話すことが出来ると思う。この二人を見ていると、尚更そう思える。
「お茶と御菓子、お昼御馳走様。それから話を聞いてくれてありがとう」
「お気になさらず」
「性分だからな」
私は二人に挨拶し、教会をあとにした。
目指すは我が家、空は私の気分と未来を指し示すような日本晴れになっていた。
◆
篠ノ之束との邂逅を果たした翌日、彼女の一家全員でお礼を言われてしまった。
束の顔を見る限り、教会をあとにしたときよりも、更にスッキリとした顔になっている。
少しだけ、彼女の目に写る世界は、鮮やかな色が加えられたのだろう。あの一家の笑顔を見れただけでも、お節介を働いた甲斐があるものだ。
この世界に来て二週間が経過し、身元保証人として篠ノ之家が後継人につくことになった。
その結果、俺とカレンは小学校に通う必要性が出てきたため、渋々束の妹御である箒と同じ学校に通うことになってしまった。
ちなみに言うとこの箒という少女、なんでも同級生の一夏という少年にご執心なのだとか。
カレンの玩具にならないことを願おう。
そして今日は編入初日、偶然か必然か、俺とカレンは箒と同じクラスとなった。
担任の教師に呼ばれ、二人して教室に入る。
途端俺達に視線が殺到する。
「今日からお友達になる二人です」
「衛宮士郎という。趣味は鍛練に刀剣鑑賞、料理だな」
「カレン・オルテンシアです。趣味といえるものはありませんが、オルガンが弾けます」
簡単に自己紹介を済ませ、俺達は示された席に座った。
そしてその席も、俺とカレンは隣同士という配置、計画されているのではないだろうか?
因みにこうした公共の場では、カレンは旧姓を名乗ることで、二人で合意した。
流石に夫婦ってわけにもいかないからな。
授業は……まぁ着いてこれない方がおかしいというか、そもそも一度大学も卒業しているから着いていけなければ大問題だ。
カレンも、高校卒業程度の知識は有しているから、何も問題はないだろう。
ただ心配をするといえば、それは体育か。
カレンはともかく、俺に関しては抑えないといけない。
ドッジボールで大怪我させたとなれば、大問題である。
まぁなんとかなるだろう。
授業が終わり、休み時間になると案の定クラスの皆に囲まれた。
こういったところは、世界を越えても変わらないものなのだな。
「衛宮って何かスポーツやってるの?」
「カレンさんって髪綺麗だね」
「士郎の髪って自毛? すげー色だよな」
「二人はどこに住んでるの?」
「麻婆はいるか?」
「カレーは好きですか?」
等々、テンプレな質問を、嵐のように浴びせられた。
一応差し障りのない答えを出したが、流石に住居の答えは窮した。そのとき箒嬢がフォローしなければ、空気を悪くしていただろう。
「なぁ衛宮ってさ。何か武道やってるの?」
「ん? いや、特に」
「でも箒がさ、衛宮の手は剣を握ってきた手、って言っていたぜ?」
道場の娘というのは、伊達ではないということか。束の話によると、箒は剣道をやっているらしい。ならば、手に目を向けるのも仕方がないと言うべきか。
「まぁ確かに剣は握っていたな。ただ真っ当流派でも、ましてや剣道でもないのだが。それとすまないが、君の名前は?」
「あっ悪い。俺の名前は織斑一夏、一夏って呼んでくれ」
「ならば一夏と。ふむ、確かに夏という言葉が合うな。それと俺は士郎で構わんよ」
「おう、ありがとうな士郎」
明るい人柄の男だな。
彼ならば、周りから好印象を受けるのも頷ける。
「まぁ。あなたが一夏さんなのですか」
「そうだけど、何で俺を?」
「束さんから色々と伺っていますので。面白い方だと」
「そ、そうなのか」
……一夏、君に合掌しよう。
カレンに目をつけられてしまった、自分を恨むといい。
「士郎? 何か失礼なこと考えてません?」
「いや、なにも」
「……そう」
……流石に編入初日に、聖骸布で簀巻きにされたくはない。というか何で学校にそんな物騒な布を持ってきているんだ。
「あなたがその毒牙を他の子に突き立てないためよ」
「……俺は蛇か狼なのか?」
「あら、違ったの?」
「中々に酷い扱いだな。というより考えを読むな」
「今更でしょう?」
「……そうだな」
ついつい、いつもの乗りでカレンと会話してしまい、気がついたときには周りから好奇の視線にさらされていた。
……遠坂のうっかりが感染ったか?
「なぁ、何か今のやり取りって……」
「まるで夫婦みたいだな」
「もしかして二人は……なの?」
「「「キャー!!」」」
……この世界の小学生を甘く見ていた、結構ませてるのだな。
「えっと。士郎とカレンさんって、もs「フィッシュ」ムグゥ!?」
「ダメですよ、織斑さん。人のプライベートに土足で入り込むなんて。相談事ならともかく」
「━━!? ━━!!」
……この世界における簀巻き第二号が一夏とは、南無南無。
彼の英雄王ギルガメッシュでさえ、裸足で逃げ出す簀巻きの刑だ。じっくり味わうといい。
「な、なぁカレン。一夏は大丈夫なのか?」
「ご心配なく箒さん、授業が始まる前に開放しますので」
「そ、そうか。なら安心……なのか?」
まぁ
余談だが、やはり簀巻きは一夏のトラウマになったらしく、少しだけ一夏は考えなしの発言は控えるようになった、少しだけな。
はい、ここまでです。
ここで超簡単な設定を。
衛宮士郎:
外見は小さくなったアーチャー(髪下ろしver)
元の世界にて、カレンと結ばれた。
『世界』と契約していないため、守護者にはならない。
この世界では、専用機が後々与えられる。
衛宮・O・カレン(カレン・オルテンシア):
外見は小さくなったカレン、履いてない格好はしない。
元の世界にて、衛宮士郎と結ばれた。
専用機は与えられない。
ってな感じです。
それでは今回はこのへんで