更新です。
それではゆったりと
士郎はエネルギー補給のために次は俺とセシリアの試合になったんだけど、まさか士郎と同じことをやらかすとは思わなかった。
一次移行した俺の専用機『白式』には近接ブレード一本しか搭載されていなかったんだが、これがまた相当なじゃじゃ馬で。
単一使用能力として千冬姉と同じ技、『零落白夜』が使えたんだけど、これがS.E常時消費型の能力。士郎の常時自己修復能力と同じだった。いや、技を使うときだけなのがせめてもの救いなのか?
まあ兎に角、あれだけ格好つけた挙げ句まさかのエネルギー切れで敗北、やべぇ千冬姉に合わせる顔がない。
のろのろとコントロールルームに戻ると、早速千冬姉の拳骨が襲ってきた。はっきり言おう、滅茶苦茶痛い。
「よくもまぁ持ち上げてくれたな、馬鹿者」
「いや千冬姉。俺は、イデェ!?」
「織斑先生だ、いい加減学習しろ。それより30分後に最終試合だ、わかってるな?」
「イテテ……俺士郎に勝てるヴィジョンが浮かばないよ」
そう。
次は俺と士郎の試合なんだか、ハッキリ言って攻撃が当たるヴィジョンが浮かばない。寧ろ瞬殺されるイメージ以外浮かばない。
「安心しろ、端からそんなこと期待してない」
「それはそれで悲しい……」
「最後まで聞け。期待してない理由は私でも勝てるヴィジョンが浮かばないからだ」
「え? そうなのか?」
「そうなんですか? 織斑先生?」
驚きだ。
俺から見れば、千冬姉は最強と言っても過言ではない力を持っている。その千冬姉が勝てるかわからないと言っているのだ、驚かない方がどうかしている。
ただ一人、束さんは得心がいったように何度も頷いているけど、束さんは何か知っているのだろうか?
「ISを使おうと生身だろうと、私は士郎に一生敵うことはないだろうな。あの剣の練度、あれは何年も振り続けてきたものだ。それも私達のような道場剣術ではなく、戦場で生きるために身につけた、な」
「戦場でですか? でもそれって……」
「ああ、現代では考えられないことだ」
「でも、アイツには才能があるだけじゃあ……」
「いや、奴には才能の欠片もない。ただ直向きに剣を振り続けてきた、血の滲む努力の集大成が、士郎の神業じみた剣技だ」
士郎って才能がないのにあのレベルなのか?
「それじゃあ千冬姉は士郎と手合わせしたことあるのか?」
「いや、それは奴の鍛練を見ただけで刃は交えていない……昔士郎と一度手合わせしたんだが、私は一度も攻撃を当てることができなかったどころか、一歩も動くことが出来なかった」
「千冬さん、それって……」
「ああ、丁度篠ノ之が引っ越す直前にやった最後の道場練習のときだよ。あのとき一夏はいなかったな」
「お、おう」
「織斑先生が動けなかった?」
「あの頃は少し調子にも乗っていた。道場には私より強いものは師範を除いて束しかいなかったが、その束はそもそも武道に興味を示してなかったからな。必然的に師範であった彼女らの父、柳韻さんのみが稽古相手だったのだ」
ああ、それは覚えている。
千冬姉は道場でも突出した強さを誇っていたから、誰も相手が務まらないとして柳韻さんが相手をしていたのだ。
柳韻さんが相手出来ないときは、士郎が受けるだけをしていた。
「それで件の稽古のとき、私は士郎に手合わせを申し込んだ、柳韻さんが止めたにも関わらずな。今思えばなんて馬鹿なことをしたと反省している」
「……どうだったんですか?」
「……士郎は渋々だったが、自分で作ったという二本の剣鉈のような木刀を構えた。先程の試合のように、弓を引き絞るような構えをな。正面から向き合った私は、理由がわからないが恐ろしくなった」
「恐ろしく?」
「ああ。こちらを見据える目は、瞳の色とは裏腹に闇しかなかった。そして自分が殺されるヴィジョンが幾つも浮かんだのだ。
頭には『逃げろ』という声が何度も響いていたが、それでも無理矢理動いて頭に打ち込んだ……」
千冬姉はそこで言葉をきり、顔を青ざめさせて首を振った。まるで恐ろしい何かから逃れるように。
箒は箒で心当たりがあるのか口をきつく結び、束さんは珍しく笑みを引っ込めて真面目な顔をしていた。
「……気がつけば私は膝を着いていた。別に私が打ち込まれた訳ではないが、私はそのとき学んだのだよ。抜いた刃を再び納め、敗けを認めることも必要であると。力だけが全てではないと」
千冬姉はそれだけ言うと、何故か近くにあった水差しから水をコップに注ぎ、一気にそれを煽った。そしてコップを捨てると改めて俺に向き直った。
「いいか一夏、勝つ必要はない。だが私のように、力について間違った認識をするな。士郎は機体名が示す通り、抑止力にも守護者にも成りうる存在だ。私は間違えたが故に士郎に止められた」
「束さんもそうだよ。束さんも何度も間違えたから何度も止められたんだ。だからじっくり考えることが大切だよ、箒ちゃんもね」
「……はい」
「おう、わかった」
……千冬姉にそんなことがあったのか。
それにしても力、か。確かに俺は少し調子に乗っていたのかもしれない。
ISに乗れることがわかって、武装も千冬姉と同じものを持てたことから俺は嬉しかった。これで千冬姉と同じ立場に立つことができると。全てを守ることができると。
だけど俺は千冬姉の力しか見ておらず、想いを見ていなかった。その結果がセシリアへの敗北だ。
まったく何て手痛い指導なのだろうな。本当に体にまで叩き込まれた教訓になったよ。これはもう、本当にじっくりと考えないといけないよな、俺がISを動かせる意味を、ISという『力』の一つを持つ意味を。
「……時間だ。行ってこい」
「織斑君、頑張ってくださいね?」
「一夏、全力でぶつかってこい」
「いっくん頑張ってね~」
四者四様に激励され、俺はカタパルトからアリーナへと飛翔した。
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アリーナの地面には既に士郎が待機していから、俺も士郎に合わせて地面に降りた。
士郎の立つ様は、先程聞いた話と今の格好、白マントに黒い軽鎧に加え、かきあげれた髪も相まって、まるで歴戦の戦士のように見えた。
機体名『抑止の守護者』、搭乗者『衛宮士郎』、武装は剣と弓によるオールラウンダー。
「……士郎」
「どうした?」
「……千冬姉から昔の話を聞いた。士郎が千冬姉と手合わせしたときの話を」
「……そうか」
俺が話始めたことに、士郎は静かに耳を傾けてくれた。
カウントが始まる。
「俺は、正直『力』についてあまり理解していない。何が正しくて何が間違っているかわからない」
「……」
「だから士郎、俺は俺の持ちうる全てをお前にぶつける。だからもし良ければ士郎も見せてほしいんだ、士郎が見つけた答えの一つを」
士郎は俺の問い掛けに対し、無言で佇んでいた。マントで下半分が隠れたその顔は、何を考えているかわからない。
俺は近接ブレードを、士郎は双剣を展開する。
「……わかった」
「士郎?」
一言呟いた士郎は、真っ直ぐ俺を見つめてきた。その目は鷹のように鋭く、鋼よりも堅い信念を内包している様に感じられた。
残り三十秒。
「お前たち姉弟は、言葉よりも剣で語る生粋の戦士気質らしい。良いだろう、これよりお前が挑むは剣戟の極致」
「……士郎」
「拘りも何もかも捨てて、恐れずして掛かってこい。お前の信念、お前の覚悟、その剣に籠める準備は万端か」
「━━ッ!! ああ、勿論だ!!」
残り三秒。
俺は八相の構え。士郎は先程とは異なった、両腕をだらりと下げた変わった構えをとった。
一見隙だらけに見えて隙がないそんな構えであって、だが不思議と士郎が自然であると思える構えだ。
「━━ 着いてこれるか?」
「士郎こそ、着いてきやがれぇ!!」
ブザーが鳴ると同時に、俺は士郎目掛けて突進した。
◆
━━ これよりお前が挑むは剣戟の極致、恐れずして掛かってこい
士郎はそう言った。
コントロールルームでは彼らの会話が全て聞こえていた、いや、コントロールルームだけではない。オープンチャネルで会話していたこともあり、アリーナの観客席全てに会話が聞こえていた。
彼らの会話を理解できた生徒は、果たして何人いるのだろうか? 『力』を持つ意味を理解しているのは、果たして何人いるのだろうか?
彼らの試合が、何かしら彼女らに良い影響を与えることができればと、心から思う。
そしてこうも思う。私がドイツで受け持った教え子たちに、彼らの戦いを見せたかったと。
一夏は掛け声と共に飛び出し、一刀のもとに切り伏せようとした。だが士郎は片手の剣を小さく動かし、その一撃を難なく防ぐ。
普通なら空へ逃げるなりして距離を取るが、一夏はそれをせずに後ろに下がるだけだった。そして再び突進し、袈裟に切り掛かったがそれも士郎は受け流す。
「……なぜ一夏は飛ばない?」
「箒ちゃん、これはもう互いの意地のぶつかり合いなんだよ。箒ちゃんも剣道やってるからわかるんじゃないかな?」
「ええ、まぁそうですが」
《クソッ、当たらねぇ!!》
《……》
「織斑先生。衛宮君のあれは……」
「私のときとは違う、相手を恐怖させる方の本気ではないのだろう。あれは、衛宮の神業じみた防御の一端だと思う」
私達が話をしている間も攻防は続く。
一夏が何度も切り掛かるが、士郎は双剣を腕の一部の様に操り、右へ左へと受け流している。一夏は攻撃の余波で、士郎は防御の影響で互いにS.Eを減らしていく。
観客の生徒は野次を飛ばすことなく、固唾を飲んで成り行きを見守っている。コントロールルームでもいつしか話し声は無くなっていた。
尚も攻防は続き、二人のS.Eはレッドゾーンに突入していた。
そのとき一夏は距離を取り、ブレードを大上段に構えた。士郎は初めと同じ、腕を下げる構えをとる。
《ハァァァアアアアア!!》
《フンッ!!》
一夏は今までよりも更に大きな声をあげ、士郎に真正面から切り掛かった。本人は気がついていないだろうが、『瞬時加速』と呼ばれる技術を使っている。
士郎はそれを真っ直ぐに見つめ、そして━━
━━双剣を交差させ、防ぎきった。
「なっ!?」
「ふ、防いだ!?」
「い、今のに反応したのですか!?」
攻撃を防がれた一夏はそのまま、士郎に後方へと飛ばされた。
《ハァ……ハァ……》
《……》
「「「「……」」」」
『……』
一夏の荒い息のみが響き、その他全ての音は聞こえても遮断された。一夏は体力に限界がきたのか、膝を付く。が、その目はまだ闘志を無くしていない。
士郎は膝を付く一夏を無言で見つめていた。
《ハァ……ハァ……まだだ……》
《……一夏》
《ハァ……ハァ……ん?》
《お前の覚悟、お前の想い、しかと受け取った》
士郎は静かに喋り出す。
《約束だ、お前に俺の一端を見せよう。見逃すなよ》
士郎がそう言うと一夏はその場で立ち上がり、真っ直ぐに士郎を見据える。対する士郎は、双剣を胸の前で交差するように構え、そして一夏目掛けて投げつけた。
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一夏はブレードで双剣を弾いたが、驚くべきことが起きた。
弾かれた双剣は地に落ちることなく旋回し、加えて更に一組の双剣もいつの間に共に旋回をしている。
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士郎が一つ動作を行うたびに、不思議な詩が聞こえる。
一夏の周りを旋回する四本の剣は、詩に合わせるように一夏に一斉に襲いかかり、爆散してS.Eにダメージを与える。が、狙ったかのようにS.Eを僅かに残す。
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三度士郎の両手には双剣が握られる。
だがその双剣は依然機械じみたものだが、今までの双剣とは異なり士郎の身長をも遥かに越える大きさであった。
双剣を構えた士郎は、一夏に向かって駆け出した。
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詩の結びと共に振るわれた双剣は、余すことなく一夏のS.Eを食らいつくした。
━━ 織斑一夏、エネルギー零。勝者、衛宮士郎。
ブザーが鳴り響き、試合結果が伝えられた。
はい、ここまでです。
書いてて思ったんですが、このままだとラウラがヤバイことになりそうな気がします。
ところでここでアンケートの報告です。
活動報告にてこの作品に関する募集を行いますので、回答をお願いしたい次第です。
そして原作一巻の内容が終了すれば、今度はハリポタ三巻内容の更新に移りたいと思います。
それでは今回はこのへんで