炎の吐息と紅き翼   作:ゆっけ’

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3:覚醒

「なんなんだよここ……」

 

 ついそんな呟きが出てしまう。村長に会いに行くと決めたはいいものの家の場所を聞いていなかったのを思い出し、「まぁ村の人に聞けばいいや」と考えてユンナの家を出たのが数分前。

 

 海外に来たのはこれが初めて、さらに(恐らくは異世界の)未知の村ということで、龍亮は結構わくわくしていた。店屋の威勢のいい掛け声や子供のハシャいでいる姿、井戸端でお喋りするおばさんなど、きっとそんなのどかな暮らしが展開されているんだろうな、と勝手に想像していたのだ。

 

 しかし、そこにあったのは異様なまでの静けさであった。

 

 ユンナの家から一歩外に出て愕然とした。想像していたモノなどそこには何一つなく、代わりにあったのは打ち捨てられた農具、朽ち果てた家畜小屋、至る所にヒビが入り今にも崩れそうな家々。いまだ慣れない歩幅でしばらく村を散策したが、やはりというか村人など影も形も無いのだった。

 

 先程の話を思い出し、どこか腑に落ちない何かが頭の隅に引っ掛かっていたが、村自体さして広いわけでもないので、気づいたらユンナの家の前におり、一息ついたのがつい今しがたの事だ。

 

「村長ん家行こ……」

 

 見事に期待を裏切られたのと、あまりの静かさにちょっとした恐怖を感じ、龍亮はテンションガタ落ちであったが、気を取り直して村長の家に向かう事にする。村長の家とユンナの研究所とやらには、散策中にとうに目星が付いている。

 

 他の家に比べると、明らかに手入れのされている大きめな家が恐らくは村長の家。村の奥にある謎のピラミッドのような建物が、きっとユンナの研究所だろう。というか、それ以外にそれっぽい建物はなかったのだ。

 

「……」

 

 誰でもいいから、とにかく人に会いたい。

 無人の村を包む言い知れぬ雰囲気のせいか、次第に増幅していく恐怖感。そんな気持ちが足を急かし、競歩の様な速度で村長宅に到着する龍亮。

 

「ごめんくださーい!」

「…………入れ」

 

 ノックし勢い良く挨拶してみると、やたらと低い声に招かれた。意を決してドアを開け、中へとお邪魔する。

 

「し、失礼しまーす……」

 

 聞こえてきたあまりの声の低さから、強面を想像してちょっと萎縮してしまうのは仕方ない。

 

「…………」

 

 恐る恐る目を上げてみれば、スキンヘッドで緑がかったチャイナ風の服を着ている老人が、立ったまま酷く怪訝な様子で睨んでいる。目は窪み肌は土気色で、ほぼ骨と皮だけと言ってもいいかも知れない。

 

 正直、龍亮はビビった。思わず叫び声を上げそうになったのを必死で堪え、よく耐えたと自分で自分を褒めたいくらいだ。夜中暗い所でいきなり遭遇したら、きっと自分は失神するだろうとどうでもいい事を考え、心臓を落ち着かせる。

 

「……」

 

 村長と思しき人物は変わらず龍亮の方を睨んでいる。「な、なに? 俺何か粗相をしました?」と、その威圧的な視線に龍亮は萎縮してしまっていた。

 

 ユンナとは違い、非常に頭固そうなじーさんだと勝手に思った龍亮は、対処に困った。どうすればいいか考えて、とりあえず此処はフレンドリーにいこう、と半ばヤケ気味に声を振り絞る。

 

「えーと、どうもはじめまして。自分は立浪龍亮と言います。この度は何やらご迷惑をおかけしたようで……」

 

 そこまで言うと村長は――――

 

 ――――突然、激怒した。

 

「……ユ、ユンナめ、失敗しおったな! なんだコイツは! 約束が違うぞ!」

 

(……!?)

 

 拳を強く握り締め、プルプルと震わせている村長の顔は憤怒で真っ赤になっている。

 

「ええい! どけ! ユンナはどこじゃ! このわしを謀りおって!!」

「痛っ!」

 

 そう叫ぶや老人は龍亮を突き飛ばし、ドアから出て行った。

 

(……え、俺なんか気に障る事言った? ていうか、何?)

 

 折角の自己紹介は完全にスルー。尻餅をついたまま龍亮はしばし呆然。その後、特にすることもないのでよいしょと立ち上がると、今度はユンナの研究所と思われるピラミッドのような建物に向かう事にした。

 

 

 龍亮が村を散策していた頃、龍亮が入れられていた機械のある部屋で、二人の男が対峙していた。

 

「……や、これはこれはお早いおつきで」

 

 片や白衣を着た研究者然とした老人。

 

「ふぅん。まさかこんなところであなたに会えるなんて思わなかったよ」

 

 片や今の龍亮と似た背丈をした白髪の少年。

 

 少年は無機質を思わせる表情のまま、ユンナをその目に捉えている。幾分余裕があるように見えるのは、その対比となるユンナの方に、ほんの僅かな焦りの色が浮かんでいるからであろうか。

 

「……や、失礼ですが、私にはあなたとお会いした記憶はございませんが?」

「ああ、そうだったね。この姿で会うのはこれが初めてだよ。これを覚えてるかい?」

 

 思い出したように白髪の少年はそう言うと、左手を中空にかざす。すると瞬時に、左手は不気味に蠢く触手のようなモノに変形した。それを見た途端、ユンナはわずかばかりだが目を見開く。

 

「や…………まさかとは思いますが、生きていたとは驚きですね」

「あのままだったら死んでたよ。たまたまある人に拾われてね。運が良かったんだ」

「や、そうですか。して、何故この場所を?」

 

「昨日妙な力がこの辺で感知されてね。ほんの少しだったけれど。気になったんで一番近い所に居た僕達がこの辺りを捜索してたのさ。こんな所に村があるなんて知らなかったけど、あなたが居る所を見るとどうやら当たりだったみたいだ」

 

 そこまで言うと少年はユンナの後ろにある空っぽの装置を一瞥し、その口を開けたままの機械に顎で指した。

 

「その機械、何が入っていたのかな?」

「や、なんでしょうな」

「……そう。一応聞いておくけど、素直に言うつもりは?」

「や、ですから私にはなんのことかわかりませんよ」

 

 ユンナの惚けた応答に予想通り、と言いたげな白髪の少年。彼が苛立ちを僅かに感じたその時、部屋の入り口のドアが勢いよく吹き飛んだ。

 

「ユンナァ!! 貴様、よくもこのわしを謀ってくれたな!!」

 

 現れたのは憤怒の形相の老人。彼はギョロッとした目を見開き、その瞳がユンナを補足すると、烈火の如き怒りを解き放つ。そこに第三者である白髪の少年が居る事に、彼は気付いていない。

 

「や、これは村長。ご機嫌は如何ですかな? 生憎と今は取り込み中でして……」

「き、貴様ぁ! まだこのわしを愚弄するか! なぜあのじんぞ————」

「五月蝿いよ」

 

 憤怒の老人の言葉を強い口調で遮り、白髪の少年は眉を吊り上げてその老人に目を向ける。怒りに燃える老人から何かの気配を察して少しだけ驚いたらしい少年は、その老人に対して抑揚の無い言葉を紡ぎだした。

 

「……へぇ。こんな辺鄙な所にまだ生き残りがいたんだ。絶滅させたって聞いていたんだけど」

「っ!! なんじゃ貴様は! 何故こんな所にいる! ここは神聖な場所————」

 

 ――――瞬間、何かが憤怒の老人の首を通り過ぎた。

 

「!!……」

「悪いけど、亡霊に用はないんだ」

 

 老人は憤怒の形相のまま、二度と喋る事ができなかった。

 気がつけば白髪の少年の指にはドス黒い血が滴っており、老人が最後にその目で見た物は、自分から離れていく首から上の無い自分の体だった。

 

「……や、惜しいですな。もう少し粘っていれば、あなたの知りたいこともわかったかも知れませんよ?」

「かも知れないね。けど、それよりもあなたに余裕を与える方が厄介だから」

 

 白髪の少年はまるでゴミを見るような目で老人の身体を一瞥すると、すぐにユンナの方へと意識を向けた。その態度、そして僅かな問答でユンナは悟った。逃げられない、と。しかしこれは元はと言えば、かつての自分の不始末だ。ならばせめて、自分がどうにかするのが道理————

 

「……や、仕方ありませんね」

 ユンナは僅かに後ずさり、背後にある機械のボタンを押そうとして……

 

「! ヴィシュ・タル・リ・シュタル・ヴァンゲイト 【小さき王、八つ足の蜥蜴、邪眼の主よ。その光、我が手に宿し、災いなる眼差しで射よ】『石化の邪眼』」

 

 ……それより早く、高速で呪文を詠唱した少年の指先が光った。

 

「……っ……!」

 

 放たれた光は一瞬のうちにユンナを貫き、その身と、背後にある幾つかの機械を纏めて硬質な石像へと変化させていた。白髪の少年は、眉一つ動かさない。

 

「あなたは頭だけはいいからね。何をするかわかったもんじゃない」

 

 

「……今の音って……あっちかな?」

 

 派手な破砕音が聞えた方向へと、龍亮は走っていた。音の正体については大体想像がつく。大方、(何故かは知らないが)怒り狂った村長がドアを蹴破ったか何かしたのだろう。そして今頃、その何かの件でユンナに詰め寄っているに違いない。龍亮としては行った所で何ができるわけでもないのだが、とにかく話を聞きたい事だし、面倒だけど仲裁くらいはできるかも、と思っていた。

 

「あ……あれか?」

 

 妙な広さをもつ研究所を走り回り、やっとの事で壊れたドアを発見。さてどんな風にすれば怒らせないかなと考えつつ、再び走り出そうとしたまさにその時……

 

「!?」

 

 壊れたドアの向こうから、激しい閃光が溢れた。思わず手で光を遮る。

 

(なにこれ!?)

 

 何かが爆発したのかとも思ったが、光だけで爆音は特に聞こえない。ひょっとして何か魔法的な不思議パワーでも炸裂したのだろうか。だとしたら大変な事に。そんな風に解釈した龍亮は急いで部屋の前に辿り着き、そして、凍りついた。

 

 地面に広がる赤黒い水溜り。

 首と体が離れている村長。ユンナそっくりの石像。

 そして血の着いた手で石像に触りながら、自分の方へ目を向ける白髪の少年の姿がそこにあった。

 

「……?」

「……え? ……う……あ……」

 

 龍亮は、何がなんだかわからなかった。

 目に映っているのに、頭は惨状を受け入れられない。

 

 顔から血の気が引いていくのがわかる。まだ死んだばかりであろう、村長の生々しい赤さを放つ首からは血溜りが徐々に広がっている。途端に口の中に酸っぱいモノが広がる。今朝食べたものが拒絶反応のように胃から込み上げる。

 

「……うっ……うぶッ……」

 

 息を一吸いして同時に飛び込んできた血の臭いがトリガーになり、龍亮は先ほど食べたモノ全てを嘔吐した。ごく普通の生活をしていた人間に、こんな惨劇への耐性があるはずもない。

 

「ふぅん、他にも生き残りがいたのか。君、こういうのははじめて?」

 

 激しく収縮を繰り返して胃を空っぽにし、顔面蒼白の龍亮に対して白髪の少年はまるで友達にそうするかのように話し掛けていた。あまりの自然さに、龍亮は思わず頷いてしまう。そしてその後ですぐに気付く。俺は何をしているんだ、村長さんを殺したのはまず間違いなくコイツだろうに、と。

 

「あ……う……」

 

 龍亮は、既に恐怖に支配されていた。自分を標的にされないため。死にたくないがために目の前の殺人鬼の機嫌を少しでも損ねないよう、無意識の内に行動していたのだ。

 

「そう。それは悪いことをしたね。でも、これなら血も出ないから安心だよ」

 

 そう言うと、白髪の少年はそっとユンナの石像に力を加えた。グラリ、と像はバランスを崩し、次の瞬間大きく耳障りな音を立て、まるでガラス細工のように粉々に砕け散る。全くの無表情で少年はまた一人の命を砕いたのだと、龍亮は理解した。

 

「……」

 

 しっかりと破壊した事を確認した白髪の少年は、特に表情のない顔を静かに龍亮へと向ける。そしてそのままゆっくりと、歩き出した。

 

「う……」

 

 寒くも無いのに体が震える。声が出ない。怖くて足が動かない。龍亮は悟った。ああ、自分も殺されるんだ。あの暗黒の中で3度も走馬灯を見たが、今は恐怖がそれに優っているのか、何も考えられない。ゆっくりと近付いてくる死の恐怖に只々怯えるだけ。

 

 いつのまにか龍亮の目の前に来ていた少年が口を開く。

 

「最後にいい経験が出来てよかったね。それじゃあ――――」

 

 龍亮の目の前まで来た少年は、手をかざしている。頭の一部が驚くほど冷静に状況を分析しながら、龍亮はガチガチと歯を鳴らし涙を浮かべていた。

 

(だ、誰かダレカ誰でもいい助けてタスケ――――)

 

「――――さよなら」

 

 鈍い衝撃と共に……地面から生えた石の槍は、龍亮の首を貫いていた。

 

 

(……? あ……?)

 

 気が付くと周りは黒一色。全身を襲う落下特有の浮遊感。龍亮は思い出した。間違いなく、そこはつい先日、3度死んだあの場所だった。死んだと思ったらまた死にに来たのか俺は。拷問どころの騒ぎじゃない。何故だか知らないけど、きっと神様は俺がよっぽど憎いに違いない。半ば諦めたように、龍亮は目を閉じた。

 

「……もう、いいよ……」

 

 何故この場所に居るか気になるがもういいだろう。次は何だ? 激突死とかか? まぁもう自分は死んだんだ。何が来ようとどうでもいい。

 

 そう思いしばらく目を瞑っていて、龍亮は不思議な事に気が付いた。いつのまにか落下している感覚が無くなっているのだ。それに、何か気配の様なものを感じる。視線も。今まで感じた事のない妙な感覚が身体に生まれている。

 

(……?)

 

 目を開ける。見えない。だが何かに乗っているかのように、下から自分の身体が支えられているようだ。はっきり言って、戸惑う。ここに自分以外の何かが居るのだ。今度は実体を持って自分を殺しに来たのかと思ったが、そんな敵意というか怖いという感じは何故か持てなかった。

 

「……誰か、居るの?」

 

 暗闇へ向け、訪ねる。

 

「……」

 

 返事は、ない。何を期待したのだろう。どうせすぐにまた落下が始まるさ。所詮無駄な期待だと断じると、龍亮は再び目を閉じようとして————

 

 

――――――――イキタイカ?

 

 

「え!?」

 

 声が、聞えた。

 

「だ、誰!?」

 

――――――――我が名はアジーン。龍の御子よ、生きたいと願うか?

 

(……。俺……生きられる……の?)

 

――――――――お前自身の、心を示せ

 

 ふと、龍亮は龍堂で聞いた声を思い出した。吸い込まれる直前に聞こえたあの声と、今暗黒の中から聞えてくる声は同じだ。何かを待っているような、ようやく、探し物を見つけたような、そんな声だ。

 

「……」

 

 龍亮は思う。これまでの人生、それなりに頑張って生きてきた。今こうして妙な事に巻き込まれ、気付いたら(恐らく)異世界に居て、さらに変な体になったけれど、自分から、心から死にたいと思ったことなど一度も無い。まだ色々やってみたいこともある。彼女だって欲しい。正直、未練だらけだ。そう自覚すると同時溢れるように、口から言葉が出る。

 

「俺は……まだ、死にたくない! まだ生きたい! 生きていたいんだよ俺は!」

 

 突然、だった。

 

 龍亮の目の前に、巨大なドラゴンが現れた。

あまりの巨大さに顔の先端しかわからないが、龍亮にはそれがドラゴンであり、そしてこの暗黒の主だと何故か理解できていた。龍亮はその大きな手の上に乗っていたのだ。

 

――――――――承知した

 

「……!」

 

 ドラゴンは、笑った。大きな瞳で小さな龍亮を凝視していた巨大な化け物は、ニヤリと凶悪な笑みを浮かべたのだ。怖い。だが怖さと共に、龍亮は何か身体が熱くなっていくのを感じた。そしてドラゴンは続けて「ならば」と言うと、大きく息を吸い、龍亮の体を構成する細胞の隅々にまで響き渡るような、巨大な声で……

 

 

 お 前 を 選 ん で や る 

 

 

 一言そう言うと、ゆっくりと龍亮を乗せた手を顔の上に持っていく。龍の顎が文字通り大きく口を開ける。龍亮はこれから自分が何をされるのか気付き、慌てて手にしがみ付こうとするが時既に遅し。

 

「え、ちょっ……うおぁぁぁあああ!?」

 

 龍亮は、ドラゴンにパクリと飲み込まれた。

 

 

 ドクン…………

 

「……?」

 

 喉を貫いた石の槍から、暖かい血液が滴る。まだかろうじて生きてはいるが、すぐに心臓も止まるだろう。このまま放っておいたとしても何も問題はない……はずだ。

 

 しかし、この気配は何だ?

 

 何か巨大な生物が目の前に現れたような圧迫感を白髪の少年は感じ、そして自分の感覚を否定しようとしていた。そんな馬鹿な事があるはずが無い。目の前の子供は絶命寸前なのだから。

 

 ドクン……

 

 だがそんな白髪の少年の目の前で不可思議な事が起こる。

 途端、項垂れたままもう意識もないはずの青髪の少年の手が動いて――――

 

「……!!」

 

 自らの首を貫いている石を掴み、そのまま無造作に握り砕いたのだ。

 

「……馬鹿な……」

 

 青髪の少年は俯いたまま、次に首に突き刺さっている石槍を無理やり引っこ抜く。血が吹き出、そしてそれはすぐに止まった。傷が凄まじい勢いで修復されていく。明らかに、異常な事態だ。

 

 ドクン!

 

「……う…あ……あああ……」

 

(……!)

 

 何かがおかしい。何かが起こる前に何とかしなければ。この異常を止めるべく、白髪の少年が拳に力を集めて踏み込んだ瞬間————

 

「ガアアァァァァァァァッ!!」

「!!」

 

 咆哮が、響いた。

 

 声の主、青髪の少年の足元からは炎のようなオーラが吹き上げている。彼はその火柱にも似た光の中で宙に浮いていた。部屋には凄まじいまでの風が吹き荒れ、白髪の少年は吹き上げるオーラに弾き飛ばされていた。

 

「……クッ!?」

 

(なんだ……これは……)

 

 白髪の少年は理解できない目の前の現象に珍しく焦っていた。いや、正確には理解できなかったわけではない。話には聞いていたし、目の前の少年が「彼ら」の生き残りだとしたら、変身する事は決しておかしくはないからだ。

 

 だが、目の前の状況は聞いていた話とは全く違う。

 

 力が違う。

 規模が違う。

 プレッシャーが違う。

 

 完全に自分より上位の存在。そう思わずにはいられない。少なくとも今の自分なら「彼ら」が変身しようとも敵ではないと言われていた。だから想像を超える、圧倒的過ぎる力を感じさせる目の前の現象は、白髪の少年の理解の範疇を超えていたのだ。

 

「ゥゥウオオオアアアア!」

「!!」

 

 青髪の少年を包む火柱の如きオーラが一層強烈な閃光を放ち、思わず目を細める白髪の少年。彼が次に目にしたものは――――

 

 

 ――――宙を舞う、自らの左腕だった。

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