道人君in艦これ。ただし亡霊。 作:ゆっくりRUISU
アニメ2話の前編です。
翌日。
「よいしょっと…」
早朝に、吹雪が着替えをしていた。
【どうした吹雪。起床時刻まではだいぶあるぜ?】
その吹雪に、ある人物が話しかけた。
「道人さん、睦月ちゃん達寝てるんですから…!」
[そもそも俺の声は聞こえねぇだろうが。…って、ダメ元だが出来た]
その人物ー亡霊と自称する男、義善道人は呆れたように首を竦めた。
同時に、道人は口を動かしていないのに吹雪には声が聞こえた。
「えっ?」
[声デカイ。睦月達起きるぞ。
ちなみにだが、どうやら俗に言う心の声って奴で会話できるらしいぜ。
頭の右後ろ辺りで話すイメージな。俺やる意味ないが]
[あ、ホントですね]
そう返事を返すと、なるべく音を立てないように
ブレスレットを忘れずに着けて吹雪は部屋を出た。
そして階段に向かうと、ちょうど川内が階段を登ってきた。
「あ、川内さん。早起きですね!」
関心したように吹雪が言うと。
「え?まさか。これから寝るところ。…何?トレーニング?」
訂正してから、格好を見た川内が聞き返した。
「はい。少しでも皆に追い付いて、迷惑掛けないようにしないといけませんから!」
そう言うと、吹雪はジョギングを始めた。
それを見送って、
「元気だね~」
と呟くと、川内はあくびをこぼした。
ホッホッホッホと言う、規則的な呼吸音が響く。
やがて、太陽が山から顔を覗かせた。
その光景を見て、「わぁ~」と声を漏らした吹雪は、一度足を止め。
「よぉ~っし、頑張るぞっ!目指せ、MVP~!」
そう意気込んだ。
「うわっとっと…」
直後、足踏みの状態で躓かなければ格好よかったのだが。
【…大丈夫なのか?この始末で】
「聞かないで下さいよぅ…」
呆れたように、道人が首を竦めた。
そして数日後、教室にて。
「わ~ん、吹雪ちゃん見せてっぽい~!」
「また?」
そういう夕立に、睦月が注意を飛ばす。
「駄目だよ!昨日『一緒にやろう』って言った時にやらなかったの、夕立ちゃんだよ!」
「睦月ちゃんケチっぽい~!」
【自業自得だろ】
[あははは…]
と、コントのようなやり取りをしていると、如月が入ってきた。
「あ、如月ちゃん!聞いて!夕立ちゃん、また宿題やってこなかったんだよ!」
「そうなんだ~」
「睦月ちゃん、如月ちゃんの事好きだよね~」
「姉妹艦だからっぽいしね~」
【姉妹艦なぁ。そういや吹雪お前姉妹艦いないのか?】
[いますよ。けど、ここでは見かけて無いです]
その後、島風が入ってきた後に、チャイムが鳴った。
…で。
「はいでは、昨日やった所から続きやるわよ~。
夕立!」
「は、はいっ!」
教鞭を取っている足柄が、夕立を指名する。
指名された夕立は、立ち上がりつつ返事を返す。
「問題よ。我が水雷戦隊の主兵装、酸素魚雷の優位性は?
出来たら、さっき罰として出した追加の宿題、半分にしてあげるわよ」
「ほ、本当?えっと、え~~っと…」
答えようとするが、夕立は答えが出てこない。
【射程・雷速・炸薬量・隠密性の4つだったよな?】
[はい。…よく聞いてるだけでわかりますね]
【味方の装備把握してなくて相手に歯が立たないとかシャレにならんからな】
道人と吹雪がこっそり会話をしていると、
足柄の機嫌が悪いことで会話をしていた如月の側頭部に白墨が直撃した。
その直前に聞こえた単語について。
【…艦娘が合コンっていくモンなのか】
[個人差があると思いますけど…]
すると、夕立がまだ答えていなかったので。
「夕立ちゃん、これこれ」
そう小声で言いつつ、吹雪はブレスレットを夕立に渡す。
【さて。このままだと授業が進まねぇんで教えるが。
酸素魚雷の優位性はざっくり4つ。
まずは通常の魚雷と比較しての圧倒的長射程】
「あ、えっと、圧倒的長射程」
【通常魚雷より速い雷速。そして炸薬量の多さ】
「そして雷速、炸薬量でも優位…っぽい」
「…正解よ。では吹雪」
カンニングまがいの事をしつつ、正解を得た夕立が座るのと入れ替わるように、吹雪が立つ。
そして、酸素魚雷の優位性の内、道人が夕立に言わなかった事、
二酸化炭素が排出されるので雷跡が発見されにくいという点を言い、足柄を驚愕させたのだが。
その後の演習にて。
「うわあぁぁっ!?わっ、わあっ、わっ、わぁぁぁぁ!!」
情けない声をあげつつ、吹雪はスッ転んだ。
「どうしてこうなってしまうのじゃ…」
そう言いつつ頭を抱えるのは、重巡の利根。
【どうにも吹雪の場合、艤装に振り回されてる気がすんだよな】
「そうですか…?
利根さん、もう一回お願いします!」
「おう!…根性はあるんだがなぁ…」
再び滑り出した吹雪を、少し離れた場所で睦月・如月・夕立が見ていた。
「大丈夫?このままだと吹雪ちゃん、イっちゃうかも…」
「そうだよね…」
何かを心配する如月に、睦月が同意した直後。
「うわぁああぁ、わあああぁぁぁぁっ!」
情けない悲鳴の後に、ゴォンという衝突音。
吹雪が、木製の柱に激突していた。
【あっちゃー…】
道人が頭を抱えた直後、吹雪がバシャリ、と海面に落ちた。
【…ルイスの奴に連絡とれるかな】
そして、もう一度吹雪は海面を滑り始めたが。
「うわぁぁぁぁぁ!!!」
と、足だけが前に出た状態で滑り続ける、完全に暴走状態で進んでいた。
その後。
「はぁ~…。駄目だ~…」
甘味処間宮の机に、吹雪が倒れこんだ。
「落ち込まないで」
「ミカンあげるっぽい」
睦月がフォローをし、夕立はミカンを吹雪に差し出した。
[はむ。…道人さんは何してるんです?]
【ん?ああ悪い。後で知り合いの奴に連絡とって
アドバイスつけさせようと思ってな。作成中】
そういう道人は、一方で手を止めていなかった。
どこからか取り出したキーボードを抱え、何やら入力しているように見える。
…と言っても、キーボードはホログラムなのだが。
「睦月もね、最初は失敗したり、怖かったこともあったんだよ。
だから、吹雪ちゃんもきっと練習すれば、上手くなる筈だよ」
そう言い、睦月はフォローを続けるが。
「そうかなー…。でも、『こんな艦娘は初めてだ』って噂になってるって」
「誰がそんなことを?」
「夕立ちゃんが…」
「夕立ちゃんっ!」
夕立によって、フォローの意味があまり無くなっていた。
「嘘言ってもしょうがないっぽい」
「やっぱり、そうなんだね…。うぅ…」
【ま、地道に頑張ってくれ】
ぐったりと、吹雪は机に倒れこんだ。
「利根さんはなんて?」
「『吾輩を筆頭に鎮守府にはいいお手本がたくさんいるから、それを見て学べ』って」
「お手本かぁ…」
睦月が呟いた直後、吹雪がガバァッと顔を上げた。
「ハッ!赤城先輩は!?」
「え?」
「お手本のために、赤城先輩を見に行くというのはどうだろうか!?」
【おい、口調統一しろよ】
道人が口を挟んだ。
先日の初出撃で、赤城達一航戦が深海棲艦を軽々と倒していくのを見て以来、
吹雪は赤城に憧れているのだった。
「け、けど赤城先輩は正規空母だよ?」
「でも格好いいよ~!」
やたら目を輝かせながら言う吹雪を見ていた道人は。
【…これで大丈夫か?】
ちゃっかり知り合いに送りつけるメッセージを組み上げていた。
数分後。
「…ここ?」
『クッド渠入』と書かれた建物の前に、吹雪達は立っていた。
そして暖簾をくぐると、ロッカーや脱衣かご、体重計などが置かれていた。
吹雪がいざ中へ入っていこうとしたとき。
【おいちょっと待て】
道人が口を開いた。
[なんですか?唐突に]
【俺は女風呂に突撃する勇気は持ち合わせちゃないんだよっ!】
道人がそう言うと、吹雪は数秒停止した後に。
ブレスレットを取り外し、窓目掛けて全力で投げた。
「逝ってらっしゃいヴェントフリーダム!」
【シャレになんねぇっての!】
そして、空中でヴェントフリーダムが展開される。
今回は戦闘する予定もないという事で、鉄灰色のままである場所まで飛んでいった。
『おーい。こないだの主砲置いてあるのはここか?』
「そだよー。えっと、誰ー?」
『主砲もいだ奴』
「ごめんわかんない。入って」
そう言う道人が立っているのは、工廠区画のある建物。
通りかかった銀髪の艦娘から、先日の戦闘でもぎ取った主砲の場所を聞いて
自由に動ける今というタイミングで訪ねたのだった。
なお、この時応対したのはその主砲をヴェントから受け取った響である。
だからこそ、直接運び込んだ主砲の場所を把握していたのだが。
『よっこら。すまんな急に押し掛けて』
「いいよー。とりあえず、解体していい?」
『やめてくれシャレにならん』
スパナ片手に迫る艦娘を制しつつ、適当な椅子に道人は腰かけた。
「さて、と。私は夕張。装備の開発とかやってるよ」
『おう。義善道人だ。一度死んだんでこんな体だが気にしないでくれ。
…で、こないだの主砲ってどうなってんだ?』
「今朝やっと艦娘用にする目処立ったけど…」
『けど?』
中途半端に言いよどんだ夕張に、道人が問いただすと。
「反動が強くて、戦艦じゃないと扱えそうにないんだよね…。どうしよ」
『反動か。それも纏めて奴に聞いてみるか…。
ヴェントのスタイルにはそのデカブツ合わねえしな』
「スタイル?」
『飛び回って砲撃時々格闘。…両手潰れるそいつは辛い』
道人がそう言うと、ヴェントの目の前にウインドウとキーボードが現れた。
『とりあえず内容、の前に返信来てるな。
…【実際見ないとどうしようもない】か。だよなぁ…』
そう呟くと、入力を開始する。
数分後、メッセージを打ち終えた道人に、夕張が尋ねた。
「そういえばさぁ。主砲もいだ時と装甲の色違くない?」
『ん?ああこれか。よっと』
直後、鉄灰色だった装甲に色が付いた。
『VPS装甲。ま、簡単に言えば電流流してる間、実体攻撃ほぼ無力化できんだよ。
流石に衝撃は流せねぇけどな』
「何それすごい」
『金かかるけどなー。ちなみにヴェントはフレーム、骨組みまでVPS装甲だぜ』
「…なんで死んだの?」
『ビームは防げねぇんだよ。弱いビームなら耐えれるけどな…。
とりあえず多少身体動かさせてくれ』
そう言うと、道人は工廠を出た。
そして30分後。
『そういえば。
艤装はさも当然のように海中から出てたが故障しないのか?』
「全然。戦闘以外で故障って聞いたことないよ。炸薬が湿ったって話もないし」
戻ってきた道人が気になっていた事を聞くと、心配はいらないようだった。
『あ、んじゃあ最後の用事。モニター貸してくれ』
「モニター?一応小さいのあるけどさ…」
道人が頼むと、夕張はガサゴソと探し始めた。
「はい。一応あったよ」
『おう。んじゃ撤収するわ』
そう言うと、ヴェントフリーダムが光り、消えた。
【ただいまっとな】
[お帰りなさいそしておやすみなさい…]
【おう、おやすみ】
道人が戻ると、ちょうど吹雪が寝ようとしていた。
戻ってきたブレスレットを外し、ちゃぶ台に置いてからベッドに潜り込む。
直後。
「特型駆逐艦!」
ドアを開けて、川内が飛び込んできた。
「ふぇ…?」
「特訓、だよ!」
吹雪が間抜けな声を出すと、川内は吹雪の顔を覗き込みつつそう言った。
以上です。
え?モニター何に使うのかって?
後で何かに使うんですよきっと。
そして入渠は全カット。
…ちと1話2話の道人君のセリフ補完しときます。
本編でやる暇がなさそうなので。
01話 提督室前
【さて、ここどこだ?】
【おい。もしかして聞こえてないのか】
川内登場前
【おい、後ろ】
一航戦演習時
【女三人寄れば姦しいってか?】
02話 出撃前
【どことなく真珠湾攻撃を思わせるな】
以上の筈。
では。
最後に恒例になった次回のタイトル予告!
04話 根性ー水雷魂とは
3/7 追記
ちょこっと修正しました。