男が目を覚ますと、そこには暗闇が広がっていた。
肌に伝わる感触から何かを被らされていることがわかる、かすかに漏れる光から男はそれが
麻袋だと推測した。
ここはどこだ?私はなぜこんなところにいる?朦朧とする意識の中でグルグルと思考を巡ら
せていると、突然袋が頭から外され眩しい光に目が眩んだとき、顔面に痛みが走った。
込み上げてくる咳とともに口内に鉄の味が広がり、口から零れ落ちたものがカラカラと音を
立て床に落ちる。顔を上げるとまたしても衝撃が男の顔面を砕く。赤くなり始める視界から
かすかに人の靴が見える。その衝撃の正体が目の前の人間だと気づいたときに三回目の痛み
が男を襲った。
「まっ待ってくれ!!」
四発目を打ち込もうと拳を振りかぶろうとしたとき、やっとのことで男は声を捻り出し制止
を求め、相手を観察した。ジーンズにパーカー、フードを被っていて顔は見えないものの体
格からしておそらく男、背丈からまだ少年のようだ。
一通り観察すると、少年は冷めた声色で告げた
「組から持ち逃げした金はどこにある?言え。」
その発言で男は全てを悟った。彼はとある組の構成員だった。しかし金に目が眩み、組の金
に手を出した。そして自分を始末するために組長が殺し屋をよこしたのだと。
男が黙っていると少年は立て掛けてあった有刺鉄線が巻いてある木製バットを手に取り、男
の足をめがけて振りかざした。
ジュシャッ、メキッ
「ぎゃあああああああああああ!!!!」
部屋に嫌な音と男の悲鳴が鳴り響く。バットの衝撃で足は折れ、振りかざしたスピード
とバットの棘により肉が裂けて罅の入った大腿骨が露わになった。あまりの激痛により男
の頭は真っ白になり、痛みで男は意識を手放しそうになった。しかしある感情がその痛みを
上回り、彼の意識を繋ぎ止めた。
その感情とは.....恐怖。
バットが振りかざされた瞬間、男はフードに隠れていた少年の顔を一瞬捉えた。人が人を殺
す時、その表情になんらかの挙動や変化があるはずだ。彼が所属していた組の誰もがそう
だった。しかし少年はあくまで息をするように、水を飲むように、通学路を歩いているかの
ように平然と、自然に、穏やかな表情で彼に向けて凶器を放った。まるでそれが彼の人生
では食事をすることのような自然な行為であるかのように。
そして少年は自分の顔にベットリ着いた返り血を気にもせず、もう片方の足も潰そうとして
いる。そんな少年に男はゾッとし、恐怖を覚えた。
「待て!ハァッ、言う.....コインロッカーだ、ハァッ....駅前の....39番.....」
男がそう言い終えると、少年は男の頭部砕き、その場を去った。
金を回収した少年は、取引に指定したポイントに金を置き、報酬の入ったアタッシュケース
を受け取った。帰り道、少年は何気なく上を見上げ、綺麗な満月が浮かんでいるのを確認
した。すると次の瞬間、信じられない事が起きた。
「は?」
思わず間抜けた声が漏れてしまった。しかし誰もがそうするだろう。目の前にあった満月が
いきなり三日月に変わったのだから。
(.....疲れてるのか?)
その晩、少年はその程度にしか思っていなかった。だが彼はまだ知らない。これが新たな始
まりの狼煙だということに。この先待ち受ける、彼の物語の伏線あるということに。
第三者視点だと思ったより短くなってしまいました
これからはオリ主視点、他キャラ視点、第三者視点を混ぜていきたいと
思っています