ひとまずは、これで戦姫絶唱シンフォギアのAパート部分が終了となります。今回は、響と士郎、加えて三人称の3つの視点があります。そのため、かなり長くなっていて、バトル描写があっさりしているかもしれませんが、それでもお読みいただければ幸いです。
響side
「未来、遅いなあ............」
今日はあの゙ツヴァイウイング゙のファーストライブの日だ。普段から未来とよく行くお好み焼き屋゙ふらわー゙の前で待ち合わせをしているんだけど、かなり遅い気がする。遅れるのなら、きっとメールで「ごめん!少し遅れる!」の一言でも送ってくるはずなのに、まだそんなメールすら来ない。それに、今日のライブは衛宮先輩と桜ちゃんにこの前会った藤村先生と駅前で合流して行く予定だから待たせるのもまずい気がするのに............。そういえば............
「この前は楽しかったなあ............。」
この前のことを思い出して、つい笑っちゃう。衛宮先輩も桜ちゃんもこの前は弓道部の部活が無かったみたいで、授業が終わってからすぐ校門で待ち合わせて、私、未来、桜ちゃん、そして衛宮先輩の4人で並んでスーパーに歩いた(何か変な目で見られてた気がするけど何だったんだろう?衛宮先輩は凄く変な顔してたけど)。私は料理は作るよりは食べる方が好きだから、衛宮先輩が手にとってかごに入れた食材で何を作るのかは全く分かんなかった。
スーパーで買い物が終わったあと、衛宮先輩の住んでいるお家に行ったけど凄く驚いたっけ。だって、外観が絵や教科書なんかに出てくる武家屋敷みたいな和風のお屋敷なんだから誰だって最初に見たら驚くよ。お屋敷の中も凄く綺麗で、汚れどころか埃や塵が1つもないんだもん、衛宮先輩が1てで全部やってるって言われても本当は使用人さんが学校に行ってる間にやってるって言われた方が説得力はある気がする。衛宮先輩はスーパーで買った食材が入った袋を持って台所に入っていった。桜ちゃんも手伝おうとしたけど、衛宮先輩が「桜は立花と小日向の話し相手になってやってくれ」って言われて、私達の向かいの席に正座して私達と色々なお話をした。勉強のことだったり、部活のことだったり、最近の流行なんかを話したりした。
それから30分くらい経って、衛宮先輩の作った料理(どれも旅館や料亭なんかで出てきそうなくらい豪勢なもの)が全部テーブルに並んだ。1人分余分に作って置いてあるのは何だろう?と思ってたけど、ドタドタと廊下を駆けてくる音が聞こえてきて1人の綺麗な女の人が襖を勢いよく開けて入ってきた。衛宮先輩がその人が藤ねえこと藤村大河(通称゙冬木の虎゙っていうみたい)先生だと紹介されたのだけど、藤村先生が私と未来のことを見るやいなや衛宮先輩のことを掴んで「士郎!この子達、誰なの?」と聞いていた。そしたら衛宮先輩が「いや、朝にちょっとしたトラブルがあってさ。それで恥ずかしい思いさせちゃったから、そのお詫びとして今日の夕飯に招待したんだよ。」と原因が何とは言わずに(気遣ってくれてるのかな?)当たり障りなく言える範囲をいってくれたんだけど、それが変な誤解を招いちゃったみたいで、
「士郎............。そんな悪い子になっちゃってお姉ちゃんは悲しい............。」
「ちょっと待った、藤ねえ何か変な誤解してないか?なんか、こう、俺が立花にセクハラ紛いの事をしたみたいに思ってるように見えるんだけど............?」
「え?そうじゃないの?」
「あながち間違いじゃないけど、そうじゃねえよ!」
なんて、やり取りをしていた。こんな状況も周りに人がいたら、姉弟に見えるのかな?そんなお話も次第に終わって、2人が座ってから皆で口を揃えて「「「「「いただきます」」」」」と合図をして食べ始めた。衛宮先輩の料理は物凄く美味しくて、これを食べたらいつも食べてる物だけじゃとてもじゃないけど満足出来ない気がしてきちゃう。気が付いたらご飯を5杯くらいおかわりしてて、衛宮先輩から「立花って、見かけによらず結構大食いなんだな。」なんて少し冗談混じりにからかわれた(藤村先生はわたしと同じ5杯で桜ちゃんも3杯くらい食べてるのに、何も言わないのはもう知ってるせいなのかな?)。食べ終わって、衛宮先輩が片付けをしている間お未来と一緒にお礼を言って帰ろうとしたけど、藤村先生が「士郎の片付けが終わるまで待ってなよー、もう夜も遅いしうら若き女の子達だけで帰ったら危険だよー?」と言われ引き止められた。時間を見てみたら、夜の8時を指していて、確かに女の子だけじゃ不安かもしれない。衛宮先輩の家で夕飯を食べ始めたのが夕方の6時頃で食べ終わったのは夜の7時50分頃だったから、だいたい2時間くらい食べていた衛とになるのかな(多分、色々なことを話していたせいかも?)。衛宮先輩も「藤ねえの言うとおりだぞ。女の子がこんな遅くに帰って、何かの事件に巻き込まれでもしたら大変だしな。」と言われてしまったので2人で一緒に待つことにした。
少し待って、衛宮先輩は片付けを終わらせて桜ちゃんに「立花と小日向を藤ねえと一緒に家に送り届けるまで、桜は待っててくれるか?2人を送り届けたら、藤ねえに送っていってもらうからさ。」とお願いしていた。桜ちゃんもそれを了承してくれたみたいで、藤村先生が未来を、衛宮先輩が私を送っていくことになった。私も未来も住んでいるのは冬木市の隣町で、途中までは帰り道も同じだから分かれ道になっているT字路で別れた。別れたあと、衛宮先輩と少しの間だけ話をした(特に料理のこと)。衛宮先輩は、私の質問や話を嫌がらないでむしろ自分のことみたいに聞いてくれた。お兄ちゃんがいたら、こんな感じなのかなあ............。話もほどほどにしていたら、いつの間にか家の近くに着いていた。もうちょっと話していたいなあって思ってたのを見透かされてたのか衛宮先輩が、「じゃあ、話の続きはまた今度しよう。その時は、小日向と桜も一緒にいるときせばいいさ。」と言ってくれたから、それを約束して私は家の中に入っていった(お母さんに帰りが遅くて少しだけ怒られちゃったけど)。
そんな風に、この前の出来事に思いを馳せていたら、スマホが鳴った。スマホの画面には電話帳に登録されている未来の番号が表示されてるから、きっと未来のはず。でも、何で電話なんだろう?
「もしもし、未来?」
『ごめん、響!電話するのが遅くなっちゃって!』
「ううん、気にしてないよ。何かあったの?」
『えっとね、盛岡にいる叔母さんが事故にあったみたいで、お父さんが今から車出すって.............。だから今日のライブ行けなくなっちゃったの............。衛宮先輩にはさっき連絡して、藤村先生と桜ちゃんには「俺から小日向は急用で行けなくなったって伝えておくよ」って言ってくれたから、そこは大丈夫なんだけど............。』
「そうなんだ~..................って、ええ!?だって今日のライブ、未来から誘ってきたんだよ!?私1人じゃ..................」
『衛宮先輩と桜ちゃんがいるから1人じゃないでしょ?ライブの埋め合わせは今度するから、それで許して!』
「うう~、分かった..................。じゃあ今度、゙ふらわー゙に行ったら許してあげる。」
『ありがとう、響!あっ、もう行くみたい、じゃあ電話切るよ?衛宮先輩と桜ちゃんに迷惑かけないようにね?』
「分かってるよ、未来。」
未来との電話を切る。それでも、衛宮先輩と桜ちゃんが嫌いなわけじゃないけど、やっぱり未来がいないと不安だ............。それに、何でよりによって、今日に事故が起こるんだ。近場ならともかく、盛岡って..................ここから一体何時間かかると思っているんだろうか?やっぱりーーーーーーーー
「私、呪われてるかも............。」
衛宮先輩と桜ちゃん、それに藤村先生と待ち合わせをしている新都駅までは、今いる゙ふらわー゙から歩いて大体20分かかるけど走れば10分で着くから走っていくことにした。少し息を切らしながら新都駅に着いたけど、衛宮先輩と桜ちゃんの姿が見えない。もう先に行っちゃったのかなあ...................?辺りを見回して衛宮先輩と桜ちゃんの姿を探していると、衛宮先輩の声が聞こえた。その声を頼りに歩いていくと、衛宮先輩と桜ちゃんはいた。いたんだけど、当の衛宮先輩は困った様な表情を浮かべながらスマホで誰かと電話をしていて、桜ちゃんはその様子を不安そうな表情で見つめている。ふと、桜ちゃんと視線が合い桜ちゃんの側に歩いていって尋ねてみる。
「ねえ、桜ちゃん。衛宮先輩、さっきから困った様な顔してるけど何かあったの?」
「それがーーーー」
桜ちゃんが事の顛末について話そうとした所で、衛宮先輩が電話を終えたみたいだった。
「はあ............。参ったな............。」
「衛宮先輩、何かあったんですか?」
「うおっ!?立花、いつ来たんだ!?」
「先輩が藤村先生と電話で話している間に来ましたよ。」
「そうだったのか............。」
「あの、それより藤村先生に何か?」
「ああ、藤ねえもライブに来れなくなっちまってな。」
「えっ、何でですか?」
「学校から期末テスト関係で呼び出されたらしい。藤ねえは英語担当してるから、同じ英語担当の先生と一緒に学年別のテスト内容を今から作るんだってさ。」
「それは、何というか..................。」
「まあ、藤ねえは大人だし仕方ないっちゃ仕方ないんだけどな。物販で藤ねえと慎二に何かお土産でも買っていってやらないとな..................。」
「先輩、そろそろ電車が来ますよ?」
「そっか、じゃあ行くか。2人とも忘れ物とか無いよな?」
「「大丈夫です!」」
交通ICカードを改札にかざして、会場の方向に行く2番線ホームに向かって歩いていく。ホームに出て、少しだけ後ろの方に歩いたところで電車が線路伝いに入ってくる。電車に乗り込んで、真ん中辺りの席が3つ空いていたからそこに座る(右から順に、私、衛宮先輩、桜ちゃん)。途中、2駅目で杖を突いたお婆ちゃんが入ってきて、衛宮先輩が「良かったら座って下さい。」と言ってそのお婆ちゃんに席を譲ってた。桜ちゃんが私の方に詰めてきて、桜ちゃんのいた所にそのお婆ちゃんが座った。そのお婆ちゃんは2人に向かって「ありがとうねえ............」とお礼を言って頭を下げていた。衛宮先輩は「お礼を言われるようなことじゃないですよ、お年寄りに優しくするのは当たり前じゃないですか。」と返していたけど、少しだけ嬉しそうな顔をしていた。目的の駅に着くまでの間は、衛宮先輩はそのお婆ちゃんの話し相手になっていた。その内容のほとんどは、そのお婆ちゃんのお孫さんの話や体の調子なんかを聞いていたけど、途中で「お兄さんは2人のどっちかと付き合っているのかい?」なんて聞かれて、衛宮先輩は慌てながら「2人とはただの先輩と後輩で、付き合ってなんかいませんよ!」と否定していた(別に否定しなくてもいいと思うんだけどな)。目的の駅に着いたところで、そのお婆ちゃんと別れる。衛宮先輩って誰にでも優しいんだなって改めて認識させられた。私も、衛宮先輩みたいに誰かのために人助けを出来るようになりたいなあ..................。そんな事を考えながら駅を降りると、゙ツヴァイウイング゙がライブを行う会場がある方向に向かう人がかなり多かった。
「凄い人ですね............。」
「多分、物販目当ての人が多いんじゃないか?物販は一般向けにもやってるらしいし。」
「じゃ、じゃあ私達何も買えないんじゃ............?」
「その辺は大丈夫みたいだぞ?チケットを持ってる人はスタッフの人にチケットを見せれば、物販で売ってる商品のカタログと注文票を渡してくれて、注文票に欲しい商品を書いて代金と一緒に渡せば、それを取り置きしておいてライブが終わった後に受け取れるようになってるらしい。」
「ああ、それなら安心ですね。未来へのお土産もちゃんと買えそう。」
お土産の話をしながら歩いていると、会場に着いたみたいだった。まだ会場に入っていないのにファンの熱気が滲み出ていて、それだげツヴァイウイング゙が人気である証拠なのかもしれない。けど、何か違和感を感じる。違和感とは言っても、衛宮先輩と桜ちゃんは気付いていないみたいだし周りの人も特に気付いてないみたいーーーーーーーー
「あれ?」
1人だけ明らかに雰囲気が違う人がいた。遠目から見ても美人に思えるその人は多分、外国から来た女の人なのかな?赤紫みたいな色をした短く切り揃えられた髪に、耳には少し大きなイヤリング、そして男の人が着るスーツを着こなした姿だった(結構似合ってて、男の人だって言われれば信じちゃうくらい)。その人は、しきりに周囲を警戒していた。何を警戒しているのかは分からないけど、警備関係の人なのかもしれないのそんなことを考えていたら、その女の人は口を開いてーーーーーーーー
「や......、......ズ......こ...を......う......す......は......が......く.........が.....................。き............も...ぜ、...の.........な.........に......と.........い............ら......り.......ね..............。」
何か呟いたみたいだけど、遠すぎてほとんど聞き取れなかった。一体、何て言ったんだろう?でも、何か言っていたとしても、きっと私じゃ分からないだろうなあ..................。
「立花どうした?立ち止まってるみたいだけど、何かあったのか?」
「いえ、何でもないです衛宮先輩。」
「そうか?何かあったら、すぐ言えよ?倒れられでもしたら、大変だからな。」
「はーい。衛宮先輩って、意外と頼りになるんですね。」
「意外は余計だぞ。桜が先に会場に行って待ってるから、俺達も早く行くぞ。」
そう言って、衛宮先輩と一緒に歩き始める。さっきの女の人がいた方向を見てみるけど、そこにはまるで最初からそんな人はいなかったみたいにその人の姿は無くなっていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ライブ開始の時刻が迫り、会場内のファンは外の時よりもより熱気を放ち、ライブが始まるその瞬間を今か今かと待ちわびている。それは、衛宮士郎にせよ、間桐桜にせよ、変わらないことだった。立花響も、会場のーーーーーーーーもっと言えば右隣に並んでいる衛宮士郎と間桐桜のまだかまだかと待っているその姿に、一体何が始まるのかと心の中で期待を高めていた。そして照明が落ちーーーーーーーー
「ーーーーーーーーッ、そろそろ始まるぞ..................!」
「私も、あのステージに立つわけじゃないのに緊張してきました..................!」
「一体何が起こるんだろう..................?」
゙ツヴァイウイング゙のデビュー曲である゙逆光のフリューゲル゙のイントロが流れ始める。そして、ステージ上空から、2人がステージに登場した。その瞬間、歓声とそれに混じった黄色い声が会場全体を包みこむ。赤く燃え上がる炎のような真紅の髪と瞳をしている少女が゙天羽奏゙、それとは対照的に、深く透き通った海のような群青の髪と瞳をしている少女が゙風鳴翼゙である。この2人こそがアイドルユニッドツヴァイウイング゙であり、今をときめく日本のトップアーティストである。
「「♪~~~~」」
奏と翼が歌い始める。エレクトロで迫力のあるメロディーと共にあるかのように、ステージ上で踊り、駆け抜け、奥にあるステージへとたどり着く。そして、曲のサビに入るのと同時に、会場を覆っていたドームが変形し、鮮やかなも美しい夕陽が会場全体に差し込んでくる。その夕陽に照らされるように、奏と翼がいるステージの後ろ側に設置されたステンドグラスもその輝きを増していく。そしてーーーーーーーー
「「♪~~~」」
゙逆光のフリューゲル゙が終了する。しかして、これはあくまでもまだオープニング、メインの前のオードブルが出されただけにすぎない。その一方で、立花響は感動していた。
「これがライブなんだ..................!これが゙ツヴァイウイング゙なんだ..................!」
始まる前こそ緊張していた立花響ではあったが、今や゙ツヴァイウイング゙の虜になったと言っても過言ではない。衛宮士郎と間桐桜はといえば、やはりCDで聴くのと、こうして生で聴くのとでは決定的とは言わずとも確かにある差を実感していた。会場内のファンのテンションのボルテージは、既に最高潮に達しようとしていた。そして、2曲目である゙ORBITAL BEAT゙のイントロがかかり、Aメロに入ろうとした時だった。それは起こった。
「ノイズだッ!!」
誰が最初にそう言ったのかは分からない。しかし、それは恐怖とパニックを引き起こすのには充分な引き金となった。口々に悲鳴をあげては逃げ惑い、逃げ遅れた者はノイズの餌食となっていく。
そもそもノイズとは何かーーーーーーーーそれは今から13年ほど前に遡ることとなる。13年前に国連総会にて特異災害の総称として名付けた名前がノイズなのだが、その本当の名は誰にも知る由はない。ノイズの特徴は人間のみを襲い、そして、接触した人間を炭素へと変換する。また、位相差障壁と呼ばれる現象によって、ノイズには一般的な物理エネルギーを持った攻撃などは通じず、通じたとしても与えられるダメージは雀の涙ほどだろう。効率を考えずに絶え間なく弾幕を張り続ければ、殲滅出来る可能性はなきにしもあらずだが、それを上回るノイズの数と力によって返り討ちにされることは想像に難くない。ある独裁国家では死刑宣告をした政治犯にノイズを処理させたという情報もあり、また、ある国では位相差障壁を凌駕するほどのエネルギーをぶつけたが、最終的に山の地形は変化し、その後の雨が降ったことで起きた土砂災害による被害の方がノイズよりも遥かに被害が多かったという。しかし、ノイズの発生率は都心のあらゆるデータをベースに考えた場合、《そこに住む住人が、一生涯で通り魔事件に巻き込まれる確率以下》であるとされる。分かりやすく言うと、一等10億円の宝くじを1枚だけ買って、それが一等だったというくらいの確率である。
「行くぞ翼ッ!今ここに槍と剣を携えているのはあたし達だけだッ!」
しかし、対抗策が皆無というわけではない。ステージにいた奏はノイズの大群に向かって駆け、そして1つのフレーズを口ずさむーーーーーーーー
「 Croitzal ronzell gungnir zizzlーーーーーーーーー」
゙シンフォギア゙ーーーーーーーーノイズに対して人類が持ちうる切り札であり、゙ツヴァイウイング゙で゙る奏と翼はその担い手である。゙聖詠゙と呼ばれるそれは、シンフォギアを起動させるためのものであり、先ほどまでアイドルであった少女の奏を、ノイズから逃げ惑う人々を守るための武装ーーーーーーーー第三号聖遺物゙ガングニール゙のシンフォギアを纏う防人へと、その姿を変えていく。ノイズから人々を守るために、防人となった奏は自らの得物である槍をその手に携え、戦いに臨むーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
士郎side
「はぁっ、はぁっーーーーーーーーーーーーーーーー」
息を切らしながら、どうにか会場の外まで逃げることが出来た。まさか、よりにもよって、こんな記念すべきファーストライブの日にノイズが発生するなんて、運がない..................。こんな状況になってしまった以上、ライブは中止を免れないだろう。まだ少し呼吸は荒いが、大声で立花と桜に呼びかける。
「立花!桜!無事か!?」
「はい、何とか..................。」
「そうか..................、ならーーーーーーーー?」
なぜ、桜の声しか聞こえない?俺は桜の声が聞こえた方向に顔を向けるとーーーーーーーーーーーー
「立花がいない..................?」
「えっ..................?」
この人混みだ、もしかしたらはぐれた可能性だってあるーーーーーーーーあるのだが、俺達3人は一緒にいたのだ、はぐれるなんてありえない。ということはーーーーーーーーーーーー
「まさか、まだ会場に..................?」
「そんなーーーーーーーー」
桜の悲鳴にも似た声が漏れる。もし、本当にまだ会場にいるなら、不味いーーーーーーーー。早く助けに行かなければ、立花が死んでしまうーーーーーーーーそれだけは嫌だ、もし立花を助けることが出来なかったら、俺は一生後悔することになる。だから俺は、これから死地に行く覚悟を決め、桜に話しかける。
「桜、ここで待っててくれないか?」
「先輩?」
「俺はこれから会場に戻って、立花を探してくる。」
「そんな!?先輩、そんなの無理ですよ!まだ、中にはノイズがいるんですよ!?もし、先輩に何かあったら私ーーーーーーーー」
「ごめんな、桜。後で藤ねえと纏めて説教は受ける、けど今は立花を助けることが先決なんだ。だからーーーーーーーー行ってくる。」
「先輩!」
俺は会場に向かって走りだす。桜の呼び止める声を無視してでも、今は立花を救わなくちゃならないーーーーーーーーそれが、゙正義の味方゙であるということだ。再び会場に足を踏み入れようとして、思わず立ち止まってしまう。会場の内部へ続く通路には、たくさんの人が倒れていた。近くに倒れていた1人の女性に呼びかけるが、反応がない。よく見れば、この人に連なる形で人が将棋倒しのように積み重なっていた。つまりは、ノイズから逃げる際に起きてしまった人的被害なのだと、嫌でも認識する。ここでこれだけの被害なら、会場内部はもっと悲惨なことになっているはずだ。急がなければーーーーーーーーーーーー
「ーーーーーーーーッ」
先程までライブを行っていた会場は、わずか数分の間に荒れ果てていた。これではもう、ライブは中止だろう。その前では、ノイズの大群とーーーーーーーー゙ツヴァイウイング゙が戦っている?一体なぜ............よく見ればライブ衣装ではなく、どちらかと言えば武装ととれる。それにこれはーーーーーーーー歌、なのか?まさか、ノイズを相手に歌いながら戦っているーーーーーーーー?しかし、そんな事を気にしている余裕は無い。立花を声を出しながら探そうと一歩踏み出したところでーーーーーーーー
「《
男の声と共に、深紅の軌道がノイズ目掛けて向かっていく。そして、凄まじい爆発音と共に、何千といたノイズがその姿を半分以下にまで減らしている。
「君、こんな所で何をしているのですか?」
後ろから声をかけられる。振り返ると男物のスーツを纏った20代前半くらいの女性だろうか?しかし、明らかに一般人とは言い難い雰囲気を放っていた。
「あんたは、一体ーーーーーーーー」
「私は、仕事でこの地を訪れただけに過ぎません。そんなことより、君はなぜここに?」
「そうだ!後輩がまだここにいるかもしれないんだ!あんた、何か知らないか?!オレンジの髪をした女の子なんだけどーーーーーーーー」
「オレンジの髪をした女の子............?ああ、昼間に私の姿を視認したあの子はあなたの後輩だったのですね。」
「知ってるのか!?」
「詳しくは知りません。ですが、あなたの探している後輩というのはあそこにいる女の子ではありませんか?」
その人が指を指した方向を見てみると、そこには確かに立花がいた。
「立花!!」
「え、あ、どうしたんですか?衛宮先輩?」
「どうしたんですか?じゃないだろ!?こんな所で何やってるんだ!逃げなきゃノイズにやられてたかもしれないんだぞ!」
「ご、ごめんなさい............。」
「謝るのは後だ!今は早くここを出るぞッ!」
立花の手を掴み、もと来た道を戻ろうと駆け出そうとした瞬間ーーーーーーーーーーーーーーーー
「なッ!?」
「あっ!?」
足場がノイズの攻撃によって崩落し、下の観客スペースに落ちてしまったーーーーーーーーーーーーーーーー
「ぐっ............、立花、無事か?」
「は、はい..................っ!」
「どこか痛むのか!?」
「はいっ..................ちょっと強く打っちゃったみたいで............」
見ると、左の太ももが赤く腫れ上がっていた。軽傷ならまだどうにかなると思っていたが、この怪我では歩くことすらままならない。このままでは、2人ともここで共倒れることになる。もうどうにもならないのかーーーーーーーーーーーーーーーー
「逃げるのではなかったのですか?」
「ッ、あんたーーーーーーーー」
気が付くと、俺と立花の前には、先程の女性が立っていた。そして、どこから現れたのかーーーーーーーー深紅の槍を右手に携えた、全身青タイツの服を纏った長身の男もその女性の側に付き添う形で、俺と立花の前に立っていた。
「おい、バゼット。」
「どうかしましたか、ランサー?」
「あの戦ってる連中はともかくとしてもだ、このガキ共、このままじゃ死ぬぞ?」
「分かっています。そのためにも、あなたの力が必要です。」
「はっ、いいぜ............そういうのも嫌いじゃないしな。」
「一体何をーーーーーーーー」
「私とランサーで、ノイズを足止めします。あなた達は、その間にここから逃げるといい。」
「ちょっと待てよ!?あんたらはどうするんだ!?ノイズは人間じゃ全く歯が立たない相手なんだぞ!?」
「普通の人間なら、そうでしょうね。ですが生憎、私は
「なっ..................!?」
魔術師と、ランサーという男にバゼットと呼ばれたこの女性は確かに言った。だが、いくら魔術師だからといっても、所詮は人間とそう変わらない。俺だって魔術師の端くれだ、だが、本当に魔術でノイズを倒すことが出来るのか、疑問に思える。
「その顔を見る限り、本当に魔術でノイズを倒せるのか、疑問に思っているようですね。」
「当たり前だ!いくら魔術が使えるからといったって、どうあがいても人間の枠からは外れないじゃないか!」
「では、そこで見ているといい。そうすれば、それが事実だと認識出来る。」
バゼットはそう言うと、ノイズに向かって、駆け抜けていく。戦っていだツヴァイウイング゙の2人も、目を見開いている。そして、ノイズが攻撃を仕掛けようとした瞬間ーーーーーーーー
「ふッーーーーーーーー!!」
バゼットは、凄まじい速度の右ストレートをノイズに向かって放つ。そして、その一撃でーーーーーーーーーーーーーーーーノイズは赤とも青とも分からない液体を撒き散らしながら、動かなくなっていた。奏さんが、バゼットに驚いたように話しかける。
「おいッ!あんたは一体何者なんだ!?」
「
「..................!!なるほどな、あんたが弦十郎の旦那が言っていた魔術なんたらってのの使者ってわけか........................。」
「ええ、そうなります。それと、急で申し訳ないのですが、あの子達をここから逃がします。そのために、協力していただけませんか?」
「何..................?」
奏さんが俺達の方を見る。というか、目が合った。ヤバいな、油断してたらノイズ云々の前に向こう側に逝っちまいそうだ、気をしっかり持てよ俺!しかし、悲しいかな............こんな状況下でも今すぐにでも誰かに自慢したくなってくる..................ッ!そんな内心を知ってか知らずか、奏さんは目を改めてバゼットに向かい合う。
「分かった、協力するよ。けど、あたしは時限式なもんでね..................。あまり時間はかけられないぜ?」
「構いません。むしろ、まだ動けるのであれば、ノイズを一定量削ってもらいたい。」
「話は纏まったみてえだな、バゼット?」
「ええ。ランサー、あなたの力をもう一度、貸してもらえますか?」
「はっ、当たり前だーーーーーーーーむしろ願ったり叶ったりだな。久しぶりに戦場で暴れまわれる!!」
「では、行きましょう!!」
それを合図に、3人はノイズに相対する。ランサーという男は、明らかにバゼットや奏さんとはレベルが違い、ただ槍だけに頼るのではなく、長い手足を生かした格闘をノイズに叩き込んでいく。それだけではなく、指で何かの文字を書いたかと思えば、そこから炎が巻き起こり、ノイズを炎の中に飲み込んでいく。本来、ノイズには格闘の類は効果がないのだが、どういうわけかランサーという男の攻撃は、ノイズを瞬殺していた。バゼットこ攻撃が効くのは、魔術が使えるからという理由で理解出来るが、この男には朱い槍以外には特に目を引くものは、何らかの文字を用いた魔術のようなものと歴戦の戦士さながらの空気を身に纏っていることだろうか?他に気になることがあるとすれば、何で全身青タイツなんか着ているのか?くらいだろう。のらランサーという男と同じく、槍を得物として扱う奏さんは、空中で手に持つ槍と同じ物を幾つも展開して、それを雨の如くノイズに向けて降り注ぐと、次は竜巻を槍に纏わせ、それをやはりノイズに向かって叩きつける。バゼットは、先程同様、格闘術のみでノイズを亡き者に変えていく。しかも、ノイズが攻撃を仕掛けるよりも早く反応し、ノイズを蹴散らしていく。あの3人は、俺と立花を逃すために、ノイズと戦っているのだ、それを無駄にするわけにはいかない。俺は近くに落ちていた(恐らくは観客席の固定に使われていた)鉄パイプを右手に持ち(何も持たないよりはマシなはずだ)、左手で立花の右手を掴む。そしてーーーーーーーーーーーー
「今だッ!駆け出せッ!!」
奏さんの合図で走り出すーーーーーーーーーーーーが、立花は足に怪我をしているため、速く走ることが出来ない。俺1人なら、恐らく逃げることができただろうが、立花がいる以上、必然的に俺もそのペースに合わせざるを得ない。決して速くはないその足取りは、当然、ノイズに発見されてしまう。ノイズは俺と立花に標的を変え、攻撃をしてきた。まずい、このままじゃやられるーーーーーーーーだが、その攻撃が届く事はなかった。何故ならーーーーーーーーーーーー
「.........ぐ.........ッ!!」
「奏さん!!」
奏さんが攻撃の進路に割り込み、俺と立花に攻撃を当てまいと、槍を使って攻撃を防いでいたからだ。奏さんから、激が飛ぶ。
「何............やってんだ............ッ!!あたしが、足止めしてるうちに............ッ!早く............行けぇぇえええ!!」
「ーーーーーーーーッ!!」
そうだ、今、この状況において、俺と立花は足手まといなのだ。それが、きっと、奏さんが全力を出し切れていない一因なのかもしれない。悔しいけど、認めるしかない。この状況での最善策は、この場から一刻も早く離れ、奏さん達の邪魔をしないことだ。しかし、この状況においてはそれが出来ない。立花を抱えて走る選択肢もあるが、それは、もしノイズに逃走中に通路などで出くわした場合、迎撃出来る手段を持ち合わせないということである。そんな逡巡が最悪の事態を招いた。
「ぐ............ッ............ぁぁあああッ!!」
ノイズの攻撃はより苛烈になり、奏さんの武装が次々に砕け散っていく。そして、その破片はーーーーーーーーーーーー
「がぁ............ッ!!」
俺と立花に向かって飛来した。俺は咄嗟に、鉄パイプで迎撃し、弾ききれなかった破片は辛うじて左腕を盾にすることで、心臓の部分に直撃させるのは避けることが出来た。しかし、反動で後ろ瓦礫まで弾き飛ばされてしまう。そして、俺は己の過ちを認識してしまうことになる。何故なら、俺が左腕で防いだということは、立花と繋いでいた左手を払ったということだ。つまりそれはーーーーーーーーーーーー
「........................ぁ」
「ーーーーーーーーッ!立花ぁぁああッ!!」
俺に飛んでこなかった破片は、無情にも立花の胸に突き刺さる。そして、血飛沫を上げながら、立花は俺から程近い瓦礫に激突し、その目が閉じられようとしていた。
「嘘............だろ............?」
「なッ..................!?」
立花を守れなかった事実に、俺は呆然としてしまう。奏さんは一時的にノイズを退けたのか、俺と立花の元に駆け寄ってきて、立花を抱き上げる。
「おいッ............しっかりしろよ!!」
「..............................」
「おいッ............死ぬなぁッ!頼むから目を開けてくれぇ!!」
「..............................」
「生きるのを諦めるなッ!!」
ーーーーーーーーーーーーーーーー生きるのを諦めるなッ!!
その言葉に、反応したのかどうかは正直分からない。だけど、それでも、立花はうっすらとではあるが、目を開いた。
「..................ぁ?」
「........................!!良かった..................本当に、良かった............ッ!!」
意識を僅かに取り戻した響の顔を見た奏さんの嬉しそうな表情を見た時、俺はあの日を思い出す。燃えさかる街で瓦礫の中、後は周りの人達と同じように、死ぬのを、同じ屍になるのを待つだけだった、そんな状態だった俺を、瓦礫の中から救い出し、嬉しそうにしていた男をーーーーーーーーーーーー衛宮切嗣という男を。ーーーーーーーーーーーーああ、似ているんだ、あの日の俺と切嗣に。立花が俺で、切嗣が奏さん。これは偶然なのだろうか?もしかしたら、神様がそうなるように意図的に仕組んだのかもしれない。それだけ、今の状況はあの時と酷似していた。
「なあ、お前名前は?」
「え............」
「いいだろ?減るもんじゃあるまいし。」
「............衛宮、士郎です。」
「そっか..................なあ、衛宮?頼んでもいいかい?」
「何を............ですか?」
「あたしの歌を聴いて欲しいんだ。命を懸けた、あたしの最後の歌をーーーーーーーー」
「最後って..................何を言ってるんですか!!」
「はは、そういうと思った。」
「だったらーーーーーーーー」
「けどな、それでも、やらきゃいけないんだ。」
「そんなーーーーーーーー」
「それにさ、どうせ聴いてもらうなら、あいつらだけじゃなくて、ファンであるお前に聴いてもらいたいんだ。その方が、熱も入るってもんだ。」
「..................怖く、ないんですか?」
「怖いさ。それでも、今ここで、お前達が死ぬ方がよっぽど怖い。」
「ーーーーーーーっ」
ああ、もうこの人は、止めても聞かないんだろう。それなら、せめて、この人の最後の歌を聴いてあげよう。それが、ファンの1人として、今の俺に出来ることだから。
「..................分かりました。」
「ははっ、ありがとな、衛宮。ああ、そうだ。」
「?」
「翼に伝えてくれるか?ありがとう、お前と歌えて楽しかったって。」
「..................伝えられるかどうか、保証は出来ませんよ?」
「いいさ、いつか、翼に会えたら伝えてくれ。」
そう言って、奏さんはノイズ達の前に立つ。
「いつか、心と体、空っぽにして歌いたかったんだよな..................。」
「だめっ!奏、それを歌ったらーーーーーーーー」
「今日はたくさん、私の歌を聴きに来てくれた連中が、ファンがいる。だからーーーーーーーー」
奏さんは一つ、間を置いて、
「出し惜しみは無しだ。とっておきをくれてやる!」
「だめーーーーーーーーっ!!」
「絶唱ーーーーーーーーーーーーーー!!」
その歌は、とてもきれいで、力強くて、少しだけ儚いものだったけれど、胸に勇気を、希望を灯す歌だった。
その歌が終わった時、天羽奏はこの世界からその存在を消していた。
最後の叫びは翼さんです、描写入れようとしたら文字数制限に引っかかるかもしれなかったので、非常に残念ながら割愛しました(ちくしょう)。ていうか、響の独白を書くの難しすぎる............。士郎と違って、アニメ以外の媒体が全くと言っていいほどないので、こうだろうという感覚で書いてましたが、違和感なく書けていたでしょうか?
さて、次は設定解説のコーナーになります。多分、ここらで説明入れないとわけが分からないことが多すぎると思うので(何で魔術がノイズに聞いたの?とか)。因みにですが、この設定解説のコーナーは、キャラクター同士による台本形式となります(まだ、本編に出てないキャラが登場するけど気にしない)。地の文なんて無かった。Fate/SNをやったことがある人なら、「まさか!?」と思えるかも?
次は多分、3月上旬くらいだと思います。では、またお目にかかりましょう。