Fate/symphogear   作:彼方陽樹

5 / 8
 かなりお待たせしてしまいましたね。もうしわけありません。とはいえ、いきなり風邪になって1週間ほどダウンしてましたので、書くに書けなかったのですが。


 さて、予告した通り今回は人によっては不快な思いをする可能性のある話です。この話の核の根本には、私が、シンフォギアの公式サイトでとある設定を見た時、「これ、書いてないだけで実際はもっとひどかったはずだよな..................。」ってものがありまして、そこから着想得ました。


 それと事前に謝っておきます。もし、響が好きな人がいたらごめんなさい!でも、この話を書かなきゃ、この後のストーリーにも影響出るから仕方なかったんです!私も、響は好きなキャラの1人で、書いてる途中でも胃がキリキリしながら、精神が削られながら書いたんだ!響はちゃんと、あいつが救ってくれるんで、次の話まで耐えて下さい!


 では、第4話です!お楽しみいただければ幸いですが、もし、途中で「ダメだ」って思ったら、ブラウザバックを推奨します!


#04 行き場なき慟哭

響side

 

 

 目を開けると、周りに色々な機械があった。

 

 

 ーーーーーーーーここは、どこなんだろう?

 

 

 私は、どうなっているんだろう?

 

 

 ーーーーーーーー何だか、色んな声が聞こえる

 

 

 その声の中から、「奇跡だ!」とか「目を覚ましたぞ!早くご両親に連絡を取れ!」とか、そんな声が聞き取れた。

 

 

 ーーーーーーーーここは............病院、なのかな?

 

 

 周りを見渡してみると、ベッドがお日様が見えるから、多分、窓側の位置にいるんだと思う。近くにあった置き時計を見てみると、ライブの日の次の日にちを示していて、時間は正午ちょうどを指していた。そういえば、私、どうなったんだっけ..................?゙ツヴァイウイング゙のライブ会場に、いたところまでは覚えてる。衛宮先輩が助けに来てくれて、奏さんが私と衛宮先輩を守ってくれて、ボロボロになって、破片みたいなものが私の胸に突き刺さって..................。でも、それより後のことは、正直かなり曖昧で、多分、途中で気絶しちゃったのかな..................?だけど、確かに覚えているのはーーーーーーーー

 

 

「生きるのを諦めるなッ!!」

 

 

 ーーーーーーーー生きるのを諦めるな。

 奏さんが言った言葉は、確かに覚えてる。鮮明に、はっきりと、一言一句間違えることなく。どんな思いで言ったのかは分からないけど、きっと、死ぬかもしれなかった私に生きて欲しかったんだと思う。目を開けた私を見た奏さんは、凄く嬉しそうな顔をしていたんだから、きっとそうだ。ベッドから起き上がるために、体を動かそうとするけど、上手く動かない。看護士さんかお医者さんを呼ぶために声を出そうとするけど、声まで上手く出ない。まるで、私の体じゃないみたいだ。そんなことを考えていると、声をかけられた。

 

 

「立花さん、聞こえますか?聞こえていたら、首を縦に振ってください。」

 

 

 男のお医者さんだった。返事が出来ないことを知っているからなのか、返事の仕方を指定してくれた。私は、首を縦に振る。

 

 

「良かった、ひとまずはご無事のようですね。今、こちらにご両親が向かっています。ご両親がこちらにくる間に幾つかご説明をしますねーーーーーーーー」

 

 

 そう言って、お医者さんは話を始めるけど、小難しい言葉が次々に出て来て他の国の言葉で話されているみたいだった。話が終わったのか、私に視線を送っている。何を言っていたのかはさっぱりだけど、とりあえず首を縦に振っておこう。

 

 

「ご理解いただけて何よりです。しばらくの間は、こちらでリハビリを1ヶ月ほどしていただいてから退院となりますが、立花さんの努力次第ではもっと早く退院出来るかもしれません。」

 

 

 私の努力次第、か..................。あんまり急いで直す理由は特に無いし、ゆっくりリハビリをしよう。そんな決意を固めようとしたところでーーーーーーーー

 

 

「「響っ!!」」

 

 

 お父さんとお母さんが入ってきた。その表情は、凄く喜んでいたと思ったら目に涙を浮かべて、お父さんとお母さんは私を抱きしめてきた。あんまりにも強く抱きしめてくるから、ちょっとだけ息が苦しくなるけど、それだけ心配してくれてたんだなって思うと少しだけ嬉しくなる。お父さんとお母さんが私に聞いてくる。

 

 

「響、本当に大丈夫なのか?無理してないか?どこか痛いところとか苦しいところとかは無いのか?」

「お医者さんからは「2、3日は目を覚まさないかもしれません」って言われてたから、心配で..................。」

 

 

 お父さんもお母さんも、凄く不安そうな顔をしてる。お医者さんがお父さんとお母さんに話しかけて、別の部屋(多分、診療室かな?)に移動するみたいだった。お父さんとお母さんは私に「すぐ戻ってくるから」と言って、お医者さんと一緒に私のいる病室を出た。

 

 

 さっきのお父さんとお母さんの顔を思い出す。............凄く不安そうな顔をしてた。どんな気持ちなのかまでは、私には分からない。けど、あんな顔させちゃダメだ、あんな顔にさせたくない。ーーーーーーーーお父さんとお母さんを心配させたくない。お医者さんの言っていたことを思い出す。お医者さんは「努力次第ではもっと早く退院出来るかもしれない」って言っていた。だったらーーーーーーーー

 

 

「お父さんとお母さんを心配させないために、リハビリ頑張らなくちゃ..................。」

 

 

 声を出すことが出来たけど、そんなことを気にしている場合じゃない。早く治そう、お父さんとお母さんを心配させないために。二度とあんな顔にさせないために。そう自分に言い聞かせる。

 

 

 ーーーーーーーーまだ、お日様が出ているうちに、リハビリは始まった。両手と右足は、お父さんとお母さんがお医者さんと一緒に戻ってくるまでには動かせるようになったけど、左足だけ上手く動かない。多分、ノイズの攻撃で足場が崩れた時に、瓦礫に左足を打っていたから、そのせいなのかもしれない。先生は「骨折だけで済んだのは幸いです。もし、打ち所が悪ければ、手術が必要だったかもしれません。」って言っていた。逆に言えば、゙それだけで済んだ゙って言えるのかもしれない。最初のリハビリは、私のいる病室からナースステーションまでを往復することだった(さすがに松葉杖を使ってだけど)。それだけなのに、それが凄く難しい。松葉杖に慣れてないのは当たり前だけど、それ以上に、いつもと感覚が違うせいで動かせる右足でさえ、なかなか上手く進めない。進もうとするたびに倒れて、そのたびにお父さんが抱きとめてくれた。ナースステーションに着いた時には、病室を出てから1時間経っちゃってた。着いたところで、誰かに声をかけられる。

 

 

「立花!?もう、歩いて平気なのか!?」

 

 

 声がした方を向くと、そこには衛宮先輩が左腕に包帯を巻いた姿で立っていた。ってーーーーーーーー

 

 

「衛宮先輩!?何で、病院にいるんですか!?」

「いやなに、逃げてる時に左腕を少しぶつけてな..................、まあ、少し打撲しただけだ。立花ほどの怪我じゃない。それに入院するわけじゃないしな。」

 

 

 確かに、私と衛宮先輩の怪我とじゃ私の方が入院は必要だけど..................、でも、周りから見れば私も衛宮先輩も怪我人であることに変わりはないんだから、心配する人だっているはずだ。でも、打撲だけなら、左腕に包帯をぐるぐる巻く必要は無いと思うんだけど..................?

 

 

「でも、それだけで包帯巻きますか?」

「硝子の破片がいくつか刺さってたからな。破片はもう取り出して傷口は縫ってあるんだけど、一応、傷口から細菌を入れないための処置らしい。」

「そうなんですか............。そういえば、入院しないって、どういうことなんですか?」

「ああ、俺以外にも怪我してる人がたくさんいるみたいでな。1人1人入院させてたら、ベッドが足らなくなるみたいなんだ。だから、重傷じゃない限りは、入院させないらしい。まあ、そうは言っても、一週間くらい通院しなきゃいけないんだから、入院しているのとそう変わらないんだけどな。」

 

 

 ーーーーーーーーまあ、仕方ないさ。

 衛宮先輩はそう言ってるけど、病院のやってることは、正直に言って、結構薄情だと思う。そりゃ、私みたいに骨折なら入院するのは仕方ないけど、悪化するかもしれない状態だったらどうするんだろう?確かに、この病院は4階建てで、病室は各階に4部屋で、ベッドの数は8つしかないから、各階のベッドの数を合計しても128人しか入院することが出来ない(私がいるのは2階の202号室になる、病院の規模としては少し小さいかも。衛宮先輩みたいに生活するのに影響があまりなければ、通院する形になるのは仕方ないのかもしれない。ふと、そういえばと思って質問してみる。

 

 

「衛宮先輩って、今まで骨折とかで入院したこととかあるんですか?」

「いや、そういうので入院したことは無いな。ああ、でも、入院自体はこれが初めてじゃないか..................。」

「え?そうなんですか?」

「8年くらい前に、大きな火災があっただろ?その時に入院したんだ。あの火災の時は、子供と重傷患者以外は入院出来なかったっけか..................。」

 

 

 ーーーーーーーーこれは触れちゃいけない話題だ。

 少なくとも、私はそう思う。きっとこの話題について、もっと聞いたら、私は、衛宮先輩の知ってはいけないものを知る気がして、衛宮先輩の見てはいけない何かを見てしまう気がして、それ以上のことは聞きたくなかった。だって、その時のことを話す衛宮先輩の表情は、いつもと変わらないように見えて、暗くて、目は笑っていなくて、影を纏っているように錯覚しちゃったんだから。私も衛宮先輩も、どっちも喋らないから、とても空気が重い、というかかなり気まずい。どうしようと考えていたら、お父さんが衛宮先輩に話しかける。

 

 

「えっと、君は誰なんだい?娘と親しいみたいだけど............?」

「もしかして、立花のお父さんですか?」

「ああ、うん。初めまして、俺は立花洸、響の父親だよ。君は?」

「衛宮士郎です。立花とは、後輩を通じて知りあって、ライブの時もその後輩と一緒に立花といました。」

「そうだったのか............。そういえば、君はうちの娘と一緒にライブ会場から出て来たと聞いたけれど、本当なのかい?」

「はい。ノイズが現れた時、後輩と一緒に会場の外に出たんですけど、立花がいないことに気付いて、後輩に待ってるように言って、会場の中に戻ったんです。それで何とか立花を見つけて外に逃げようとしたんですけど、ノイズの攻撃で足場が崩れちゃって............。左腕も、その時に打撲したみたいなんです。立花も左足を怪我しちゃって、ノイズが攻撃をしてこようとしてーーーーーーーー。それ以降のことは覚えてないです。俺は立花を背負って、無我夢中になって外を目指したんで、立花が気絶していることには外に出るまで、気がつきませんでした..................。」

「そんなことないさ。現に、君のおかげで娘は助かったんだ。改めてお礼を言わせて欲しい。娘を助けてくれてありがとう。」

 

 

 そう言って、お父さんは衛宮先輩に頭を下げる。衛宮先輩はすごく困った顔をしていて、何て言えばいいのか分からない感じだった。

 

 

「俺は、そんな感謝されるようなことは何も............。」

「謙遜しなくていい、君のやったことは間違いなく感謝されるべきことだ。君の行動で、娘は助かった。それだけでも、親として、個人として、君に感謝したいんだ。」

「........................。」

 

 

 お父さんの言葉に、衛宮先輩の顔はさっきとは違って、何故か悔しさと怒りをごちゃ混ぜにした怖い顔をしていた。まるで、「自分は何も出来なかった」って思っているように見えた。衛宮先輩は、そんな思いを振り払うように頭を左右に振り、お父さんと向きあう。

 

 

「じゃあ、俺はこれで。迎えが病院の前に来てるらしいんで、そろそろ行かないといけないんで。」

「ああ、そうなのか。呼び止める形になってごめんね。」

「いえ..................。じゃあな、立花。見舞いには、行ける時に行かせてもらうよ。」

「あ............、はいっ!でも、無理に来なくても大丈夫です!」

「だけど、1回は必ず行くよ。多分、桜も心配してるだろうしな。」

「桜ちゃんは..................?」

「特に大きな怪我はしてないよ。むしろ、俺達の中じゃ一番動ける。」

「そうですか............、良かったぁ............。」

「じゃあまた今度な。リハビリ、頑張れよ。」

 

 

 衛宮先輩はそう言って、階段に向かって歩いていった。さっきのやりとりを見ていた先生が、話しかけてくる。

 

 

「さて、では戻りましょうか。今日は目覚めたばかりですし、早めに休息を取るべきでしょう。」

「え..................、でも、私まだーーーーーーーー。」

「無理をすれば、退院する時期が遅くなるかもしれません。焦らずゆっくりやるべきでしょう。」

 

 

 先生の言い分はもっともだ。怪我だって病気と同じで、無理をすれば悪化することだってある。ゆっくりやるのが、本来はベストだと思う。けど、それじゃダメなんだ。お父さんとお母さんを心配させないために、早く治さなくちゃいけないんだ。でも、先生の態度を見る限り、これ以上はリハビリをさせてもらえなさそうだ。今日は諦めよう、でも、明日は今日出来なかった分をやろう。そう胸に誓って、自分の病室に足を引きずりながら、戻っていった。

 

 

 ーーーーーーーーそれから、1週間が経った。

 

 

 左足はまだぎこちないけれど、生活する分には問題ない状態まで回復した。それでも、週に2回くらいはリハビリに来なきゃいけないけど。回復するまでの1週間の間に未来と桜ちゃん、それに衛宮先輩と藤村先生がお見舞いに来てくれた。最初に未来が来て、未来は、

 

 

「私が響を誘ったから、こんなことになっちゃったんだよね............。ごめん............、ごめんね、響............。」

 

 

 と涙声で顔をくしゃくしゃにしながら、私に謝ってきた。私が怪我をしたせいで、お父さんとお母さんだけじゃなくて、未来にまで悲しい思いをさせちゃった。それが余計に辛くて、リハビリのもう一つの原動力になった。衛宮先輩達は退院する2日前にお見舞いに来てくれた。衛宮先輩と桜ちゃん、藤村先生は3人一緒に来て、まず、桜ちゃんが、

 

 

「先輩が響ちゃんを背負って出て来た時、私、びっくりしたの............。2人とも無事ってわけじゃなかったけど、それでも2人が戻ってきたのが嬉しくて、本当に嬉しくて............。」

 

 

 と言ってくれた。言葉の最後の方はほとんど泣いていて、藤村先生は、その肩をそっと抱き寄せながら優しい声で、

 

 

「でも、本当に無事で良かったよ。ノイズから生き延びることが出来たこと自体が、奇跡なんだから、神様に感謝しないとね。士郎も、桜ちゃんも、響ちゃんも、3人とも生きてくれてて本当に良かった。」

 

 

 私と衛宮先輩を励ますように、柔らかい笑顔を浮かべながら言う。藤村先生は大人だから、ことの大きさを知っているし、分かっているからこそ、まだ子供私達のことをさえ支えようとしてくれてる。けれど、衛宮先輩は私が目覚めて、リハビリを始めた日に出会った日と比べて、そこまで変化が無いように思った。顔に浮かべる表情は、穏やかで優しいものだけれど、纏っている雰囲気みたいなものはむしろ強くなっているように見えたし感じた。衛宮先輩は、そんな私の視線に気付いたのか、頭を左右に振り、私に向き直って、

 

 

「今週中には、登校出来るようになるんだろ?美綴も「大会じゃなかったら、私もお見舞いに行きたかったなー」って言ってたし、今度、顔を見せに弓道場に来いよ。」

 

 

 そう言って、藤村先生と桜ちゃんに声をかけて、病室を出ていった。普段はお父さんとお母さん、それにおばあちゃんが交代みたいな形で毎日病院に来ていたけれど、その日はお休みでかつ日曜日だったから、3人は朝の早い時間から病院に来ていた。廊下で話し声が聞こえたから、多分、衛宮先輩達がお父さんかお母さんかおばあちゃんの誰かと話しているんだと、その時は思った。それから2日語に、私は退院して、そして、今日から学校に復帰することになっている。平穏な日常が、また、始まるんだーーーーーーーー

 

 

 ーーーーーーーーけれど、それは、目を背けたくなるような現実が、なければの話なんだ。

 

 

 今日から学校に復帰することになった私は、いつもより少しだけ、早い時間帯に家を出た。退院した日に未来に、「明日は少しだけ、早い時間に行きたいんだけど、いいかな?」って、お願いをしてみたら、すぐに「いいよ」って言ってくれたから、今日はいつもより30分早めに学校へ行くことになっている。待ち合わせ場所のT字路に着くと、もう既に未来が待っていた。

 

 

「未来、もう来てたの?」

「久しぶりに、響と一緒に登校出来るんだもん、ちょっとだけ早起きしたの。」

「そっか............。ああ、そうだ、未来。」

「どうかしたの?響?」

「えっとね、そのー............、ノート見せてくれないかなあ?私、2週間くらい学校に行ってないし、それに、ほら、そろそろテストじゃない?このままだと、ちょーっとマズいかなーって............。」

「響は勉強、苦手だもんね。」

「うっ............。」

「大丈夫、ちゃんと教えてあげるから。何なら、桜ちゃんと衛宮先輩も誘ってみる?」

「あー、そうだね!2人も誘って、土日にお泊まりで勉強会をしようよ!」

「お泊まりって言っても、誰の家に泊まるの?」

「んーとね............、衛宮先輩の家、なんてどうかな?」

「確かに広かったもんねー............。あれだけ広かったら、1人1部屋くらい出来そうだしね。」

「昼休みに、衛宮先輩に聞いてみようよ!」

「ふふっ、そうだね、響............。」

 

 

 7月の初めに控えたテストに向けての勉強会を開く計画を、学校に着くまでの間に、話し合った。武道館の方からは、柔道部や剣道部の掛け声が聞こえてきて、たまに弓道部の矢を当てる音が、聞こえてくる。あれ?そういえばーーーーーーーー

 

 

「ねえ、未来?」

「なーに、響?」

「弓道部って、大会どうなったの?」

 

 

 そう、衛宮先輩と桜ちゃんは弓道部に所属している。2人とも大会の1週間前に、あのライブで、ノイズの襲撃に遭ったのだ。大事をとって(特に衛宮先輩)、多分、2人とも出場していないとすると、大会の結果は、良くも悪くも気になっちゃう。

 

 

「そんなに心配しなくても、ちゃんと全国大会には出れるみたいだよ?」

「そうなの?」

「美綴さんとその弟さん、それに、桜ちゃんのお兄さんが良い結果を出して、個人とチームの両方で関東大会を突破したって、美綴先輩は言ってたよ。」

「そうなんだ............」

 

 

 内心でホッと胸を撫で下ろす。そっか、それなら心配ないのかな............?

 

 

「でも、衛宮先輩と桜ちゃんがいたらもっと良い成績だったかもしれない、とも美綴先輩は言ってたよ?」

「........................ですよねー。」

 

 

 そりゃそうだ。もう、2週間も前に見た練習の時、衛宮先輩は弓道部の中じゃずば抜けて凄かった。だって、的を狙って撃つたびに、的の真ん中めがけて矢が飛んでいくんだもん、美綴先輩だって凄いけど、必ず真ん中に当たるわけじゃないから、きっと、衛宮先輩が相当努力したんだと思う。桜ちゃんは、そんな2人から教えてもらっているのもあって、かなり上手だ。来年には、弓道部の部長として活動することになるとか。そんなことを考えているうちに、下駄箱に着いたから、上履きに履き替えて教室に向かって歩く。

 

 

「そういえばね、響............。」

「何?」

「うちの学校、響と衛宮先輩と桜ちゃん以外にもライブに行った人がいたみたいで............」

「............まさか」

「何人かは分からないんだけどね、でも響達以外はーーーーーーーー」

「待って!!」

 

 

 自分でも驚くくらい大きな声が出た。周りの視線が変な物を見るような目になっていたけど、そんな事は、今は、どうでもいい。今はそれよりも、未来が話そうとしていた事を聞きたくなかった。違う、きっと、そうじゃないんだ。聞いたらきっと、耐えられなくなると思ったから、思ってしまったから、聞くことを拒もうとした。けれど、そんな思いは未来の顔を見ると、すぐに崩れ去ってしまった。だって、未来の顔は、凄く泣きそうになっていたんだから。

 

 

 ..................違う。違う、そうじゃないんだ。未来に、そんな顔をさせたくなかったのに、そんな顔をさせないように頑張ったのに、結局、何も変わってない............っ!楽じゃなかったリハビリだって、それで少しでも、未来やお父さん、お母さんが元気になればって、そう思って頑張ったのに..................っ!こんな顔をさせてるんじゃ、意味なんてない!意味なんてーーーーーーーー

 

 

「..................ごめんね、響。」

「..................え?」

「そう、だよね..................。聞きたくなかったよね..................?」

「待って、違うの、そうじゃないの!未来っ!そうじゃなくて、私ーーーーーーーー!」

「そうじゃなくて、何?」

「そうじゃなくて............、未来に、またいつもみたいに笑って欲しくて、それでーーーーーーーー」

「..................うん、そうだよね。ごめん、響。私も、響の気持ち、考えてなかった............。」

「未来............。」

 

 

 ............そうじゃない。そうじゃないでしょ、私!意味がない?違う!意味が無かったのは、私がそう思っていたからだ!私は、何の為に頑張った!?未来やお父さん、お母さんの為じゃないか!暖かい゙陽だまり゙があるって知ってるからじゃないか!それを!それを、自分の手で壊して!壊して..................どうするんだ..................。今すぐ変わる事は出来なくても、今から変えられる事はあるんだ!例え、それがどんなに小さなモノであったとしても!それを積み重ねればいいじゃないか!それがーーーーーーーー゙変わる゙って事じゃないか!

 

 

「ごめん、先にーーーーーーーー」

「待って!」

 

 

 先に教室に行こうとする、未来の手を掴む。

 

 

「..................響?」

「ごめんね、未来............。」

 

 

 一呼吸、間を置いて、未来と向き合う。

 

 

「私も、未来の気持ちに全然気付いてなかった..................。未来が私の事を、ちゃんと考えてくれてるのは、私がよく知ってるはずなのにね..................。」

「響..................。」

「だから、これで、仲直りってわけじゃないけどーーーーーーーー」

 

 

 そう言って、右手の小指を未来に向ける。

 

 

「約束して。どんな事があっても、私と一緒にいてくれるって。」

「響..................。」

 

 

 未来は、一瞬だけ躊躇ってーーーーーーーー

 

 

「それで、いいの............?」

「未来だからいいんだよ。未来だから、安心して言えるの。」

「..................うん、分かった。じゃあ、約束。」

 

 

 未来が自分の右手の小指を私の右手の小指に絡めてきて、本当は仲直りの時に使う言葉を言う。

 

 

「「ゆびきーりげーんまん、嘘ついたら針千本のーますっ!指切った!」」

 

 

 なんて事はない、よく見る普通の光景。ちょっとだけ、ギスギスしてはいたけれど、いつの間にか仲直りしていて、それもきっといつの間にか、日常に溶け込んでいて、いつも通りの生活を送っていくんだろうなってーーーーーーーー

 

 

 ーーーーーーーーこの時は、まだ、そう思えていたんだ。

 

 

 通い慣れた教室のはずだけど、やっぱり1週間行っていなかったせいもあって、妙に緊張する。それに、何だか教室の中の雰囲気が違うというか、違和感があるのが、外からでも分かる。でも、そこまで心配することじゃないはず............。けど、こんな事で躊躇ったって仕方ない。それに、後10分くらいでホームルームが始まるんだし、そこまで変な事は起きないと思う。深呼吸をして、扉を開けて、教室に入る。

 

 

「..................っ!?」

 

 

 背中が一瞬だけゾクッとした。今のは一体............何なの?何か、こう、恐ろしいものを見るような..................。ダメだ、深く考えないようにしよう。ゆっくりとだけど、自分の席に向かう。自分の席に鞄を置いて、その中から筆記用具と教科書とノートを出して、机の中に仕舞ったところで声をかけられる。

 

 

「響ちゃん..................。もう、大丈夫なの?」

「桜ちゃん!」

 

 

 話しかけてきたのは桜ちゃんで、その顔はちょっとだけ心配そうだった。

 

 

「うん!もう、へいき、へっちゃら............とはいかないんだけど、ひとまずは大丈夫なんだって。」

「そっか............。良かったー............。」

 

 

 安心したのか、優しい表情を浮かべる桜ちゃん。そうだ、今のうちに聞いておこう。

 

 

「ねえ、桜ちゃん?」

「どうしたの?」

「そろそろ、期末テストじゃない?それで、勉強会でもしようって、未来と話してて............。もし良かったら、一緒にどう?」

「それはいいけど............。でも、場所はどうするの?ファミレスかどこかでやるの?」

「うん、そのことなんだけどね............。衛宮先輩の家を使えないかな?ほら、衛宮先輩の家って広いし、藤村先生もいるから勉強も捗るかなって思ってたさ。」

「先輩は大丈夫だと思うけど、藤村先生はどうかなあ............。先輩と一緒に説得すれば大丈夫だと思うけど............。」

「あとね、そのー、出来ればお泊まりとか出来たら、長く勉強しても怒られないかな~............なんて?」

「それは、先輩の作ったご飯を食べたいだけじゃないの?」

「あはは、バレたかー。」

「でも、お泊まりも考えると、ちょっとだけ厳しいかも。藤村先生は一応先生だし、その辺はちょっと難しいかな............。」

「まあ、出来たらでいいよ!出来たらで!」

「うん、分かった。先輩には?」

「昼休みに言おうかなって思ってるよ。」

「じゃあ、昼休みに弓道場で話してみようか。」

「うん、そうだね。」

 

 

 勉強会の事について話していたら、担任の松崎先生(男の先生で、多分、藤村先生と同じくらいかちょっと年上、でも少しだけ気怠げ)が教室に入ってきた。いつもみたいに「それじゃー、ホームルーム始めるぞー。」と気の抜ける挨拶で、ホームルームが始まる。けど、それでも教室に入る前に感じた違和感は無くならない。一体、何なんだろう............?けど、違和感の正体は、結局のところ分かる事無く、昼休みを迎えたーーーーーーーー。

 

 

 鞄の中からお弁当を出して、未来と桜ちゃんのところに行こうとしたところで、目の前にクラスメイトの垣橋さんが立っていることに気付いた。確か、サッカー部のキャプテンの水川先輩の一番のファンを名乗っていたはずだ。でも、これといってあまり関わりはないし、何の用なんだろう?

 

 

「えっと、垣橋さん............だよね?」

「..................私の事、知ってるんだ。」

「そりゃあ、クラスメイトの名前くらいは............。」

「じゃあ、あなたは、犠牲になった人達の名前も覚えてるの?」

「えっ..................?」

 

 

 ーーーーーーーー犠牲になった人達。

 それが、何を指しているのかは予想が付いた。でも、私は犠牲になった人の数なんて、知らない。知らないと言うより、教えられてない。だから、私には、垣橋さんが何を言いたいのか、さっぱり分からなかった。

 

 

「..................ごめん、それは分かんないや。私、ライブの事は途中からあんまり覚えてなくてーーーーーーーー」

「ふざけないでっ!」

「え」

「覚えてない?ふざけないでよっ!何でっ!何でっ、あなたみたいな取り柄もない人が生き残って!どうして、どうして水川先輩がーーーーーーーー」

 

 

 私は、一瞬で理解した、いや、理解させられた。サッカー部のキャプテンの水川先輩も、あのライブ会場にいたんだ。それでも、助けられたか聞かれれば、多分、無理だと答えるしかない。ノイズの前で、見知らぬ誰かを助けるか逃げるかの選択をした場合、多分、10人中10人が逃げる事を選ぶと思う。多分、ライブ会場の時は、全員が逃げる選択をしたはずだ。その中で、水川先輩を助けろなんて、男の人ならともかく、女の子の私には無理だ。けれど、垣橋さんの怒りは収まらない。

 

 

「返してよ!水川先輩を返してよ!」

「そんな事、言われたって..................。」

「水川先輩は、スポーツ推薦でもう進学先は決まってて、プロからも注目されてたのに............っ!なのにっ、どうして!あなたみたいなのが生き残って、水川先輩が死ななくちゃいけないのよ!こんなのおかしいじゃない!理不尽じゃない!何で、何でなのよおおおおおおっ!!」

 

 

 その言葉は、悲鳴にも似ていて、最後の方は、ほとんど泣きじゃくっていた。そして、

 

 

「そ、そうだ!何で、お前が生き残ってるんだ!」

 

 

「自分が死にたくないからって、他の奴らを押し退けたんだろ!」

 

 

「どうせ、助かるために殺したんだろ!」

 

 

「この人殺し!」

 

 

「雑誌でも書いてあったぜ!お前ら生き残りは、助かるために人を殺したってなあ!」

 

 

「あんたなんか、死んじゃえばいいのよ!」

 

 

 気が付けば、周りにはたくさんの人がいた。たくさんの、怒りが、罵倒が、批判が、私という一点に降り注ぐ。私には、その人達の言っていることが、真実なのかどうかは分からない。だって、私は知らないんだから。自分はやってないと分かっていても、主張しても、数の前じゃかき消されるだけだ。とにかく、ここから逃げなくちゃ!逃げなきゃきっと、今よりもヒドい事になる!だからその前に逃げなくちゃーーーーーーーー。そう思って、お弁当を持って駆け出そうとしたところでーーーーーーーー

 

 

「逃げようとしてんじゃ、ねーよ!」

 

 

 ーーーーーーーーバキッ

 頬を殴られて、床に倒れる。口の中に、血の味が広がっていく。気が付けば、周りには、関わっちゃいけないタイプの男女合わせて10人のグループに、私は取り囲まれていた。

 

 

「こいつ、今、逃げようとしたよなぁ?」

「どうせ、先公にでもチクろうとしたんだろ?」

「うわ、何それ。人殺しのくせに有り得ないんですけど。」

「じゃあさ............。」

 

 

 ギラリと、獲物をどう調理しようか考えている獣の様な目で、グループのリーダーに見える子が私の事を見る。そしてーーーーーーーー

 

 

「この人殺しをボコッてさ、裸にするなんてどうよ?そんで、その裸を撮ってさ、ネットにバラまいちまおうぜ!」

 

 

 それがどういうことなのか、何を意味しているのか、否が応でも理解せざるを得ない。そんなことをされたら、人としての尊厳どころかまともな人生なんて、歩めなくなる。それ以上に、何をされるのか分かってしまった恐怖で、頭の中がパニックになる。

 

 

「............ぁっ、............やぁっ、............嫌ぁっ!」

 

 

 ーーーーーーーー私の、悲鳴にも似た声が、響き渡る。頭の中が、ただ1つの感情に埋め尽くされる。

 

 

 怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!

 

 

 恐怖に染まった体が、逃げ出すために駆け出そうとする。

 

 

 逃げなきゃ!逃げなきゃ、何もかも奪われちゃう!早く逃げなきゃ!逃げなきゃ!逃げなきゃ!逃げなきゃ!逃げなきゃ!逃げーーーーーーーー

 

 

「何、勝手に逃げようとしてんだよっ!」

「あ、ぐ............ぁ。」

 

 

 逃げようと駆け出そうとして、グループの中でも体格の良い男子の膝蹴りが鳩尾に入り、逃げるために前屈みになっていた体は浮き上がって、背中から床に倒れる。

 

 

「ったく、勝手に逃げようとしやがって............。」

「なあ、さっきのあれにさ、罰を1個追加するってのはどう?」

「追加するったって、何すんのさ?」

「俺の先輩に、高校でグループ作った人がいてさ............。そのグループによ、裸で放り込むってのはどうだ?人殺しは、そこまでやられないと気が済まないらしいからなあ?」

「いいねー、それ!やっちゃおうよ!」

 

 

 それは、言ってしまえば、私の体をそのグループに好きにさせると言っている事に等しかった。女の子にとって、大切なものを、思い出として、一生残るものを、奪えるもの全てを奪い尽くそうという事に他なら無かった。だから、狂ったように叫んだ。

 

 

「............嫌ぁ、嫌ぁああ!嫌ぁぁぁあああああ!!」

「さっきから、ギャーギャー、うっせえんだよ!」

「は、ぐ............ぁ。」

 

 

 細身の女子の蹴りがお腹を直撃する。

 ーーーーーーーー痛い。ズキズキとでた痛みが、お腹を中心に巡り、頭が吐き気を訴えてくる。でも、それ以上に思ってしまう。

 

 

 ーーーーーーーーどうして?

 どうしてどうしてどうしてどうしテどうシてどウしてドうしてどうシテドウしてドうしテどウシてどウシテドウシてドウしテドうシテドウシテ?

 

 

 ーーーーーーーードウシテ、ワタシガコンナニサレナクチャイケナイノ?

 

 

 この学校にだって、私以外にも生き残った人はいるはずだ。衛宮先輩も、桜ちゃんも、2人だって、私と同じように、生き残ったはずだ。なのに、どうして?どうして、私だけがこんな目に遭わなくちゃいけないの?だって、私は悪くないじゃないか。私は、助けられただけだ。衛宮先輩に、天羽奏さんに。だから、私は悪くない。悪くないけどーーーーーーーー

 

 

 ーーーーーーーー生き残った事自体が罪だって、言いたいの?生き残った私は、死んだ人達と同じ数の人達を助けなきゃ、幸せになんてなっちゃ、いけないの?ーーーーーーーー生きてちゃ、いけないの?

 

 

「さて、手早くやるぞ。先公が来たら面倒だしな。」

「オーケー、どこからやる?」

「そうだなー、まずはーーーーーーーー」

「何やってるんだ!お前ら!」

「............あん?」

 

 

 教室の外から、怒号が飛び、グループの視線が、その怒号を飛ばした人物に向かう。私も、誰が来たのかを見るために顔を向けると、そこにいたのはーーーーーーーー

 

 

「........................ぁ、ああっ!」

 

 

 か細く、涙が混じった声を出す。だって、そこにいたのはーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「お前ら............、女の子に、立花に何をした!」

 

 

 怒りをその身に纏い、赤い炎の様な憤りを、怒りを込めた眼差しをしている衛宮先輩が、そこにいた。




 はい、というわけで第4話終了です。如何でしたでしょうか?個人的に、誤字とか無いか見返したりした時でも、明らかにやりすぎたかもしれないとは思ってました、はい。でも、響の歪みの原因は、遡ればライブ会場の惨劇に行き着き、そこから恐らくあったであろういじめが一番の要因だと、個人的には思います。しかし、あれですね、書いていて思いましたが、士郎の登場は痛めつけられた胃と精神を回復してくれる............。


 次の話は、若干ですが時間を遡ってスタートします。士郎も決してヒーローなんかではありません。彼ば正義の味方゙であるが故に、時として、それに縛られる事もあります。Fate本編に比べれば、まだ優しいことになるような気はしていますけどね。


 それと、誰視点なのか分かりやすくするために、sideを付けることにしました。どうしたって、幾つも視点を書く事になってしまうので、自分が混乱しないようにというのも1つ。もう1つ、読者の皆様が誰の視点なのか混乱しないようにするためです。地の文で、ある程度は差別化出来るんですが、シンフォギア側の一人称の「私」率が高すぎて、混乱する可能性があるので、それを無くすためにも、今回からこの様な形に相成りました。ご理解していただければ。


 後、すっごい今更ではありますが、私、原作のFate/sn(移植版含む)どころか、アニメのUBWと前日譚であるzeroしか知らないんですね。最新作であるFGOはやってるんですけど、あれは、どっちかと言えばお祭り作品だと認識してますし、メインのシナリオが型月外の人間なのもあって、那須きのこさんの文はたまにくるイベントのやつしか分からないんです。設定なんかは、まだネットで漁ったり出来るぶんマシではあるんですけどね。なので、今後、本編を知らないが故に起きる可笑しな話があったとしたら、暖かい目で見ていただければ............。


 長々と書きましたが、多分、次の話は4月上旬になりそうです。ニ○ニ○で、シンフォギア一期を見直してるのもあります。出来る限り、早く投稿出来るよう努力致しますので、しばしお待ちくだされば幸いです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。