東方蛇狐録~超古代に転生した俺のハードライフな冒険記~   作:キメラテックパチスロ屋

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#前回の書き忘れ#

総合戦闘能力値:

魂魄妖忌:7万



悪夢の囁き

「……遅いわね」

 

  楼夢が階段ダッシュをしてる頃、ふと紫がつぶやく。

  彼女は今友人の屋敷、白玉楼の縁側でお茶を飲んでいた。

 

「本当に紫はその人が大好きなのね」

「別に……そう言うわけじゃないけど」

「でもすごく心配そうな顔をしてるわよ?」

 

  隣に座っている友人、西行寺幽々子(さいぎょうじゆゆこ)がそんなことを言ってくる。

  血が通ってないような白い肌に、折れてしまいそうな細い腕。顔立ちはかなり整っているが、栄養不足のようにやせ細っている。そして特徴的なピンクの髪の上に、帽子をかぶっていた。

 

「大丈夫よ。確かに階段の一番下に置いていったのは自分でも酷いと思うけど、楼夢は理不尽なくらい強いわ。ちゃんと辿り着けるはずよ」

「でも門の前には妖忌がいるわよ?その人はそんなに強いのかしら?」

「まあ、全力を出せば負けないでしょうね……。彼の本気は私でも見たことないから」

 

  妖怪の山の時には、楼夢は彼自身が作り出した別世界で戦っていたため、紫が見たのはその戦闘後の光景だけだった。とはいえ、それだけで木々が燃えたり凍ったり色々カオスになっていたため、本当に別世界で戦ってくれてよかったと、紫は密かに思う。

  ちなみに、紫はこの時楼夢の演算装置に制限があることを失念している。そのため、後で楼夢にきついお仕置きをくらうはめになるのだが、この話は後ほどにしよう。

 

「でも本当に大丈夫かしら?()()()()()()()()()()?」

「……大丈夫よ。彼はなんとかしてくれるわ」

 

  不安げに語る幽々子を、紫はそう言いなだめるのであった。

 

 

 ♦︎

 

 

「いやぁ、やっぱ刀は長刀ですなぁ」

「全くですな。流石楼夢殿はわかっていらっしゃるのう」

「いやいや、妖忌殿も素晴らしいですぞ」

 

  一方その頃、楼夢は門前の階段の下で妖忌と雑談をしていた。

  なぜこうなったのかを説明すると、数分前にさかのぼる。

 

  その頃、楼夢は腹から血を出している妖忌を治療していた。別に殺す気は無かったので無駄に死なせるのも悪いからだ。

  あとはもし殺したら、この後に起こるいざこざで絶対ややこしくなるからだ。流石に紫の友人の屋敷の門番を切り殺すほど、楼夢は狂気染みていない。

 

  そんなことを思っていると、どうやら妖忌が起きたようだ。

  あたりをキョロキョロと見渡し、楼夢に問いかける。

 

「……どうして儂を治したのじゃ?」

「別に、紫の友人の門番を殺すほど、余裕がないわけじゃなかったからな。第一お前が消えたら後で絶対めんどくなるだろ?」

「……ふっ。かないませんなぁ」

 

  そう自嘲気味に笑うと、妖忌がゆっくりと立ち上がる。まだ傷癒えてないのに、すごい根性だ。

 

「儂もまだまだ精進せねばならぬようだ。今回の戦でそれがはっきりわかった。感謝するぞい、()()殿()

 

  おおっ!?

  妖忌が楼夢の名前を『殿』をつけて呼んでくれたことに、楼夢は感激する。

  楼夢殿と呼んでくれるあたり、一応楼夢のことを信用してくれたのだろう。ならばこちらもと、

 

「いや、礼はいらんぞ、()()殿()

 

  『殿』をつけて、妖忌にそう告げる。

  なんか侍っぽい感じがして一気に年寄り感が増したかも。目指せ、ダンディおじ様!

  楼夢がそう新たな目標を掲げると、妖忌が話を変えてきた。

 

「それはそうと、楼夢殿は素晴らしい剣の使い手ですな。一体どれほどの年月を修行に費やしたのですか?」

「軽く六億年だ。本当の話」

「……えっ?」

 

  本当のことである。楼夢の年齢は()()()()なだけあって、六億歳ジャストというわけではない。ちなみに最近知ったが楼夢の実年齢は6億8397万1013歳だ。

  そのことを妖忌に伝えると、「なるほど……それなら納得ですな」と一人つぶやいていた。どうやら楼夢が本気で戦っていないのを見抜いていたようである。

  とはいえそれ以上は何も言われなかった。相手に手加減するなど侮辱も同然だが、実際妖忌が死んだら楼夢にも迷惑がかかるということを理解したのであろう。いずれにせよ、妖忌は結局「弱い自分が悪い」とは結論づけたようだ。

  というか戦闘中にわかったけど妖忌さん普通に紫なんかよりずっと強いよな。それで弱いとは言い切れるなんて、男を見たぜ……

 

  その後は、様々な雑談をした。妖忌が半人半霊という種族だったりだとか、実際にその半霊を見せてもらったりだとか。それで今に至る。楼夢と妖忌は歳は違えど精神は老人なので意外と話や趣味が合うようだ。それで仲良くなれたのである。

 

「さて、ではそろそろ屋敷へと案内しましょう。あんまり待たせるのも悪いですからのう」

「そうですな。では参りましょう」

 

  妖忌はそう言うと門を開ける。

  そこを覗き込むと、白い世界が楼夢の視界に映った。

 

「ようこそですな。白玉楼に」

 

  あたりを見渡す。庭は土の代わりに全部白い砂で埋め尽くされており、そこに植えてある木が美しく見えた。

  妖忌は戦闘前に庭師と言っていたが、この庭は全部彼が整えるのかな?

  そんなことを思い、妖忌に聞いてみると、やはりそうだったようだ。

  流石妖忌と、内心褒める。いつか白咲神社も、こんな風にしてみたい。

 

「楼夢!」

 

  門を抜けてしばらく経つと、紫が楼夢の元に飛び込んできた。

 

「ずいぶん遅かったじゃない。心配した……」

「さっきはよくもやってくれたなぁ? 楽に逝けると思うなよぉ?」

「な、なによ!? 楼夢だったらあれくらいすぐ……」

「スタミナ持たんわ! 誰が嬉しくて身体能力強化なしで階段ダッシュせなあかんのや!」

「……あっ」

 

  失念していた、という風に紫が声を漏らす。だが許しはしない。これも老人に階段ダッシュさせた紫が悪いのだ。

 

「そ、それは……大変だったわね……」

「なぁに目ぇ逸らしてんですかぁ? ちゃんとこっちを見てくださいよぉ?」

「そ、その……許してヒヤシンスッ!」

「許すかボケェェェェッ!!」

 

  片手を突き出すと術式発動。真空魔法のバギマを紫に直接放ち、空の旅行へと誘った。

  上から断末魔が聞こえたが無視しよう。

 

「イィィィヤァァァァァア!!」

「おうおう……凄え声だなこりゃ」

「楼夢殿……さすがにこれは……」

 

  そうこうしてるうちに、魔法の継続時間が切れて紫が空から落ちてきた。下が砂なので大した怪我にはならないだろうから、しばらく放っておこう。

 

「ちなみに妖忌殿、ここの家主はどこなんだ?」

「あら、ここにいるわよぉ〜」

 

  くるりと横を振り返る。そこには、栄養失調でやせ細ったような少女がいた。

  いつの間に楼夢の横に移動したのだろうか? まるで幽霊のような少女である。

 

「おっと、お初目にかかる。紫の保護者の白咲楼夢だ。よろしくな」

「西行寺幽々子よ。よろしくね」

「ちょっと! 誰が保護者よ!」

「いつもこの子がお世話になっております〜」

「やめて! ああ、私の誇り高いプライドが削られていくぅ……」

「あ、プライドあったんだ?」

「ぶち殺すわよ!」

「……ふふふ」

 

  復活した紫が早々楼夢に抗議する。だが保護者なのは事実なので、うまく楼夢にあしらわれてしまった。

  そんな二人のやりとりがおかしかったのか、幽々子が笑いを吹き出す。

  するとそれが珍しかったのか、紫が目を丸くした。

 

「幽々子、あなた今……」

「さあそろそろ行きましょうか?ここでずっと立っているのもあれだし」

 

  そう言うと幽々子は屋敷内にさっさと入ってしまう。

  その後、妖忌の案内によって、楼夢は屋敷内の居間にたどり着いた。

 

「へぇ、中々広いな。うちの神社よりは狭いが、それでも十分広い」

 

  屋敷を歩き回って気づいたが、ここの屋敷はこれだけ広いのに、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

  これは正直言うとおかしい。二人だけで住むにはあまりにもここは広すぎる。

  おそらく、元々ここには人がいたのだが、何らかの理由で使用人が全員辞めてしまったのだろう。その理由は詮索しないが。

  とはいえ、ここまで怪しさ満点だと、自然にあたりを警戒してしまう。

  まあ、確定として幽々子はともかく、妖忌が襲ってくることはないだろう。彼は騙し討ちなどといった嵌めるような行為がかなり苦手なようで、誤魔化す時さえバレバレなのだ。武士道に反する行為はおそらくプライドが許さないのであろう。立派な心がけである。

 

「そういえば、色々お菓子持ってきたんだが、食うか?」

「ごめんなさい。私、あまり食欲なくて……でも一個か二個なら」

「わかった。じゃあ、紫と妖忌殿の分まで出そうか」

 

  巫女袖を通して、楼夢専用食料庫から饅頭を十個ほど、皿に乗せて取り出す。

「相変わらず便利ねそれ……」と紫がつぶやいていたが、彼女もやろうと思えば同じことができるので多分これがあっても意味はないと思う。

 

  そうして取り出した饅頭を、4人で分けて食べる。幽々子は本当に一個だけしか食べなくて、雑談だけすると寝室に行ってしまった。

  妖忌は主人の前で食べるのを遠慮していたが、幽々子がいなくなったのでようやく食べ始める。

 

「ちなみに紫」

「ん、なによ、楼夢?」

「俺をここに呼んだ意味はなんだ?」

「っ!?……気づいてたのね」

 

  饅頭を頬張る紫にそう問いかける。紫はその問いに一瞬体を硬直させると、真剣な表情で楼夢を見つめた。

  だが、その頬にあんこがついているせいで、シリアスな雰囲気は一気に崩れ落ちてしまう。マジメな顔で笑いを誘わないでください、紫。

 

「当たり前だ。老体の俺をわざわざここに引っ張り出すってことは、それなりのことが起きてるんだろ?」

「……ええ、その通りよ。ただ、なにが起きてるのかはあえて言わないでおくわ。どうせそのうちわかるだろうし」

「そうですな。とりあえず楼夢殿は今日ここに泊まってみてはどうだろうか? そうすればここでなにが起きているのかおそらくわかるじゃろうて」

 

  確かに、妖忌の言っていることは一理ある。ここは素直に泊まっていこうか。

  だが、そのためには娘たちにも連絡を入れなくては。そのことを紫に伝えると、彼女がなんとかしてくれるそうだ。

 

  空を見上げる。もう天は紅に染まっていて、もう少しで暗くなるだろう。

  泊まると決まれば、まずは部屋の整理をしなければ。夕食は紫と同じでなにもできないので、とりあえず楼夢愛用布団を取り出さなくては、と楼夢は今後の計画を立てた。

 

 

 ♦︎

 

 

  そしてその深夜。夕食を食べ終わり、全員が深い眠りにつくころ。

  楼夢は突然、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……ッ!?」

 

  そのあまりに濃く、それでいて自然に溶け込んでいる死の空気に、慌てて布団から飛び起きる。そして、素早く巫女服に着替えると、演算装置の電源をオンにし、愛刀を持って、部屋を飛び出した。

 

  縁側から外に出てみるが、誰かが起きている雰囲気はなかった。それほどまでに自然に、気づかれないように溶け込んでいる。楼夢でさえ、己の狐としての五感がなければわからなかっただろう。

  そのことに気を引き締めていると、あるものを発見した。

 

「……なんだあれ?」

 

  それは、妖しく光り輝く、蝶のような光体だった。空をふわふわと飛び、美しくも妖しい紫の光を放っている。

  それがなんなのか確かめるため、近づこうとするが、先に蝶の方が楼夢の存在に気づいてしまい、一直線に突っ込んできた。

 

「『羽衣水鏡』」

 

  だがその進路に水の結界を張ることで防ぐ。蝶は水に触れると蒸発するように消滅した。

  スカーレット・テレスコープであらかじめ蝶に質量がないことはわかっていたので、弾幕などの霊的な力を防ぐ『羽衣水鏡』を今回はチョイスした。そしてそれはどうやら正しかったようだ。

  だが油断はしない。さっきの蝶を調べた結果、あれは触れただけで対象の魂を文字通り()()()()()()()()効果があるとわかった。

  つまり、ワンタッチ=即死である。一応楼夢の周りを球状の『羽衣水鏡』で覆っておいたので、蝶だけならこれから大丈夫だろう。

 

  そして死の気配をたどること数分、それはそこにあった。

 

「……なんだ、これは……?」

 

  圧し潰すような圧倒的な死の香り。それをまとった、巨大な桜の大樹が、そこにあった。

  その大樹の枝には、先ほどの蝶が何百と止まっていた。季節のせいなのか、花は咲いてなかったが、この木を咲かせてはならないと、楼夢は本能的に理解してしまった。

 

(……この感じ、どっかで……?)

 

  だが不思議なことに、楼夢はどこかでこの雰囲気に似たものを知っている気がする。

  だが思い出せない。確かなことは、その記憶は最近のものではなく、数百年以上前のであることだ。

  通常の数十、数百倍大きな大樹を見つめる。だがやはりわかったのは、どこかでこの空気を感じたことがあるという記憶だけだった。

  これ以上ここにいても仕方がないと判断し、楼夢が踵を返そうとしたその時ーーーー。

 

『……うむ、さん……ろ……む、さ……楼、夢……さ……ん』

「……ッ!?」

 

  突如、頭の中で、誰かの声が響いた気がした。それも、確実に、どこかで聞いたことのある声だ。

  だが、その声は、自分が最後にどこかで聞いた声とは印象が全く違った。記憶の中では、この声はもっとさわやかで、美しかったはず。だが今聞いたのは、音こそ同じだが、酷く粘着性のある、狂気を感じさせる声だった。

 

(今のは……いったい?)

「おや、楼夢殿。どうやら見てしまったようじゃな」

 

  先ほどの声に気を取られ、背後から寄ってきた気配に気づかなかった。

  今の声の持ち主は妖忌。彼もどうやら、この光景を知っているようだった。

 

「ああ、妖忌殿か。ちょうどいい、これはいったい……?」

「そうですな。これについては、明日お話しすると誓おう」

「……そうか。じゃあ最後に一つ。つい先ほど女性の声を、聞かなかったか?」

「……女性の声、ですか?そのようなものは一度も……」

「……そうか」

 

  最後にもう一度振り返り、桜の大樹を見上げる。妖忌もつられて、木を見上げた。

 

「『願わくは、花の下にて、春死なん

 その如月(きさらぎ)望月(もちづき)のころ』か……」

「おや、その歌を知っていらっしゃったか。その歌は幽々子様のお父様が詠んだ歌なのです」

「なるほど……だから『西行寺』なのか……」

 

  今の歌は現代日本でも有名な西行法師が詠った歌である。だがなぜそんな有名人物の屋敷が、今じゃ使用人すらいない状態になっているのだろうか。謎は深まるばかりだ。

 

  その後、楼夢は妖忌とともに一旦屋敷に帰り、再び布団の中に入る。

  結局あの声の持ち主については今も思い出せない。だがいずれわかるだろうと、楼夢は割り切り、深い眠りについた。

 

 

『やっと来てくれましたか……楼夢さん。……ふふふ、アハハハハハ!!!』




「もうそろそろゴールデンウィーク!作者は今永夜抄を頑張ってます!魔理沙のマスパの画面ズレ激しいのどうにかならないかな?作者です!」

「ゴールデンウィークは特に予定なし!ドラクエ11早く発売されないかなぁ。狂夢だ」


「なあ作者。お前今話の前書き見たか?」

「えーと、妖忌さんの戦闘能力値についてですよね?7万って、博麗さんより強いんですね」

「そのことで思ったことがある。原作キャラの戦闘能力値弱くないか?」

「……あっ!」

「紫なんて今2万だろ?普通に妖忌より圧倒的に弱いじゃねェか」

「え、えーとですね。現在の前編はあくまで原作前のストーリーであって、若干原作の時より弱くしているんですよ。まあ、紅魔郷くらいには紫さんは7万ぐらいになってると思うので、そこは上手く調整したいと思います」

「なるほど……。今考えたにしちゃまともだな」

「ギクッ!な、なんのことでしょうか?」

「まあいい。ちゃんと後編で調整しとけよ?」

「イエッサー!頑張ってます!」

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