東方蛇狐録~超古代に転生した俺のハードライフな冒険記~ 作:キメラテックパチスロ屋
白い羽の生えた俺が問いかけてくる
『やっぱ貧乳だろ、貧乳』
黒い羽の生えた俺も言葉を発した
『そうだな、やっぱ貧乳だろ普通』
二人の悪魔が、俺に囁いてきた
by白咲楼夢
鬼の領地内にたどり着いた楼夢は、さっそく剛のいる屋敷を目指し、歩いていく。ここを離れて数十年が経っているので、見ない顔の鬼もいるが、あまり用事はないので無視をする。
「おいそこの狐ェ! ここがどこだかわかってんのかァ!?」
「鬼の領地内だろ? だったら俺が入ろうが問題無いはずだ」
「ああん?なに意味わかんねえこと言ってやがる。下等な狐は大人しくお家に帰ってろ!」
歩いていると、さっそく先ほど無視した鬼の一人が絡んできた。見たところ対して強くなさそうなので、適当にあしらう。
すると、鬼はその楼夢の態度にイラついたのか、大きく拳を振りかぶると、大ぶりに拳を落としてきた。
「ったく、だから若い奴は……」
だがそんなもの、最大で光の速度、つまりマッハ88万の世界に生きる楼夢にとって、退屈で仕方がないものでしかない。
振り抜いた腕を掴むと、それを引っ張って拳を地面に衝突させる。そして急に重心が前に傾いたことにより、バランスを崩した鬼の頭に、デコピンを食らわせた。
「ぐゥおぉぉぉぉオッ!!」
ただのデコピンではない。指の表面に妖力を超圧縮させて、それを頭にぶつけることで、衝撃波を発生させたのだ。
楼夢は相変わらず非力だ。だが妖力というものをうまく使えば、このように格下ぐらいなら吹っ飛ばすことができるのだ。
地面に頭から飛び込み、明らかにヤバイ音が鳴った鬼に、楼夢は問いかける。
「どうだ? もっと遊んで欲しいか?」
「ぐぐぐぅぅ、貴様ァ! お前ら、やれ!」
だが鬼というのは頑丈で、首の骨が折れたぐらいでは降参しないようだ。鬼はすぐに近くに潜んでいた仲間に指示を出し、楼夢を取り囲む。
それにしても、鬼のくせに仲間を呼ぶとは意外だ……。楼夢が妖怪の山にいたころは、全員が一人で突っ込んでくる奴ばかりだったので、少し驚いてしまった。
これが最近の鬼なのかねぇ……?もうちょっと剛たちを見習ってほしいものだ。
カチリと演算装置をオンにすると、両方の手のひらに妖力を超圧縮させ合掌すると、先ほどのように、楼夢を中心に衝撃波を放った。
轟音が鳴り響く。
楼夢がいた場所はクレーターのようになっており、その周りは跡形もなく吹き飛ばされていた。チンピラ鬼どもも、そこに転がっている。
「暇な戦いだったなぁ。いや、そもそも戦いにもなってないか」
演算装置の電源をオフにしながら、わざと鬼たちに聞こえるようにそう呟く。
すると、遠くの方から複数の別の気配が近づいてくるのがわかった。
多分この気配は勇儀たちのだろう。ちょうどいい、このチンピラたちの処分をお願いしよう。
そう考えていると、勇儀は姿を現した。学校の体育着のような服にちょっと透けて見える透明なスカート、そして体育着の上からくっきりと形作る巨乳がエロい。それはもうエロい。
多分楼夢とかではなかったら鼻にティッシュは必要不可欠だろう。
そんな勇儀は、楼夢に気づくと、一言
「おおっ! どこの誰かと思ったら楼夢じゃん! 久しぶりだねぇ」
と、相変わらず豪快な声で挨拶をしてきた。
「久しぶりだな、勇儀。萃香は今日はいないのか? よく二人で一緒にいるが」
「萃香は今寝てるよ。昼から飲み過ぎちまってな。アンタが来るとわかっていたら起きてただろうに。まっ、どうせそのうち起きるだろう」
常にキャラがぶれないな勇儀と萃香は……。
よく見れば勇儀と後ろの鬼たちの顔も、ほんのりと赤い。どうやら楼夢が来る前に一杯やっていたようだ。
その後、後ろにいた古い鬼たちと言葉を交わしたりして楽しんでいると、先ほど転がっていたチンピラが勇儀に声をかけた。
「ゆ、勇儀の姐さん! そ、そいつ、侵入者ですぜ! 早くやっちまいましょう」
そう訴えると、チンピラは勝ち誇った笑みを浮かべていたが、その言葉を勇儀が両断する。
「黙りな。こいつは母様の将来の結婚相手だ。こいつを侮辱することは、アタシたちが黙っちゃいないよ?」
「おい、なんだその結婚相手ってやつは?」
思わずツッコミを入れてしまう。
確かに剛は強い者好きだが、こんな99%が女の自分と結婚したがるはずないだろう。
そんな楼夢のツッコミを無視して、勇儀はチンピラを睨みつける。すると、チンピラは「なっ!?」と、驚きの声をあげて、必死の抗議をした。
「勇儀の姐さん、さすがに言葉が過ぎるぜ! そんなナヨナヨしたやつが、頭領の婿だなんてッ!」
「なんなら力で示すかい? ここでは力が全て、それが鬼のルールだろ?」
「くそっ」と悪態をつきながら、チンピラどもが退場する。さすが勇儀、その姿はまさに番長の如し、だな。今度から心の中で姐さんと呼ぼう。
そしてチンピラが退場すると、そういえば、という風に勇儀は楼夢に問いかけた。
「そういえば、今日はここになんの用事で来たんだい? 母様に会うためと言ってくれたら、アタシたちも嬉しいんだけど」
「まあ、当たってるっちゃ当たってるな。今日は剛にちょっとあることを聞きに来たんだ」
「なるほど、それならさっそく母様の屋敷に向かおうか。……おい、誰か母様に楼夢が来たと伝えろ!」
勇儀のその声で、数人の鬼が我先と走っていく。
ヤベェ、マジで勇儀の姐さんが輝いてるように見えるんだが。こういうところを、紫と剛も見習ってほしい。
彼女たちも表では一応カリスマがあるらしいのだが、いざ私生活になると二人とも料理はできない、部屋は散らかっている。おまけに威厳というものが本当にあるのかどうか疑わしいカリスマブレイクを二人ともかましてくるのだ。
ちなみに紫はストレスが溜まると精神が退化し、剛の場合は飲みすぎると日照った扇情的な肌を露出させながら抱きついてくる。
こうしてみると、改めて、日常でもかっこいい勇儀は凄いと感じる楼夢であった。
♦︎
「久しぶりじゃな、楼夢! 儂はお主に会えなくて寂しかったぞ!」
「六億生きてるお前が今さらなに言ってんだよ。というかいきなり抱きつくのやめろ」
「こんなのスキンシップの一つじゃ。のちに慣れる」
「慣れちゃいけないだろそれ!?」
屋敷に入ると早々、剛が楼夢の体に抱きついてくる。
あの大宴会から数ヶ月はこの妖怪の山で暮らしていたが、剛のスキンシップが日に日に激しくなっているような気がする。
今だってそうだ。最初の一日は互いに酒を呑んで語り合うだけだったが、今では楼夢に出会うたびに抱きついてくるようになっている。
その光景を見た妖怪の山のメンツは、この症状を『桜ドラッグ』と呼び、恐れるようになった。
どうやら楼夢の頭に咲いている巨大な桜を、剛がよく気持ち良さそうに嗅いでいることから、「楼夢の桜には麻薬のような効果がある」と勘違いされているみたいだ。いや、実際ここから桃みたいに甘い匂いがするのは事実みたいで、本当にそんな効果があるのかもしれないが。
桜なのにも桃の匂いとはこれいかに。
そんなことを考えていると、さっそく剛が楼夢の桜に顔を近づけ、スンスンと嗅ぎ始めた。
「おい、ちょっと剛。まだこれに麻薬効果があるのかわからないから迂闊に嗅ぐなと言っただろ?」
「いい匂いがするのに止められるわけなかろう。それに、もし、それが本当でお主のことしか考えられなくなり、依存してしまっても、それはそれで……」
「さらっと恐ろしいこと言うんじゃねえよ! 本当になったら怖いわ!」
「まあ、毎回嗅いでるから、それに麻薬効果がないことはなんとなくわかるんじゃが……」
「じゃあそれ正気でやってたのか!? ああもう、鬼の頭領がこれでいいのかよ!」
体を楼夢に預けながらヒートアップしていく剛。それを、どうしてこうなったと嘆く楼夢。
そんな二人に、勇儀からある声がかかった。
「いい加減中入ろうぜ」
「「……あっ」」
すっとん狂な声をあげる二人。
見れば他の独身の鬼たちも、玄関前からイチャイチャされて拳をプルプル震わせていた。
そう、この時全ての後ろの鬼たちは思った。
(玄関前でイチャイチャすんじゃねえよ!!)
その後、頭領モードになった剛が命令を出し、酒やら食料やらを大量に持ってこさせた。
これでやることと言ったら宴会以外ないだろう。
今夜は長い夜になりそうだ、と楼夢は思った。
♦︎
ガヤガヤ、ガヤガヤ。
騒がしい音が聞こえる。だがそれは不思議と不快感が湧かなく、逆にこちらも乗り気にさせるような騒がしさだ。
そして、月が出る夜の中、楼夢は鬼たちと宴会に参加していた。
あっちこっちで飲めやー、騒げやー、踊れやー、殴れやーと声が聞こえる。宴会を開いた時に必ず聞こえるかけ声だ。
……いや、最後のは鬼の宴会特有のものなのかもしれない。なんせ普通の宴会では酒を仲良く呑みながら、仲良く殴り合うなんてことは起きないのだから。
「にゃはははっ! いやー、今日はいつにも増して騒がしいねぇー」
「はははっ! 全くだな。やっぱ客人も混ぜた宴会で呑む酒は格段に美味い!」
目の前では乳牛こと勇儀と、ロリータつるぺったん鬼の萃香が、仲良く酒を浴びるように呑んでいる。おいおい、これであいつら樽5個目だぞ。どんだけ呑むんだよ。
そんなこんなで、今日も平和である。たまに鬼がこちらに吹っ飛んでくること以外は。
ちなみに剛はというと、
「さあさあ楼夢! 今宵はたっぷり呑むのじゃ!」
楼夢の真横で体を密着させて、杯に酒を注いでいた。
結局、彼女は楼夢の求めていたら情報は知らなかった。だがそのままはい、さよならというのもまずいので、今回の宴会に参加している。
そういえば、剛の酒を呑むのはこれが初めてだ。いつもは、持参している『奈落堕とし』を呑まないと酔えないほど、楼夢の酒への耐性は高いので、同じ酒を飲んでいるのだ。その分、剛という鬼の頂点でも酔うという酒は、純粋に興味がある。
注がれた酒を、グビリっと、飲み干す。
すると、酒は一瞬で楼夢の喉を通り、舌にその味を刻んだ。
「……う、美味い」
「そうじゃろうそうじゃろう。どれ、お主の酒も一杯」
そういうと、楼夢の瓢箪を奪って、ごくごくと飲み干していく。おい、それ間接キスになってんじゃねえか。なに当たり前のようにディープに口づけてんだよ。
「おお、これも中々……」
「そうだろ? ちなみにこの酒はなんて名なんだ?」
「名か……確か、『神便鬼毒』じゃったかな?」
「ん? それって鬼にとっては毒なんじゃ……」
「安心せい。ちゃんと呑めるように改造してある。ほれ、どうじゃ、もう一杯?」
「じゃあ、ありがたくいただこう」
「任せるのじゃ」
そう張り切って剛が告げると、いきなり神便鬼毒を口の中に含んだ。
なんだ、注いでくれるんじゃなかったのか?
だが、その思考は、次の瞬間に吹き飛んだ。
「……んっ、んぅ……」
「〜〜っ!? んっ、んん〜っ!!」
なんと、剛はいきなり楼夢の唇と自分の唇を、深く合わせたのだ。
一瞬の出来事で、驚き動きが止まってしまう。
その内に、剛は自分の舌と楼夢の舌をクチャクチャとかき混ぜると、酒をゆっくりと中に流したのだ。
その甘い快楽に、一瞬だが溺れそうになる。
だがその前に、理性のスイッチが作動し、楼夢はようやく、剛のその誘惑から脱出した。
「ハァッハァッ……いきなりなにしやがる」
「こうすれば酒ももっと美味くなると思うて」
「……もうどこから突っ込めばいいかわからねえよ」
「その割には、お主の方こそ積極的に絡めてきたのう。危うく儂の方が落ちそうになったわい」
「うっ、うるさいっ」
剛の言ったことは事実だったので、楼夢は誤魔化すために神便鬼毒を口に流し込んだ。
「ふむ……やはり同じ酒でも愛する者の唾液が混じると美味く感じるのう」
「感じねえよ普通!? ……ったく、そんなに美味い酒が呑みてぇなら作ってやるよ」
「……なぬ? それは本当か!?」
かなり真剣な表情で、剛は体を乗り出しながら楼夢に問う。
やはり、鬼にとって酒は死活問題らしい。だが、神便鬼毒や奈落堕としを呑める妖怪は、今のところ、伝説の三大妖怪以外いないので、鬼たちの最終目標は、剛の酒を一杯飲み干す、ということらしい。
まあ、楼夢の奈落堕としも、他の妖怪が呑むと、爆発するので、彼らが目標にするのも頷ける。
「ああ、多分できる。この『奈落堕とし』は人工の酒だ。そしてお前の『神便鬼毒』は神が作り出した加工ゼロの酒だ。この二つを研究すれば、いつかきっと世界一美味い酒が作れるはずだ」
「なるほど、ならば儂の中身を一升くれてやる」
「ありがとう。それなら足りそうだ」
一升とは約1,8リットルのことだ。
ちなみに、正確に言えば楼夢は手伝うが作るのは楼夢自身ではない。
では誰が作るのかと言えば、答えは狂夢だ。楼夢はあくまでスーパーコンピュータの計算を代わりに頭でやるだけだ。彼の計算速度は機械を軽く超えるので、手伝えばかなり効率よく酒を作れるだろう。
「じゃが約束してくれ。その酒を呑むのは、儂が最初ということを」
「ああ、分かった。できた物は誰よりも早くお前に届けるぜ」
「ふふ、ありがとうなのじゃ」
楼夢と剛は違いの小指を絡ませると、そう誓いを立てた。
なんだか体がポカポカするな、と剛は思う。その約束が、楽しみで仕方ない、と彼女は一人月に笑うのであった。
♦︎
深夜、宴会が終わったころ。
楼夢は剛の屋敷に案内されていた。
別段深い理由はない。ただ夜遅くになったので、今日は妖怪の山で一夜を過ごそうと思った矢先、剛にここに連れてこられただけだ。
「ここが儂の部屋じゃ」
「へぇ、結構広いな。で、どこで俺は寝ればいいんだ?」
「なにを言っとる?
「はっ、ハァッ!? なに言ってやがる! じゃあお前はどこで寝るんだよ?」
「お主と同じ、ここに決まっておろう」
さも当たり前のように、剛は口にしながら部屋に敷かれた大きな布団を指差す。
「他はないのか!?」
「ない。儂は一人暮らしじゃぞ? 二枚も布団なぞ要らぬ」
きっぱりと自慢気に胸を張りながらそう答えられる。
ちなみに、替えの布団は剛の屋敷でもあるのだが、宴会が始まる前に隠れて処分されているので、見つかることは未来永劫ないだろう。
「まあ、我慢するのじゃ。ちなみに、他の鬼のところは全員寝返りが酷いやらいびきがうるさいやら酒臭いやら部屋が汚いなどで、多分ここが一番平和じゃぞ?」
「ああ、なんか普通に想像つくわそれ。ま、それじゃ今日は改めて泊まらせてもらうよ」
「うむ、ゆっくり休むのじゃ」
そして、明かりを消すと、二人は同じ布団に入った。
だが、しばらくすると剛が楼夢に密着してきて、頭の桜を再び嗅ぎ始めた。
彼女の息が首元を伝い、正直いうともう少しで理性がぶっ飛びそうになる。だが、寸前のところで平常心を取り戻し、自身を落ち着かせた。
「……なあ、剛」
「なんじゃ、楼夢?」
ふと、楼夢は剛を呼ぶ。彼女はくるりと顔をこちらにのぞかせ、キョトンとしている。
「なんで、そんなに密着するんだ? 俺は昔お前にコテンパンにされてプライドを傷つけられたことを恨んで、六億年以上、お前を追いかけた。そんなやつになんで、こうも密着できるんだ?」
「……六億年も追いかけてくれたから、じゃよ」
楼夢のその心のどこかで思っていた疑問を、剛はそう答えた。
「知っての通り、儂はこの六億年間お主を除いて一度も負けたことがない。それは今でも昔でも変わらん。一度戦って生き延びたやつは、その後諦め、二度と儂に立ち向かわなかった。……お主を除いて」
一拍おくと、剛はまた続ける。
「お主だけは別じゃった。最初に会ったころ、儂とお主の妖力量は実に数百倍もの差があった。だが、お主は諦めんかった。肉を、骨を砕かれ、奥義を受けてなお、お主は立ち上がってきた。
正直、儂は嬉しかった。じゃから儂はあの儂ら以外の全ての生物を滅ぼした爆発の後、お主を助けた。見返りにお主と戦闘をするという対価をもらって」
申し訳ないことをした、と剛はおそらく彼女の生涯初めて、頭を下げた。だが、彼女にとっては仕方なかったのであろう。納得はいかなかったが、楼夢にはそれが理解できていた。
「じゃが、そんな日々も長くは続かない。お主は安全な場所につくと、一人旅に出て行ってしまった。そして儂はまた一人ぼっち。鬼が増えてきたころに仲間を集め、それの頭領になったが、儂を満足させるものはいなかった。そして長い時が経ち、儂を満足させるものはもう現れないと思っていた時じゃった。お主が再び現れたのは」
そこまで語ると、今まで暗かった彼女の顔が明るくなった。そしてその当時のことを思い出し、懐かしく、そして愛おしいと、一人笑う。
「あの時は純粋にただ嬉しかった。唯一気にかけた相手が生きていたということと、儂のために六億年を費やしていたということじゃ。そして儂らはあのガラスのような世界で戦い、初めて儂は敗北した。……ここまで理由があればお主を好きになるには十分じゃ」
「ああ、お前強者が好きだったからな」
「そういう意味じゃなく、もちと純粋な思いなのじゃが……相変わらず鈍感じゃの」
「ん、なんか言ったか?」
「いや、なんでもない」
剛ははっきりと、自分の思いを告げた。だが、ここまではっきり言って、未だに気づかない楼夢は、彼女の予想よりも鈍感であったのだった。
剛は小さく文句を呟くと、再び楼夢の匂いを嗅ぎ始める。
(……そういえば、こんな風に匂いを嗅いでくるやつがもう一人いたなぁ)
ふと、楼夢はかつて友人だった一人の人間の少女の顔を思い出す。
懐かしい、彼女はどこで生きていて、どこで死んだのか。それすらもわからないが、できれば幸せに成仏していてほしい、と願う。
(結局、西行妖のこともわからなかったな……第一、呪い自体あんま使われないから情報が少ないんだよな……待てよ、
今日得た情報を整理していると、ふと先ほどの考えと、今の考えが混合する。そして、楼夢はそれに何か引っかかりを覚えた。
(
関連するワードをつなげると、自然にピースがはまってしまう。そして、その結果、楼夢の頭に恐ろしい考えが浮かんだ。
(……本当にならなければ、いいんだけど)
頭を左右に振り、その恐ろしい考えを振り払う。そして、いち早く思考を停止させると、楼夢は深い眠りについた。
「ゴールデンウィークヒャッハー! 今週はカラオケ三回行くぜ! そして今話なんと記念すべきこの小説筆記以来初めての7000文字突破! 出ている宿題はまだ手をつけていない! テンション高めの作者でーす!」
「ゴールデンウィークヒャッハー! 相変わらず俺は引きこもる! 後地味に作者が永夜抄をノーマル6Aと6Bルート両方ノーコンクリアしたことに感動した狂夢だ」
「ふざけるな松田ぁァァァァア!! 誰を撃っている!?」
「いや松田でもないし、撃ってもないよ。ていうかどうした?」
「今回の話はなんだ? 楼夢へのご褒美ルートじゃねえか!? なんなの? 作者はアイツにハーレムでも作らせる気か!?」
「おっしゃる通りでございます」
「やっぱりふざけるな松田ぁァアァァア!! なんでアイツのハーレムルートを作らせる!?」
「ふっ、勝った……計画通り」
「デス●ートネタ多いな今回!? ていうか、なんで楼夢はハーレム、火神にはルーミアがいるのに、俺だけそういうのいないんだ!?」
「ちなみに今回は剛とのイチャイチャ話でしたが、次回は紫でイチャイチャ話です」
「松田ぁァァァァァァァア!!!」
「まあでも、いい気にしていられるのも今のうちですよ。今章のラストは多分狂夢さんは喜ぶと思いますし」
「……その言葉を信じるからな? もし面白くなかったら40秒後に心臓麻痺で死ぬ呪いをかけるからな?」
「だからデス●ートネタやめい!」