東方蛇狐録~超古代に転生した俺のハードライフな冒険記~   作:キメラテックパチスロ屋

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流れゆく川の音が聞こえた

嗚呼、良い人生だったと

飛び交う小鳥にそう告げる


by白咲楼夢


後編:そのころ、あいつらは……編
どんぶら三途の川渡り


「……んぁ? ……知らない天井だ。ていうかなんで毎回この時だけ天井がないのだろうか」

 

  そうやって、闇のように深かった眠りから目覚める。

  ……痛い。頭がクラクラする。思考が定まらない。

  だがまず、最初に言いたいことは一つ。

 

「 どういうことだ? 俺は確か、心臓貫かれて……」

 

  そこまで言ったところで、ギーコギーコという音が聞こえた。ノコギリの音ではない。何か舟のようなものをこぐような、そんな音だ。

 

  そこで俺は、自分が舟の上に横たわっていることに気づく。

  起き上がって前を見ると、そこには赤髪の女性が俺が乗っている舟をこいでいた。

  肩には刃の部分が妙にひん曲がった鎌を担いでおり、なんか死神の鎌っぽい雰囲気を出している。

 

「やぁ、ようやく目覚めたかい? ここは三途の川。死者が必ず渡る、道のようなところだ。あたいは小野塚小町(おのづかこまち)、ここの船頭をしている死神さ」

 

  宣言撤回。死神っぽいじゃなくて、本当に死神だった。

  小町の方をちょろっと見る。

  ……かなりの美形だ。おまけにスタイルはボンキュッボンな、お姉さんであった。

  ……最後に素晴らしい出会いができたものだ。

  この女性が『命を刈り取る、形をしてるだろ?』なんていう某死神と同類とは、思えない。

 

「ったく、今日はかなり珍しい日だね。肉体を持った亡霊が来るなんて今まで見たこともないよ。()()()()()()()()()

「それってどういう……」

 

  その意味はすぐにわかった。

  俺の斜め後ろ。そこに白い巫女服を着た男が座っていた。

  狂夢だ。

  そういえばコイツ、俺が死ねば狂夢も死ぬ的なこと言ってたな。まさか本当に死んでたとは。

  わっはっは。……笑えねー。

 

「それにしてもあんたら似てるねぇ。もしかして姉妹か何かかい?」

「黙ってろパシリ。ていうかこのオンボロ舟に三人は狭すぎるだろ。ちったぁ新しいの買いやがれこの巨乳」

「パシリじゃないよ。死神業の中でも最もやりがいのある仕事さ!ていうか舟替えてないのは現在地獄が財産難におちいっているせいであって、仕方がないんだよ!」

「……オンボロってことは否定しろよ船頭」

 

  相変わらずの口の悪さである。今日も狂夢マウスは絶好調のようだ。

  ていうか地獄が財産難って……。シビアすぎるだろ色々と。

  とりあえず自分の舟のボロさを否定しない小町に、とりあえず突っ込みを入れておいた。

 

「ちなみにこの舟はどこに向かってるんだ?」

「この地獄の裁判所さ。そこで私の上司が白黒はっきりつけて、地獄行きか天国行きか決めるのさ」

「ヤベェ……俺ら多分地獄行きかも」

 

  よく考えてみろ。今じゃこんなんだが、かつて暴走して妖怪『八岐大蛇』として国や村をいくつも滅ぼした俺と、月の三分の二を消した張本人である狂夢。

  どう考えても罪だらけです。やったねたえちゃん、地獄行きが確定したよ。

 

「んな焦るこたァねェだろ。いざとなったら地獄ごと吹き飛ばせば済むぜ」

「やめい。お前が本気出したら地獄どころか世界が危ないから」

「……なんか物騒な話しちゃってるよぉ」

 

  そんな俺たちの会話に、顔を青ざめる小町。

  安心しろこまっちゃん。そんなことはめったにしないから。

 

  先ほどから気になっていたのだが、三途の川の中の生物が気持ち悪すぎる。

  小町の話によると、水竜はもちろん、巨大ピラニアみたいな化け物がたっぷり生息しているらしい。なので、地獄から支給されるこの舟でないと、三途の川を渡れないとか。

 

  ちなみに、この舟に乗るのもただではない。しっかり船賃を払わないと、乗させてくれないようだ。

  もし払わないで無理やり乗ると、三途の川の底に突き落とすようだ。

  それを聞いた瞬間、思わず金を投げつけてしまった俺は悪くない。

  それにしても……

 

「狭い。やっぱり狭くないか、この舟?」

「なんだとぉ? あんたまであたいの『三途のタイタニック号』がボロいと言うのか!」

「実際ボロいからな……ていうか『タイタニック号』とかこの後沈む予定じゃねえか!? なんでそんな不吉な名前つけてんだよ!」

「そんなボロ舟で大丈夫か?」

「大丈夫だ、問題ない(キリッ)」

「問題あるわ! 一番いいの選べよバカ!」

 

  さて、天界流ジョークを言ったところで、大きな建物が見えてきた。

  おそらくあそこが裁判所なのだろう。

  地獄行きが確定してるが、ちょうどいい。俺の舞姫の錆にして……って、あれ?

 

「舞姫が……ない」

 

  おかしい。俺は常に舞姫を帯刀していたはずだ。ここに来て相棒ロスとかシビアすぎるぞおい!

 

  その時、前方の水面から10メートル以上はある竜が飛び出してきた。

  その時の衝撃でボロボロタイタニック号がギシギシゴキボキと悲鳴をあげる。

  ちょうどいい。今俺はムシャクシャしてるんだ。目の前に出てきたことを後悔しろ!

 

「じょ、上位水竜……終わったかも……」

「ゴガァァァァァァァァッ!!!」

「黙ってろこの、トカゲやろう!」

 

  膨大な妖力を右手に集め、術式を構築する。

  瞬間、三途の川の水をも蒸発させるような、金の太陽の光が水竜を襲う。

  『狐火金火』、あの剛にダメージを負わせた炎を野球ボールを投げつける感覚で放つ。

  直後、凄まじい光と轟音が辺りを包み込み、水竜を消滅させた。

 

  ビューティフォー。

  ふっ、戦闘能力5か……雑魚め。

  って、あれ? 今普通に妖術使ったけど、頭が痛くなんなかったぞ?

  もしやこれはあれか? 一度死んで魂だけになったせいで、脳に残った後遺症が消えたとか?

  それが本当だったら嬉しい。俺は後遺症が残った時から、舞姫に頼らずに効率よく最速で敵を倒すため、技術の方の修行を延々と続けていた。それが10分という時間制限が外れた今、時間を気にせずに戦えるようになった、ということだ。

 

  これでもしもの時は長時間戦えるようになった。

  これさえあれば地獄行きにならなくて済みそうだ。

  もうなにも怖くない。

 

 

  それから数分ほどで、陸地に着いた。

  ズカズカと舟から降りる俺と狂夢。小町は先ほどの爆発の余波で先端が黒焦げになった『三途のタイタニック号』を悲しい瞳で見つめている。

  すまん小町、今度舟を新調するように言っとくからな。

 

「それで小町。裁判所はこの先でいいのか?」

「ああ、ここをまっすぐ行けば着くよ。まっ、あたいも付いてってやるから安心しな」

 

  わっはっはと、豪快に笑いながら、肩を叩いてくる小町。どうやら先ほどのショックからは立ち直ってくれたようだ。

  もしかしたらこうやってショックを受けることが多々あるのかもしれない。

  そうこうしてると、俺の身長の2倍はあるかもしれない巨大な扉の前にたどり着く。

  ノックをすると、中から声が聞こえた。

 

「被告人、入りなさい」

「はいはい、お邪魔する、ぜぇッ!!」

「オラァッ!!」

 

  俺と狂夢のノック(神速キック)が炸裂した。

  扉はグルングルン回転しながら奥にぶっ飛び、ドガシャァァァァンッ! という凄まじい音を立てる。

  扉は蹴り飛ばせ! これぞ我が生きる道よ! たとえそれが裁判所の扉だろうが、神社の扉だろうが、関係ないわ!

  クワッと目を見開いて、そんな理不尽なセリフを叫んだ。

 

「よっしゃ! 新記録更新だ! ……ん、どうした小町? そんな顔を青くして」

「……まっ、前を……っ!」

「あなたたち、なにしてくれてんですかぁ?」

 

  不意に、そんな声が前から聞こえた。

  だが前方を確認するも、目に見えたのはレッドカーペットが真ん中に敷かれた全面白黒のタイルの裁判部屋だけだった。

  戸惑う俺に、下の方から声がかかった。

 

「……あれ、今どこから……?」

「ここですよ、ここ! ふざけてるのもいい加減にしなさい!」

「……えっ、これが裁判長?」

 

  目の前には、身長140ぐらいの少女がいた。緑髪のショートヘアーの上に、変わった帽子をかぶっている。よく見れば顔の青筋がピクピク動いていた。

  そんな少女が、手に持った平べったい棒のようなもので叩いてきた。ほっぺにクリーンヒットし、ヘボラッ! という情けない声とともに倒れこむ。

 

「失礼ですよ、あなたたち。 私は四季映姫(しきえいき)・ヤマザナドゥ、 この地獄の最高裁判長です」

「へぇ、んじゃ四季ちゃんで」

「勝手に名前を変えるな!」

 

  バゴンッ! という音とともに狂夢の頭に先ほどの棒が振り下ろされる。

  ちなみに小町に聞いたところ、あの棒は悔悟棒(かいごぼう)と言って、罪人の名前を書き込むと、その罪の重さによって重さが変わり、それで罪人を叩くらしい。いわゆる四季ちゃんのお仕置きグッズの一つだ。

  さらに深く聞いたところ、昔は罪人一人につき棒を一つ用意して使い捨てにしていたらしいが、最近はエコのために文字を消して再度使える素材の棒にしたようだ。

  ……話を聞くごとに地獄の財産難問題が出てくる。可哀想に、きっと小さいころからブラック企業してたせいであんなに小さく……

 

「なに考えてるんですか!?」

「ゴバラッ!」

 

  ぐおぉぉ、腹が、腹がぁ……。

  四季ちゃんブローが綺麗に俺の腹に突き刺さった。貧弱な俺の腹筋は見事に貫かれ、危うくゲロるところだった。

 

「もういいです! 被告人、あなたたちの判決を言い渡します!」

 

  映姫はズカズカと奥の大きな椅子に座ると、今までの雰囲気を消し飛ばして、辺りにプレッシャーのようなものを撒き散らかす。

  さすが、閻魔。

  長年閻魔をしていたせいか、その姿は罪人にとって巨大な鬼のように見えるだろう。それほどのプレッシャーを、映姫は放っていた。

 

  とはいえ、それで恐れる俺らではない。

  こちらもどっしりと構えて、それ以上の圧を放つ。

  先ほどのカオスな面影は全く消え去っていた。

 

  こういう話し合いでは、圧によってほぼ全てが決まる。

  だが映姫も流石に慣れているようで、白黒の部屋の中で震えているのは小町だけだった。

  ゆっくりと、映姫は口を開いた。

 

「判決を言い渡します。白咲楼夢、あなたは人妖合わせて数百万以上の命を奪い、陥れました。白咲狂夢に至っては数千万を超えているでしょう。さらに地形破壊による自然破壊はもちろん、生物の源といってもいい月の3分の2を消し飛ばす始末。よって、あなたたちは黒です!……と言いたいことですが」

 

  不機嫌な顔で、映姫は続ける。

 

「私は人妖を裁く権限は持っていても、神を裁く権限は持っていません。よって、今回の件は白にします」

 

  映姫はイライラしながらそう告げた。

  なるほど、確かにそうだ。俺は最強の妖怪であり神でもある。狂夢に至っては同等以上だ。

  そんな二人を、いったい誰が裁けるというのだろうか。

  ゼウス? オーディン? そんな奴ら数分で殺せるほどの力を、俺たちは保持している。

  つまり、地獄の最高裁判長だろうが、その上司に当たる十王だろうが、俺たちを裁くことはできないのだ。

 

  当たり前だ。力で劣っている奴らに、強者を裁ける権限はない。

  そういう意味では、おとなしく俺たちを白にした映姫に感心する。他の地獄の裁判長だと、最悪の場合殴りかかってくるかもしれないのだ。

  そうなった場合、その地獄は壊滅するだろう。隣の理不尽によって。

 

「というわけで、今回のことは不問にします。……ちっ、こんなのが神とか世も末ですね」

「なんかメッチャ文句言われてるんだけど……じゃあ映姫、三つほど質問いいか?」

「構いませんが、なにを聞きたいのですか?」

 

  辺りに再びほんわかな雰囲気が戻ってくる。

  映姫と俺たちが圧を解いたのだ。

  小町は白黒のタイルに崩れるように倒れ込み、ふぅ、とため息をついていた。

 

「一つ目の質問だ。西行寺幽々子、俺が死ぬ前にここに来た少女がいたはずだ。あいつはどうなった?」

「ちょうどいいです。私もそのことについて説明しようと思っていました」

 

  一つ目の質問は西行妖幽々子、俺の力不足で死なせてしまった若い少女のことだ。

  彼女も死んでしまったので、おそらくここにきていただろう。

  上手く成仏できていることを、願うばかりだ。

 

「彼女の件は少々ややこしくなります。まず、あいつは彼女の肉体とともに西行妖を封印しました。ここまではいいですね? 実を言うと、その肉体が封印されているせいで彼女は成仏できなくなってしまったのです」

「なっ!?」

 

  思わず驚いた声を上げてしまった。

  だって当然だろう。彼女の肉体を勝手に使用したのは俺だ。なので、せめて最後は成仏してくれていることを願っていたのだ。

  なのに、こんなの、あんまりだ。

 

  だが、俺がそんな暗い顔になったところで、パンパンと映姫が両手を叩きながら話を戻した。

  そして、俺のその後悔は不要だということを説明した。

 

「話を最後まで聞きなさい。話を戻しますが、彼女は成仏することができません。なので、我々地獄の上層部は彼女の元々の能力に目をつけました」

「元々ってことは……『死霊を操る程度の能力』のことか?」

「そうです。知っての通り、現在我々は財産難に陥っています。なので、我々は西行寺幽々子を亡霊として復活させ、転生を待つ幽霊が集う場所『冥界』の管理人とすることを決定しました。さらに白玉楼ごと冥界に移動させることで、人件費と建築費を抑えるつもりです」

 

  安心した。

  つまり、映姫は幽々子が人間ではなく亡霊として、あっちの世界で復活すると言っているのだ。

  冥界はここ地獄と同じように、現世とはまた遠い場所だ。だが紫の能力ならいつでも冥界に行くことができるだろう。

  それはつまり、俺はまた幽々子に会うことができるかもしれないのだ。

 

「ただ……生前の彼女の記憶は残りません。亡霊は自身が死んだと認識していない幽霊がなるものです。復活させた時に記憶を持っていると、すぐに幽霊に戻ってしまう危険性があるからです」

「……そうか。十分だ。ありがとな、映姫」

「礼はいりません。これも仕事ですから」

 

  ぺこりと頭を下げる映姫。

  十分だ。幽々子の記憶が消えたのなら、また作ればいいだけだ。紫もそのことを理解するだろう。

 

  胸のつかえが取れたようだ。

  これで一番の不安は消えた。そう思うと、なんだか気分が良くなってきた気がする。

  上機嫌なまま、俺は二つ目の質問をした。

 

「最後の質問だ。俺の舞姫はどこいった?」

「舞姫……あなたの妖魔刀のことですか。それならこれをご覧ください」

 

  手鏡のようなものを取り出すと、映姫はそれを俺が見えるように向けた。

 

「これは『浄玻璃(じょうはり)の鏡』と言って、本来は罪人の過去の行いを覗くためのものです。ですが今回は、これをモニター代わりに使います」

 

  ふと、俺の悲しいまでの美女フェイスを映していた鏡の奥が、別の何かを映しだす。

  そして見えた人物に、俺は思わず疑問を浮かべてしまった。

 

  鏡に見えた人物。それは俺の友人の紫だった。

  彼女が立っている場所は、何かの木の幹の前……って、これ西行妖の幹じゃねえか!?

  紫はその前に立ち、顔を真っ赤にしながら必死に何かを引っ張っていた。

  それがなんなのか分からず、俺は映姫に教えてもらって、映っている角度を調整した。

 

  柄だ。

  彼女は西行妖に突き刺さっている、白と黒の二本の刀の内の一つを唸りながら引っ張っていた。

  はい、どう見てもあれ天鈿女神じゃないですかやだー。

  なんなの? お前ご主人様が死んでもそこに突き刺さってたの?

  魂で出来た刀なんだから、戻ってこいよ。

 

  さらにズームさせて、紫を見つめる。

  彼女は顔を赤くしながら頑張って引っ張るのだが、圧倒的筋力不足でウンウン唸るだけだった。

  あっ、汗で手が滑って後ろにこけた。

  涙目になりながら、恥ずかしさのあまりか、そこから逃げるように走り去っていった。

 

「……なにこれ?」

「どうやら彼女、あなたの墓にあれを供えようとしてたみたいですね。引き抜けずに逃げてしまいましたが」

 

  マジかよ。今俺久々に感動したかも。

 

  そうこうしていると、紫が西行妖の幹の前に戻ってきた。美夜、清音、舞花の三人を引き連れて。

  そして4人は一列になると、力いっぱい引っ張り出した。

  あれ、この図形、どっかで見たような……?

 

  うんとこしょ、どっこいしょ。それでも刀は、抜けません。

  たしか一年生の教科書で乗っていたやつだこれ。

  あまりに抜けないため、清音と舞花がそれぞれ攻撃し始めた。

  無抵抗なので、早奈も涙目である。

  結局、二人は美夜と紫によって、止められていた。

 

  まあ、予想はしていたが、やっぱり抜けないか。

  墓まで運んでくれたら、映姫が取り寄せてくれるらしいのだが、これは仕方ない。下手に木を傷つけるとどうなるかわからないからな。

  だが、次に鏡を見たとき、俺の目にはその木を傷つける可能性ナンバーワンの人物がいた。

 

「……なんで剛がここにいんだよ」

 

  そう、紫たちの後ろには妖怪の山にいるはずの剛が立っていた。

  嫌な予感がする。

  そしてそれは、見事に的中した。

 

  片方の柄を握りしめると、剛はあらん限りの力を振り絞って、それを引っ張った。

 

  うんとこメギメギ、どっこいバキゴキ、それでも刀は抜けません。代わりに根っこが抜けそうです。

 

『ひっ、ヒィィィィィィ!! 腹が、私の腹がえぐられるぅ! 助けて、楼夢さァァァァん!!!』

 

  なんか幻聴が聞こえたが無視しよう。

  ていうか封印したやつに助けを求めるなよ。

 

  とりあえず、剛はさっさとその柄を放せ。いまだにメキメキ言ってるぞ、おい。

  その後、周りに四人によって西行妖は救われた。

  剛は最後に殴りたいと言っていたようだが、彼女の力でやると本当に折れるので勘弁してくれ。

 

  まあ、これで舞姫はしばらく使えないということがわかった。

  別にこの次に戦闘があるわけでもないし、まあ大丈夫か。

 

「最後の質問だ。俺たちはこの後どうなるんだ?」

 

  そう、これが一番の疑問だった。

  あらゆる生物は基本的に閻魔によって裁かれる。だが例外的に神は本来死んでも信仰心を元に復活するので、地獄にはいかないのだ。

  だが俺は、元が妖怪というせいか地獄に来てしまった。

  では俺らの扱いは?

 

「もちろん、他の神と同じように復活させます。ですが、あなたは遺体がボロボロの上、妖力などを西行妖に吸収されているので、新しい肉体を作ることになります」

「それってどのくらいかかるの?」

「ざっと数百年はかかります。魂の方も負担がかかっていたため、その間はこの地獄で暮らすことになるでしょう」

「ちなみに俺は例外だ。力を失ったわけじゃないから、いつでも時狭間の世界に帰れるぜ。てなわけで、あばよ!」

 

  そう言うがいなや、狂夢はスキマのようなものを開くと、すぐにその中に入ってしまった。

  この部屋に残されたのは映姫と小町と俺だけだ。

  これ以上はとりあえずなさそうなので、俺も退室させてもらおう。

  そう思って踵を返して部屋を出ようとすると、映姫から声がかけられた。

 

「待ちなさい。今回は不問にしましたが、あなたは間違いなく罪人です。神になる前から……いや、()()()()()()()()()()

「……へぇ、どこまで知ってるんだ?」

 

  自分でも驚くほど冷たい声が出た。

  彼女は今、こう言った。神になる前、妖怪になる前から、俺は罪人だと。

  その言葉が意味するのは、俺が元人間だということを知ってるということだ。

 

「あなたの罪状はほぼ全てです。さっきの鏡であなたの罪を調べた時に知っただけですけどね」

「なるほど。ちなみに口外するなよ。もししたらーーーー」

 

 ーーーー殺すからなぁ?

 

  それだけを言うと、逃げるように室内を出た。

  なぜだか妙に、映姫のセリフが頭から離れなかった。




「とうとう後編に突入です。最近文字数が7千オーバーになってきている作者です」

「今回地獄行きになったが、よく考えたらなんもデメリットがないことに気がついた狂夢だ」


「それにしても、今章はどんな感じになるんだ?」

「今章は楼夢さんが死んだ後の他のキャラたちの物語です。ちなみにしばらく楼夢さんはでてきません」

楼「一応俺主人公だったよな!?」

「なんか聞こえたが無視しよう」

「今話の最後にチラッと過去の話が出たが、過去編とかはやるのか?」

「はい、やります。ちょうど次の章が過去編になる予定です」

「一応テスト期間が近づいてきてるんだから、急げよ」

「まあ、もしかしたらこれがテスト終わるまでの最後の投稿になりそうですがね。その時はテスト期間が始まったと、活動報告で書くのでよろしくです」

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