東方蛇狐録~超古代に転生した俺のハードライフな冒険記~   作:日差丸

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自分を信じ、仲間を信じる

当たり前だけど、それ以上大切なことは何もない


by博麗霊羅


闇妖怪の腹ペコ事情2

 

 

  黙々と、爆発地点から煙が昇る。

  姿を現さないルーミアに、霊羅はポツリと呟いた。

 

「……やったかしら……?」

「いえ、まだよっ!」

 

  紫が叫んだ直後、辺りを包んでいた煙が一瞬で吹き飛ばされ、中からルーミアの姿が現れた。

  彼女の傷は、重傷には至っていなかった。確かに七つの弾幕は全てルーミアに直撃し、彼女の服は所々が焼けていた。だが、肝心の体の方は、防御力が高くてダメージを激減されてしまったのである。

 

「……あんたたちっ……よくもやってくれたわね……っ。おかげで火神からもらった服がボロボロじゃない!」

「そんな……っ、確かに当たったのに」

「……やっぱり攻撃は私がしかけた方が良さそうね。藍、霊羅、あなたたちはバックアップをお願い」

「了解です、紫様」

「……わかったわよ。悔しいけど私の霊力じゃあまともな傷を作るには難しい。だから、今だけは後ろに回ってあげる」

「……ありがとう。それじゃあ行くわよ!」

 

  藍は、大量の狐火をあらかじめ空中に設置することで、いかなる時も弾幕を放てるようにしていた。

  霊羅は袖からお祓い棒を取り出し、それに霊力を込めて強化する。

  そして紫は、先ほど使った刀ーー正確には仕込み刀を、強く握った。

 

(お願い……私に力を貸してっ……!)

 

  この仕込み刀は、紫がいつも使う日傘とつながっている。もちろんこれは楼夢製で、細身なのに強靭な作りになっている。

  紫は本来術式に特化していて接近戦はほとんどしない。そんな彼女に、楼夢は「いつか必要になる」と言ってやや強引に手渡したのだ。

  そんな紫用に作られた刀は、恐ろしく丈夫ということ以外何も能力は付与されていない。だが、代わりに全体の質量が棒切れのように軽くなる術式が刻まれていた。

 

「いい刀ね。楼夢が作った物かしら? 貧弱な貴方でもふりまわせる刀を作れる奴なんて、あいつ以外いないものね」

 

  その刀の作りを見て、ルーミアは純粋に褒めた。しかしルーミアは「だけど……」と付け足した。

 

「この世のどんな金属でも、とある武器には勝てないのよね。貴方も分かるでしょ?」

「……とうとう本気を出すつもりね。全員気をつけなさい!」

 

  ルーミアはニヤリと笑うと、手を開き腕を右にまっすぐに伸ばした。

  そして、次の瞬間。

  黒く禍々しい魔法陣が、ルーミアの手を中心に展開された。

 

「っ!? 危険です! 破壊しますッ!!」

 

  野生の本能が、濃密な死の気配を感じ取った。

  彼女は展開しているありったけの狐火を、魔法陣めがけて集中発火した。

  だが、

 

「邪魔よ、この負け犬っ!」

 

  突如、魔法陣からバチバチという音が鳴る。そして次の瞬間、無数の黒い雷が魔法陣から放たれ、全ての狐火と藍を飲み込んだ。

 

「がぁぁぁぁぁぁァァアッ!?」

「藍っ!」

「くそっ、世話が焼けるわねッ!」

 

  黒い煙を出しながら落ちる藍を、霊羅は空中で受け止める。

  藍は気絶してしまったようだが、救助されて数秒後には意識を取り戻した。

 

「大丈夫かしら?」

「……霊羅か、すまない」

「よそ見してる暇あるのかしら?」

「ッ!? しまったっ!」

 

  藍を助けることに集中するあまり、ルーミアの魔法陣を破壊するのを忘れてしまっていた。

  すぐに止めようと紫は弾幕を放つが、遅かった。

 

「来い。黄昏の魔剣『ダーウィンスレイブ零式』!!」

 

  その言葉と共に、魔法陣が妖しく輝いた。

  そして、魔法陣の中心から、剣の柄が生えてきた。それを掴むと、ルーミアは己の愛剣を、魔法陣の中から引き抜いた。

 

  それは、今までのダーウィンスレイブとは違い、両刃の片手剣の姿をしていた。刀身は紅く、柄などは漆黒の色合いをしている。

  特徴的なのは、鍔の中心にはめ込まれた紅玉で、そこから鍔がVの形で柄の方に伸びているところだ。

  まさに芸術品のような剣を手にしたルーミアは、クスリと笑う。そして、

 

「さて、試し切りといきましょうか」

 

  それを紫たちの方向に、刃を振るった。

  直後、巨大な紅い斬撃が放たれ、紫たちに襲いかかった。

 

「くっ、『二重結界』っ!」

「『四重結界』ッ!!」

 

  霊羅の二重結界と、紫の四重結界が合わさり、『六重結界』が出来上がる。

  彼女たちの、最高の防御結界。それが、斬撃が衝突した瞬間に、半分も砕け散った。だが、それで斬撃は消え去り、結界は役目を終えて消えた。

 

「……硬いわね、あれ。まあでも、壊せないほどじゃないけど」

 

  それよりもと、ルーミアは自分のダーウィンスレイブ零式をうっとりと眺める。

 

  彼女のダーウィンスレイブが、彼女の身長に似合わず巨大な十字大剣の姿だったのには理由があった。

  当初、ルーミアは自分の身長に合う武器を作ろうと考えた。それで、己のありったけの妖力が込められた塊を金属代わりに使っていたのだが、片手剣のサイズでは容量が足りずに何度やっても自壊してしまったのだ。それで、仕方なく体積を大きくした結果が、最初のダーウィンスレイブだったのだ。

  だが、火神と出会うことで、魔法や錬金術などを教わり、火神とルーミアの妖力を合わせてようやく完成したのが、今のダーウィンスレイブ零式だ。

  彼女にとっては恋人と二人で作り出した剣である。気に入らないわけなかった。

 

「さて、じゃあ始めましょう……破滅の序曲を」

「……やるしかないわねっ」

 

  紫はまず遠距離から、得意の弾幕とレーザーをばら撒き、ルーミアの動きを制限しようとする。

 

「闇よ、光を貫け」

 

  だが、ルーミアの能力が発動し、あたりに満ちた暗闇から、無数の槍が放たれ、弾幕を貫いた。さらに、それだけでは足らず、槍は紫の方に向かっていく。

  ここで紫も、能力を発動した。

  ギュモンッ! という音と共に紫の目の前にスキマが展開され、向かってくる槍を全て飲み込んだ。さらに紫はスキマに自ら弾幕を放ち、吸い込ませた。

  紫はパチンッと指を鳴らす。次の瞬間、ルーミアの真横にスキマが展開され、そこから先ほど放った弾幕が、放出されたのだ。

 

「甘いわ」

 

  だがルーミアはそれも読んでいて、剣を真横に思いっきり振るう。

  その一撃は衝撃波と化し、全ての弾幕を消し去ってしまった。

  だが、ルーミアは気づいていなかった。スキマは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「死になさいっ! おらァァァァァァアッ!!」

「なっ!?」

 

  もう片方のスキマから、霊羅が飛び出してきた。

  それに気がついて、ルーミアは意表を突かれる。

  霊羅は、霊力をお祓い棒に込め、渾身の一撃を繰り出した。

  それはルーミアの顔に吸い込まれていきーーーー

 

  ドゴオオオオオオォン!!! 寸前で、黒い壁が出現し、直撃を防いだ。

 

「くっ、痛……ッ!」

 

  しかし、威力を完全に殺すことができず、衝撃は壁を超えてルーミアの顔に直撃した。

  頭が後ろに弾かれ、バランスを少し崩す。そして口元から流れた血を拭うと、二個目のスキマが開いた方向を睨みつけた。

 

  ーーーー瞬間、そこから無数の小型レーザーが、機関銃のように放たれた。

 

「ーーーー幻巣『飛光虫ネスト』……光に飲まれて消えなさい」

「……こんなものっ、私の能力で……ッ!」

 

  ルーミアは能力を発動し、周りの闇を操ろうとする。だが、それは発動することはなかった。

 

  能力が使用できないことに呆けるルーミア。だが、すぐに、自分の周りの闇が、眩しい日の光によって消え去っているのに気がついた。

  そして、全てのトリックを理解した。

 

  紫の能力は『境界を操る程度の能力』。この能力は、わかりやすく言えばなんでもできる能力だ。

  水の境界を操れば冷たい水を温かい水に、空の境界を操れば天気を晴れや雨、雪などにもできる。

  今回紫が操った境界は、昼と夜の境界。これを弄ることで、ルーミアの周りを一時的に昼間にしたのだ。

 

  闇がなかったら、ルーミアは瞬間的に能力を使えなくなる。つまり、このコンマ何秒かの間では、ルーミアの能力は間に合わない、ということだ。

 

「八雲紫ィィィィィィィイ!!!」

 

  ルーミアは叫びながら、紫の方へ手を伸ばす。

  だが、それが伸びきる前に、無数の飛光虫が、彼女の姿を包み、轟音が鳴り響いた。

 

 

「……やっぱり駄目かぁ……」

 

  光が消えた後、紫はポツリと呟いた。

 

  刹那、昼間に変わっていたはずの空間が、さらに濃い黒に侵食された。

 

「……もう許さないわ……っ! ここまで私を怒らせたのは楼夢と火神(馬鹿ども)をあわせて三人目よ。いいわ、光栄に思うなさい。この私の、本気の力が見れるのだからッ!!」

 

  そう叫ぶと、ルーミアは空中に浮かび、溢れんばかりの闇を、体から放出した。

 

「月の閃光よ、温かき光を貫け! 『ムーンライトレイ』ッ!!」

 

  ルーミアの頭上を中心に、死の匂いを纏った青白い極太レーザーが、数十本、無差別に放たれた。

 

「全員、上手く避けなさいッ!」

「わかってるわよ! でも防ぎきれないのよ!」

「まずい、紫様!」

「ああもう! なに、藍!?」

「ルーミアの姿を見失いました! くそっ、奴はどこに……っ」

 

  一撃で致命傷間違いなしにレーザー。それが雨のように放たれ、全員に焦りができた。

  そのせいで、紫たちはレーザーを避けることだけに集中してしまう。そして、肝心の人物が姿を消しているのに気がつかなかった。

 

「『バニシング・シャドウ』」

 

  闇の中から、ルーミアが影を通って霊羅の横に瞬間移動してきた。

  だが、レーザーを避けるのに必死で、霊羅はそれに気がついていない。

  ルーミアは、ダーウィンスレイブ零式を霊羅の頭上に掲げる。そしてそれが今、振り下されーーーー

 

 

「『十二神将の、宴ェッ!!!』」

 

  ーーーー振り下ろされる、ことはなかった。

  ルーミアの姿が見えないことに、いち早く気づいた藍が、式神を霊羅の前に召喚する。

  それらは肉壁となり、斬撃をまともに受け、肉体を散らすも、霊羅だけは守りきることに成功した。

 

「ちぃっ、さっきから邪魔なのよ! 『ダーク……マターッ!!』」

「しまっ……藍、避けなさいッ!」

 

  だが、その行為が癪に障ったのか、ルーミアは、左手に妖力を集中させた。それが声と共に解き放たれると、それは暗黒の槍と化し、藍の体を貫いた。

 

「ガッ、ハァッ……!? ……ぐぅっ、まだだ、これでも……喰らえェッ!!!」

 

  『飯綱権現降臨』。そう最後につぶやくと、藍は気絶し地面に落下していった。

  直後、藍のありったけの妖力を使って、大小様々な形の弾幕が、発狂したかのようにばらまかれた。

 

  さすがに藍クラスの妖力の塊を、デタラメに放たれてはルーミアも退がるしかない。

  だが、それを紫は許さなかった。ルーミアが退がる前に、先読みしてスキマでルーミアの後ろに移動し、鋭い突きを放った。

 

  だが、強烈な殺気を感知したルーミアは、体を強引にひねり、地面に着地することで間一髪直撃を避けることに成功した。

  だが、直撃ではないものの、銅を浅く切り裂かれてしまう。それに顔をしかめ、動きを止めた。そして、空中から降りてきた紫とルーミアが、まっすぐに対峙した。

 

「……思ったよりやるじゃない。少し驚いちゃったわ」

「……そちらこそ。でも、従者の仇は取らせてもらうわよ」

「……紫様、私はまだ、生きてます……」

 

  ぼそりと遠くの地面に倒れている藍が呟く。だが、距離もあって紫には聞こえてはいない。どうやら紫の中では藍はもう亡き者扱いにされているようだ。

 

「……じゃあ、行くわよ」

「ご自由に」

 

  ルーミアが、そう言いながら体をリラックスさせる。それが、戦闘の合図だった。

 

  ガキンッ、と二つの刃がぶつかり合う。そして、そこから両方の刃が高速に動き始めた。

  ガンッ、キィィン、ガッ、という金属同士の音が響く。

  剣術のぶつかり合いでは、ルーミアが優勢だった。

  当たり前だ。ルーミアは昔から剣を扱って戦ってきている。そのおかげで、剣を振るうことには慣れているのだ。

  対する紫は、今回初めて武器を扱っている。一応ある程度修行はしていたが、本当に基本だけでしかなく、ルーミアの実践的な剣術にはとてもかなわなかった。

 

 

  その様子を、霊羅は岩陰に身を潜めながら観察していた。

  紫は、藍が稼いでいた時間で、霊羅にとある指示を出していた。それを実行するためにも、霊羅が今見つかってはならなかった。

 

  霊羅はお祓い棒を天に掲げながら、先ほどからずっととある術式の詠唱を唱えている。これさえ決まれば勝利は確実だが、それには十分以上の時間が必要であった。

 

(耐えなさい、紫……っ。これさえ成功すれば、私たちの勝利よ……っ!)

 

  博麗の巫女はそう、自らの親友に祈り続けるのであった。

 

 

 

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