東方蛇狐録~超古代に転生した俺のハードライフな冒険記~   作:日差丸

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お待たせいたしました。前回から少し時間が経ってしまったので、あらすじを今回は書かせていただきました。前の展開を覚えてない方は見てください。


《前回のあらすじ》

楼夢(神楽)、メリー、蓮子の三人は岡崎が盗まれた青い宝石を奪い返すため、とある廃病院に潜り込む。
一階、二階と次々と妖怪たちを蹴散らし、とうとう三階までたどり着く三人。だが、三階に張り巡らされた罠は、より複雑な物になっていて……


怨霊の真実

 

 

「メリー、ここはどういう妖怪が出るの?」

「さあ? あちらにいらしてる方々に聞けば?」

「いやだなーメリー。あんなギョロギョロした三つ目に話しかけられるわけないじゃん」

「そもそも『人』でもなかったわね。ごめんなさい」

 

  そんなくだらない茶番をしているメリーたちの前に見えるのは、三つ目のキメラ。

  頭は犬、翼はコウモリ、足は蜘蛛という奇妙でセンスのない姿をしており、たいへん目の毒になっている。

 

  まあ、そんな生物は2秒後には消滅したのだが。

  針を投げるフォームを取り、次々と四方八方から現れる妖怪たちを虐殺していく。

 

「それにしても、前は囲まれたらその時点でヤバかったのに、今は敵が四方八方から出てきても対処できてるわね。どうしてだろう?」

「おそらく、今出てきている敵が死角から出てこれる代わりに弱いからでしょうね。それに、大軍で押し寄せてこないってこともあるわ」

 

  メリーの言う通りだ。

  今出てきているのは幽霊が主になっていて、死角から不意打ち狙いに現れる。

  だが、相手が悪かった。

  俺の職業は巫女。妖怪が近くにいれば隠れててもすぐ分かるし、目に見えている不意打ちなど不意打ちではない。

  たまに強いキメラ系の妖怪が混じっているが、今の所問題なく倒せている。

 

  そんな俺たちは今現在、廃病院の3階の廊下を進んでいた。

  メリーたちが言うには、この階には院長の自室があるらしい。

  二人が来た時にはもちろん何も出なかったが、俺はここが一番怪しいと感じている。

 

  理由は一つ。ここまで強い地縛霊は長くこの病院に思い出のある者だけしかなれない。他の人間の可能性もあるが、現時点では院長がここの地縛霊である確率が高いだろう。

  そんな元凶の自室だ。何か重要な物が隠されているに違いない。

 

  ということで、俺たちはそこに向かっているのだが、これがとても神経をすり減らすもので、常にトラップと敵に警戒しながら、前を先行しなければいけない。

  おまけに進めば進むほど高度な罠が張り巡らされているので、こちらとしてはたまったもんじゃない。

 

  文句を言いながらも、黙々と進んでいくと、扉が少し豪華な部屋が見えた。

 

「あれが院長室だよ!」

 

  蓮子がそう指を差したその時。

 

  ゾォッ、という冷たい感覚が背中を伝う。

  本能が危険信号を上げ、無意識に後ろを振り返っていた。

 

  その天井にあったのは、大量のギロチン。

  それらは出現すると同時に落ちてきて、俺たちを追うように天井から次々と出現した。

 

「走れ!! 俺が最後尾を務める!」

 

  気がつけば、叫ぶと同時に駆け出していた。

  それはメリーたちも同じようで、声が響くやいなや、脇目も振らずに一心不乱で闇の廊下を駆け抜けた。

 

  ズダンズダンズダン!!! という床を切り裂き砕く音が連続で後ろから聞こえてくる。

  この中で俺の次に足の速い蓮子が扉に到着して、そのドアノブを勢いよく回した。

  だが、

 

「そんな!? なんで開かないの!」

 

  扉が開くことはなかった。

  仕方なく頭を切り替え、扉を無視して前に進もうとすると、前からも謎の粉砕音が聞こえてきた。

 

  そう、前方からも、ギロチンが迫ってきていたのだ。

  やってくれるじゃねえか!

  全て、地縛霊のシナリオ通りの展開になっていた。

  このままでは、俺はともかく、メリーと蓮子は確実に死ぬ。

  畜生、こうなったら……!

 

「畜生がぁぁぁぁぁ!!!」

 

  こうなればヤケだ。

  俺は背中にお札を貼り付けると、自ら爆破させた。

  そしてその爆風を利用して、そのまま壁にーーーー

 

「ぶっ壊れろぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

  轟音。そして壁が崩れる音が聞こえた。

  俺は中の物とぶつかり、ようやく勢いが止まった。

  そしてワンテンポ遅れて、メリーたちがこの部屋に飛び込んだのと、ギロチンがメリーたちの場所を粉砕したのはほぼ同時だった。

 

  間一髪、メリーたちはこの部屋に逃れることに成功した。

  ……危なかった。正直地縛霊を嘗めてたかもしれない。

  とりあえず、この部屋にだけはトラップを配置されるのはよくないので、適当にお札をばらまいておいた。

  これで当分は大丈夫だろう。

 

「し、死ぬかと思ったぁ……!」

「とりあえず休憩にするか。結界を張ったから、しばらくは安全だ」

 

  息を荒くしながらその場に崩れ落ちる二人。

  特にメリーはあの全力疾走がかなり疲れたようで、一言も喋らずに寝転んで体力回復を待っている。

  まあ無理もない。運動が得意ではないメリーが俺たちのペースで走ったんだ。今は休ませてあげよう。

 

  さて、そうなるとすることもなくなるので、この室内を調べてみるか。

  まずは室内を見渡す。

  高級そうなディスクが部屋の中央に置いてあり、それ以外はあまり変わったものは少ないようだ。

 

  その一つである本棚には、医療関連の物ばっかがギッシリと詰まっていた。

  だが、よくよく見るとカバーだけで中身はグルメ関係のものも混じっていたりする。

  ここの院長はグルメ家でもあったのかな?

 

  それ以外はめぼしいものは見つからなかったので、ディスクを調べてみることにした。

  机上には筆記用具が散らばっており、下には引き出しが三つある。

  そのうちの一つに、鍵がかかっているようだった。

 

「……ちっ、鍵はねえのかよ」

「私も知る限りはないね。前に来た時に数時間は探したけど、どこにも見つからなかったよ」

「そうか。……じゃあ、壊しても仕方ないか」

「えっ?」

 

  俺の右手が引き出しを掴み、勢いよくそれを引っ張る。

  そのあまりの馬鹿力に、バギッ、という音の後、引き出しがディスクから飛び出し、音を立てながら激しく地面と衝突した。

  ああ、やっべ。他人の部屋の床を傷つけちまったよ。

 

「ま、いっか」

「それだけで済ませられる精神が凄いよ……」

「いーのいーの。蓮子だって、RPGのラスダンの宝箱からレア装備盗んでも罪悪感が湧かねえだろ?」

「でも、最後のダンジョンにしてはしょぼいものしかないね……」

 

  引き出しの中には金銀財宝!

  というわけにはいかず、ただのボロい書物が一冊あるだけだった。

  それしかなかったのって、手にとって読んでみる。

 

 

 

  ●月●日

 

  今日は素晴らしい日だ!

  なんと、長年待ちわびた私の病院が、完成したのである。

  あまりに嬉しかったので、この日を期に、これからたまに日記を書いていこうと思う。

 

 

  ●月●日

 

  日記を書くとは言ったが、果たして何を書けばいいものだか。

  そうだな、今日は私の家庭について記しておこうと思う。

 

  私には妻のキョウコと、娘のヒカリがいる。

  とても明るくて、最近軌道に乗り始めて忙しくなった私を気遣ったり、癒してくれている。

  娘は今年で1歳を迎える。まだ気が早いだろうが、この子には将来自分の跡を継いでもらいたいものだ。

 

 

 

  ここからしばらく、ありふれた日常が続いていた。

  だがしばらくすると、手汗なのか、グッショリと濡れた跡があるページを見つける。

 

 

 

  ●月●日

 

  ……なんてことだ。

  妻が病院に搬送された。

  症状は一切不明。私の病院が彼女を救いたかったが、こんな小さな病院より、もっと大きな病院に行ってもらう方が良くなると判断し、彼女を預けた。

 

  不安が止まらない。

  何か良くないことが起こりそうだ。

  頼むから、何事もなく帰ってきてくれ、キョウコ……。

 

 

 

  ●月●日

 

  ……キョウコが死んだ……。

  これは、搬送先の病院から送られてきた情報だった。

  私は泣いた。ペンを持った今でも泣いている。

  なぜだ……!?なぜなんだ……キョウコ!

 

 

  これから先は、歪な文字が刻まれていて、読めそうにない。

  仕方なく、ギリギリ読めるページまで飛ばすことにした。

 

 

 ●月●日

 

  キョウコが死んで数ヶ月後、後を追うようにヒカリが死んだ。

  原因は、たまたま預けたベビーシッターからの迫害。

  1歳という幼い体で到底耐えられるわけもなく、昨日、その命を落とした。

 

  私から湧き上がったのは『怒り』だった。

  素知らぬふりをして彼女を病院内の緊急治療室に呼び寄せ、そして……

 

  殺した。殺した。殺した。

 

  メスで目玉を抉り、すぐに死なないように、少しずつ、少しずつ全身の皮や爪、耳や鼻などを剥いだ後、何度も何度も彼女を突き刺した。

  その時彼女が浮かべた絶望だけが、今の私の安らぎとなった。

  ああ、なんて気持ちイイ……。

 

 

 

  ●月●日

 

  私は、妻と娘を蘇らせることに決めた。

  キッカケはたまたま知り合った邪教集団。

  どうやら彼らは邪神を召喚し、その力で願いを叶えるのが目的らしい。

 

  私も、そんな彼らの一員になった。

  手段なんてどうでもいい。死者蘇生は金では行えない。

  希望があるのなら、私はなんだってやってみせる……!

 

 

 

  ●月●日

 

  その日から私は、夜中の病院に彼らを呼び寄せ、謎の実験を行わせた。

  彼らの邪神は、混沌と時狭間の神というらしい。

  話によれば、有名な神であるオーディンやゼウスを遥かに上回る力を持つらしい。

  そんな邪神が果たして私たちの願いを聞いてくれるのかは分からないが、試さなくては意味がない。

 

  幸いというべきか、彼らの不思議な力だけはニセモノではなかった。

  彼らは奇妙な術を用いて、動物と動物を融合させ、バケモノを作り出したのだ。

  二又の顔を持った巨大な犬を中心に、現世に存在する脊椎動物や無脊椎動物をベースにしたバケモノから、三つ目のスライムのような空想生物までも生み出してみせた。

 

  これならいける。今度こそお前たちを……!

 

 

 

  ●月●日

 

  クソクソクソクソクソ!!!

 

  なぜだ。どうしてこうなる?

  院長室の外の扉をガリガリと壊そうとする声が聞こえてくる。

 

  ある日のことだった。

  夜の病院で生み出された合成生物が暴走し、団員数名を食い殺すと、病院内にいる人間全てを襲い始めた。

  そして私は今追い詰められ、こうして最後になるであろう日記を書いている。

 

  チクショウ! 後もう少し、もう少しだったのにィ……!

  後は『時狭間の水晶』があれば、彼女たちの肉体を再生し、蘇らせたのに……!

 

  もうダメだ。諦めよう。

  扉が開かれた。巨大な頭が私の目の前に映る。

 

 

  最後に、この世界よ、呪わーーーーー

 

 

 

 

「ーーーー以上が、この日記の全てだ」

 

  ……随分悲惨な話である。

  しかもよりによって関わった邪神が悪かった。最凶最悪とも呼ばれる混沌と時狭間の邪神を呼ぼうなど、正気の沙汰ではない。

 

  ……いや、すでに正気ではなかったのだろう。

  文字は人の心を表すと言うが、妻と娘が死んでから、明らかに字が汚くなっていた。

  最後に至っては、全部書ききれずに『呪わ』の次には長い線が伸びている。

  おそらくはこの時に食われたのであろう。

 

  彼の言っていた『時狭間の水晶』とやらも、俺たちが今奪い返しにきた青い宝石のことなのだろう。

  邪神が関わってるのなら触れないほうがいいのだが、なぜかどうしても持っておかなければいけない気がしたので、捨てれそうにない。

 

「まあ、自業自得だ。気にする必要もない」

「それにしても……あんまりな話だね」

()()の宗教に関わっちまった奴の、よくある最後だ」

 

 そう言い捨てると、これ以上は収穫はなさそうと、地面にしゃがみ込む。

  そしてふと、休んでいたメリーと目が合い、こんな質問が飛んできた。

 

「ねえ……もし、大切な人が死んだとして、生き返らせるチャンスがあったら、楼夢君は生き返らせる?」

「いや、生き返らせない」

 

  いつもとは違う、虚ろな目で、メリーの疲れ切った儚げな笑みが目に映る。

  俺は迷わず、そう言い切った。

  メリーと、それを横聞きした蓮子は少し目を見開くと、俺にその理由を尋ねてきた。

 

「俺は、人間は人間のまま生きていくのが幸せなんだと思う。生まれ変わるならまだしも、一度地面に埋まった人間が起き上がったところで、それは人間じゃないだろ? なら、そのまま殺してあげた方がマシなのさ」

「……それで、割り切れるものなのかしら?」

 

「割り切れないと思う。だから、蘇らせるのではなく、憎むんだ。自動車に殺されたのならその運転手を。病気で死んだのなら救えなかった病院を。自然災害なら、それを対策しなかった政府を。そうやって憎んで……殺していくんだ」

 

  脳裏に、兄をひき殺した自動車の運転手の死に様が浮かび上がる。

  助けてくれ、殺さないでと何度も泣き叫び、その度に切りつけた。

  ……決して許される行為ではない。だが、これで少しでも俺の気がまぎれるのなら、俺は迷わず刀を抜くだろう。

 

  っと、そんなことを考えていたせいで、相当怖い顔をしていたらしい。

  メリーも蓮子も、俺から何か感じ取ったのか、それ以上は何も言わなかった。

 

「で、メリー、疲れは取れたか?」

「う、うん、少しは……」

「そうか。それならいい。メリーは疲労すると、能力に感情を引っ張られるからな」

 

  いつの間にか、メリーの表情は元に戻っていた。

  実はメリーがこういった風になるのは珍しくはない。

  彼女の能力は強力な分、デメリットに感情が不安定なるリスクがあるようだ。

  今回のように疲れ切ったり、自分の身に死を間近に感じたりすると自動的になるので、これ以上は彼女に負担を強いるわけにはいかないだろう。

 

「さて、じゃあ行くとしますか」

「えっ、どこに?」

「さっき、屋上からひときわ大きな妖力が現れた。ご丁寧に待ってくれているようだし、迎えに行ってやらねえと」

「待って楼夢君」

 

  ここを出ようと立ち上がった俺を、メリーが珍しく引き止める。

  なんだ?

  なんかメリーから一瞬黒いオーラが見えたような……?

 

「今から屋上に行くのよね?」

「え、あ、はい、そうです」

「相手は必ず罠を張っていると思うわ。それに引っかかりっぱなしてのも嫌だから、私たちも対策を考えましょう?」

「えーと、具体的には何を?」

 

  体中から冷たい汗が噴き出してくる。

  蓮子を見れば、彼女は足腰をガタガタと震えさせていた。

 

  「あら、どうしたのかしら?」

 

  笑みを浮かべながら首を傾げるメリー。

  普段なら可愛いと感じてしまうその仕草も、今だけは俺たちの恐怖を倍増させるだけだった。

 

  そう、メリーの笑みは笑みでも、今の彼女の笑みは()()()()()()()()()

 

「とりあえず、持ってる御札を全部貸してくれないかしら?」

「は、はいっ! ……でも、何に使うんだ?」

 

「任せておいて。私に秘策があるわ」

 

  地雷のキーワードをぶっ込んできたメリーを見て、俺たちは一斉に思った。

 

(すいません、怨霊の親玉さん。どうやら私も貴方も、無事では帰れそうにありません)

 

 

 






「どーも、お久しぶりです。五教科の中だと、苦手教科は数学になります。作者です」

「久しぶりの登場だな。ドラ●エライバルズが配信されたりと、色々忙しい狂夢だ」


「いやーテストが終わって気が楽になりました! 私は自由だああああ!!」

「いや数学半分も取れてないくせにどの口が言うんだよ」

「赤点じゃないだけマシでしょう!」

「こいつ将来大丈夫か……?」

「そんなことより、今回は狂夢さんの名が直接ではないですけど登場しましたね」

「まあ、この章での俺の介入はないだろうから、あまり嬉しくはねェがな」

「おまけに子孫にボカスカ悪く言われてますしね」

「うっさい。ったく、この善良な神と評判の俺をあんな風に言うとは目がないぜ」

「貴方は月面戦争で何をしたんですか?」

「月を七割消しただけだが? 全部じゃないだけマシだろ? ほら、俺ってやっぱ優しい」

「……ダメだこりゃ。価値観がぶっ飛んでいて話にならねえ……」
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