東方蛇狐録~超古代に転生した俺のハードライフな冒険記~   作:キメラテックパチスロ屋

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ただいま、おかえり

それだけあれば、他はいらない


by白咲楼夢


娘たちの幻想入り

 

 

  この世の娯楽とはなんなのか?

  一度、考えたことはないか?

 

  それは時に金だったり、女だったりで色々ある。

  だが、俺はすでに個人の財産では世界一と自負するだけの金もあるし、もう百年ほど会っていないが彼女もいる。

 

  では、俺の娯楽とはなんなのか?

  最近の世で、それは解決しつつある。

 

 

  チャリンチャリンという無数のコイン音が店いっぱいに聞こえる。

  その他ではゲームの演出音で耳が痛くなりそうだ。

  もっとも、最初に来たころは慣れなかったこの音も、今ではすっかり馴染んだのだが。

 

  俺はメダル落としの台の前に座っていた。

  決まった投入口にコインを投入し、それらが中で押し出されて落ちることによってコインを稼ぐゲームだ。

 

「もう少し……いや、次のタイミングで……」

 

  ガラスの奥には、今にも落ちそうな大量のコインで作られたタワー、通称【コインタワー】が見える。

  計算では、あともう少しで落ちる。だが、どのタイミングでコインを入れるかが俺を惑わせていた。

 

  ……よし、ここだ!

  そう思った瞬間、後ろから飛んできたコインが投入口に入り込み、コインタワーを一撃で崩した。

 

  お、俺のコインタワーが……。

 

  後ろを見れば、そこにはドヤ顔でこちらを見ている少女が。

 

「ふっふっふ。背後から獲物を盗られるとは、油断大敵だね」

「……ぶっ殺す」

「まあまあ落ち着きたまえ。君と私の仲ではないか」

「俺と……お前の仲?」

 

  記憶から探し出そうにも、目の前の妖怪に該当するものは見当たらない。

  そもそも俺の知り合いで少女なんてのは、今現在封印されたルーミアくらいだし。

  結論、

 

「いや、誰だよお前」

「……わかってたとはいえ、酷い答えだ……ほれ、服とか髪とかよく見ればわかるでしょ?」

 

  服? 髪?

  この少女は特徴的な、袖が分離してる黒い巫女服を着ている。髪は明るい桃色だ。

  ……うん? なんか特徴が一致してるやつが一人いた気が……。

 

「それよりもルーミアはどうしたの、火神?」

 

  その呼び方でやっと思い出した。

  この呼び方をするやつなんて、ルーミア以外あいつと、その娘たちしかいない。

 

「……ああ、お前楼夢か……」

「リアクション薄いねぇ。お兄さん寂しくなっちゃうよ」

 

  目の前の少女ーーっぽいジジイ、白咲楼夢は袖で口元を隠しながら、クスリと笑うのであった。

 

 

 

 ♦︎

 

 

「それにしても意外だね。火神は金いっぱいあるんだし、もうちょっと豪華な遊びをしてるのかと思ったよ」

「カジノにもしょっちゅう行くぞ? ただ、あれは遊びが増えねーから数十年以上やってると飽きるわけよ」

「その結果ハマったのが、数年単位で大量の遊びが増えるゲーセンってわけね……」

 

  ああ、私の少ない男の知り合いが現代に染まっていく……。

  同じ白髪仲間の破壊神様もさっそく部屋で引きこもって遊んでるらしいし。

 

  それはさておき。現在、私たちは白咲神社に続く長い階段を登っていた。

  私は当たり前だが、となりのバカが来ているのには理由がある。

  まあ、説明はそのときにすればいっか。

 

「なんか今ディスられた気がするんだが」

「あら、『ディスる』なんて現代語使っちゃって。私だけ取り残された気分だよ」

「話ズラしてんじゃねえよこのピンクファンキー頭。……いや、今の姿だと【ピンクアホ毛頭】がお似合いか?」

「あ、私のこのアホ毛を馬鹿にしたね! 今度あなたに『朝起きたら寝癖がパイナップルになる呪い』をかけてやる!」

「地味に嫌な呪いだな!?」

 

  まあ、そんなもの本当はかけれないんだけどね。以前の姿でない限りは。

  火神は以前の私がそういったこともできると知っていたため、本気で信じたようだ。

 

 

  そうこうしてるうちに、鳥居が見えてきた。

  ……うん、懐かしい。

  神社は手入れをされていないのでボロボロだが、それでもその大きさに迫力を感じる。

 

  そしてその中から、三人の人物がいることを私は感知した。

  さてと。久しぶりの娘たちとの再会といこうか。

 

 

 

 ♦︎

 

 

「火神さんじゃないですか。ここに来るとは珍しい」

「昔は頻繁に来てたろ? 今日はちょっと用事があっただけだ。それよりも、お前ら確か天照大御神の神社にいたんじゃなかったのか?」

「うちの巫女の家系が途切れたんですよ。まさか私たちが消えて百年ほどで途絶えるなんて微塵も思っていませんでした」

 

  ああ、これはお父さんに叱られても文句言えません、と黒髪の娘ーー美夜はつぶやいた。

  そこんところは責任の一部は私にあるので、とやかく言うつもりはないんだけど。

  というか、元はと言えば神楽がさっさと子供作らなかったのが悪いのだ。だから娘たちは決して悪くない。神楽が悪い!

 

「ところで……そちらの方は?」

「……ふぇっ?」

「おい馬鹿、こいつにそんなこと言ったら……」

 

  美夜の言ったことが脳内で何度も何度も再生される。

  『そちらの方は?』、『そちらの方は?』、『そちらの方は?』…。

 

「火神……私はもう、生きる希望をなくしたよ……」

「ちっ、燃え尽きやがって……面倒くせぇ……」

「ええと、私何か失言しましたか?」

「こいつの顔とかよく見てみろ……すぐにわかる」

「……白咲家当主の巫女服に、桃髪……もしかして……お父さん!?」

「やっと気づいたか……まあ、手遅れなんだがな」

 

  そうかぁ……やっと気づいたのかぁ。

  近くで凝視されなきゃ気付かれない親なんて……。

 

「ぐすっ、私には親の資格なんてないんだぁぁぁ!」

「いい加減正気に戻れや!」

「危なっ! ……殺す気か!?」

 

  なんと、火神は隠し持っていたと思われるリボルバーを私の頭部めがけて発砲してきたのだ。

  それに気づいたのはほぼ勘で、巨大な蛇に尻尾を変化させ銃弾を叩き落とした。

 

「ふう。これで話が進むな」

「私への謝罪は!? ってか、なんでそんなもん持ってるの? 殴った方が速い気がするけど」

 

  あくまでこの脳筋限定の話だけど、と脳内で追加しておく。

  彼の話では、現代の闇社会では一つ持ってた方が都合がいいらしい。

  それに、火神の持っている【コルト・パイソン】は魔力を圧縮して放つうちに神器化したようだ。

  否、正確には神力はないので魔剣化……いや、魔銃化というべきか。

  それによって、遠距離攻撃ではかなり使える武器になったらしい。妬んだルーミアに壊されないことを祈るばかりである。

 

「えーと……とりあえず、上がっていくかしら?」

 

  そうだ、忘れてた。

  火神のせいで、再会の言葉を交わすタイミングを失ってしまった。まったく、どいつもこいつもドイツも……。いや、ドイツは関係ないか。

 

  二つ返事で、火神は一足早く裏にある家へと入り込んでいく。

  そうだ。

  私は火神を追うように玄関に入ろうとする美夜を引き止めると、

 

「言い忘れてたけど……ただいま」

「……うん、お帰りなさい!」

 

  先ほど言えなかった、再会の言葉を交わすのであった。

 

 

 

 ♦︎

 

 

  神社内の居間には、私、火神、それと三人娘たちがそれぞれ座っていた。

  ちなみに、美夜以外の金髪と銀髪の二人ーー清音と舞花には、すでに私のことは説明してある。

  やはり盛大に驚かれたが、元々懐きやすい清音はともかく、無口な舞花もすぐに慣れたようである。

 

  そして私たちは大きなちゃぶ台を囲んで座っている。

  手にはコップやら杯やら酒瓶やらが。

 

「えーこほん。本日は私とみんなとの再会を祝って……乾杯!」

「「「乾杯っ!!!」」」

「かんぱ〜い……」

 

  えらく適当な掛け声をしたやつが一名いたが、まあいいだろう。

  数百年ぶりに自作の酒【奈落落とし】を杯いっぱいに注ぎ、飲み干す。

 

  くぅ〜、やっぱ酒はこうでなくっちゃ!

 

「なんか、その姿で酒くさいと違和感あるよねー」

「……萃香に似てる」

「失礼な。私も萃香も立派な大人だっていうのに」

「見た目ロリがなに言ってやがる」

 

  なんだとぉ? ロリを馬鹿にすんじゃない!

  ロリは希望だ! 夢だ! この世の全てだ!

  ……って狂夢が言ってた気がする。ていうかこれ犯罪者予備軍のセリフだよね?

 

「そうだ。お父さんが死んだあと、剛さんからお供え物があったんですけど……あった、これです」

 

  彼女が頑丈そうな黒い箱の中から取り出したのは、一個の瓢箪(ひょうたん)だった。

  ……ああ、萃香や剛なんかの鬼が持ってるやつだ。

 

「これは【鬼神瓢(きじんひょう)】と言って、水を入れれば酒を作り出し、酒を入れればその味を上げる効果があるらしいです」

「へぇ……どれ、ちょっとやってみるか」

 

  妖術で水をその場に作り出し、コントロールして瓢箪に入れる。

  そして振ってみると、中から確かに酒の匂いが漂ってきたので、口にしてみる。

 

「ぷはっ! 私にはちょうどいいけど、結構強いね。気に入ったよ」

「ちなみに、それは剛さんが昔使ってたものらしいです」

「ブッフォォッ!?」

 

  衝撃の事実に、思わず噴き出してしまった。

  剛が使用済みってことは……間接キスですね逃れようもなく。

  男としては素直に嬉しいんだけど、それ以前に恥じらいを持てよあいつ!

  いや、無理か。というかこの姿で出会ったら、マジで腹パンで気絶させられて屋敷に監禁されかねない。

  あいつは目的のためなら手段選ばないからね。

 

「頑丈に作られているから、剛さんが殴らない限り壊れないそうですよ?」

「それって逆に言えばほとんど壊れないってことでいいんだね?」

 

  伝説の大妖怪の一人、鬼城剛。

  私がスピードとテクニック、火神が広範囲による壊滅なら、彼女は一撃による破壊だ。

  範囲では術式が使えない分私や火神には劣るが、その一撃は世界一だ。おまけに拳で風圧などを巻き起こせば、それなりの範囲に届くという弱点カバーがされてある。

 

  実際、私もその一撃で脳の障害が残ったことがあった。

  まあ、あれは火神にしこたま殴られ脆くなったあと、同じ箇所を剛に殴られたのが主な原因なのだが。

 

  まあ過去のことはさておき、この瓢箪はありがたく重宝させてもらおう。

  一緒にセットでつけられていた鎖で瓢箪と私を繋げ、腰につけておこう。

 

「そうだ。紫の幻想郷ってどうなったか知ってるか?」

「……はい。もうすっかり完成していて【最後の楽園】と呼ばれるほどの場所になったようです。実は私たちも一度幻想入りに誘われたのですが……お父さんの許可なしに神社を動かしていいか当時は判別がつかず、断ってしまいました」

 

  美夜は、あの時は若かった……というような過去の自分を悔やむように話してくれた。

  ……まあ、その判断のせいで巫女の一族を失ったわけだしね……。

 

  でも、彼女は本当のことを私に語ってくれた。

  なら、私も私の考えをはっきりと言わせてもらおう。

 

「みんな、聞いてほしい。私は白咲神社を幻想入りさせたいと思ってる。反対ならば、正直に言ってほしい」

「私は賛成です。それがお父さんの意思なら」

「私もさんせーい。この世界は恐怖や信仰がないから、生きにくいしねー」

「……私もです。姿を隠さないと生きていけない世界なんて、めんどくさい」

 

  みんなの顔を見渡す。

  どうやら、それが娘たちの真意らしい。

 

「なら決まったね! 火神、転移の魔方陣は私が描くから、魔力注ぐのよろしくね!」

「報酬は?」

「美夜、適当に五百万円ほどの価値になるものを倉庫から持ってきて!」

「よし、その仕事、やらせてもらおう!」

 

  黄金の剣やら宝石やらで適当に前払いを済ませる。

  神楽は知らなかったが、実は白咲神社の隠し倉庫にはこれまで私が旅で手に入れてきた財産が眠っている。

  それらは全て売ればたちまち億万長者になれるほどだ。まあ、もったいないから売らないけど。

 

  決まったなら話は早い。

  私は三十分ほどで神社を囲うように巨大な魔方陣を描いた。

 

「そうだ。私は後十年ほどこの世界にいたいから、神社の修理やらよろしくね?」

「えっ? ……はぁっ、わかりました。残念ですけど、この世界にはこの世界での魅力がありますからね。存分に楽しみ、できれば早く帰ってきてください」

「そうそう。紫には私のこと話さないでよ? 今の私じゃ抵抗できずに、無理やり拉致られる可能性もあるんだから」

 

  私の友人である剛と紫は、少なからず私に好意を向けてきているらしい。四季ちゃんが長々と説明してくれた。

  確かに、二人はよく私にアピールしてきてたような気もする。

  その方法はそれぞれだが、二人の本質は少し似ている。

  剛は一度酒に薬を混ぜて眠らされ、鎖で縛られたこともあった。

  紫も寝ている私に妖術をかけて縛り上げ、そのままお持ち帰りされたこともある。

 

  ま、最終的に力技で抜け出して拳骨食らわせてやったのだが。

  紫は多少反省してたのだが、剛は逆に何がダメなのかわかってないようだった。

  もし、この二人に私が弱体化したことが知れたら?

  間違いなく厄介なことになる。

 

  なので、しばらくはこの世界を観光しつつ力を鍛え上げ、ある程度は抵抗できるようにならなきゃならない。

 

  っと、どうやら私が思考してるうちに魔方陣の魔力が満タンになったようだ。

  なら、さっそく起動させるか。

 

「というわけで、後のことは頼んだよ!転移発動!」

 

  私がそう唱えると、神社が巨大な光に包まれ、大きく輝いた後、姿を消した。

 

「……行ったね」

「んじゃ、俺はもらうもんもらったし、帰らせてもらおうか。また依頼があれば言えよ?」

「自分一人なら、ギリギリ【亜空切断】で行けるから大丈夫だ」

 

  そう言って、私は彼に背を向け、次の目的地へと歩いていった。

 

  そして私はこの後、娘たちが幻想郷の異変に巻き込まれることを知らなかった。

 

  ……まあ、なるようになれ、だ。

  私は悪くない!

 

 






「今年最後の難関終わったァァ!! ざまあみろクリスマス! 25日は楽しく一人でチキン食べてた狂夢だ」

「宿題だるすぎる! 早い日に書き初めやったら、案の定墨汁を床に落とした作者です」


「そういやこの小説のキャラって全体的に身長低いよな」

「作者の東方は『少女』というのをイメージしてるので。以前の楼夢さんも165以上170未満の身長ですし」

「他のキャラはどうなんだ? 例えば紫とか」

「紫さんや永林さんなどの身長高めなイメージのキャラも、165未満にしてあります」

「他のキャラは?」

「自機キャラやその他の少女も基本的に160程度です」

「ロリ系は?」

「ロリ系は140程度に抑えています。個人差はありますが」

「ふっ、いいじゃねェか。ちなみに俺は?」

「167ですね」

「火神は?」

「175ですね」

「なんでや!? なんでこいつだけ身長高いんだよ!? 俺も男だぞ!?」

「楼夢さんと狂夢さんは同じ身長って設定なんですよ!? 文句あるのか!?」

「バリッバリあるわ! 今日こそ殺してやる!」


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