東方蛇狐録~超古代に転生した俺のハードライフな冒険記~ 作:日差丸
太陽と月
片方欠けては成立しない
両方あっての空なのだ
by白咲楼夢
そして、十年の時が経った。
いや、色々飛ばしたけど何もなかったわけじゃないのよ?
海外を飛び回って旅行したり、その過程で修行したりなどなど……。
そのおかげで、大妖怪一歩手前クラスくらいの妖力を得ることができた。数値で言うなら、総合戦闘能力:1万だ。
これくらいの数値があれば、だいたいの妖怪と殺しあっても大丈夫だろう。
アウトなのは紫や幽香クラス、つまり大妖怪最上位より上はまったく歯が立たなくなる。
そもそも、大妖怪下位でさえ下手したら殺されるのだ。その戦力差を埋められるのは私の六億年の戦闘経験のおかげにすぎない。
まあ、そもそもそんなやつらに当たる可能性など極小だ。一番あって、妖怪の山の烏天狗が絡んでくるぐらいだろう。
話は変わって、私は今電車に乗っていた。
窓から入り込んでくる春の暖かい風が、私の長い桃髪をたなびかせる。
とはいえ、私の服装は冬と変わらない。
そもそも、これは巫女服を隠すために着ているのだから、暑いとかそういう問題じゃないのだ。
まあ、あのあと私の技術で温度調整できる術式を刻んでいるので、そんな問題はないのだけど。
行き先は長野。
ここに行く理由は、古い友人たちに会いに行くためだ。
やっぱり友達は大切にしなくっちゃね。
え? なんで十年前に会いに行かなかったのって?
い、いや、それはあれだよ。決して忘れてたってわけじゃなくて……。
というかそれを言っちゃえば、幻想郷にいる友人たちはどうしたって話になっちゃうんだけどね。
まあ、最終的に会いに行くから問題はないでしょう。
問題ないったらない!
異論反論は許さん! いいね!?
♦︎
そしてたどり着いた、長野県諏訪市。
ここまで言ったら、どこに行くつもりなのか想像できたと思う。
駅を降りてスマホのナビを頼りに歩いていく。
……当たり前だけど、ここも随分変わったもんだ。
木で作られていた質素な家も、デコボコの通路も、その面影すら消えている。
……いや、消えてないものもあったね。
諏訪湖。とある神社裏にある湖。
こればかりは、さすがに今でも残ってるようだ。
まあ、埋め立てでもしたらミシャグジの祟りが降り注ぐことだろうし、ちょうどいいんだけど。
黒翼を羽ばたかせ、鳥居の前に降り立つ。
それにはボロボロの文字で【守谷神社】と書かれていた。
「やっぱり……ここもこうなっちゃってたか……」
日夜信仰が捧げらてたこの神社は、今やその面影すら見えないほどボロボロになっていた。
時狭間の神が言うセリフじゃないけど、時ってのはやっぱり残酷だ。
少し湧いた寂しい気持ちを抱えながら、境内に入る。
「……ん? あれは……?」
境内の中には、一人の少女が箒でそこを掃除している姿があった。
緑色の髪に、青と白の見たことある巫女服。
間違いない。彼女は、この守谷神社の当代の
彼女は私に気づくと、驚き半分、喜び半分で私に声をかけてくる。
「え、えーと……こんにちわ! ようこそ守谷神社へ! 本日は参拝ですか?」
ぎこちないながらも、大きな声で一生懸命やってるのがわかる挨拶だ。
可愛いし、これはアリだ。うちの十五代目巫女も彼女を見習え、ほんと。
「うん、こんにちわ。今日はちょっと古い友人に会いに来たんだけど、いいかな?」
「え、友人……ですか? ここには私以外人はいないはずなんですけど……?」
「ちゃうちゃう、人じゃないよ。おーい神奈子ー! 諏訪子ー! いるんでしょ!」
私は大きな声で、本殿に向かって友人たちを呼んだ。
しばらくして、奥の方から誰かが出てくる。
「……誰だい、私を呼ぶのは……?」
「私だよ私。わ、た、し」
「……誰かしら? オレオレ詐欺なら勘弁してほしいんだけど」
……ちくしょう、お前もか。
気だるそうに障子を開けて出てきたのは、武神である神奈子だった。
ちなみに諏訪子の姿は見えない。中から気配も感じないので、これ以上このことに頭を回すのはやめよう。
それよりも!
どうしよっか、これ。岡崎が一目で見破ったので、忘れてたわ。
いやいや、一時期ここで暮らした仲なんだし、気づくはずだって。
「え、えーと、ほら、この顔に見覚えあるでしょ? 私たちの仲なんだし、さすがに……ね?」
「というかお前、妖怪だろ? そんなちっこい知り合いなんて、諏訪子ぐらいしか私は知らないよ」
「誰がちっこいだテメェ! 表出やがれ!」
「……まさか、楼夢か……?」
「俺の怒鳴り声で思い出してんじゃねえよ! もちっとよく見ればわかるだろうが!?」
着ていたコートを投げ捨てながら、彼女に怒鳴る。
いやさすがに失礼すぎるでしょ!?
なんなの? お前には私がちゃぶ台返しする雷オヤジにでも見えんの?
「楼夢は雷オヤジみたいに怒鳴ってるのが、常だったからなぁ……」
「図星かよこの野郎! やっぱ表出ろや!」
私がそう【神理刀】を振り回しながら叫んでいると、風祝の子がオロオロしながら話しかけてきた。
「わわっ! やめてください! 外での帯刀は銃刀法違反ですよ!」
「……そうだね。少し取り乱しちゃったよ」
このままじゃほんとに泣き出しそうだったので、仕方なく刀を消す。
「そーだぞー。ルールを守らなくちゃなー」
「武神が銃刀法違反を語るな! イメージダウンしまくりだわ!」
「もう落とすイメージもないから大丈夫」
「……そのことについても聞かせてもらうよ。とりあえず上がらせてもらおうか」
許可はとらないけどね。
そう言って、本殿の縁側からぴょこんと飛んでお邪魔する。
「わーお、人の家に無許可で、しかも縁側から入ってくる人は初めて見ましたよ」
「ここ神社だし。それに私は妖怪だから」
「そうでしたね。では、退治を」
「……たった今主人と話し合った人物を退治する人も、私は初めて見たよ」
しかも彼女自身の霊力も高いため、ちょっとだけシャレにならない。
どれくらいかというと、ちゃんとした修行を積めば私が見てきた中でトップレベルの風祝になれるだろう。
まあ、風祝としての能力外だと、早奈が一番なんだけど。
……彼女も、いずれ助けなくちゃな……。
人を辞めてまで私を求めた彼女のことを頭の隅に追いやり、私は見慣れた居間で寝転がって、彼女らを待つのであった。
♦︎
「さて、まずはどこから説明したもんかねぇ……」
座布団に座った神奈子がどこから話を切り出そうかと、ため息をつく。
なにやら昔のような力に溢れた感覚がなく、重りを背負ってるかのように疲れているね。
その理由はおそらく、失ったものがあるからだろう。
今居間で座っているのは私、風祝の子、神奈子の
「……諏訪子はどうした?」
「……あいつなら、神力が足りずに消えちまったよ。私もあと数日でそうなるだろうねぇ……」
……やっぱりね。
神というのは信仰なくして生きていけない存在だ。非科学を否定されたこの世界では、存在を維持することも難しいのだろう。
……だけど、まだだ。まだ終わらんよ!
つーか、ここで数少ない友人を失ってたまるかっての。
今この時こそ、私が持ってる不要な神力を使う場面でしょ!
脳内で巨大術式を構築。
対象は神社全体。姿が消えていてピンポイントで狙えないので、ここら一帯を神力で溢れさせるという寸法だ。
産霊桃神美として、ウロボロスとして得た膨大な神力はそんな無駄使いを可能にする!
私は迷わず、体内の神力を神社内にばらまいた。
「……力が溢れてくるぞ! なんだか若返ったような気分だ!」
「神奈子様、光が……光が集まってきていますっ!」
風祝の子の言う通り、どこからともなく現れた光の欠片が一箇所に次々と集まっていく。
そして完成すると、目も開けられない光を発しーー諏訪子を再び、形作った。
「……ふわぁ……あれ、私って消えたんじゃ……?」
「す"わ"ご"さ"ま"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!」
「ちょっ痛い痛い!? ああ、服が涙と鼻水まみれに!」
復活した諏訪子を見た瞬間、風祝の子は顔面をぐちゃぐちゃにさせながら諏訪子へと抱きついていった。
ただ、諏訪子としてはいきなり目覚めた後に涙と鼻水まみれになって、少し災難だろうが。
この後、泣きじゃくる風祝の子を元気になった二人がなだめて、改めて現状の説明をすることになった。
ちょっと遅れたけど、風祝の子も紹介してほしいしね。
「さて、まずはこの子からだね。ほれ、自己紹介しなさい」
「は、はい! 守谷神社の風祝、
東風谷早苗? うーん、どっかで聞いたことあるような……?
「そ、そう……白咲楼夢、縁結びの神だよ」
「そういえば、縁結びの神だったんだね」
「世界最強の神が縁結びの神だなんて……どうしてこうなったのかしらね?」
「お前らが縁結びの神に仕立てたんだろうが!」
忘れてないぞ、こいつらの所業は!
私が諏訪大戦の宴会の時に求婚されまくったのをネタに、人間たちに話を広げまくったのを!
あの時は成り行きで縁結びの神になったけど、よくよく調べるとこいつらのせいだとわかったのだ。
気づいた時には遅く、撤回しようにも私の名は広がり過ぎており、泣く泣く今でも縁結びの神を続けている、というわけだ。
「まあいいけど。それよりも現状はよくないみたいだね」
「ああ。楼夢も知ってる通り、この世界はもう神がいられないのよ。私たちも同じように、危うく消えかけた」
「一応その状態であと5年はもつはずだよ」
しかし、たかが5年だ。タイムリミットは刻一刻と迫ってきている。
信仰を増やすのはもう無理だし、その短い時間で対策を立てなければならない。
しかし、彼女たちにもそう都合よく思いつく案があるわけない。
ここは言うべきだろう。幻想郷の存在を。
「一応、案はあるよ。幻想郷っていう場所に神社ごと移動させる」
「幻想郷か……聞いたことがある。確か、忘れられたものたちの最後の楽園と呼ばれてるのだっけ?」
「そう。私もこの後行くつもり」
神奈子はその情報を聞いて決心したような表情を見せたが、諏訪子は少し迷いがあるようだ。
その目線は彼女の子孫、つもり早苗に向けられている。
早苗は諏訪子にとって娘のような存在なのだ。それと離れ離れになるというのは、彼女にとって酷なことだろう。
「ま、どうせあと5年もあるんだし、その時に決めればいいよ。あっちなら信仰を集めるのも容易いだろうし」
「……うん。ごめんね、私のわがままで」
「いいさ。私もこの子は気に入ってるしな」
「ふぇ? 私がどうかしましたか?」
神奈子がそう言って早苗の頭を撫でているが、その本人は今の話が理解できず、アホの子っぽいボケー、とした顔をしている。
うんうん。私の娘たちもこんな風だったらいいのに。
ちょっと目を離した隙に、美夜は修行バカ。清音、舞花は引きこもりになってしまった。
時代の流れって怖いねぇ。産霊二人があっという間にオタクになっちゃったよ。
「わかった。じゃあ私が先に行ったときに、あなたたちのことも言っておくよ」
「ああ、助かるね。諏訪子も今はそれでいいだろ」
「うん。じっくり考えてみるよ」
「そうと決まったら、さっそく出発するよ。短い言葉だけど、また会おうね」
それだけ告げると、縁側へと飛び降りて、【神理刀】を出現させた。
妖力を刃に集中させる。そしてーー
「【亜空切断】!!」
幻想郷へと続く道を、切り開いた。
「楼夢……あらためて、私たちを助けてくれてありがとう」
「私からもだ。そっちに行ったとき、困ったことがあれば言ってくれ。その体じゃ、以前のように振る舞えないだろうしな」
「いいっていいって。それじゃあ、バイバーイ!」
私は二人からの礼を聞いたあと、迷わず切り開いた空間に飛び込んだ。
中は闇が続いているが、いずれ光が差すはず。そしてそこが出口であり入り口だ。
待ってろよ幻想郷!
「どーも、テスト終わったのでしばらく投稿できます。作者です」
「終わったと言っても、国語と英語をノー勉で挑んだお前に敬意を表するよ。狂夢だ」
「突然ですが私、東方憑依華買いました!」
「お、いいじゃん。この調子でwin版全部集めろよ」
「一応この小説は地霊殿までは続けるつもりなので、あと紅魔郷と地霊殿が欲しいなぁ……」
「というかどこで買ったんだ? ネットで買うと輸送料かかるし、お前はそういうの嫌がるだろうし」
「アキバです」
「他のも買ってこいよ!? お前の所持金なら楽勝だろうが!」
「私今年から受験生ですよ!? そんな時間ないわ!」
「だったらテストにノー勉で挑むんじゃねえ!!!」