東方蛇狐録~超古代に転生した俺のハードライフな冒険記~   作:日差丸

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ようこそ

混沌渦巻く戦場へ


by八雲紫


奇妙な混戦

 

 

  夜、月が出てきたころ。

  レミリア・スカーレットは玉座に座り、開戦の時を待っていた。

 

  彼女は先を見越したかのように、門の内側の手前に戦力を集中させている。いや、彼女は先を見越していた。

 

  彼女の能力は【運命を操る程度の能力】。とはいえ、そこまでたいそうなことはできない。

  彼女の能力で未来を変えるには、可能性が必要だ。例えば、今からコインを落としたとする。このとき、コイン自体が落ちなかったという運命に変えることはできない。代わりに、落ちたコインの裏表なら変えることができる。……もっとも、運命の変更は規模によって消費が違うので、連発はできないが。

 

  さらに、この能力は未来を予知することもできる。今回、レミリアが見えたのは二つの未来。

  一つは、敵側の戦力が門前に集中している光景。もう一つは、映像に砂嵐のようなものが吹いていて、よく見えなかった。

 

  今回は不確定要素が多い。山の頂上に現れたという光の柱も、彼女の能力では感知されなかった。

  しかし、これはよくあることだと切り捨てた。それが、この戦争の勝敗に関わるというのも知らずに。

 

  そのとき、

 

  ドゴオォォォォン!!!

  という大きな爆発と振動が複数、館内に響いてきた。

 

「咲夜! 何が起きたの!?」

「……敵が四方向から同時攻撃を行ってきました。結界は門前以外全て破られてしまい、北、東、西から侵入してきています」

 

  レミリアの声に、どこからともなく咲夜が現れ、状況を説明していく。

  レミリアは訪れた報告を冷静に分析すると、咲夜に確認する。

 

「……そう。館内にはいないのよね?」

「ええ、私が確認した限りでは」

「ならいいわ。予定通りにしてちょうだい」

「はい、お嬢様もお気をつけて」

 

  そう言って、再び音もなく消え去る咲夜。

  それを尻目に、レミリアは外の光景を覗き、つぶやいた。

 

「これじゃ、勝利は無理かしらね。……それにしても、これはやりすぎじゃないかしら?」

 

  彼女が見たもの。

  それは、夜なのに降り注ぐ日光と雨だった。

 

 

 

  ♦︎

 

 

  時刻は開戦直前まで遡る。

  白咲三姉妹の長女、美夜は大量の天狗たちとともに、門が見える位置で身を隠していた。

 

「もしもし、紫さん? ……そう、じゃあ始めます」

 

  耳に当てていたスマホを外し、この天狗部隊の隊長にいよいよ戦争が始まることを知らせる。

 

  すると、別々の場所から、大きな妖力が動き出したのが感じられた。

 

  広がり始める圧倒的な妖力。そして夜のはずなのに、辺りに日の光が満ち始めた。

  これは紫の能力だろう。昼と夜の境界を弄ったのだ。

 

  それと同時に、美夜は【気候を操る程度の能力】を発動させる。

  すると、晴天の空から雨が降り注いだ。

 

「【狐の嫁入り】……つまり天気雨。吸血鬼にとって、これほどの地獄は存在しないわ」

 

  日光と流水。二つの弱点を突かれ、敵は弱っているはず。

 

「今が勝機だ! 全員突撃!」

「はぁぁぁあ!【森羅万象斬】!!」

 

  隊長のかけ声と、美夜の剣技が発動するのは同時だった。

  大きく刀を振るい、巨大な黄色の斬撃が、門めがけて放たれた。そしてそのまま結界ごと吹き飛ばすと思われたがーーーー

 

「【星脈地転弾】! やぁぁぁぁぁああ!!」

 

  門の方から飛んできた、巨大な虹色の気弾が黄色の斬撃と衝突する。

  気弾は一瞬均衡したが、すぐに破れ消え去った。だが、そのおかげで斬撃の威力は弱まり、結界を壊すことはできなかった。

 

「誰であろうと、この中には入れませんよ!」

 

  現れたのは、淡い緑色の華人服を纏った、赤髪の妖怪。

  それを筆頭に、彼女の後ろからぞろぞろと敵の妖怪たちが集まってきた。

  しかし、この天気雨の中、吸血鬼だけは苦しがり、弱々しい動きを見せている。

 

「あなたがここの指揮官ですね? 私は白咲美夜、ここを制圧する者です」

「これはこれはご丁寧に。では、私は紅美鈴(ホンメイリン)。この紅魔館の門番です」

 

  名乗ったあと、愛刀【黒裂】を抜刀し、楼夢そっくりに構える。

  それを見て、美鈴も中国拳法の構えをとった。

 

(この妖怪……只者じゃない。妖力自体は低いけど、それを補ってあまりある体術がある)

 

「行くぞ、今こそ敵を討ち取れェェェェェ!!」

「皆殺しだ! 皆殺しにしてくれる!」

 

  あちこちで戦いが始まった。

  天狗の方が数は少ないが、それにはとある理由がある。

 

「……その前に、あなたは中には入れないと言いましたね? ……残念ながら、それは叶いそうもありません」

 

  その言葉と同時に、別々の方向から複数の轟音が鳴り響いた。

 

「……なっ! 結界が、強引に破られた!?」

「隙ありですよ!」

 

  動揺して一瞬動きが止まった美鈴めがけてダッシュ。

  そして、雷を纏った斬撃を繰り出した。

 

「【雷光一閃】!!」

「……っ、くぅっ!」

 

  美鈴は本能で刀の腹を殴り、斬撃を逸らす。しかし、電気を纏った刀に無手で触れてしまったため、体に電流が走った。

 

  「くっ、【裂虹真拳】!」

 

  しびれた右拳の代わりに左拳に虹色の気を纏わせ、怒濤(どとう)の連続突きを放った。

  美夜はそれを冷静に見切ると、大きくバックステップして間合いをとり、避けた。

 

  しかし、それは美鈴に時間を与えてしまうことになる。

  美鈴は大きく息を吸い込むと、虹色の気を右腕に集中させる。そして数秒後には、しびれていたはずの腕は戦闘に支障はないほどまでに回復していた。

 

「それが【気】ってやつですか……面倒ね」

「さて、まだまだ勝負はここからですよ」

 

  美鈴は再び構えをとると、左手を前に向け、美夜を招いてきた。

  それが合図となり、門前の戦闘は始まる。

 

 

 

  ♦︎

 

 

「……そろそろ始まる。準備しなくちゃ」

「さあ、ドカーンと行こうよ!」

 

  紅魔館の北、つまり門がある方向から真後ろの壁の前に、清音、舞花と天狗軍団はいた。

  それだけではない。東西にはそれぞれルーミアと幽香が、こちらと同じ規模の天狗軍団と待機しているはずだ。

 

  紫の【策士策に溺れる作戦】。それは、単純に四方向から同時に強力な攻撃を放って、全方位から攻め入ろうというものだった。

  もちろん、殲滅しやすいように空を天気雨にしたりはする。だが、作戦自体はなんのひねりもない、子供が考えそうなものだ。

 

  しかし、その効果は抜群だ。

  現にレミリアは策にはまって門前に戦力を集中させているので、別方向の警備はこの戦力だとほぼないに等しい。

 

  舞花の両手には、巨大な細長く、丸い筒……つまり、ロケットランチャーが握られていた。

  実はこれ、彼女が狂夢から授かった、変幻自在に形を変えるブレスレット【銀鐘】がランチャーに変化したものだ。

  本人曰く、ロマンがあるから使うらしい。

 

「……! 来た……」

 

  トゥルルル、という開戦の合図を伝えるスマホの音が響いた。

  それを聞いた瞬間、舞花はロケットランチャーを壁と結界に向けて、そのままーー

 

「【メタルブリザード】!!」

 

  ランチャーの中で溜められた妖力を、解き放った。

  凄まじい音を立てながら、ランチャーから銀色の吹雪が飛び出す。それは飛べば飛ぶほど大きく、激しさを増し、壁へと衝突し、結界を破壊した。

 

  と同時に、様々なところでも轟音が鳴り響く。

  どうやら、他の人たちも終わったらしい。

 

「……それじゃ、包囲戦はてきとうにやっといて」

「私たちは館の方に行くから、雑魚は任せたよー」

 

  清音と舞花はそう天狗の隊長に告げると、風のような速度で走り去り、結界の中へと侵入した。

 

  結界を超えた先に、全てが赤で包まれた館を発見する。

  そのまま館に向かってまっすぐ進んでいくと、そこまで大きくない扉を見つけた。まあ、これほど大きな館だ。裏口の一つや二つあってもおかしくない。

 

  もちろん鍵がかかっていたが、舞花の前にはそんなもの意味がない。

  水銀を鍵穴に流し、操ることで開けることに成功する。

 

  中に入ってしばらく歩くが、長い廊下ばかりが続く。

  内装も趣味が悪く、壁までもが外同様、赤に染まっていた。

 

「うぅ、目が痛くなりそう」

「……おかしい。外観と中の広さが釣り合わない。誰か空間系の能力者でもいるの……?」

 

  そう思考の中にはまっていると、ようやく廊下の景色に変化が訪れた。

  二人が出た先は、巨大なエントランスだった。空間全てが圧倒的に広く、空を飛び回っても支障がないほどである。

  エントランスには、大きな扉と、二階に続く階段があった。扉は外へと繋がっているのだろう。二階は、まだ未探索だ。

 

「……ラスボスの居場所は一番上か一番下に決まってる」

「ずいぶん適当理論だけど、賛成かなー。妙に説得力あるし」

 

  そうして、二人は上に向かうことを決めた。

 

  しかし、舞花が階段に足をつけたそのとき。

  彼女の眼前に、いつの間にか一本のナイフが迫ってきていた。

 

「っ、なめないで!」

 

  舞花はそう叫ぶと、術式を発動。六花の氷華【氷結界】を顔の前に張り、迫り来る刃を防いだ。

 

  お返しとばかりに、舞花は腕を振るい、気配がした方に氷柱を数本飛ばした。しかし、次の瞬間には気配は別の方向に移動しており、何もない壁にそれらが突き刺さるだけだった。

 

「消えた……瞬間移動(テレポート)系の能力?」

「ようこそお越しくださいました、お客様。しかし、お嬢様はあなた方には用はないとのことです。よって、速やかにお引き取りお願いします」

「……残念ながら、そういうわけにはいかない。どかなきゃ消し飛ばすだけ」

 

  現れたのは、幼いメイド服の少女だった。

  しかし、その瞳は冷たく、手に持っているナイフと似て、暗いギラギラした光を放っている。

 

  舞花は【銀鐘】を変化させ、ランチャーを作り出す。

  そしてそこから、巨大な妖力弾を彼女に向けて放った。

 

  それは爆発で壁を削り取るが、当たらないものに意味はない。

  少女はいつの間にか消えており、攻撃は外れるだけだった。

 

「舞花ー、私は別のところに行くから、その子は頼んだよー」

「……ふざけるなと言いたいとこだけど、そっちの方がいいかもしれない。ただし、何か面白いもの持ってきて」

「りょーかい! 窃盗強盗は得意だよー!」

「……天国のお父さんが泣いてるよ……」

 

  実際は死んでないのだが。むしろこの時期、彼は火神とともにコミケに行ってたりするのだが、その話はどうでもいいだろう。

 

「行かせないわ!」

「邪魔だよぉ〜! 【烈風地獄車】!!」

 

  清音が魔力を体内で放出すると、炎が彼女を包んだ。そしてそのまま炎の弾丸と化し、立ちふさがる咲夜を凄まじい速度と熱量で退けた。

  その熱さは肌で触れていないのに、咲夜がひるむほどだ。

 

  別の通路へと消えていく清音を見送ったあと、舞花は再びランチャーを構える。咲夜もそのころにはすでに復帰しており、銀製のナイフを両手の指に複数挟んで対峙していた。

 

「……せめて、あなただけでも倒してみせる」

「……それは無理。なぜなら、私の方が強いから」

 

  どちらも髪の色は同じ。放つ雰囲気も冷たい。

  二つの銀が、互いに交差しあう……。

 

 

 

  ♦︎

 

 

  エントランスを抜けたあと、ひたすら加速と加熱を続けながら進んでいくと、地下への階段を見つけた。

  石造りの階段を溶かしながら、清音は下っていく。石が溶けたことからわかるように、彼女が走ってきた通路は炎の台風が通ったあとのように悲惨な状態になっていた。

 

  しかし、そんなことは彼女には関係ない。

  ひたすら下ると、木製の大扉へと行き当たった。

 

「粉砕玉砕大喝さーい!!! いえーーい!!」

 

  当然のように、扉に突進してそれを吹き飛ばした。

  そこで、清音は身に纏う炎を消滅させる。その理由は、目の前に広がる景色にあった。

 

「わぁ、図書館だ! 面白そー!」

「残念ながら、貴方は貸し借り禁止よ。そして、ここに入るのもね」

 

  扉の先には、これまた巨大な図書館があった。

  清音はそう歓喜の声をあげて本を取ろうとするが、それを奥から聞こえてきた声が静止させる。

  そちらに視線を向けると、紫髪の、ネグリジェのようなものとナイトキャップを着用している少女が、こちらに向かって歩いてきていた。

 

「レミィから、侵入者は排除するよう言われてるのよね。もっとも、こんなうるさいのを消すのは私も同感だけど」

「清音だよー。よろ!」

「……聞いてないわよ。まあ、ともかく」

 

  紫髪の少女は手に持っていた魔導書を開く。同時に彼女の体から魔力が溢れ、宙へと浮かび上がった。

 

「面白そうな実験体を見つけたわ。それだけには感謝ね」

 

  その言葉を発すると同時に、複数の魔法陣が宙に刻まれた。

  そして、魔法使いとの戦いが始まる……。

 

 

 

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