東方蛇狐録~超古代に転生した俺のハードライフな冒険記~   作:キメラテックパチスロ屋

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一対一こそ剣士の信条

貴方もそう、思うでしょ?

by白咲美夜


門前の混戦

 

 

 

 

「【マスタースパーク】」

 

  超巨大な妖力レーザーが、波のように群がる妖怪たちを一斉になぎ払った。

 

「【ダークマター】」

 

  再び、巨大レーザーが放たれた。色は漆黒。これに触れたものは、次々と体を灰にして消滅していった。

 

  突然の攻撃でざわつく彼らの前に、彼女たちは降り立つ。

 

「ふふ、いい景色ね。飛び散った血が赤い華を連想させてくれるわ」

「私のは血すらも残んないけどね。とはいえ、絶望に染まった顔は、人間でも妖怪でも綺麗なのは認めるけど」

 

  現れたのは、緑髪のボブカットの女性と、長い黄金の髪の少女だった。その正体は言うまでもなく風見幽香とルーミア。

  二人は狂犬のような笑みを浮かべながら、凄まじい殺気を辺りにぶちまけている。

 

「これはこれは……凄まじい景色じゃのう。まるで地獄絵図のようだ」

 

  そんな彼女らの後ろに天魔が降り立った。よく見ると、その後ろには北、東、西に分かれたはずの天狗たちが習合している。

 

  彼らがそれぞれの方向にいた見張りはすでに消してある。あとは、相手人数の七割以上が配置されている南、つまり門を攻略すれば、彼らの役割は終了だ。

 

  紅美鈴率いる軍は、事実上美夜がいる南攻略班と、それ以外の班全てによって板挾みにされていた。

 

「まだまだよ。これからもっと地獄絵図になるんだから」

「というか、もう行っていいかしら? 久しぶりに戻ってきた力なんだから、早く暴れたいのだけれど」

「私が止めても行くだろうに……まあいい。……これから敵軍殲滅作戦を開始する! 全軍突撃!!」

 

  ウオォォォォオオオオオオオオオ!!!

 

  天魔のその指示によって、天狗たちはそれぞれが力の限りを込めて叫ぶと、士気が落ちつつある敵軍へと突っ込んでいった。

  数は、いつの間にか逆転していた。人数合わせの木っ端妖怪は一瞬で斬り伏せ、吸血鬼には複数でかかるなど、組織的に動いていることも、この混戦では活躍していた。

 

  とはいえ、敵も黙ってはいない。

  先ほどの様子から、金色髪の少女が危険だと察知した吸血鬼たちが複数でかかってくる。

  だが、無意味だ。

 

  一見無防備に見えるルーミアから、どこからともなく大量の闇が発生する。それらは不気味に彼女の周りを漂うと、確かな意思を持って、近くの吸血鬼たちを丸呑みにした。

 

「まったく……雑魚が多すぎて前が見えないわ。もう少し見晴らし良くしようかしら? ……【ジャックミスト】」

 

  そう唱えると、広範囲に渡って黒い霧が敵味方問わず包み込んだ。

  そして、パチンと指を鳴らす。

  それが起爆スイッチとなり、敵の妖怪たちは無数の刃と化した霧に包まれ、切り刻まれた。

 

  ふと横を見れば、幽香が敵を素手で引きちぎっているのが見える。天魔の方も、上空から竜巻を起こして敵を吹き飛ばしていた。

 

「ここもすぐに終わりそうね。他はどうなったかしら?」

 

  まだ戦火が飛び散る戦場を見やり、ルーミアはそう呟いた。

 

 

 ♦︎

 

 

 門前で、今異変最大の乱闘が始まっていた。

  見栄えなど関係ない。ただ、目の前に敵がいたら殺すのみ。

 

  しかし、そんな中で美しさを忘れていないものもある。

  黒髪の美剣士が目にも留まらぬ速さで刀を振るうと、赤髪の武闘家もそれに反応して拳を繰り出す。

  互いの攻撃がぶつかるたびに火花が舞い、それが戦場に散っていく。

 

  美夜と美鈴の実力は、互いに均衡していた。

 

「はぁっ! せやぁぁっ!!」

「はいやぁぁ!!」

 

  気合を込めて、美夜が剣術【楼華閃】を発動。

【裂空閃】。激しい風を纏った斬撃を、美鈴は気で鎧のようにコーティングした拳で叩き落とした。

 

「ハタァァ!!」

 

  そしてカウンターとばかりに、美夜の胴体めがけて蹴り上げを行ってきた。

  それに反応して、美夜は黒刀を素早く逆さにして両手で握り、蹴りを受け止めた。

 

  一瞬の硬直状態。しかし両方同時に振り払うと、再び戦闘の構えをとる。

 

(技術では互角か……妖術を使えれば楽なんだけど、あいにく私の腕は平凡だし……()()()使()()())

 

  結局、今まで通り接近戦で行くしかないと決めると、美夜は数少ない得意な術式を唱えた。

 

「【サンダーフォース】……そして【スパーキング】」

 

  バチバジッ!! という鋭い音と眩い光が漏れる。

  美鈴の目に映ったのは、青と黄色の雷を纏った、美夜の姿だった。

 

  美夜が唯一得意なもの。それは身体能力強化系の術式だった。

  とくに、彼女は電気と相性が良い。二つの別々の術をかけた美夜の体は強い雷を帯びており、触れるだけでタダでは済まないのは目にわかる。

 

「……さあ、始めましょうか」

「……ええ。この戦いだけは、負けられない!」

 

  気づけば、美鈴たちは内から侵入してきた軍勢に板挾みにされていた。

  しかし、美鈴はそんなのには目も向けなかった。味方の助けを求める声にも応じない。

  結局、彼女は武闘家なのだ。強い者と戦うとき、それ以外を意識したら殺される。妖怪として長年生きてきた美鈴はそれをよく知っており、それゆえに美夜以外の存在を意図的にシャットダウンしている。

  なにより、

 

(これほどの強者から目をそらすなど……無礼に値する!)

 

 そしてその思いに応えるように、美夜も美鈴だけを見ていた。

 そして、土を蹴る音が二つ、同時に響いた。

 

  最初に攻撃に出たのは美夜。雷のように素早く踏み込み、稲妻を錯覚させるような斬撃を繰り出していく。

  美鈴は先ほどのように気で体を硬化させ、武道のテクニックでそれら全てを防いでいく。

 

  だが、状況は美鈴が不利になっていった。

  理由は、美夜の圧倒的速度にある。

  先ほどは一撃一撃交代しながら出していたものの、斬撃速度が上がっていて、美鈴が一撃を繰り出すたび、美夜は二、三回もの斬撃を繰り出せるようになっていたのだ。

  当然、美鈴は防御に集中していき、その分攻撃にまで手が回らなくなっていった。

 

(耐えろ……チャンスは必ず来る。そこを狙う……!)

 

  美夜の剣速はさらに加速していく。もう目の前で対峙している美鈴にも見えなくなってきているほどだ。

  しかし、それでもなんとか防いでいる。長年の勘というもので、未だにクリーンヒットはない。

 

「はぁぁぁあああ!!」

 

  しかしとうとう、一つの斬撃が美鈴のガードをすり抜けた。

  体を切り裂かれ、半歩美鈴は後退してしまう。それを見た美夜は、すぐさま刀に妖力を込める。

 

  美鈴はそのとき、見た。今まで動き続けていた美夜の足が、力を溜めるため一瞬止まっていることに。

 

「やあああ!!」

 

  地面へとしゃがみ、脚を回転させて美夜へと引っ掛ける。

  【水面蹴り】。意表を突かれた美夜は驚きながら、バランスを崩した。

 

「【大鵬拳(たいほうけん)】ッ!!」

「んぐっ……!」

 

  全力を込めて放った、虹色の気の拳が、とうとう美夜の腹を捉えた。

  美夜は大きく息を吐き出したあと、顔を上げると、そこには次の技へと移ろうとしている美鈴の姿があった。

 

「【彩光乱舞】!!!」

 

  美鈴はそう言うと、美夜を巻き込んで高速で回転し始めた。すると、彼女を中心に虹色の竜巻が発生し、打撃の嵐が、美夜を襲った。

 

「ガァァァァァァアア!!!」

 

  振り回された腕が、美夜の体を何度も強打し、彼女の骨を砕いていく。そのあまりの痛覚に、思わず叫んでしまうほどだ。

 

  しかし、美夜は叫びながらも、あろうことか前へと前進していった。。自ら竜巻の奥へと侵入していき、手を必死に伸ばす。

 

  そして、振り回される美鈴の腕を、妖狐としての爪と握力でガッチリと掴んだ。

 

「なっ!?」

 

  独楽(こま)というのは、側面が何かに触れていると上手く回らず、失速してついには止まってしまう。今の美鈴も同じように、腕を掴まれたことで回転できなくなり、美夜の前で止まるという最大の隙を晒してしまった。

 

  当然、美夜はそんなものを見逃さない。

  彼女の手には、力が溜められ激しい雷光を輝かせている一つの長刃が握られている。

 

「しまっ! ……がァッ!?」

 

  そしてそれを全体重を込めて前へ加速し、美鈴を通り抜けながら一閃した。

 

  音も痛みも。美夜の斬撃に置いていかれて行った。

  美鈴が痛みを自覚するとともに、巨大な雷の斬撃が傷口に発生し、一歩遅れて、彼女の体を切り裂いた。

 

「……【疾風迅雷】」

 

  美鈴の体は数回痙攣したあと、糸が切れた人形のように地面へと倒れた。だが、息はしてるので問題はないそうだ。

 

  美夜は敗者へ一瞬目線を送ると、すぐに戦場を見やった。

  そこにはボロボロに破壊された門と、大量の死体。そして数々のクレーター。

  幽香とルーミア、狂者が暴れまわった結果である。

 

  とりあえず、自分の役目を果たさなければ。

  そう思い、今さらながら辛うじて原型を残していた門を斬撃で跡形もなく消し飛ばした。これで最低限のことはこなしたので、後での文句は少なめだろう。

 

「清音と舞花も戦闘中か……助太刀は必要ないって言われそうだし、大人しくここを制圧しとこうかしら」

 

  それに、危険人物が二人いるしね、とは言わなかった。いや、彼女らの地獄耳が怖くて言えなかったのだ。

 

  他も無事に終わるだろうか。

  負傷した部位などを布で覆いながら、美夜は一人、そう思った。

 

 

 






「投稿再開したばっかですいませんが、またテスト期間がやってまいりました! というわけで二週間ほど休ませてもらいます。作者です」

「ちなみに書き終えたのは今回のしか残ってないから、二週間以上最大で三週間ほど投稿できなくなるかもな。狂夢だ」


「ほんと、やってらんないですよ!」

「どうしたのかね、三教科50点代を叩き出した作者君?」

「それを言わないでください! ……PS4ないんでモンハンできないし、テストはまた来るしで最悪ですよ」

「でも、今回のが終われば新学期までテストないんだろ?」

「はい(確証があるとは言っていない)」

「んじゃ、そのときに書けよ。せいぜい読者様からこの小説が忘れられてないようにな」

「そうならないことを切に願います……」

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