東方蛇狐録~超古代に転生した俺のハードライフな冒険記~   作:キメラテックパチスロ屋

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姉妹とは千切れない縁そのもの

だからこそ笑いあい、助け合った方が楽しいのだ


by白咲美夜


吸血鬼異変の終結

 

  玉座の間にて……。

 

  この館の主人、レミリア・スカーレットは己の能力で自身の部下たちの結末を見届けていた

 

「……死亡者ゼロ、か……。手加減されてたのは感謝するけど、ちょっと悔しいわね」

 

  もちろん、その中に死んでいった雑魚妖怪たちは数えられていない。

  彼女が仲間と思うのは紅美鈴、十六夜咲夜、パチュリー・ノーレッジと今回非戦闘要員として隠れていた使い魔の小悪魔、そして地下深くに封じられている最愛の妹のみである。

 

  彼女ら全てが生きている。これ以上喜ばしいことはない。

  だが、この紅魔館の主人として、部下のために負けてやるわけにはいかない。

 

「……というわけで、ここにいるのはわかってるわ。さっさと出たらどう?」

「あら、ずいぶんと勘がいいのね。しょうがないわ……ほっと」

 

  グニュンと空間が歪む音とともに、二人の人物がレミリアの前に姿を現した。

 

  八雲紫。幻想郷の賢者であり、管理人でもある人物。後ろには式神である九尾の狐の八雲藍を従えている。

 

「他は勝負がついたみたいね。今降伏したら、痛い目見なくて済むわよ?」

「……やれやれ、私の部下が全滅するとはね。そこの九尾から察するに、彼女らはお前の式か」

「まさか。白咲家の三姉妹が私の式だなんて、恐れ多くて口にもできないわよ」

 

  おどけりように両手を広げ、レミリアの質問に紫は答えた。その妖艶な姿と相まって、彼女の妖しさを感じさせられる。

 

  ……強い。

  レミリアは目の前の敵の妖力を探り、そう評価をつけた。

  彼女の生の中で、明らかに最強の相手だ。しかも従者に大妖怪上位もいる。

  しかし、やらねばならない。部下が負けたのを黙っているなど、真の主人ではない。それに、この異変を引き起こした張本人としての責任がある。

 

  紫は全てを見透かしたような、いや見透かしているのだろう。少なくとも、レミリアにはそう感じられた。

  冷たい目線を向けた後、妖しげに微笑むと臨戦態勢に入っている藍を手で制した。そして、

 

「藍。今回あなたは下がってなさい。これは命令よ」

「……はい、紫様」

 

  沈黙したのはほんの一瞬で、己の主人を一瞬見た後、藍は戦闘に支障がない場所まで下がっていった。

  レミリアは思考する。彼女が従者を下がらせたのは、一対一で自分を倒して精神的にも敗北を認めさせるためだろう。妖怪というのは精神に依存する。心が弱れば力は出ないし、恐怖などの感情を種として得られなければ最悪消滅する。

  なら、勝てばいいだけだ。ここで私が勝利し、幻想郷を支配してやる。

 

「ほう……私は二人でも構わないのだけれど?」

「あなた程度倒すのに二人もいらないわ。藍には後で私の仕事全て丸投げするつもりだし、今疲れてもらっちゃ困るのよ」

「えっ、そんなこと聞いてませんよ紫様! 第一白咲三姉妹への報酬は誰が用意するんですか!?」

「……何か聞こえたようだけど、始めましょうか」

「お前って最低ね……」

 

  言いながら、爪を構えいつでも飛び出せるように態勢をとる。一方紫は扇で口元を隠して微笑むだけだ。

 

「舐めるな、行くわよ!」

「それはいいのだけれど、わざわざ声に出すのは減点よ」

 

  レミリアが気合を入れて飛び出そうとした自慢の翼を広げた瞬間、彼女の目の前の空間にスキマが開き、中から大量の弾幕が出現した。

  結果、出鼻をくじかれたことで中途半端に飛び出してしまい、レミリアは弾幕の壁に突っ込むような形で被弾してしまった。

 

「ぐっ、痛っ……こんなもの!」

 

  大妖怪最上位の弾幕は一つ一つが一般的に見れば凄まじい威力だ。肉がえぐれ、血が体を滴る。だが、大妖怪最上位なのはレミリアも同じこと。吸血鬼の再生能力でそんな重傷に見えた怪我はすでに塞がっており、レミリアはすぐに自分の弾幕で迫り来る弾幕を打ち消していった。

 

  弾幕の壁は消え失せた。そして、奥には無防備な八雲紫の姿が。

  これ以上の絶好の的はない。獲物めがけて、レミリアは突進し、その鋭い爪を振り下ろした。

  確かにそのままだったら、レミリアの爪が紫を串刺しにしていたであろう。だが、現実はそうはならない。

  爪が突き刺さる瞬間。紫は突如スキマに吸い込まれるように消えたのだ。標的を失った攻撃は空振り、空気を切り裂いた。

 

  だが、空振りは空振りだ。態勢が多少崩れ、体を引き戻した時にはレミリアの横にスキマが開いていた。そこから、

 

「【飛行中ネスト】」

 

  飛んできたのは、光の虫を思わせるような弾幕。ただし先ほどとは違い、それらが超高速でレミリアの身体中を貫いた。

 

「かはっ……【スカーレットシュート】ッ!!」

 

  だがレミリアも無抵抗なままではない。全てが赤で彩られた、禍々しいの嵐がスキマめがけて放たれた。

  これには紫もたまらず回避。スキマの中で別のスキマを開くと、レミリアの弾幕が届く前に脱出した。

 

  爆音がスキマの中で木霊する。しかし響いている途中でスキマを閉じたため、最後まで音が聞こえることはなかった。

  両者は睨み合いながら戦略を練っていた。状況は今のところすぐに治るとはいえ、レミリアが不利だろう。

 

  吸血鬼は天狗のような速さと鬼に匹敵する力を持つ妖怪。だが、自慢のスピードとパワーも紫のスキマ移動の前には空回るのみ。

  そして、空振りしたところにスキマからのカウンター弾幕。紫の必勝パターンの一つである。

 

(いっそこの部屋全部に弾幕をバラまくか? いや、忘れていたけど外は今天気雨。天井に穴でも空いたら一気に不利になるわ。相手もそれを狙ってるんでしょうね)

 

  考えるが、良い案が纏まらない。それもそのはず、レミリアは妖怪として五百年しか生きておらず、戦闘経験も館にいたためあまりなかった。そんな彼女に紫のトリッキーな能力を破る策を作れというのが無理な話だ。よって、

 

「攻撃あるのみ! 【スピア・ザ・グングニル】!」

 

  単純に攻撃し続けるということしか思いつかなかった。

  だが、一応頭が切れるのだろう。彼女が選択した技はあながち間違いでもなかったようだ。

 

  レミリアの手に真紅の巨大な槍が生成される。それを紫めがけて、思いっきり投擲した。

  紫はひらりとそれを回避する。だが槍は、紫が避けた後に進路方向を変えて、追尾するように再び紫に迫ってきたのだ。

 

  意表を突かれた紫はいつも通りにスキマの中へ退避する。だが、再び外に出ようとスキマをつなげ、外に出た瞬間、神槍が探していた獲物を見つけた獣のごとく、紫に飛びついていった。

 

「ちっ……しつこいのよ!」

 

  叫ぶと同時に手のひらを向け、スキマを開く。今度は紫ではなく、神槍を捕まえるためにだ。

  進路方向の先にスキマを作られた神槍はあっけなくスキマに吸い込まれ、お返しにとレミリアの元へそのままの勢いで返された。

 

  それをレミリアは、素手で鷲掴みするようにキャッチ。手から煙が上がっていたが、吸血鬼の再生能力ですぐに治るだろう。

 

「ほう……これは効果があるようね」

「面倒くさいもの持ってるわねぇ。しょうがない、あれを使おうかしら」

 

  紫はスキマに手を突っ込み、ごそごそと中を漁りだす。

  しかし、出てくるのは外の世界の、レミリアにとって意味不明なものばかりで、目当てのものは中々出てこなかった。

 

(……掃除しろよ! というか今戦闘中よ!?)

 

  もちろん、レミリアだって紫がものを探しているうちに攻撃しようと思った。だが、先ほどから紫から殺気が送られてきているのだ。そのせいで牽制され、攻撃できずにいるというわけだ。

 

「あった。これこれ」

 

  スキマから取り出されたのは、普段彼女が愛用する日傘だった。だが、次に紫が力を込めた瞬間、それは光り輝き、日本刀へと姿を変えた。

 

  実はこれ、楼夢が以前くれた日傘型仕込み刀を舞花が改良したものなのだ。基本性能は非力な紫でも振りまわせるほど軽いと、何も変わっていないが、日傘モードと刀モードに切り替えられるようになっている。舞花曰く、やはり仕込み刀より日本刀、ということらしい。

  軽く数回振ってみるが、感覚も全く同じだ。これを一日で改良したというところが、舞花の優れている点だろう。

 

  紫は刀を片手で構えると、その刃先をレミリアに向けた。

 

「これがあれば、接近戦も対応できるわ」

「それはどうかしら? あなた程度の剣術じゃ、私に届かないわよ!」

「いいわよ……別に剣だけでやるつもりはないし」

「言ってなさい!」

 

  気合いを込めて、レミリアは高く飛翔。そのまま滑空しながら紫へと急接近していき、手に持つ神槍で突きを放った。

  紫は刀でそらしながら、手に持つ力を込める。レミリアの突きが予想以上に速かったため、完璧に対応できなかったのだ。

  レミリアの突きは終わらない。槍を引き戻すと、再び紅い光の線を描きながら、突きが繰り出される。それが十回ほど。そしてそのうちの一撃が、紫の体をかすめた。

 

「ッ……やぁっ!」

 

  さすがに十回ほど同じ攻撃が繰り出されれば、誰でもタイミングは覚えることはできる。

  紫は槍がかすったことに表情を一瞬歪めるが、次には再び突きを受け流し、接触している槍を弾いた。

  ガラ空きのレミリアに向けて、紫は一閃。しかしリーチが足りず、刃が届く前にレミリアに回避されてしまった。

  だが、紫の攻撃は終わらない。レミリアが下がったのを好機と見て、彼女に急接近して再び一閃。

  同時にレミリアも、迎撃のためになぎ払いを繰り出した。

 

  しかし、それが紫の刃と接触することはなかった。

 

  ザシュ、という肉を切り裂く音が聞こえる。

  同時にレミリアは自分の左腹に噴き出すような熱を感じた。

 

「……え?」

 

  ようやく自分が切られたことにレミリアは気づいたようだ。しかし彼女の目には、間髪入れずに再び刀を振るう紫の姿が。

 

(傷は一瞬で治らない。ここは防御でーー)

 

  槍を縦に構え、迫り来る刃を防ごうとする。

  その時、レミリアは見た。紫の刀身が、槍とぶつかる直前に極小のスキマに呑み込まれるのを。

  では、消えた刃はどこに行ったのか。答えは明白だ。

 

「しまっーーがッ!!」

 

  何もない空間から突如出現した刀身が、再びレミリアの体の左側を切り裂いた。

  噴き出す血と痛みを感じて、意味もないのに傷口を手で抑えてしまう。いくら吸血鬼でも、同じ箇所を二度も切られれば治療に数分かかる。そしてその数分は、戦場にとって大きな時間だ。

 

「くっ……グングニルゥッ!!」

「それはもう見切ったわ」

 

  渾身の力を込めて紅い神槍を投擲する。レミリアの魔力によって、神槍は巨大化しており、なおかつ高速回転しながら迫ってくる様は、まるで紅色の巨大ドリルを思わせた。

 

  だが、無意味だ。

  紫は目の前にスキマを二つ展開する。そしてそのうちの一つにグングニルが吸い込まれ、もう一つの方から吐き出された。

 

  両手を構えて、レミリアは自身の全力の一撃を、自分自身の手で受け止める。手から血が噴き出て肌が削れていくが、止めなければ直撃してしまうのは目に見えていた。

 

「ああああああっっ!!!」

 

  そしてとうとう、神槍の動きが止まる。自身を襲った相棒を血が滴る両手で握りしめると、レミリアはふと巨大な妖力が集中しているのに気がついた。

 

  そこには、両手で刀を空に掲げる紫の姿があった。

  刀には紫の妖力が紫電を撒き散らしながら集中しており、よく見ればその近くの空間が歪んでしまうほどだった。

 

  圧倒的な力。

  レミリアはこの時点で勝敗を悟っていた。もともと負けても問題はない戦いだ。だが、部下がやられたのを見て、黙ってる主人などその者の主である資格がない。

 

  両手で槍を力強く握る。

  正直言って怖い。できれば逃げたいくらいだ。だが、ここで逃げればーー

 

「ーー末代までの恥よ!」

「これで終わらせるわ。ーー力を貸して、楼夢」

 

  レミリアは人生最高の速度で突撃していった。

  同時に紫も接近し、集中した紫電の斬撃を解き放った。

 

「ーー超次元【亜空切断】ッ!!」

 

  それは、空間すら切り裂く破壊神の剣技。

  二人の体がすれ違う。そしてレミリアの体に紫電が走ったかと思うと、神槍ごとレミリアの上半身と下半身を切断した。

 

「アアアァァァァアアアアアアッ!!!」

 

  だがレミリアの闘志はまだ燃え尽きない。半分になった神槍を血塗れの手で握ると、翼だけで空中に浮きながら上半身だけの姿で構えた。

  紫はその姿に敬意を表すると、止めの刺突を繰り出した。

  レミリアは必死に壊れた神槍を縦にし、受け止めようとする。しかし、その刀身は途中で姿を消すとーーレミリアの背中から腹を、一直線に貫いた。

 

「……私の、負けね……っ」

 

  大量の血が、飛び散った。

  紫が刃を引き抜くと同時に、レミリアが力なく落下していく。そして床に落ちると、ドクドクと血が赤い小池のように広がっていった。

  それでも、レミリアは死ぬことはない。さすがにこの規模の怪我は初めてだが、一週間もすれば元どおりになるだろう。

 

  仰向けに天井を見上げて倒れているレミリアの近くに、紫はふわりと着地する。その傍に藍の姿があることが、戦いが終わったことを表していた。

 

「さて、これで戦争は終わったわ。交渉の席に立ちなさい」

「ふふ、いいわよ……っただし、一週間後にしてくれるかしら? さすがにこの体じゃきついわ。あと、他の吸血鬼は好きにしてもいいわ。その代わり、うちのメイドと門番、そして図書館に魔女だけは助けてほしい」

「貴様、負けたくせに生意気な……っ!」

「いいわよ藍。この館にはある程度戦力を保ってもらわないと、幻想郷のパワーバランスをして安定させる一角にならないもの。その代わり、捕まえた吸血鬼は全員死刑よ」

「それでいいわ」

 

  紫が彼女らを生かしたのは、妖怪の山に戦力が集中しないためだ。ここのところ、天狗達はすっかり膨張してしまい、好き放題を繰り返している。トップの天魔の命令ですら時には無視するので、重症だ。

  しかし、今回の戦いで天狗側の戦死者は吸血鬼の力によって数多く出た。……ああ、そういえば|USC《アルティメットサディスティッククリーチャー》と常闇の金髪リア充に巻き込まれたやつもいたか。

 

(とはいえ計画通りなんだけど……)

 

  幽香やルーミアと同伴した隊には、膨張している天狗が数多く存在していた。だが、片方はただの戦闘狂。もう片方は虐殺好きな大妖怪最上位二人が揃ったら、巻き込まれるのは必然である。そもそもあいつらは身内以外にもは基本的にどうでもいいのだから。

 

「さて、藍。これから大仕事よ。ささっと三姉妹への報酬を集めなきゃ」

「はい、紫様……早めに終わるといいですね」

「不吉なこと言うんじゃないわよ!」

 

  顔を暗くしながら歩いていく二人。

  しかし後ろから聞こえた声が、その歩みを止めさせた。

 

「最後に……いいかしら?」

「何かしら? あいにくと私は暇じゃないのだけれど」

「どうして天井を壊して、雨や日光で攻撃してこなかった? 私が言うのも難だが、あれらがあればもっと楽に倒せたはずよ」

「そんなの決まってるわ。私が勝った時、言い訳の理由に使われないためよ」

 

  レミリアはその答えに目をパチパチとさせる。そして大きく息を吸い込むとーー

 

「アッハッハハハハ!!」

 

  ーー思いっきり、笑い出した。

  ひとしきり笑い終えると、レミリアは素直な感想を口にした。

  正直言って、よくその状態で大笑いが出来たなと聞いてみたい。

 

「あなたって意外に子供みたいね」

「お子様吸血鬼に言われたくはないわ。あと、お前って呼び方から変わったのはどういう心境かしら」

「別に。主犯らしく偉そうに演技してただけよ」

「そういう思考の方がよっぽど子供っぽいじゃない」

 

  呆れながら、紫はスキマを開き屋敷に帰っていく。

  こうして、吸血鬼異変は幕を閉じた。

 

 

 

  ♦︎

 

 

  一週間後。

  キーンやらコーンなどの金属同士がぶつかった音が、境内の中で木霊する。

  それを聞きながら黒髪の九尾ーー美夜は、積まれた丸太の上に座って読書をしていた。

 

「ったく、私だって役に立てるのに……」

 

  ブツブツと文句を呟きながら、文字を読み進める。

  今日は神社建築の最終調整の日だ。なのに彼女がこうして働いてない理由は、ただ単にやれることがなくなったからだ。

  そもそも美夜は戦闘と家事以外何もできない。そんな彼女が高度な神社建築を手伝うのは無理があったのだ。それでも姉として続けていたが、とうとう下の二人から『役立たず』と言われてしまい、こうして寂しさを紛らわすために一人読書をしているというわけだ。

 

  ふと、美夜は読み進めていた本が閉じて、横に首を向けた。

  それと同時に響く、空間が歪んだ音。中から出てきたのは当たり前だが紫だった。

 

  紫は一人体育座りで読書をしていた美夜を見て、彼女の状況を察してしまった。扇で口元を隠していたが、肩が少し震えていることから彼女が笑っているのは明白だった。

 

「……何のようですか、紫さん。こんな真っ昼間から」

「ぷふっ、いや交渉も終わったからここに来てみたのよ」

「そしたらボッチしてる私を見つけて、こうして笑っているってわけですか」

「ちょっと……笑いのツボを加速させないでよ……っ! ふ、ふふ……!」

 

  美夜は拗ねて、そっぽを向いてしまった。それを見て紫が軽く謝罪をすると、紫は本題に入った。

 

「ああそうそう。一応吸血鬼たちがどうなったか説明しておくわね」

「……ええ、情報は多いに越したことはないですからね」

「まず、吸血鬼ーー正確には主犯を除いて殺したわけだけどーーは人里を襲えないわ。これはこの世界に住む妖怪全てが呑んでいる条件よ」

「でも、それじゃあ吸血鬼は何を食べていくのですか?」

「定期的に私が人間を提供するわ。とは言っても無縁塚に流れ着いた人間や、外の世界の人間を使うつもりだけど」

「外の世界の神隠しの主犯はあなたですか……なんかオカルトの原因見つけちゃいましたよ」

 

  呆れた目線向けて、美夜は拉致はやりすぎないようにと忠告しておいた。そうすることで万が一対策手段が出てきたらシャレにならない。

 

「そういえば、これからどうするんですか? 元々今回の騒動は妖怪が人間を襲わなくなったことによる弱体化から起こった出来事でしょう?」

「ええ、手は打ってあるわ。博麗の巫女ってわかるかしら? それが戦闘の代わりに、あるゲームを提案したのよ」

「博麗の巫女ならわかりますよ。というかうちの親戚ですよ、それ」

「え、初耳なんだけど? というかあなたたちって結婚してたっけ?」

 

  白咲家の親戚、という言葉に紫はえらく食いついてきた。

  楼夢が結婚しているとは思えなかったが、念のためである。

 

「うちの初代巫女が元博麗の巫女だったんですよ。その後、彼女と安倍清明が結婚して生まれたのが白咲家の家系です」

「へぇー、いいこと聞いたわ。……っと、そろそろ帰るわね。仕事抜け出してきたから藍が怒ってるかもだしね」

「そうですか。では私もこれで。どうやら妹たちが私のことを探しているようなので」

 

  そう言い、タンッと丸太から降りて地面に足をつけた。

  直後、妹たちの明るい声が響く。

 

「姉さーん! 神社、完成したよー!」

「ふっ……見よ、この完全傑作を……!」

「全く、まだまだ子供なんだから……」

 

  作ったものを自慢する子供のような姿に、美夜は愚痴を呟きながら、手を振った。

 

「今行くわー! ちょっと待ってなさいよー!」

 

  駆け足で美夜は妹たちの元へ行き、その完成したものに感嘆の声を上げる。

 

  それを影から見守る紫の顔は、間違いなく微笑みを浮かべていた。

 

 





「吸血鬼異変完結! 残念ながら金髪の子は出ませんでしたが、ご了承ください! そして次回はキャラ紹介? になりそう。作者です」

「それが終わったらいよいよあいつの出番だ! 名前は……名前は……ま、いっか。狂夢だ」

「よくないよ!? ちゃんと主人公の名前名前思い出して! 楼夢です」


「さて、今回は紫さん大活躍回でしたね」

「それにしても紫の圧勝だったがな。まあ、戦闘経験とかで圧倒的に負けてるし、元々の実力に差があったからな」

「でもまあ二人とも大妖怪最上位だし、素の力に圧倒的な差はなかったと思うよ。というか紫の刀&スキマのコンボって結構強すぎない?」

「この小説ではチートってほどじゃないんですよ。楼夢さんだったら普通に回避できますし、スキマの防御に関してもスキマに収まりきらないくらい広範囲の攻撃すればいいだけですし……」

「ま、仮にレミリアがそれに気づいたとしても、広範囲攻撃は天井を崩す恐れがあったから使えなかったけどな」

「っと、ここまでにしておきますか。それではお気に入り登録&高評価、できればお願いいたします。次回もキュルッと見ていってね!」

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