東方蛇狐録~超古代に転生した俺のハードライフな冒険記~   作:日差丸

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楽園の巫女と不思議な狐

  白咲神社。神社というよりは旅館と言った方が正しいこの屋敷の大黒柱に、縛り付けられている人物がいた。

  私だ。

  いや、もうツッコミどころ満載なのはわかるけど。

  とりあえず餅つけ餅つけ。……いや落ち着け。

  そもそも私は縛られたのではない。自ら縛ったのだ。

  ……これも危ないやつのセリフジャナイデスカヤダー!

 

  すぐそばでは紫や娘たちが私を見下ろしている。事情を知らない清音と舞花の目がいささか冷たいのは気のせいだと思いたい。

 

「……お父さん、そんな趣味あったんだ」

「いや違うからね!? というか美夜はちゃんと説明してよ!」

 

  いきなり地雷発言をぶっ込んできた舞花と清音を連れて、美夜は去っていった。

  この空間に残ったのは私と紫。その紫は()()()()()()()そもそもの原因を睨みつけながら、口を開いた。

 

「——それで、その鬼の角はどうするのかしら?」

 

  そう、今の私には狐耳の上に立派なねじ曲がった鬼の角が二本生えていた。形状は萃香の角と似ている。

 

  なぜこうなったのか。それは先ほど私が飲んだ酒、というより入れ物に原因があった。

  前に剛から【鬼神瓢(きじんひょう)】という瓢箪(ひょうたん)をもらったのは覚えているだろうか。実は私、あれを使って酒を飲んだことは今含めて二回しかない。

  理由はいろいろあるけど、それはまあ置いといて。

 

  一回目、私はこれに水を入れて酒に変え、それを飲んだのだ。ちょうどこれをもらったころだね。

  そのときはなにも起こらなかった。ただ極上の酒が出来上がっただけだった。

  ただ、二回目。狂夢特性の奈落落としを瓢箪に入れて飲んでみたところ、なんと鬼の角が生えてきたのだ。

 

  それだけだったら良かった。剛の悪戯ということで頬をつねるぐらいで済ませるつもりだった。だが、この角が生えたことで私の体に変化が起きた。

 

  鬼神化。それが私の体に起きた悲劇だった。

  これにより私の身体能力は大幅に強化され、剛までではないものの最高クラスの鬼の防御力と攻撃力を得ることができた。

  これだけ聞けばメリットしかないように思える。だけど、この体は私にとって致命的な欠点を持っていた。

 

  まず、急に筋力が発達したことで制御がまるで効かない。コップに触れれば砕け散り、壁に取り掛かれば壁がぶっ飛んだ。挙げ句の果てには刀を振るえば軽すぎて手からすっぽ抜け、青空へと消えていく始末。

  さらにこの体、術式を扱うことがまるでできないのだ。近接攻撃系は一切支障はなかったのだけど、魔法を含めての遠距離攻撃系は狐火、いや鬼火以外が全滅していた。

 

  なにか触れるだけで器物破損が起こる体。

  不便すぎだろぉ!

  ということでこれ以上物を壊すのを恐れて、紫に縛り付けてもらっているというわけだ。

  たださぁ、紫。いくらなんでも鎖状鎖縛で十重に縛るのはやりすぎだと思うんだけど。光の鎖が体に食い込んで結構痛いわこれ。

 

「……さて、どうしよっか。少なくともこれが故意の可能性は確実だね」

「どうしてそう言い切れるのかしら?」

「だって以前私剛に奈落落とし渡したもん。あれと自分の瓢箪を合わせるとこうなることになると知ってて、私に渡した可能性が高い。というよりあいつの性格上私の酒を飲まないはずがない」

「……あの女、やってくれたわね」

 

  それに彼女は元々こういうやつだ。

  私を含め、伝説の大妖怪は全員我が強い。欲しいものがあれば力尽くで奪うし、ムカつくやつがいたら問答無用で殺す。

  今回彼女が欲しいのは私ということなのだろう。なら私を鬼にしたのは自分の物とアピールするためのマーキングか。

  いずれにしても、一度殴らなきゃ収まりがつかん。

 

「紫の能力で解除出来ないの?」

「体の中の酒を消せばできると思うんだけど……よくわからないものばっかり混じってお手上げだわ。誰よ、この酒作ったの!」

 

  狂夢です。

  普段は奈落落としに助けられているが、今回はその理解不能な生産方法が仇になった。

  ……あれ、詰んだ?

  いやいやいや。待て待て。

  なにかきっと解決法が……、解決法が……思いつかねえ!

 

「もうダメだぁ! 私は一生このまま鬼として暮らすんだぁ!」

「ちょ、ちょっと暴れないでよ!」

 

  鬼になったことで気性が荒くなったのを理性で押さえ込んでいたけど、今にも決壊しそうだ。

  いっそもう何もかもぶっ壊してやる!

 

  そう思ったとき、急に体が光ったかと思うと、私は体がいきなり重くなった錯覚にとらわれた。

  あまりに突然のことだったので、床に頭をぶつけてしまう。光の鎖は先ほど暴れた際に消し飛んでいた。

  そこで私は、あることに気づいた。

 

「角が……消えてる」

「……どうやら、その鬼神化も制限時間があったようね。次からはちゃんと対策してから飲みなさい」

「安心して。これ飲むときは状態異常無効の魔法をかけておくから」

 

  なんにせよ、こうして私の鬼神化騒動は幕を閉じた。

  鬼神になれる時間は約一時間か。おそらくこれを使っての戦闘はほぼ来ないと断言できる。

 

  さてと、じゃあ行きますか。

  どこへだって? 今日行く予定だった場所へだよ。

 

  私は家のいざこざを放っておきながら、紫に声をかけかけたあと家を出るのであった。

 

 

 

  ♦︎

 

 

  博麗神社の巫女、博麗霊夢の日常は朝食の時間とともに始まる。

  起きて布団を片付けたら赤と白の脇が露出している巫女服に着替え、味噌汁をすすり、境内の掃除をして昼食にする。

  今日もそんな一日が始まる、予定だった。

 

 

 

「……まずいわね。食料がもう今日分しかないわ」

 

  台所で保存されている残りわずかな食材を見て、霊夢は深いため息をつく。

  記憶に残っている限りでは、霊夢の現在の所持金は二百円と少し。明日を乗り切るにはどうやっても足りない金額だった。

 

  そもそも、霊夢は貧乏である。博麗神社は人里から遠く、また途中の山道も危険が大きいため人が寄ることはない。それは参拝客が皆無なことを示していた。

  よって、霊夢は必然的に貧乏生活を強いられていた。弾幕ごっこによる妖怪退治を依頼され、その報酬金で過ごしてきた彼女だが、あいにくと今は平和で依頼もクソもない。

 

「こうなったら魔法の森でキノコでも拾ってこようかしら。あいつに頼るのは癪だけど、背に腹は変えられないわね」

 

  これからしばらくはキノコ生活が続くのを覚悟した彼女は再び大きなため息をついた。

 

  そのときだった。

  外からチャリンという音が聞こえてきたのは。

  それはとても小さく、この距離では耳をすませても聞こえないレベル。しかし霊夢の地獄耳はそれを感知しており、霊夢はすぐさま表へ走り出した。

 

  賽銭箱の前には狐耳を生やした桃髪の少女がいた。が、そんなこと今の霊夢にはどうだっていい。

  一心不乱に賽銭箱の中をあさり、その中にある銅色の輝きを放つ物体を拾い上げた。

 

「……ちっ、10円かよ。しょぼいわね」

「いや、巫女が賽銭にケチつけるなよ」

 

  その生意気な言葉で霊夢は我に返り、すぐさま横を見る。そして賽銭を入れた妖怪を凝視した。

 

(こいつの服……よく見れば紋様やらが刻まれてて結構豪華ね。これ売ればそれなりになるんじゃないかしら?)

 

「なんか嫌な予感がするんだけど」

「……気のせいよ。それで、私の神社に妖怪が何の用かしら?」

「妖怪だけになんか用かいって?……プフ」

「……殺す」

「わー待って待ってタイム! 今日はあなたに用事があって来たのよ!」

「用事? 私に?」

 

  くだらないジョークを言った妖怪は一旦間を置いてから霊夢へこう言った。

 

「博麗の巫女! 私と弾幕ごっこで勝負だ!」

 

 

 

  ♦︎

 

 

「断る」

「……ふぇっ?」

 

  先生、巫女に決闘挑んだら断られました!

  ……って、ちょい待て! さらっと断ってんじゃないよ!

 

「……どうしてか理由を聞いていいかな?」

「体力の無駄使いよ。ただでさえ食料不足で苦しんでるのに、これ以上動いたら私が死ぬわ」

 

  長年のキャリアからこの言葉ででわかった。

  この子、ただ面倒くさいだけだ!

  いや、貧乏なのは事実なんだと思う。なんせ前情報で博麗神社は人が来ないことで有名だからだ。でも、この子の態度からそれ以上に面倒くさがられているのを感じる。

 

  さて、これは困った。私がここに来た理由はこの巫女で初弾幕ごっこデビューを決めるのことなのに。それがまさか勝負すらできないとは思わなかった。

  ただこの子、気配から察して弾幕ごっこ関係なしに超強い。おそらくはうちの初代白咲の巫女を務めた博麗が人間の頃よりも強い。

  紫がやけに自信満々に情報を話していたから半分デマかと思ってたけど、こりゃ本物だわ。今の体で殺し合ったら確実に殺される。

 

  そんな博麗の巫女は私の反応も見ずに縁側へ引き返して行ってしまう。

  まったく、いつからうちの親族の家はこんな貧乏になったのやら。まあいい、念のため彼女を釣る餌を持ってきて正解だったぜ。

 

「あれー? こんなところに十万円がー!」

 

  そう聞こえるように叫んで、十万円の札束をわざとらしくピラピラと見せつける。巫女は私の手の中で微笑む十人の諭吉に気がついたのか、目線が釘刺しになっていた。

 

「……それで? それを私に見せつけてどうしようって言うのかしら?」

「簡単だよ。私と弾幕ごっこで勝てたらこの札束あげる。偽物と疑っているなら触れて確かめてもいいよ」

 

  そう言って札束を軽く彼女へ向かって投げた。それを大慌てでキャッチし、じっくり凝視していたけど、一分後には札束は彼女によって再び私の手の中に収まっていた。

 

「やるわ。ただし約束は守りなさい」

「それじゃ、基本ルールに従ってスペカは三枚と残機は二つでいいね?」

「問題ないわ。手っ取り早く済むなら好都合よ」

 

  彼女はスペカを服の袖から取り出すと、空へとふわふわ浮かんでいった。やるなら空中で、がどうやら弾幕ごっこの基本らしい。

  私も彼女と同じ高度まで飛ぶと、スペカを巫女袖から三枚取り出し、大声で叫んだ。

 

「博麗の巫女! 幻想郷最強の弾幕ごっこの使い手の力、見せてもらうよ!」

 

 

 

  ♦︎

 

 

 

  分裂するお札と追尾してくるお札、そして高速で直進してくる針を避けながら思う。

  この子メッチャ強ェ!

  まだ始まって一枚もスペカは出てないけど、通常弾幕の激しさが彼女の実力を物語っていた。

 

  ちなみに通常弾幕とはスペカを出す前に放つただの弾幕のことだ。相手の様子見やスペカを出すタイミングを計るときに便利で、結構重要なことらしい。

  かく言う私も桃色と瑠璃色の弾幕を放って彼女を攻撃してるんだけど、全然捉えられないんだなこれがー。

  なんというか、最小限の動きで避けられてるって感じ。確かグレイズとかいう技術だったのを覚えている。

 

「……なるほど、ただの雑魚じゃないみたいね。危機を覚えるほどじゃないけど」

「言ったね。——氷華【フロストブロソム】!」

 

  彼女の挑発に乗って、スペカを一枚空へと放り投げた。それがクルクルと回転しながら光となって消えた瞬間に、私は技を発動する。

 

  彼女が浮いていた場所に冷気が集中していく。そしてそこに巨大な氷の薔薇が形作られた。

  当然のように巫女は薔薇ができる前にそこから退避している。けど、それで終わりじゃない。突如薔薇の花びらが剥がれたかと思うと、それが氷の弾幕となって彼女に襲いかかった。

  しかし、彼女はそれらを避け、避けれないものは手に持った幣で殴り、消滅させていった。

 

  おい、ルールになんで相手を攻撃できないのに武器を持っていいって書いてあって疑問に思ったけどそういうことかよ!? 弾幕って武器で消滅させていいんだ!

 

  そんな調子で全ての弾幕をかわされたけど、これはまだ序の口。一輪全てを避ければ次は二輪に、それも全て避ければ今度は三輪と、最終的には五輪の薔薇が同時に炸裂するようになっているのだ。

  五つの方向から飛んでくる弾幕の雨。それらをまるで後ろに目があるのかと錯覚するほど的確に避けていくけど、一つの弾幕が彼女が避けた先へピンポイントで向かっていった。

  当たった。と思ったそのとき——

 

「——夢符【封魔陣】」

 

  静かな宣言とともに、彼女のスペカが発動した。

  それは一言で表すなら、壁。

  圧倒的な数の弾幕が彼女を中心に三百六十度全てに壁のように放たれ、私のスペカを押しつぶしていった。

  それだけじゃない。広がる壁にも必ず空けられた隙間がある。そこを掻い潜っていくのだけど、この壁、どうやら重層構造だったようだ。抜けた先に二つ目、それを抜けた先に三つ目と、まるでキリがない。

  面による圧倒的な攻撃。それは動揺した私を押しつぶすには十分なものだった。

 

「ぐがっ!?」

 

  複数の弾幕で同時に押し潰され、私は地面へと落っこちていった。

  弾幕が命中した際、数秒間だけ弾幕が再び当たっても無効にするというルールがある。それによって私の残機はまだ一つ残っているのだけど、今のは効いた。

  ふと空を見上げると、上から弾幕が殺到してきた。とはいえ、もうそれは見切った。神理刀を出現させ、当たりそうな弾幕を片っ端から潰しながら、彼女と同じ高度まで復帰する。

  どうやら彼女の一枚目のスペルは私の被弾から数秒後に終わったらしい。先ほど放たれたのが通常弾幕なのも納得がいく。

 

  彼女は通常弾幕を撃ち続けるけど、一向に被弾しない私に呆れたのか、二枚目のスペルカードを取り出した。

  来るぞ——

 

「悪いけど、早々に決着つけさせてもらうわよ! 夢符【夢想封印】!」

 

  その宣言とともに、隠れていた彼女の霊力が一気に膨れ上がった。

  その膨大な霊力はやがて色鮮やかな七つの巨大弾幕へと姿を変えていく。その様は美しく、私まで一瞬見惚れてしまった。

  間違いなく、これは彼女の十八番のスペカ。このよう強大な技にほとんどの妖怪は必殺されるだろう。

  そう、()()()()()()()()()だ。

 

「あいにくと、その技は見飽きてるんだよ!」

 

  この技は代々博麗の巫女が得意とする奥義のようなもの。そしてうちの初代巫女もこの技をよく使っていた。

  だからこそわかる、この技の弱点。

  私は音速で七つの玉全ての真ん中へと移動する。この技は自動追尾付きの機能を持っている。だからこそ、全ての弾幕が一斉に私へ集中した。そして私に当たる瞬間に一気に加速し、そこから姿を消した。だが弾幕は急には止まれない。何もない空間に、全ての弾幕が互いにぶつかり合い、消滅していった。

 

  今度は私の番だ。

  唖然とする巫女へスペカを投げつけ、宣言。

 

「悪戯【狐火鬼火】」

 

  スペカは彼女にぶつかる前に空中で溶けた。それと同時に、私は片手で青白い狐火を、もう片方の手で赤い鬼火を大量に生み出した。

 

  久しぶりの苦戦。私の心は今まさに燃えたぎっている。

  そして、二枚目のスペカが発動された。

 

 

 




「春休みに入ったので投稿が早くなるかもしれません。正直、学校の行事は全部サボりたい作者です」

「まあ作者が体育祭なんてやったらペシャンコだからな。大人しくしといた方が得だと思うぜ。狂夢だ」


「さて、早速だが弾幕ごっこの新しいルール追加だ」


・武器や結界、弾幕で相手の弾幕を打ち消す行為は原則的に認める。また、スペルカードを使って相手の弾幕を消す行為をボムという。

・被弾した場合、それから五秒間は弾幕がいくら当たってもカウントしない。俗に言う某配管の赤帽子が被弾したときに始まる無敵時間のこと


「これくらいだな。ったく、いきなり設定が増えたのかよ」

「ちなみに手取り早く済ましたい場合は基本的に三スペカ、二残機が主流になっている。逆に真面目な勝負はスペカは最大で五、残機は三という感じになっています」

「まあ、あくまでそれが主流ってだけで、スペカ数と残機は相手と相談して決めるんだけどな。この小説ではこの二種類が主に使われると思うから、暇なら覚えとくといいぜ」
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