東方蛇狐録~超古代に転生した俺のハードライフな冒険記~ 作:キメラテックパチスロ屋
「繰り返し言うけど、私の切り札は時間がかかるわ。でも発動すれば分身一体は確実に消滅するくらいの威力は保証する」
「そこは本体に当ててほしいよ」
「うっさい。貴方がその物騒な物でなんとかしなさいよ」
「無茶言わないでよ。全盛期の頃でも扱うどころか持つことすらできなかった武器なんだよ? 鬼神化した状態の筋力をさらに強化魔法三つで数十倍にしてやっと持つことができたんだから」
「それ作ったのどんな奴よ」
「ただの馬鹿」
心の奥底から思っている、奴の特徴をルーミアに告げた。
さて、そろそろ行きますか。
召喚した例のブツを肩に担いでゆっくりとフランが待つ戦場へと戻って行った。
と同時に後ろから妖力が高まる気配が感じられる。ルーミアの奴も切り札の準備をし始めたようだね。
そのせいでフランへの幻術が解けちゃったけど、問題ない。
「おっらァァァァァァ!!」
フラン四人が気付く前に先手必勝!
どれが本物かわかりずらいけど、本物には腕にあのあと神理刀を無理やり抜いた跡があるので間違えることはない。
空高く跳躍したあと、両手で握る
四人の内の一人がレーヴァテインを横にして掲げ、防御の体勢をとる。
しかし次の瞬間、ありえないことに、レーヴァテインが鈍い金属音を出しながら砕け散った。
そして、遮るものが何もなくなった刃の牙が、目の前のフランを歪に両断した。
「……へっ? あ、あぁぁ……ぁ」
か細い悲鳴をあげたあと、体が右と左に半分ずつ分かれたフランがゆっくりと地面に倒れ、血の池を作り出す。それっきり、そのフランは動くことはなかった。
「まず一体目!」
「……ヒッ!?」
「アリエナイ、何ナンダソノ武器ハァッ!?」
その無惨な光景を見て、二人のフランが絶叫をあげる。
そしてその状況を作り出した武器を、私はちらりと見つめた。
まず、それを一言で言うなら巨大な大太刀。
柄も合わせて全長四メートルほどあるそれは、明らかに私の体と釣り合っていなかった。
しかし、それが大太刀と呼べない要素は一つ。刀身が分厚く、鮫肌のようになっているのだ。
まあ、こんなものは刀じゃないしね。
この武器の刀身は、八百万もの刀身を溶接させて作られているのだ。そのせいで横幅も人間のそれよりも大きく、触れただけで手が串刺しになる。
そんな人間じゃ作れないような武器の名は——【
かつて時空の破壊神が月に攻め入ったときに使われた、ただの処刑用具だ。
そんな最強クラスの武器を私は両手で握りしめ、まっすぐに構える。
私がこの武器を使えなかった理由は一つ。重すぎて持ち上がらなかったからだ。
八百万大蛇を作るのに使われた八百万の刃はただの金属じゃない。それぞれ全てがオリハルコンやミスリル、アダマンタイトなどという伝説級の鉱石で作られているのだ。
それほどまでのものを大量に使われたこの武器の質量は、およそ五トン。この世で扱えるのは持ち主の狂夢か剛くらいだろう。
でも今の私は鬼神化している。この筋力なら八百万大蛇を振り回すことはできる。
フランたちは八百万大蛇が放つ濃密な死の気配に怯え、空に退避する。
本来なら八百万大蛇には八百万の刃を伸縮、変幻両方とも自在に操れる能力があるのだけれど、今の私じゃ扱い切れない。
よって同じように空を飛んで、空中戦へと持ち込んだ。
「「「【スターボウブレイク】!!!」」」
上空から、弾幕の矢が雨のように降り注いだ。
八百万大蛇を装備しているため、私の動きは遅くなっており、回避は不可能。
そして無数の弾幕が、私の体に打ち付けられた。
「ごッ……! まだまだぁ!」
しかし、ここでも鬼神化の恩恵が出ているようだね。
本来なら一撃食らっただけでも重傷なんだけど、今の私は体も丈夫になっている。それがスターボウブレイクを受けても全身に打撲された跡のようなアザができるだけという結果を作り出してくれた。
「がぁぁぁああ!!」
気合の雄叫びをあげながら、私は二人目のフランへと八百万大蛇を横薙ぎに振るう。
そしてまたもや鈍い音とともに、レーヴァテインが砕け散った。
そのとき、背中に鋭利で高温なものが体を貫通した感覚を味わった。
痛ァァァッ!?
後ろを振り返れば、三人目のフランが私にレーヴァテインを突き刺している姿が。
「邪魔だぁ! 【空拳】!」
体に奔る痛みに一瞬我を忘れた私は、武器を握る左手を離してフランへ空気を纏った拳を叩きつけた。
色々な物を潰した感覚とともに、三人目のフランの腹には大きな穴が空く。
そして血と臓物を吐き出しながら苦しむ彼女の首をすぐさま八百万大蛇で刎ねた。
「二人目ェッ!」
息が上がっているにも関わらず、自分を鼓舞するために大声を張り上げる。
私が圧倒できているのには理由がある。
ガキの喧嘩で一番重要なのは、力が強いかどうかだ。
お互い避けることもしないし、ただ殴り合うだけ。そんな状況ではもっとも攻撃力が高いやつが有利になる。
私たちの今の状況も同じことが言える。
フランは戦いの素人だ。それでも私を圧倒できたのはその身体能力ゆえ。
じゃあその身体能力で相手が上回っていた場合、どうなる?
答えは簡単。
「ァァァァァァアアアアアア!!」
先ほどレーヴァテインを砕かれたフランが、叫びながら拳を私に叩きつけてくる。
もちろん、そんなものわざわざくらおうとは思わない。八百万大蛇を盾のように構える。
そしてフランの拳が八百万大蛇に叩きつけられた。その衝撃波でガレキが吹き飛ぶが、私はビクともしなかった。
「なっ、なんで!?」
「当然だよ……今の私は、貴方より強いもの!」
飛び散った血を体に浴びながら、私はフランに事実を告げる。
あーあ、それにしても私の剣を殴ったせいでフランの拳が酷いことになっちゃってるよ。針山地獄を素手で殴るのに等しいしね。
私はそのまま強引に剣を振るい、最後の分身を一文字に両断した。
「ハァッ……ハァッ……!」
肩で息をしながら、残り体力の確認をする。
……そろそろ限界が近いかも。
でも残りは本体のみだ。本体なら一撃で即死することはないだろうし、遠慮はしない。
ふと血まみれになりながら倒れている三つの分身を見てみると、体から煙のようなものを噴き出しながら徐々に消滅していった。いくら本物同然に動けたとしても、その末路は所詮分身ってことか。死体すら残すこともできずに消えていくそれらを眺めていると、少し虚しさを感じた。
そうやって思考しながら息を整え、次に飛び出す力を溜める。
残念ながら、今回の戦いで霊夢の援助は期待できない。魔理沙に口上として助けを呼ばせたけど、ボロボロのパチュリーを担いで霊夢を探すのにどれほどの時間が必要なのか。
だから、これでケリをつける。
幸い、相手はもう本体一人。さっきまでよりは楽なはず。
私は八百万大蛇を握りしめ、一気に勝負を決めに飛び出した。
「【カゴメカゴメ】ェッ!」
「なっ、これは……?」
絶叫にも似たフランの声が響く。
そして放たれた弾幕に私は驚いた。
今放たれた弾幕は、私にすぐ襲いかからず、私の周囲を飛び回る。そして完全に囲い終わったとき、弾幕の鳥かごが作られた。
明らかに今までとは違う攻撃。それを見て私は、フランが戦いの中で成長しているのを感じた。
狂気に呑まれてるように見えて、必死に私を倒す方法を考えていたらしい。そこは見事と称賛しよう。
でも、まだ足りない。
私は人間の横幅よりも広い横幅を持つ八百万大蛇を盾のように前に構えて、弾幕の壁を無理やり押し通る。
なんかBB弾のマシンガンをバケツを被って防いでる気分だ。
連続で絶え間なく衝撃がくるから頭がガンガン揺れる。
というか痛い! 誰だこの作戦考えたやつ!? もうちょっとスマートに抜け出せるの考えろよ!
……考えたの私でした。
そして弾幕の檻から抜け出した私は、フランめがけて大剣を振るう。
フランもそれに合わせてレーヴァテインを振るい、再び金属が砕ける音が聞こえた。
これで、フランの武器は何もない。
私は容赦なく、大剣で叩き潰すように攻撃を繰り出した。
それが、
「キュッとして——」
「ッ!?」
急激に高まったフランの妖力に驚き、とっさに大剣を引き戻してその後ろに隠れるように構えた。
そして、フランの悪魔の呪文が唱えられた。
「——ドカーン!」
その呪文を聞いた瞬間、私の右手首が爆発とともに弾け飛んだ。
「ぐっ……ああっ!」
その痛みに耐え切れず、短い叫び声をあげる。
でも、それより八百万大蛇が重い!
右手首がいかれたせいで、五トンを超える質量が一気に反対の左手首にかかった。
そして片手ではそんなもの到底支えきれず、八百万大蛇を手から落としてしまう。
巨大大剣が床に突き刺さり、轟音とともに巨大クレーターが出来上がる。
それを見たフランは勝利を確信したようで、
「アハッ、アハハハッッ!」
高らかに、狂気の咆哮をあげた。
まさか、手首を狙われるなんて思ってなかった。これは私の落ち度。
でもねフラン、油断大敵だよ?
「アハハハッ——なっ!?」
私はフランに急接近すると、後ろに回り込んで彼女を羽交い締めに拘束した。
ぐぐぐっ、この怪力娘め!
でも筋力は私の方が上。絶対に、離さない!
そして私は、後ろで待機していた仲間に大声で呼びかけた。
「今だよルーミア! 私ごとフランをやれ!」
「言われなくても——そのつもりだったわよ!」
えっ? 言われなくてもやるつもりだったって? 待て待て、まだ心の準備が!
そんな心の叫びも虚しく、ルーミアには届かなかった。
ルーミアはダーウィンスレイヴ零式を槍投げのように構える。
すると漆黒の闇がダーウィンスレイヴを包み込み、地獄の槍へとそれは形を変えた。
「【レイ・オブ・ダークネス】!!」
暗黒の槍が、黒い閃光のように一直線に放たれた。
その延長線上には私とフランの姿が。
そして閃光がフランの胸——メヒャドによって癒えない傷をつけられた跡に吸い込まれ、その先にある全てを貫いた。
「……ア、アァッ、ぁ……」
翼に入っていた力が抜け、フランは空中から落下していく。そして背中から土がむき出しになった床に落ち、倒れた。
そして私はというと……。
「——死ぬかと思った……!」
「ちゃんと助けてあげただけマシでしょ?」
ルーミアのすぐ横で、肩で息をしながら膝をついていた。
そしてルーミアも「ダルい……」と一言つぶやき、仰向けになって倒れる。
あのあと何が起きたかと言うと、私はルーミアによって助けられたのだ。
私はフランを羽交い締めする際彼女の後ろにいたため、フランの影が私にできていた。それが私を救ってくれた。
【バニシング・シャドウ】。全盛期のルーミアが移動する際によく使用していた技で、影がある場所にならそれを伝って一瞬で移動できる。ルーミアはそれをレイ・オブ・ダークネスを放った直後に使用して、私を影に呑ませることであの一撃を避けたのだ。
「……それで、あれはどうなったの?」
「……生きてるね」
ゆっくり、ゆっくりと。
焦点が合っていない目で、フランは立ち上がる。そしてその顔を私たちの方に向けた。
……やれやれだよ。
神力を使い、やられた手首を癒す。魔力は身体能力強化でほぼ使っちゃってるし、効果は魔法の方が高いんだけど仕方ない。
それでも傷跡が多少残るぐらいにまで回復したので問題はないね。
先ほど落とした八百万大蛇が突き刺さっている場所まで歩いて行き、それを引き抜きながら私は口を開く。
「……それで、もう正気に戻ってるんでしょ? だったらなんであそこまで狂気に縛られていたのか教えてほしいな」
「……私、四百年以上地下室で監禁されてたの」
はっきりと意識を取り戻したらしいフランが、ポツリと呟く。
そして、彼女の今までの生が明かされた。
「私は【ありとあらゆるものを破壊する程度の能力】を持ってるの。それが昔暴走しちゃって……お父様とお母様を殺しちゃった」
「それは……」
「それを恐れたお姉様は、私を暗い地下室に閉じ込めたの。それっからだったかなぁ、目につくもの全てが憎かったのは」
なるほどね。
妖怪とはいえ、幼少期というものは存在する。
フランはその幼少期から今に至るまで、長い間狂気とともに、まるで臭いものには蓋をするように監禁されていたのだろう。
そりゃ、狂っても仕方ない。
臭いものと長時間いれば臭いが染み付くように、狂気と時間を過ごせば過ごすほどその深淵に引きずり込まれていく。その結果があのザマだ。
「地下で過ごしていく内に、声が聞こえてくるの。壊せ、壊せって。気がついたら、もう一人の私が心に巣食っていた」
気に食わない。実に気に食わない。
フランを閉じ込め狂気に染めたフランの姉とやらが。
でも、今は老ぼれとして若い者を正すのが先だ。
「だからね……もう私に近づかないでっ。今は大丈夫だけど、これ以上近づかれたら……もう一人の私がお姉さんたちを壊しちゃう!」
「……残念ながら、それはできないよ」
一歩踏み出す。
同時に弾幕が、私の頬スレスレを通過した。
「お願い……お願いっ。もう何も壊したくない……!」
「ここで退いたら二度と貴方を救うことができなくなる。私はね、他人なら誰が死のうと関係ないけど、子どもがつまらないことで死んでくのが何よりも許せないんだよ!」
ふと、脳裏に浮かんだのは神楽の兄の姿。
神楽より強く、神楽より頭が良く、神楽より明るかった。だが死んだ。交通事故というつまらない理由によって。
子どもがいつまでも泣くんじゃないよ。
悲しみを背負うのは大人で十分。
ガキは無邪気に、笑っていやがれ!
力強く、一歩を踏み出して走り出す。
そして弾幕の嵐が私を襲った。
しかし、それを避ける避ける。その度に体がスパークし、電流が地面に奔った。
——【
体に電流を流し、身体能力を強化する秘術。だけど、雷に耐性のない私は使用中高圧の電流に体を蝕まれ、激しい痛みを受け続けることになる。
でも、これを使用してまで戦う価値がこの戦いにはある。
四つの身体能力強化の術式を使った私は、フランの雑な弾幕ごときじゃ捉えられない。
その姿、まさに電光石火の如く。
そして、フランとの距離が数十メートルほどにまでなったとき、フランが一撃必殺の能力を発動する構えをとった。
「やめてェェェェェッ!!」
フランの叫びとは逆に、彼女は開いた手を握り潰して能力を発動した。【ありとあらゆるものを破壊する程度の能力】が私を襲う。
しかしこのとき、私も同時に能力を発動していた。
【形を歪める程度の能力】。
本来ならなんの役にも立たないこの能力は、実は概念にも干渉することができる。前の能力がそうだったので、それだけは変わらないはず。
そしてフランの能力がどのようにものを破壊しているのかもだいたい想像がついた。何度も見たり食らったりすれば当たり前だけど。
フランはおそらく、ものの核を破壊するスイッチを擬似的に手のひらに出現させ、それを握りつぶすことでものを破壊しているのだ。
なら、その核を発動するためのスイッチを歪ませたらどうなるか?
私の予感は見事的中し、スイッチを失って狙いを定められなくなったフランの能力は、見当違いのものを破壊するだけで終わった。
「えっ?」
フランがありえない、という表情を浮かべる。そして動揺によって、放たれていた弾幕の嵐がピタリと止んだ。
さて、ここからが私のターンだ。
私は八百万大蛇を天に掲げる。すると青白い巨大な刃が出現した。
私の十八番【森羅万象斬】。しかし、私の技はまだ続く。
そのまま大剣を天に掲げていると、今度はどこからともなく大量の雷が出現し、青白い刃へと集中していく。
そして激しい音とともに、雷の刃が完成した。
これが、これこそが森羅万象斬を超える究極の一撃——
「——【天地雷鳴斬】!!」
気づけば、フランは目を閉じていた。
まるで祈るように。己の罪を懺悔するように。
(ああ、やっと死ねる……次は
そして、青白い雷が天から落とされた。
それは床に突き刺さると同時に地を二つに両断し、その余波で放たれた電流の雨はあらゆるものを焼き尽くす。
しかし、落雷が突き刺さったのはフランの真横だった。
つまり、私の大剣は彼女に当たっていなかったのだ。
何秒経っても訪れない死に、フランは疑問を持ち、ゆっくり目を開ける。そこにあった私の顔を見て、かすれるような声で問う。
「どう、して……?」
「……貴方が考えてること、だいたい予想はつくよ。でも私は貴方に生きて欲しいと思う」
「なんでなの……っ? 私とお姉さんは今日会ったばっかで……」
「そう、貴方と私はほぼ他人。そして私は他人に抱く情はない」
でもね、と私は付け足す。
「私は悲しみを抱いたまま成長できずに大人になった者の末路を知っている。そして貴方はそれに似てただけ。でも、それだけで十分なんだよ、私がお節介を焼くには」
白咲神楽。
フランと彼は、違う悲しみを背負っている。でも、幼いころから孤独を味わっていったのは同じだ。
そして神楽は大人なるまでずっと孤独だった。あの二人と出会ってマシにはなっていたけど、そのときには全てが遅い。
結局、孤独とともに育った者に大切なものを守ることなどできやしない。元より他人を守る術なんて持ち合わせてないのだから。
この先フランが成長していくと、確実に彼のような大人になるだろう。
そして大切なものが出来たとしても、守り切ることはできない。
私は、子どもがそんな末路を迎えるのが嫌いだ。
「フラン、貴方はまだ若い。その狂気だって吞み込むこともできるさ」
「無理だよ。私じゃアイツに……もう一人の私には勝てない」
「どっちもフランなんだよ、その子も。例え貴方を傷つけても、願ってることは同じはずなんだよ」
「願い……」
そう、心の奥底で思ってることは同じ。
私と狂夢のように……。
……あれ? 私とあいつが意見合ったことってあったっけ?
いや、それ以上は考えちゃいけない。特にフランがいる前では。
「私……お外に出たいな」
「それが、フランの願いなんだね?」
「うん……。よく考えてみれば、もう一人の私もよく外のことを話してた。内容は外に出て殺し回りたいとかばっかりだったけど……それでも、外に出たかったことに変わりはないと思うの」
私を含め他人にとっちゃ小さな願い。でも、彼女にとっては大きな願い。
私はそれを素晴らしいと思う。
「でも、お姉様が許してくれないから……無理かな?」
「どうして駄目なの?」
「えっ?」
やっぱり、ここでもフランは姉の話を出してきた。
だからこそ、私ははっきりと言った。
「嫌だったら従わなければいいじゃない。別に姉は姉であって、フランはフランなんだから」
「……あっ」
「ふふっ、ようやく気付いたみたいだね。貴方に姉の命令を厳守する義務はないことに」
それに気付けただけでも一歩前進だ。
……私の考えは間違ってるのかもしれない。実際にそうやって親に縛り付けられるが外の世界の世間では正しかった。
だ、け、ど。
私はこの生き方に後悔したことはない。生意気だとか理不尽だとか言われようが、私は私を貫き通してきた。
なら、私が伝えられるのはこの生き方だけだ。
「あはっ、あはははは!」
フランが初めて、無邪気な笑顔を私に見せた。
ふふっ、笑えばやっぱり可愛いじゃん。
「どうしてこんな簡単なことに気づかなかったんだろ? でも、教えてくれてありがとう、お姉さん。
……私たちってことは……。
まったく、今礼を言ったのはどちら何やら。それとも両方かな?
「それじゃあ、早速外に……っ」
そう言ってフランが歩こうとした瞬間、彼女は疲労でバランスを崩して、地面に倒れこんでしまった。
「今は駄目だよ、フラン。まずは怪我を治して貴方が元気にならなくちゃ」
私はフランに向けて神力での回復術式を発動する。
いや、正しくは時間回帰の一種かな?
戦闘中は術式を練る時間なんてなかったけど、今は別。久しぶりに私の知る限り最高の回復術式をフランにかけてやった。
「完治ってわけじゃないから、無理しちゃ駄目だよ。そのうち私もまた来るからさ」
「……うん。 約束だよ、お姉さん」
その言葉を最後に、フランの意識は沈んでいった。
その頭を、私はしばらくの間撫で続けるのであった。
「8000文字突破! 上手くまとめられず、今回はメッチャ長くなりました! 作者です」
「登校日にチャリで本巡り回って、結局目的のものが見つからずにネットで渋々ラノベ買った作者を見ていた狂夢だ」
「さて、今回は狂夢さんの武器【八百万大蛇】が久々に登場しましたね」
「まさかアレを楼夢が振り回すときが来るとは……」
「とはいえ本来の能力は発揮できませんでしたけどね」
「そういえば作者って最近昔使って一度切りになってる技とかよく使うよな?」
「ああ、あれですよ。この小説が処女作なんで、昔の私は後先考えずに技作りまくってたんですよ。それらをなんとか消費したくて無理やり使ってます」
「無駄に新技出すのは今も変わらんだろ。今回の戦闘で登場した【ズッシード】とか今後いつ使うんだよ?」
「あれは私のオリジナルじゃなくてドラ●エの呪文なので大丈夫です」
「……基準がわからねェ……」