東方蛇狐録~超古代に転生した俺のハードライフな冒険記~   作:キメラテックパチスロ屋

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評価バー見てみたら黄色から緑に下がってまた黄色に戻ってた。
実に安定しない作品だなぁ、と最近思った瞬間でした。


ハロウィンラッシュ異変その後の宴会②

 

 

 

 

「お姉さーん!」

「おーす楼夢! 遊びに来たぞ!」

「ダメだよ二人とも……楼夢さんすごく酔ってるし」

「ふぇっへっへー。可愛い嬢ちゃんたち、お姉さんと一緒に遊ばない?」

「子供に何爆弾発言してんのよこのアホ毛!」

「もギュルっ!? あ、頭はダメだよ頭は……」

 

  よだれを少し垂らしながら両腕を広げて歓迎のポーズをとる。

  そして調子に乗って酔っ払った私の発言を聞いたルーミアの強烈な拳骨が叩き込まれ、情けない声を上げてしまった。

  ていうかルーミアさん、貴方いきなり保護者面してどうした? なんだかルーミアのチルノたちを見る目が慈愛に満ちてる気が……。

 

「あ、そうだ楼夢! ルーミアがどこに行ったか知らない?」

「ルーミア? それならここに——」

「口を閉じてなさい!」

「ヴィンチッ!?」

 

  ビ、ビンタはないでしょ……。

  急に私を殴ったことによって三人は訝しげな視線をルーミアに送る。

  しかしルーミアは「何でもない何でもない」と手でジェスチャーしながら答え、

 

「あ、私ちょっとお腹痛いかも! というわけでここを抜けるわ!」

「あ? さっきまでとてもそうとは思えなかったんだが……」

「痛いものは痛いの!」

 

  ルーミアは火神にそう告げると、一目散に森へ駆けて行った。

  なにがしたいんだあいつは?

  しかし数分後、彼女は再び戻ってきた。……幼女の姿で。

 

「みんなー、お待たせなのだー!」

「やっと来たか子分二号! じゃあ、出発するぞ!」

「ああ、ちょっと楼夢に用事があるから先に行ってて欲しいのだ」

「? まあいいや、関西深い私はいつでも待ってるからな!」

「チルノちゃん、それを言うなら寛大深いだよ」

 

  そう言って、色々とハイなチルノたちが去っていく。そして完全に姿が見えなくなると、ルーミアは満開の笑顔からいつもの冷徹な表情に戻って私たちに向き合った。

 

「意外だねー。ルーミアにも火神以外を大切にする気持ちはあるんだ」

「……火神が来る前からの縁よ。我ながらあの笑顔に惹かれたなんてね。笑いたければ笑えばいい」

 

  若干顔をうつむかせながら、ルーミアは呟く。

  まあそうなるのも無理はないわな。今まで散々自分以外を見下していたくせに、今さら弱者と戯れているんだから。

 

  チラリと火神の表情を覗く。しかし無反応で返されてしまった。ムカついたので肩を揺すってみても無反応。

  仕方がないので真正面から火神を見る。すると大きないびきが聞こえた。

  ……こいつ、こんなシリアスな時に寝てやがる……!?

 

「……【空拳】」

「ブゴハァッ! なんだ、敵襲か!?」

「ちげぇよテメェ! 今お前の相方悩んでるところだっただろうが! よくそんな時に寝てられんなオラ!」

「……楼夢、口調が戻ってるわよ」

 

  おっといけないいけない。心を落ち着かせ、元の口調へと戻す。

  っと、そんなことよりもだ。

  火神は眠そうに目をこすると、目の前でうなだれてる少女ルーミアを鼻で笑った。

 

「こいつが抱えてる問題なんてしらねぇよ。自分で責任取れるんならいいんじゃねぇか?」

「だってさ、ルーミア。もう火神に怒られる心配はなさそうだよ」

「……相変わらず適当ね。それじゃあその言葉の通り、好きにさせてもらうするわ」

 

  そう言い残すと、ルーミアは両腕を広げながらチルノたちの方へと去っていった。

 

「ねえ、あのポーズってなんか意味あるの?」

「『人類は十進法を採用しました』って言ってるんじゃねぇか?」

「いやいや、あれは『私の胸に飛び込んでおいで』と言ってるに違いないよ」

「……確かに、そんな風に言っている気が……」

 

  ちなみに正解は『人類は十字架に磔られました』だったらしい。

  その後冗談で予想を口にしたら、半日近く追いかけっこが続きました。

  だったらもうちょっとわかりやすいのにしてほしいものだ。

 

「……さて、だいぶ酔ってきたかな?」

「へっ、まだまだだっての」

「よろしい。なら二回戦の始まりだ」

 

  たった今満タンになったばかりの盃を軽くぶつけ合って乾杯をすると、一口で私たちは中の酒を飲み干す。

  その後はドロドロの飲み勝負と化し、私たちは珍しく酔いつぶれたのであった。

 

 

  ♦︎

 

 

「まったく。今回の異変は酷い目にあったぜ」

 

  やれやれという風なポーズを取りながら、魔理沙は宴会料理に手をつける。

  彼女の体にはところどころ包帯が巻かれていた。

  当たり前だ。魔理沙は楼夢やレミリアのように妖怪ではない。霊夢は弾幕ごっこで直撃はしていなかったため、大きな怪我はなかったが、あの極太レーザーを正面から浴びた魔理沙は一撃で戦闘不能になるほどの怪我を負った。

 

  だけどまあ、それでも元気そうにしてるのが我が親友の長所なのだが。

  そう思い、霊夢は酒を一口飲む。

  その隣ではレミリアが大口を開けながら異変のことを自慢げに語っていた。

 

「……そう言えば、紅魔館の住人が全員来るなんて珍しいわね。なんか企んでたりするの?」

「まさか。あんな異変の後に一悶着起こすつもりはまったくないわよ。二人ともあの伝説の大妖怪絡みで来てるに過ぎないわ」

「伝説の大妖怪、ねぇ……」

 

  あの反則だらけの弾幕ごっこを思い出す。

  今回生き残ったのは完全にルールのおかげだ。もし殺し合いにでもなったら一分間すら持つことができないだろう。

  そこが、霊夢を悩ませる種になっている。

  今まで妖怪たちがルールを守って来たのは、博麗の巫女と妖怪の賢者から身を守るためだった。当時弾幕ごっこ成立時は反対する妖怪はほぼ殺し尽くしたし、それのおかげで今の平和は保たれていると言える。

 

  しかし、その常識を覆す存在が現れた。

  霊夢は真の姿のルーミアとタイマンで勝負できるほどの実力がある。それは本人も自覚していた。

  しかし、あの規格外はどうやったって倒せる気がしない。たとえ妖怪の賢者だろうがそれは変わりないだろう。

 

  しかも、伝説の大妖怪は書物通りなら彼だけではないのだ。地底に潜む鬼神、西洋を支配せし炎魔、そしてそれらを倒し最強となった十一尾の桃姫。

  どれか一つでも幻想郷に力で手を出されれば、その時がこの世界の終わりだ。

 

  特に恐ろしいのは伝説の大妖怪最強の【産霊桃神美(ムスヒノトガミ)】。他二人は居場所が発覚しているが、この妖怪だけはまだ外の世界にいる可能性が高い。

  そして強大な力を持つ妖怪は、例外なく性格が歪んでいく。火神矢陽でさえ狂犬のように狂っていたのだから、きっと産霊桃神美の方はもっと頭のネジが飛んでいるはずだ。

 

  だからこそ、不安になる。果たして自分が博麗の巫女の仕事を無事こなせるかどうか。

  まるで台風が真近で通り過ぎていったのを目の当たりにして恐怖したかのように、酒を飲む霊夢の背中は小さく見えた。

 

「……ふぅ、まったく、悩みなんてらしくないぜ?」

 

  それを見越してか、魔理沙が手を霊夢の肩にかけながら話しかけて来た。

  ……魔理沙にはわからないだろう。逃げることが許されない強敵との戦いの恐怖なんて。

 

「ああ、お前の不安はさっぱりわからん」

 

  まだ何も言ってないのに、魔理沙はまるで心を読んだかのように適切な返事を心のつぶやきに返してくれた。

  そのまま、魔理沙は話し続ける。

 

「私は弾幕ごっこ抜きだと所詮木っ端魔法使いさ。弾幕ごっこでは私が強いけど、魔法じゃパチュリーに手も足も出ないだろうよ。それでも、霊夢と火神矢、どっちが強いかぐらいはわかる」

 

  でも……、と魔理沙は続ける。

 

「気にしてもしょうがないんじゃないか? 今すぐあいつに勝てるわけじゃないんだし、あいつも争いを起こす気はもうないみたいだしな。もし別の伝説の大妖怪とやらが来たら、もしかしたら手助けしてくれるかもだぜ?」

「……まったく、その根拠はどこから来るのかしら?」

「パチュリーが言うには、火神矢は対価があれば誰からの依頼も受けるらしいぜ。もっとも、その対価はロクなものじゃなさそうだけど」

 

  『悪魔との契約は身を滅ぼす』か……。

  なるほど、確かに奴は炎魔だ。いったいあの力を利用しようとして何百何千の血が流れたのだろうか。もしかしたら、悪魔でもないのにそれと似た異名を持つ理由はそう言うところにあるのかもしれない。

 

  ……でも、魔理沙の言う通りだ。

  今あれこれ言ったところで解決することは何もない。今考えるべきなのは、奴を倒すよりも奴との関わり方だろう。

  霊夢はそこまで考え、似合わないことにも自分が焦っていたことに気がついた。

 

「……ああもう!」

 

  調子が出ない、と言いながら地面に置かれた盃を奪うと、豪快に浴びるように酒を飲み干した。

  そして空になった盃を魔理沙へと突き出す。

 

「確かに今そんなことわかるはずないじゃないの。今やるべきことは、ここで食いに食いまくって明日の食費代を出来るだけ減らすことよ!」

「おっ、いつもの調子が戻ってきたな! よし、ここは魔理沙さんとひと勝負と行こうじゃないか!」

「望むところよ!」

 

  境内で巫女と魔法使いが顔を真っ赤にしながら酒を飲み続ける。外の世界に行ったら通報ものの出来事だろう。

  しかしここは幻想郷。そしてここはそんな全ての厄介ごとを受け入れる。

 

  結局、彼女らは散々飲んだ後同時に崩れ落ち、眠りについたらしい。

  紅魔館勢は既に帰っていたので片付けの手伝いをさせることができなかった、と後の霊夢は悔しがるが、同時にそれでも楽しい宴会だったと彼女は思うのであった。

 

 

  ♦︎

 

 

「……あの二人は何をあんなに馬鹿騒ぎしてるのよ」

「多分、色々溜め込んでいたものがあったんじゃないでしょうか」

 

  霊夢たちと少し離れた宴会の席で、レミリアは顔を真っ赤にしながら食べ物を食い荒らす二人を見て呆れた声を出す。

  その相槌を打つように、現在彼女のグラスに血のように赤いワインを注いでいた咲夜は口を開く。

 

「私はそこにいなかったのであの妖怪の実力は目にしてませんが、それでもお嬢様や美鈴の様子を見ればどれだけ警戒してるかがわかります」

「ええ。……咲夜、あれに喧嘩を売られても買うのだけはやめなさい」

「承知いたしました、お嬢様」

 

  レミリアの命令に、咲夜は頭を下げながら了承した。

  それでいい。あんな化け物に自分の家族を二度奪わせてなるものか。

  レミリアは自分の信頼する従者に、過去炎魔が紅魔館で何をやってくれたのかを語った。

 

「あれが紅魔館に来たのは数百年前。私が十代くらいのころよ。奴は美鈴を一撃で倒して紅魔館に正面から侵入すると、私の父を致命傷に至るまで痛めつけたわ。奴は止めは差さなかったけど、プライドを立ち直れなくなるまで砕かれた父はその後傷に負けて結局息を引き取ったわ」

「……そんなことが……」

 

  咲夜は文字通り目を見開きながら、レミリアの話に驚いていた。

  美鈴は弾幕ごっこは最弱だが、単純な殺し合いならレミリアに匹敵する力を持つ。それが一撃で負けたなど、冗談にしても笑えない。

  ただ、それが事実であるのは確かだ。

  咲夜は予想していたよりも警戒レベルを数段上げることにした。

  そこでふと、近くで例の妖怪を覗いている二つの視線に気づく。

 

「……美鈴にパチュリー様はいったい何をしているのでしょうか」

「さあ? 直接聞こうかしら。咲夜、呼んできてちょうだい」

「かしこまりました」

 

  そして数分後、美鈴とパチュリーがレミリアの前に連れて来られる。

  美鈴は特に気にしていないようだったが、パチュリーは若干不満げだ。時間を取らせてむきゅむきゅ言われるのも面倒なので、早速レミリアは本題に入った。

 

「それで美鈴にパチェ。あの妖怪をじっと見てたようだけど、どうかしたのかしら?」

「というか私が来たのはあの妖怪が目的よ。歴史に名高い炎の魔法使いを見極めたかったんだけど、あれはもう別格ね」

「私もパチュリー様と同じ理由ですね。じっくりと気を探って見ればわかるんですが、あれほどドス黒くて禍々しい気は見たことないです」

「へぇ……一応参考に聞くけど、アレと比べてどうだった?」

 

  敵の戦力を見極めるのも当主の役目。

  あまりアレに関わりたくないがそう割り切り、自分の部下と友人が集めた情報を聞く。

 

「……少ないとも魔法に関してはほとんどの分野はあっちの方が上ね。攻撃魔法のせいで目立たないんだけど、補助系も一通り使える感じがするわ」

「私が言いたいことはさっき言ったのでないですね。正直アレとお酒を飲んでる楼夢さんの正気を疑いますよ」

「……へ?」

 

  言われてレミリアは火神の横を凝視する。

  そこには確かに障害物があって見えにくかったが、楼夢の姿があった。しかもルーミアもそこに同席している。

 

「あいつは何やってんのよ……! 咲夜、今フランを楼夢のところに行かせちゃダメよ」

「その、すいませんお嬢様……もう手遅れです」

「フラァァァァァァンッ!!」

 

  チルノ、大妖精、フラン……そしてなぜか幼女ルーミアが、向こうの方で弾幕ごっこで遊んでいるのが見える。

  いや、この際ルーミアがなんで遊んでいるのかなんて突っ込んじゃいけない。結局レミリアが出した結論は。

 

「……もうどうにでもなりなさい……。レミリア、ツカレタ、モウネル」

 

  完全なる思考放棄だった。

  とはいえ、今回の異変は中々疲れたのも事実だ。

  フランたちがルーミアと遊んでいるのが今の唯一の心配だが、彼女が楽しいのならそれでいいのだろう。フランはもう成長した。今の彼女なら、この先起こりうる全ての出来事にも責任が取れるだろう。

 

  心配することは何もない。

  そう思うと肩の力が抜けて、気がつかない間に床に横になってしまう。

 

「お休みなさいませ、お嬢様」

 

  最後にその言葉を聞き、レミリアの意識は深い闇に落ちていった。

 

 

 

  ♦︎

 

 

  深い深い森の奥。

  人の手で切り開かれたその狭い空間には、三つの墓が並ぶように立っていた。

  その両脇の墓にはそれぞれ別物の帽子が被らされている。しかし、真ん中にはそれがなかった。

 

  いつまでも続くはずの静寂。しかし、奇妙な音とともにそれは崩壊する。

  ぐちゃり、ぐちゃりという音が辺りに響き渡る。

  見れば真ん中の墓から、黒い泥のようなものが少量ではあるが溢れているのだ。

 

「……ぁあ、……らだっ、……しゅぅおぉぉ……っ!」

 

  何かの言葉のようなものが、泥から聞こえてくる。しかしそれは途切れ途切れで、文章として意味をなさなかった。

 

  泥は止まることなく、少しずつ、少しずつ溢れ始める……。

 

 

 

 






「ハロウィンラッシュ異変終わりました! そして次回の投稿は六月の十何日ぐらいになりそうです。いつも眠たい作者です」

「相変わらずの出番の少なさに泣きたい狂夢だ」


「んで、なんで次の投稿期間がそんなに長くなるんだよ。いくら修学旅行が近くても、せいぜい三日か四日程度だろ?」

「それがですねぇ、修学旅行が終わるころには私ちょうど中間テストの勉強期間に入るんですよ。なので次回の投稿は二、三週間後ってことになります」

「まったくしゃーねェな。まあ今章も終わったしちょうどいいか。それじゃ次に会うのはずいぶん先だが、できればまた見に来いよ」

「できるだけ早く投稿したいと思うので、以後お気に入り登録&高評価よろしくお願いします。それじゃ、次回もキュルッと見に来てね!」

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