東方蛇狐録~超古代に転生した俺のハードライフな冒険記~   作:アンニュイな千鳥足
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テスト終わりましたァァァァ!!
これからは週に一、二回投稿してくので見ていってください!


妖々夢編
白咲家長女の一日


  白咲美夜の朝は早い。

  午前五時前には自然と目が開いており、まだ若干残る眠気を払って、布団から出る。そして、お気に入りの服に着替える。

  それは、花の紋様が描かれた綺麗な黒い着物だった。昔は三姉妹全員色違いの巫女服だったのだが、今では好みなどが完璧に分かれており、清音は白がベースのフリル付きの洋服、舞花は青がベースになっているパーカーを着ていることが多い。

 

  着替え終えた後、布団をたたみ、その横に置いてある黒い愛刀——【黒咲(くろさき)】を帯刀する。

  そして部屋に置いてある鏡で自分の髪や服に汚れがないかを確認した後、美夜は今日も一日頑張るぞと気合を込めて、ドアを開いた。

 

 

  ♦︎

 

 

  一通り異常がないかを確認した後、美夜はいつも通りの修行メニューに取り組んでいた。

  現在は楼夢に歩いていけば何時間かかるんだよ、と言わせた神社への階段を全力ダッシュで駆け抜けているところである。

 

  冬なのにも関わらず、生い茂る金色の葉をつけた木々が、美夜の視界の前から後ろへどんどん流れて行く。美夜は楼夢のように素早さにステ全振りしているような異常な速度は出せない。それでも大妖怪最上位が全力で走る速度は、常人では目に追えないほどだ。

 

  そして前方に、とうとう白咲神社本殿の鳥居が見えてくる。

  しかし気を緩めることはない。目的地にたどり着くまでがダッシュ練習とでも言うように一切速度を緩めることなく突き進み、彼女が最終的に止まったのはその鳥居の足をタッチしてからだった。

 

  「これで、百往復……っ」

 

  ダラダラと流れる汗をタオルで拭く。そして今日のノルマ達成に満足感を得る。

  時計は屋敷中にしかないので何時かは見えないのだが、なんとなくいつもの慣習で六時半ほどだと推測する。

 

  流石にこの時間になると朝食が食べたくなるが、まずはこの修行を終えてからにしないと。

  それに、白咲家にこんな時間帯に起きる人間は美夜以外いない。『だろう』ではなく、これは間違いなく断言できる。

  だから彼女らが起きる間、美夜は長刀を抜いて次の修行に移った。

 

  一振りで二、三回ほど空気と、降り積もる雪が切り裂かれる。

  繰り返す都度に数百回ほど。袈裟斬り、逆袈裟斬りなどなどの様々な角度から雪を切り裂いていく。

 

「【氷結乱舞】」

 

  氷を纏った刀で七つの斬撃を、仮想の敵に繰り出す。

  四肢を断って体をX状に切り裂いた後、止めに相手の腹部に貫通するほどの突きが叩き込まれた。

 

  そうして次々と白咲流剣術を繰り出して行くこと一時間ほど。

  先ほどの山百往復とは比べ物にならない量の汗が体中から噴き出しているのを感じ、ゆっくりと刀を納刀する。

  絶え絶えな白い息を吐きながら、屋敷内に戻っていく。朝の修行の後、温泉に入って極楽に浸かるのが、この屋敷を建ててからの彼女の日課になっていた。

 

  まだ朝なのにも関わらず汗がびっしり染み込んでいる着物を洗濯機に突っ込む。別に服の予備は数十はあるので、あれ一つ今日着れなくなったところで支障はない。

 

  裸になった後は、しっかり体を洗ってから湯船に浸かる。

  ここの温泉は無駄に広く、数十人が同時に入っても困らないほどだ。清音や楼夢はよく泳いで遊んでいたりする。もちろんマナー違反なのできっちり叱っているのだが。

  ちなみに自慢の黒い尻尾は入浴中は妖術で消している。これは獣系の妖怪全体に言えることだが、抜けた毛が湯に浮いて汚く見えてしまうためだ。

  猫妖怪のように尻尾が小さければまだ大丈夫なのだが、なんせ美夜の尻尾は九本、それも一本一本が等身大サイズまである。

 

  肩まで湯に浸かりながら、今日の予定を組み立てていく。

  朝食は……今日はサンドウィッチでいいか。どうせ楼夢や清音は朝食の時間帯に起きてこないのだし、舞花と美夜二人の分だけならそれで十分だろう。

 

  そうやって舞花が起きた気配が感じられるまで、美夜は温泉でゆったりとくつろぐのであった。

 

 

  ♦︎

 

 

「ご馳走さまでした」

 

  朝食を食べ終わり、美夜は使った食器を運んで宴会場兼ダイニングルームを後にしようとする。

  まだ中にはのんびりとサンドウィッチを頬張る舞花の姿が残っているが、彼女は彼女で台所に食器を置きに来てくれるので問題はない。

 

  この後は食器を洗った後、屋敷内の部屋を掃除するつもりだ。

  とはいえ、ここまで大きな屋敷を一日で綺麗にできるわけはない。なので、今日は一階、明日は二階というように、日ごとに分けて掃除をしている。……地下工房? それは彼女の管轄外なので、舞花が担当している。

  ちなみに今日は二階だ。一階は宴会場と台所、そして温泉。三階はそれぞれの部屋しかないので、ある意味ここが一番掃除するのに大変な階だったりする。

 

  洗い終わった食器を食器棚に入れて、二階へ向かう。

  まず向かったのはよく使われる居間だ。

  ここにはソファーや大型のテレビなど、家族や少数の客が集まってくつろぐのに役立つ家具や電化製品が所々綺麗に置かれている。

  昼後は父である楼夢が一番ここにいるのだが、今は昼前なためいないらしい。ちょうどいいので、テレビなどにこびりついた埃などを取り除く作業に入った。

 

「……まったく、ゲームはやり終わったら片付けろとあれほど言っているのに」

 

  大きな薄柄テレビの前に乱雑に置かれたWiiUを目にして、美夜はため息をつくと、それを元の場所に戻した。

  だが、数日後には先ほどの状態に戻ってしまうのであろう。主に父とその友人のせいで。

  そう思うとやるせなさに再びため息をついてしまう。

 

「今度夕飯抜きにしてでも片付けさせるべきか……」

 

  その時、三階の個室で父が涙目で叫んだ気がするが気にしない。多分空耳である。

 

  そんなことを考えているうちにここの掃除は全て終わったらしい。後はここよりは楽な別部屋の掃除を終わらせれば、晴れて自由の身だ。

  そうだ、これが終わったら枯山水と盆栽の手入れをしよう。

  そうと決まれば善は急げ。残りの仕事を終わらせるため、美夜は駆け足で次の部屋に向かうのであった。

 

 

  ♦︎

 

 

  午後になったばかりのころ。ここからが厄介な時間帯である。

  裏庭ので枯山水と盆栽の手入れを終わらせた美夜は、表の池や芝生がある大きな庭に向かった。

  そこで見たものは、

 

「オラァッ! 死ねよアホ毛!」

「ハッ、お前こそくたばれこの白毛頭!」

 

  互いに罵倒しながら、リアルファイトを続ける楼夢と火神の姿があった。

  火神はバールではなく、身長ほどの長さがある鉄パイプを棍のように使い、器用に振り回す。

  対する楼夢はいつも通りの刀でそれを受け流し、向かい打った。

 

  ……それらの衝撃のせいで庭が荒れまくっているのには目を瞑っておこう。

 

  凄まじい戦い。

  火神が鉄パイプで足払いをかけたと思えば、なんと楼夢は空中で前に一回転することでそれを避け、そのまま勢いを利用して踵落としを繰り出す。

  それを火神は気の力を流した左腕で受け止め、その後バックステップで距離を取った。

  しかし楼夢はそれを見逃さない。

  相手のバックステップに合わせて自分も前進することで距離を詰め、二振りほどで十以上の斬撃をそれぞれの急所に繰り出した。

 

「おっと、危ねぇ!」

 

  しかし火神は鉄パイプを前方に高速で回転させることで盾を作り出し、迫り来る全ての斬撃を弾いた。

  そして刀を当てるために近距離にいた楼夢に、ノーモーションでの飛び膝蹴りを放った。

  顔面を狙ったそれは、しかし楼夢が後ろに飛びながらスウェーすることで外れてしまう。

  しかし火神はすぐに追撃するため、空中にある自分の体を先ほどの楼夢のように一回転させ、後ろに仰け反ったままの楼夢に踵落としをやり返した。

 

  起爆物が爆破したかのような音とともに、地面に小さなクレーターが出来上がる。しかしそこに楼夢の姿はなかった。

  楼夢は仰け反った状態のまま体を横に捻るように回転させて移動することによって、火神の踵落としを避けたのだ。

  しかも体を回転させると同時に複数斬撃を繰り出しており、彼の膝には五つほどの切り傷が出来上がっていた。

 

  何という高レベルな戦いだろうか。

  火神は楼夢が虚弱なため、本気で力を込めてはいないだろう。しかし技術面に関しては本気だったはずだ。

  だが、それを上回るのが楼夢の技量だ。

 

  彼の剣術は白咲流に回転斬りを加え、それを重視したもので、美夜が使う正式な白咲流剣術とは少し違う。

  それでも、仮に自分が父と同じ剣術をマスターしていたとして、果たして体重を後ろに流した仰け反り状態のまま、あの高速の踵落としを避けれただろうか。そして避け際に斬撃を複数繰り出すなど、不可能だ。

  今の瞬間だけでも十秒ほどしか経っていない。しかしそれだけでも、この戦いには学ぶべきものが山ほどあった。

 

  しかし……。

  不意に、自身が己の刀の柄を強く握りしめていることに気づく。

  やはり見てるだけでは我慢できない。どうにかして自分も加わりたいものだ。

 

  そうやってジッとしていると、ふと顔を上げた時に二人が手を止めて美夜を見つめていることに気がついた。

  はて、どうしたのだろうか……?

 

「もしかして、美夜もやりたいの?」

「えっ、いえその……はい」

「そんなに柄握りしめてたら嫌でもわかるよ。というわけで火神、美夜の相手を頼んでいいかな?」

「ああ? 何で俺がそんなことを……」

「十万でどうかな?」

「……いいだろう。受けてやる」

 

  買収されたよこの人……。

  とはいえ、二人にそこまでバレてたなんて恥ずかしいものだ。

  しかし同時にチャンスでもある。ここは自分の実力を確かめるため、全力でぶつからせていただこう。というか全力じゃなきゃ死ぬ。

 

  火神の正面に立ち、するりと黒光りする日本刀を抜刀する。

  対する火神は楼夢と戦っていた時に使っていた棍並みの長さの鉄パイプを肩に置いている。

  楼夢の神理刀と打ち合っても切れてないのは、おそらく火神の魔力が込められているからだろう。

 

「……一つ気になったのですが、どうして鉄パイプ何ですか?」

「あー、それはだな……」

「それは火神が元々武器にこだわらないストリートファイトを得意としてるからだよ。その中でも鉄パイプはバールと同じくらいよく使うらしいよ」

 

  火神が答えづらそうにしているところを楼夢が割って入り、代わりに答えた。

  ということは……。

 

「もしかして妖魔刀がバールなのも、そういった理由から何ですか?」

「お、鋭いね。まあ火神は落ちてる物だったら鉄パイプでも店の看板でもバイクでも振り回すし、特に武器にこだわりがないからよく使うバールになってるってわけ」

「それどこの東城会破門されたヤクザですか……」

 

  というかこの人に武器は必要ないんじゃ……、という言葉は飲み込んだ。なんとなく言っちゃいけない気がしたから。

  それは置いといて、そろそろ集中しなくては。火神は決して美夜が本気を出さないで戦える相手ではない。

  美夜の構えは、日本刀を両手で握り、真正面に中段で構えるオーソドックスなスタイルだ。本来の白咲流剣術もこの状態から繰り出すことを前提としており、楼夢のように片手で下段に構えるスタイルは剣士の中でも特に異常とも言えた。

 

  すり足で徐々に近づいていき、そして——

 

「……参りますっ!」

 

  地面を左足で蹴り、一気に距離を詰める。

  そして刀を真っ直ぐ振り下ろし、火神を両断しようと斬撃を繰り出した。しかしそれは予想通り、火神がパイプを軽く動かしただけで弾かれてしまう。

  だが、そこでまだ剣舞は終わらない。白咲流の型に沿って、目にも止まらぬ速度で何十もの斬撃を次々と繰り出していく。

 

「けっ、まだ甘ぇよ!」

 

  斬撃を大きく弾いた後、火神は鉄パイプを前方に構え突きを放つ。

  美夜はそれに横から軽く刃を当て、流れる水に身をまかせるように自然に受け流した。

  だが、火神はストリートファイトの天才。このように型に沿った技は変則的な彼にとっては大好物だ。

  火神はパイプを突き出した後、刃で押さえられていながらも美夜がいる方向に強引に力を込め、なぎ払った。

  結果、その凄まじい怪力に耐えきれず、美夜の体は吹き飛ばされてしまう。

 

「オラオラッ! 反撃しねぇと痛ぇぜ!」

 

  バランスをとって地面に着地して、すぐにその場から退く。

  すると先ほど美夜が着地した地点に、振り下ろされたパイプが突き刺さっていた。

 

  危なかった……。あれを食らったら一瞬で終わりなのは目に見えている。パイプを抜いた後ギシギシメギメギ鳴る地面が語っていた。今ので地盤かなんかが壊れたりしてないか心配だ。

 

  わかっていたけど、圧倒的に格が違う。でも、一太刀くらいは浴びさせてやる。

 

  火神は乱暴にパイプを何回も振り回してくる。普段ならここでカウンターの一つでもしているのだが、火神が相手だと野生の勘で避けられるので安易に使用はしない。

 

「くっ、【氷結乱舞】!」

 

  しかし守ってばかりでは拉致があかない。

  活路を見出すため、十八番の技を繰り出すが、この時美夜は自分が想像以上に焦っていたことに気づいていなかった。

  よく考えればわかることだ。【氷結乱舞】は美夜の得意技と同時に楼夢の得意技でもあるのだ。

  なら、楼夢のライバルである火神がその技を知らないわけがない。

 

「ヒャハッ! 【灼熱乱舞】!」

 

  炎を纏った七連撃が繰り出される。それはまるで【氷結乱舞】に似て……いや氷が炎になっていることを除けば、ほぼそれは同じものだった。

  六つの連撃はまるで鏡合わせのようにぶつかり合い、そして止めの突きが衝突した瞬間——美夜はまるで巨大な岩がぶつかってきたかのような衝撃を受け、軽々と吹き飛ばされた。

 

  しかしそれで終わらない。

  宙を舞う美夜に合わせて火神は跳躍し、狂気の笑みを浮かべて飛び蹴りを彼女の腹部に叩き込んだ。

 

「ご……かはっ……!」

 

  一度地面に叩きつけられただけでは足らず、バウンドして二回目の落下でようやく勢いが止まった。

  荒れる息を整えながら、走る激痛の原因である腹部に手を当てる。

  ……折れたか。

  気も込められてないことから、かなり手加減されていたらしいが、それでも美夜の肋骨を数本折るには十分な威力だった。

 

  火神はその蹴りの感触に満足すると、上機嫌に鼻歌を歌いながらパイプを肩に担いで未だに膝をついている美夜の前へと立ちはだかった。

 

「ギブアップするか?」

  「まだ、まだぁ……!」

「そうかそうか……ならここで死んでろや!」

 

  火神は止めにと鉄パイプを大きく振り上げる。

  その時、彼の本能が違和感を訴えた。

  ……こいつ、いつの間に納刀してやがった……?

  そして次の瞬間、火神は美夜の思惑に気づき、急いで鉄パイプを縦に構えた。

 

「……【疾風迅雷】!!」

 

  音を超えた斬撃が、火神をすり抜ける。

  そして一泊遅れて、鉄パイプが二つに分かれると同時に火神の脇腹から血が噴き出した。

 

  美夜が繰り出したのは抜刀からの居合斬りだ。しかし、ただの居合斬りではない。『究極』の居合斬りだ。

 

  ——【疾風迅雷】。

  雷を纏った刀で居合斬りを繰り出す、美夜の持つ技の中で最強クラスの技だ。雷を纏うことでその斬速は一時的に音を超え、光に届くほどまで跳ね上がるという。

 

  そんな斬撃に反応した火神は流石だが、単なる鉄パイプじゃ防げるはずもなく、パイプを両断した後、その勢いのまま火神の脇腹をすれ違いざまに切り裂いた。

  それが、たった今起こった出来事である。

 

「ちっ、ナメてんじゃ……ねぇぞッ!!」

 

  火神は一瞬動揺したが、すぐさま態勢を整え、この戦いで一番凄まじいキレの回し蹴りを、美夜に繰り出す。

  大技発動直後で硬直し、隙だらけの彼女では到底防げるはずもなく……。

 

  ——鈍い音と頭部への強烈な衝撃。それを受けた美夜の意識は暗転した。

 

 

  ♦︎

 

 

  愉快なBGMと様々なSEを耳にして、二階リビングのソファに寝かされていた美夜はようやく意識を取り戻す。

  頭に当ててある冷たいタオルを取り除くと、上半身を起こして何が起きたのかを思い出そうとする。

 

  ……そうだ。一撃入れて油断した隙に回し蹴りで顔を蹴られたのだ。

  その割には顔や体に怪我の跡はない。おそらく父や清音の回復術式によるものだろう。

 

  と、そこまで意識がはっきりしたところで、あえて無視していたうるさい騒音の正体に目を向ける。

  そこには——。

 

「おい火神! なに栗野郎に私を投げつけてやがるのさ!」

「はははっ、ざまぁみやがれ! ……ってさりげなく亀の甲羅を近距離シュートしてくんじゃねえよ!」

「あ、ちなみにここ強制スクロールだから先に行くね」

「俺を置いてくんじゃねぇよ!!」

 

  仲良く? テレビゲームに没頭する大人二人の姿があった。

  大きな薄型テレビには楼夢が操る赤い帽子を被った配管工と、火神が操るそれによく似た緑色の弟がステージを駆け巡っている。

 

  緑帽子がフィールドの穴を飛び越えようとジャンプする。

  しかしそれを待ってたかのようなタイミングで赤帽子は緑帽子の真上にジャンプした。

  結果、どうなったか。

  赤帽子は緑帽子を踏み台にして空高くジャンプ! 無事向こう側にたどり着くことに成功する。

  一方緑帽子は空中で踏み台にされたため下に押し出され、奈落の底へと落ちていった。

 

「……さらば火神、君のことは忘れない」

「わざとだろ! 今絶対わざとだろ!?」

 

  その後はいつも通り、敵キャラに向けてそれぞれを投げあいながら進むという、明らかに間違った勝負が画面上で繰り広げられた。

  それでもステージクリアできてしまうんだからすごい。

  ……さて、このままだと乱闘が始まってしまいそうなので、そろそろ止めに入るか。

 

  美夜はコンセントに刺さっているコードを引き抜く。するとブチんっという音とともに、画面が真っ暗になった。

 

「な、なにするのさ美夜! 物事にはやっていいことと悪いことが……」

「ほう? なら喧嘩の被害で家具を数十回破壊するのは、やってはいけないことには入らないと?」

「うっ……!」

 

  前例があるため、楼夢はバツの悪そうな顔で美夜から視線を逸らす。

  その子供のような動作にため息をつくと、先ほどの戦闘での汚れを洗い落とすために、再び温泉へと向かおうとする。

  しかしその前に、楼夢が美夜を呼びとどめた。

 

「あ、そうそう。火神に使ったあの技、避けられたり一撃で倒せなかった時の繋ぎを考えておくといいよ。そうすれば避けられた後も追撃できるしね」

「……助言、ありがとうございます」

 

  そう言い残し、リビングを背にする。

  そして楼夢の視線が完全に見えなくなった瞬間、美夜は今度は感嘆のため息をついた。

 

  一撃当たった? いや、あれはただ武器が貧弱だっただけだ。あの速度にも火神は対応してきたし、本来の相棒である憎蛭だったら、確実に防がれていただろう。

 

「まだまだ精進しなくては……」

 

  拳を握り、まだ来ぬ明日のための気合を今から入れた。

  ただ、入りすぎたため、先ほどの戦闘を思い返していたらのぼせてしまい、妹たちに救助されたのはまた別の話だ。

 

 

 




「ヒャッホーウ! 勉強したけど理数が相変わらず意味不明で爆死した作者です!」

「ついでにソシャゲのガチャも爆死した狂夢だ」


「今回は美夜の一日の話だったな」

「ええ。そして次回から妖々夢に入ると思います」

「それはそうとよ……火神の妖魔刀がバールの形状をしている理由ってそういうことだったのか」

「まあじゃなきゃバールなんて選びませんよ。そしてここで以前紹介した各キャラの保有スキルの説明といきましょうか!」

「今回のは火神のやつだな。えーと、説明するのは……『チンピラの極意:EX』に『ストリートファイト:EX』……? んだこれ?」

「『ストリートファイト』は身近な物を利用して戦う技術がアップします。そして『チンピラの極意』はありとあらゆる手段で敵を攻撃する技術が上がります」

「……『チンピラの極意』がよくわからねェな。具体的には?」

「スタンガンや鈍器、挙げ句の果てには刃物で敵を攻撃したり、安全性皆無のエセ格闘術を使ったりすることができるということです」

「要するに昔のヤンキーの喧嘩術が使えるようになるってことか。ちなみにEXだとどのくらいになるんだ?」

「別ゲーで例えると、龍が如くの桐生さん並みになります」

「……それもう喧嘩通り越して殺してるだろ」

「興味のある方は是非動画でも見てください。ヒートアクションって調べればすぐに出てくると思いますので」







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