東方蛇狐録~超古代に転生した俺のハードライフな冒険記~ 作:日差丸
「さて、これで話を聞いてくれますよね?」
黒光りする日本刀を納刀しながら、美夜は霊夢へと問いかける。
その手の中には、根元まで赤黒く染まったナイフが握られていた。
それをボロボロになった咲夜に投げ返すと、改めて霊夢と向き合う。
「……仕方ないわね。話ぐらいは聞いてやってもいいわ」
やれやれと言う風に霊夢は大きくため息をつく。
ここで弱った目の前の妖怪を倒すのもいいが、絶対に後で報復がやってくるだろう。霊夢としても、幻想郷最強勢力と言われる白咲神社を敵に回すのだけは避けたかった。
そして何より、弾幕ごっこの敗者は勝者の言うことを聞かなければならない。それは博麗の巫女として従わなければならないことだった。
美夜はそれを聞いて礼を述べると、お辞儀を一つ。
そして自分が何のためにここにいるのかを語った。
「では、改めて自己紹介させてもらいます。私は白咲神社の三姉妹が一人、白咲美夜です。今後お見知り置きを」
「んなこともう知ってんのよ。もうちょっと新ネタ持ってきなさい」
暗に要件を早く語れと霊夢は言う。
ぶっきらぼうで礼儀知らずな態度だが、それは彼女の素であるようだ。美夜の性格上こういった人物を見ると修行させて更正させたくなるのだが、人間が妖怪の話を聞いてもらえるだけありがたいので今回は説教はなしでさっさと話を続けた。
「単刀直入に言います。私が今ここにいるのは、この異変を解決するためです」
「……寝言は寝てから言いなさい。なぜ今になって大妖怪最上位ほどの妖怪が動かなければならないのかしら? 本来は命令する立場なのに」
「いえいえ、私たちにも絶対的な上下関係はありますよ。そうですね—–—–父の命令でここに来た、と言えば信じてもらえますでしょうか?」
「なっ……!?」
それを聞いて、霊夢と咲夜の表情が驚きと緊張で張り詰められた。逆に魔理沙は今の一言の意味が理解できず、ポカンと間抜けな表情をしている。
「な、なあアイツのオヤジってそこまで偉いのか?」
「……あなたもちょっとは頭使いなさいよ。白咲三神より偉いやつなんて、そこの主神しかいないじゃないっ」
「……と言うと?」
「……
流石に、そこまで言えば魔理沙も理解した。
前に弾幕ごっこで戦った圧倒的強者、火神矢陽。それを超える存在がこの件には関係しているのだということを。
しかし、霊夢から聞いた話では産霊桃神美は消息を絶っていたはずだ。そのことを問い詰めると—–—–。
「……知らないわよ。というかそんな情報知りたくもなかったわ」
と、苦い表情で霊夢に返されてしまった。
その代わりにと、美夜が魔理沙の問いに答える。
「父は去年帰ってきたばっかですよ。まああの人は幻想郷の問題ごとには首を突っ込まないと管理者に公言しているので心配は要りませんよ」
「……その証拠がどこにあるのかしら?」
「この一年幻想郷が平和だった、ということが証拠にはなりませんか?」
それを言われてしまえば、霊夢もこれ以上は追求することはできなかった。
「納得していただけたようですね。それじゃあ次の要件なんですが、どうか私をあなた方の異変解決に同行させてはもらえないでしょうか?」
「……好きにしなさい。ただし、邪魔したら容赦なくぶっ叩くから」
「おい霊夢っ!」
なんの相談もなく決めてしまった霊夢に、思わず声を上げる魔理沙。しかし言葉を言う前に、咲夜の手が彼女の肩に置かれた。
「魔理沙、落ち着きなさい」
「でもよ咲夜……アイツは信用できるのか?」
「さあ? でも白咲神社側に私たちを妨害するメリットはないと私は考えてるわ。あっちが異変の首謀者じゃない限り、ね」
それに、と咲夜は付け足す。
「私個人は弾幕ごっこで負けたから彼女の要求を受け入れるしかないわ。これで二対一になるわけだけど、あなたはどうするの?」
「……はぁ、まあ霊夢が決めたことだし、私は従うとするぜ」
これで全員の意見が一致した。
ということは、美夜の加入は認められたということになる。
霊夢個人としては己の勘が何も言ってこないことからある程度は彼女を信用したいところだ。それは一度戦った咲夜も同じだろう。問題点は魔理沙のようにも見えるが、霊夢はこれが魔理沙なりの相手を認めた時の対応だと知っていたので、特に問題は起こらないであろう。
加入が認められたことで美夜は深くお辞儀をし、霊夢へ握手をするために手を突き出した。
「改めてよろしくお願いします、博麗の巫女」
「……霊夢よ。私の名前は博麗霊夢。今後はそう呼びなさい」
「わかりました。ではよろしくお願いしますね、霊夢」
二人は互いに手を握る。
こうして、彼女らの間で新たな友情が—–—–。
「……あなたみたいな礼儀正しいタイプ、私苦手かも」
「……握手早々それは酷くないですか?」
—–—–いきなりの辛辣な言葉に、美夜は思わずズッこけるのであった。
♦︎
「……結構時間食いましたね」
「仕方ないぜ。ああなった霊夢は誰にも止められない」
大きなタイムロスをしてしまったことに、魔理沙と美夜は同時に大きなため息をつく。
ことの発端は数時間前まで遡る。
美夜を新たに加えて改めて異変の捜査を行っていたところ、彼女らは見たこともない場所に迷い込んでしまった。
そこで出会った化け猫曰く、ここは訪れた者に幸福をもたらすと言われている
このことを聞いた霊夢は大興奮。片っ端からマヨヒガの物を持ち出そうとする霊夢に化け猫が怒り、弾幕ごっこまでに発展した。……まあ、結果は言わずもがなだ。
そうして化け猫を倒した後、霊夢のお宝探しが始まり、それに時間を浪費してしまったというわけだ。
まったく、異変解決中だからあまり多く持ち運べなかったからとはいえ、厳選に時間をかけすぎではないだろうか。
そう思う美夜。だが悲しいことに、金持ちの彼女と霊夢では、そこの感覚が共通されることはないだろう。
すっかり闇に染まってしまった空を、四人は飛行する。
夜ということもあり、昼間よりも風が冷え込んでくる。美夜は妖怪だから大丈夫だが、他の三人は寒そうだ。
特に霊夢と咲夜。片方は白咲神社の装束にも似た、妙に露出が多い巫女服。またさらに片方のメイド服なんかは白い太ももがくっきり見えるほどのミニスカート仕様となっている。
いくら正装とはいえ、若干製作者に悪意を感じてしまった。
そんなことを考えると、下で木々が生い茂る森を見つけた。
行ったことはないが、ここがおそらくは魔法の森であろう。
「おー、魔法の森に帰ってきたぜ。どうする? もう夜も遅いしうちで休んでいくか?」
「……そうね。手がかりも見つからないし、私もそろそろ疲れたわ」
「霊夢は主に宝漁ることしかしてない気がするんだぜ」
そのつぶやきは聞こえてしまったようで、魔理沙は霊夢にガン付けられる。それにビビった彼女は一目散に先頭に立つと、霊夢から逃げるように速度を上げた。
案内がそれでいいのか問い正したいことだが、まあ誰も気にしてないようだし無視しよう。
その時、ふと横に並走していた咲夜に声をかけられてた。
「ねえ……あれは何かしら?」
咲夜が指差した先には、確かに何かが魔法の森の中に建っていた。しかし人間の視力ではそれが限界らしい。
だが、妖怪である美夜にはそれがなんなのかが見えていた。別に隠す必要もないので、それの正体を彼女は咲夜に話した。
「あれは……家ですね」
そう、家だ。本来なら住むことすら困難なこの森の中で、立派な家が建っていたのだ。
しかし、それだけだったら特に気にはしなかっただろう。珍しいが、魔理沙という実例がある以上ここに誰かが住んでいてもおかしくはない。
だが、あの家には明らかに不信なことが一つだけあった。
「ねえ……あの家に桜の花弁が集まっているように見えるんだけど」
「見えるんじゃなくて実際にその通りなのよ」
断言する霊夢。
空から降ってくるピンクの花弁。それらがあの家の近くを通ると、急に掃除機のようにあそこの煙突に吸い込まれているのだ。
怪しい。全員がそう思ったことだろう。
「魔理沙さん、あそこの家の住人について何か知りませんか?」
「さんはつけなくていいぜ。んで、あそこの家には確か魔女がいたはずだぜ」
「魔女? あなたのようなエセではなくてパチュリー様のような?」
ふと気になったのか、咲夜が話に割り込んできた。
エセというある意味的を得ているような表現をされて、魔理沙は苦笑いする。彼女自身火力バカで魔法らしい魔法を使えないことを自覚していたこともあり、苦笑いでその場をごまかすしかなかった。
しかし、そんな魔理沙でも反論できる要素は一つだけあった。
「チッチッチ、咲夜は勉強不足だな。魔女は種族で魔法使いは職業のことを指すんだ。よって私は魔女らしくなくて当然なんだぜ」
「……魔法使いとしても胡散臭いと思うけど」
「なんだとコラ!」
そういう喧嘩っ早くて男らしいところがまた魔法使いらしくないのよ、とさらに咲夜は付け足す。それによって魔理沙はさらにヒートアップ。ついにはミニ八卦炉まで取り出す事態となった。
しかし途中で霊夢がヤクザのごとく二人を睨みつけたことによって、事態は収束した。
それを見た美夜は思う。
刺青入れてそうなヤクザ巫女にエセ魔法使い、そして毒舌メイド。
……あ、私この人たちについていったの失敗だったかも。
さて、話は切り替わるがこれからどうするかについて四人は話し合う。
まず、ここを無視するという選択肢はない。もしここで無視して、それでここの住人が犯人だったらマヌケとしか言いようがない。座布団十枚くらいはもらえそうだ。
ではここの住人に接触するということは確定ということになるが、今度は誰が行くかだ。
「私は嫌よ」
「私もだぜ」
「私も遠慮しておくわ」
「え、えーと……私もできればやりたくないのですが……」
自慢ではないが、ここの四人はお世辞にも社交的とは言えない。美夜はまだマシだが、他はむしろ外の世界だと速攻で敵を作ってしまうだろう。
なんせメンバーがヤクザ巫女にエセ魔法使い、さらには毒舌メイドである。美夜でも玄関前にこんな人たちが揃って尋ねてきたら即刻ドアを閉じるだろう。
話し合いではラチがあかないと判断し、結局じゃんけんで決めることとなった。
その結果—–—–。
「……マジかよ……」
全員がパーを出した中一人だけグーを出してしまった魔理沙に決まった。
ものすごい嫌そうな顔をしているが、流石に約束を破ることはしないらしい。渋々と箒を地面に近づけさせようとする。
しかしその時、魔理沙の頭に一つの解決策が浮かび上がった。
「……なあ、あの家にいるやつをここに呼び出せばいいんだろ?」
「ええそうよ。夜になって一層寒くなってきたし、早く行ってきなさい」
「……いや、その必要はないぜ」
魔理沙はニヤリと黒い笑みを浮かべると、自慢のミニ八卦炉を魔女帽子から取り出す。そしてそれの照準を森の中に建つ家に向けた。
……まさか。
美夜が魔理沙の奇行の意味に気づき、止めようとした時にはすでに遅かった。
「【マスタースパーク】ッ!!」
—–七色の巨大閃光が繰り出された。
それはまるで天から降ってきたかのように家の真上にぶち当たると、轟音と煙を巻き上げて大きな穴を空けた。
「なんて非常識な……」
もうヤダこの人たち。
隣では霊夢が腕を組んで「考えたわね……」と賞賛にも取れる言葉を呟きながら関心している。
おい博麗の巫女、それでいいのか!?
あまりにも問題がありすぎる行動に、美夜はもう声を荒げる気力すら湧かなかった。
そして当然なんの恨みもなく天井を壊されたら怒るのは当たり前で。
遠目からでも怒りのオーラを感じ取れる少女が、ものすごい剣幕を立てながらこちらに迫ってきた。
「ちょっとそこのあなたたち! いきなり人様の家にレーザー打ち込むなんて頭がおかしいんじゃないかしら!?」
「よし、釣れたぜ」
怒っている魔女を尻目に、魔理沙は親指をこちらに立ててサムズアップする。
鬼かこの人。
改めて魔女の方を見てみる。
青のワンピースにロングスカートを着用しており、その肩には白のケープを羽織っている。
絹のように美しい金髪の上には赤いカチューシャのようなものをつけており、まるで人形のようだと美夜は思った。
ただ今は魔理沙が怒らせてしまったことによって感情が激しく現れており、それが彼女が意思を持った生物であるということを証明していた。
「ふん、所詮は野蛮な野魔法使いね。そんなんだから未だに魔女になることすらできないのよ」
「けっ、温室魔女よりかはよくないか?」
売り言葉に買い言葉。
魔女は完璧に魔理沙を見下すと、その未熟さに呆れたようなポーズをとる。
その言葉を聞いて魔理沙は魔理沙で魔女のことを揶揄して引きこもりと表現した。
二人の口論は続く。
「そしてあいにくとだが、私は今を気に入ってんだ。当分人間をやめるつもりはないぜ」
「そこが未熟だと言ってるのよ」
「温室にはわからないだろうな」
「都会派魔女よ。間違えないでくれるかしら」
うん、そこはどうでもいい。
しかし、このままではキリがない。そう判断した魔理沙はミニ八卦炉を魔女へと向け、カードを数枚帽子から取り出した。
「そこまで未熟って言うんだったら、私の力を試してみるか?」
「……やっぱり野蛮ね。でも今回ばかりは私も賛成かしら」
魔女は手をパンパンと打ち鳴らし、何かの合図を送る。
するとどこから出てきたのか、魔女の周りには二つの人形が出現した。
そして魔女は懐からスペルカードを数枚取り出す。
この二人の行為から、何が起こるかは初めから決まっている。
「一応礼儀として名乗っておくわ。アリス・マーガトロイドよ」
「霧雨魔理沙。普通の魔法使いだ!」
互いに名乗りを上げた後、魔女アリスはどこからともなく大量の人形を。魔理沙は高火力弾幕を展開した。
そして幻想郷の闇世の中、弾幕ごっこが始まった。
「もうそろそろ中体連の季節ですねぇ。部活に入っている全国に学生さんたちは頑張ってください! 作者です」
「まあお前には関係ないだろうがな。狂夢だ」
「さてさて、今回は魔女と魔法使いについて」
「一応公式では魔女=魔法使いって感じなんだが、この小説だと何が違うんだ?」
「この小説ではオリジナル設定として巫女やメイドのように、魔法を使う職業のことを魔法使い、そして魔女というのは妖怪の一種ということにしてあります」
「まあわかりやすく言うと魔法を使う人間が魔法使い、魔法が得意な妖怪の種族の一つのことを魔女と呼ぶぜ」
「まあわかりやすくするために分けてると思ってください。それでは今回はここまでです」