東方蛇狐録~超古代に転生した俺のハードライフな冒険記~   作:日差丸

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吸血鬼姉妹の最終決戦

 

 

「あぁ、酷い目にあった……」

 

  ふらふらと力なく、先刻地獄が行われていた永遠亭から脱出する。その後ろを小さな影がついてくる。

 

「お姉さん大丈夫? すごく叫んでたけど」

「うん、大丈夫大丈夫。いつものことだから」

 

  そうは言っても、私の顔色が悪いのは誤魔化しようがないだろう。それでも心配させないために気丈に振る舞う。

 

 

  あちこちではもう弾幕ごっこが始まってるらしい。

  すでに娘たちも魔理沙とアリスのタッグと交戦したようだ。結果は娘たちの勝ちだったみたいだけど。

  しかし、私は未だに二人の魔力を感知していた。

 

  異変には暗黙の了解として、解決者側は異変が終わるまでは何度でも首謀者に挑戦してもいいというものがある。これは実力的に劣る人間のための配慮らしい。そういうルールがあるからこそ、妖怪と人間のパワーバランスは保たれているのだ。

 

  そのルールに漏れず、魔理沙たちも一度破れてもなお、異変解決を目指しているのだ。流石に再び清音たちと遭遇することがないように、別ルートで向かってきてるみたいだけど。

  まあここからじゃ遠いし迎撃しに行くのも面倒なので、今はスルーしとくか。

 

「ねえお姉さん。今はどこに向かってるの?」

「一番近くにいる敵の場所だよ。それよりもフラン、本当に私に協力してもいいの? レミリアと敵対するかもしれないんだよ?」

「いいの! お姉様なんか大っ嫌い! ここでコテンパンにやっつけてやる!」

「ふーん、それは良かった。ムカつく相手をぶっ飛ばすチャンスがちょうど来たようだよ」

 

  疑問符を頭の上に浮かべながら、フランは私の視線の先を見つめる。

  足音と話し声が二つずつ。十中八九侵入者だね。

  彼女らは迷っていたのか、ある程度広い空間が作られているこの場所にたどり着くと、大きなため息を吐き出す。

 

「ゼェ……ゼェ……なんなのよここは!? 歩いても歩いてもさっぱり進んでる気がしないわ!」

「ですからお嬢様、準備を整えてから進んだ方がいいとあれほど説明したのに……って、あら?」

 

  ちっちゃいのとメイドのコンビ。間違いなくレミリアと咲夜だ。そのうちの咲夜の方が私たちに気づいたようで、主人にそれを報告する。それを理解すると、レミリアはこちらに近づいて来る。

 

「ヤッホーレミリア。それに咲夜も」

「久しぶりね楼夢。あなたがフランを保護してくれていたのかしら? 腹ただしいけど、感謝するわ」

「それには及ばないよ。今度咲夜のお菓子を食べさせてくれたらそれでいいよ」

「わかったわ。今度来た時に出させてもらうわね。さ、フラン。行くわよ」

 

  レミリアがそう言って手を伸ばしてくるが。

 

「……いやだ」

 

  レミリアの手が叩き落される。

  驚愕するレミリア。

  フランは姉をキッと睨みつけると、妖力を爆発的に解放させて威嚇する。

 

「フラン、なんのつもりかしら?」

「私はお姉様とは行かない! 行かないったら行かない!」

「私もさっきのことはちょっと悪かったとは思ってるわ。だからほら、異変解決の同行も許してあげるし、一緒に……」

「……あーあ、異変解決(その言葉)を私の前で言っちゃったかぁ」

 

  フランと同様に、私の体からも突如妖力が解放される。

  私も異変の協力なんてしたくないし、ここを通してあげたいんだけどね。仕事の名目上、その言葉を吐いたやつは徹底的に潰さなきゃいけないのよ。

 

「悪いねレミリア。私、実は今回首謀者側なんだ」

「私もだよお姉様。今回の私たちは敵同士。だからここは通さないもん!」

「楼夢……やっぱり私はあなたが嫌いよ。人の妹をよりにもよって首謀者の方に引き込むなんて!」

 

  ありゃりゃ、シスコン姉御がキレちゃったみたいだね。まあ今回は私が悪いからしょうがないんだけど。

  しかしそこで謝らぬのが楼夢クオリティ! 退かぬ媚びぬ省みぬぅ!

 

「フランも年齢的には十分大人なんだし、責任は彼女自身が取るよ。私はあくまで誘っただけ」

「そう……あなたが誘ったっていうことがわかればそれでいいわ。……ぶっ殺してやる!」

「悪いけど、あなたが敵である以上、こちらも容赦はしないわよ」

 

  レミリアも咲夜も気合十分のようだ。

  ある程度の距離を取ってから、ルールの設定がが行われる。

  その結果、スペカ三の残機二に決まった。

 

「お姉さん、作戦はどうするの?」

「自由でいいよ。コンビネーションで競っても勝ち目はなさそうだし、なにより考えるのが面倒くさいから」

「……むー、私はここで負けるのは嫌だからね。やる気がなくても、わざと負けるなんてことはしないでよ?」

「ああ、その心配は必要ないよ」

 

  ゆっくりと舞姫を鞘から引き抜く。

 

「私が負けるなんてことはありえないから」

 

  そう断言してすぐ、弾幕ごっこが始まった。

 

  まずは一気に加速して、レミリアに接近する。そして刀を振り抜き、斬撃型の弾幕を至近距離から繰り出した。

  しかしそれは彼女の姿が一瞬でどこかに消えることで避けられてしまう。

 

「開始早々エンジン全開ね。ガス切れを起こしても知らないわよ?」

「あいにくと、そんなものを起こすほど貧弱じゃないんで、ねっ!」

 

  レミリアをマジックのようにその場から消し去ったのは咲夜だ。相変わらず【時を操る程度の能力】の厄介さは異常だね。

  弾幕が空を通過したのと同じタイミングで、突如周囲に現れた複数のナイフが私を襲う。が、特に焦りもせずにそれらを全て切り落とす。

 

「っ、だったら……」

「こっちも忘れないでよ!」

 

  レミリアが追撃を試みようとしたけど、それはフランの弾幕によって阻止される。二人は接近しすぎて互いに衝突し、そのままもつれあって接近戦を始める。

 

「神槍『スピア・ザ・グングニル』!」

「禁忌『レーヴァテイン』!」

 

  開幕早々派手にやるなぁ。

  お互いの妖力によって作られた神槍と炎剣が何度も交差し、火花を散らしていく。

 

  一方こちらもよそ見してる余裕がなくなってきたね。

  私の周りに咲夜の姿が浮かんでは消えていく。なるほど、あっちも成長してるというわけか。こうやって時間操作で瞬間移動もどきを繰り広げていれば、相手は的を絞ることが難しくなるだろう。

  でも忘れてるでしょ咲夜。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「浅はかだね」

 

  指を鳴らした途端、世界は色を失い、空は黒に塗りつぶされた。

  【時空と時狭間を操る程度の能力】。我が兄である狂夢の第二の能力だ。これの時間支配権は咲夜のを上回るので、こうして彼女の世界ごと時間を止めることが私にはできる。

 

  咲夜は私の斜め横で硬直していた。手にはナイフを複数挟んでおり、これを投げつける気だったのだろう。

  だけどまあ無駄なことだ。それらを彼女の手から取り上げた後、彼女の進行方向に弾幕の壁を設置して時間を解除する。そうすれば。

 

「—–—–っ、しまった!?」

 

  咲夜は移動しようとしたその時に目の前に突如現れた弾幕壁を見て、私の能力を思い出したようだ。でももう遅い。

  迎撃しようとナイフを振るう動作を取るが、そもそも手元にはもうないのでそれも不発に終わってしまう。

  そして私は弾幕の壁を至近距離で爆発させ、無防備になった咲夜を巻き込んだ。

 

「ワンヒット。これで一気に有利に—–—–」

「きゃぁぁぁぁっ!?」

 

  しかし安心したのも束の間、私の耳に可愛らしい悲鳴が聞こえてきた。

  そして振り向いた先には服の一部を焼け焦がし、傷ついた部位を手で押さえるフランの姿が。

  ……やられた。すっかり忘れてたよ。

 

「これでわかったでしょ? 姉に勝る妹などいないのよ!」

「ぐっ、まだっ……まだぁ……!」

 

  フランがあちこち擦り傷を作っているのに対して、レミリアは細かく見ないとわからないほど傷が少ない。やっぱり実力差があるみたいだ。

 

  もしこれが殺し合いなら、フランの方が圧倒的に強いだろう。【ありとあらゆるものを破壊する程度の能力】を使えばいいだけの話なのだから。レミリアがフランを封印していたのはそういう理由もあるからだ。

  しかし弾幕ごっこは殺し合いじゃない。よって殺傷力が高い彼女の能力はご法度だ。そうなると、能力以外の部分で競わなければいけなくなる。

  妖力差はほとんどないだろう。もともと五歳程度しか歳が離れてないらしいし、なんならフランの方が若干多いくらいだ。しかし技術という点ではそうはいかない。

  吸血鬼として数多の戦闘を戦い続けたレミリアと数百年外に出させてもらえずに経験が積めなかったフラン。二人の技術力の差は歴然だ。私との修行である程度は形にはなってきたものの、レミリアにはまだ程遠い。

  そのどうしようもない差が、フランを苦戦させていた。

 

「はぁ……はぁ……!」

 

  効果時間が切れ、レーヴァテインとグングニルが消滅する。

  フランは息を荒くし、肩で呼吸をしている。対するレミリアは腕なんか組んで余裕そうだ。

  とりあえずその姿がなんかムカついたので。

 

「えいやっと」

「へっ? ……って危なっ! 不意打ちなんて卑怯じゃない!」

「卑怯で結構コケコッコーっと!」

「くそっ、話してる最中に攻撃するんじゃないわよ!」

 

  背後から忍び寄って刀を振り下ろしてみたけど、流石に避けられちゃうか。返す太刀も口ではピーチクパーチク言いながら、ほぼ完璧に躱している。

  でも、これでわかったよ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「それを知った上でどうするのフラン? 私が協力すればいけると思うけど」

 

  フランの瞳が揺れる。

  このことを一番よくわかっていたのはフランのはずだ。なぜなら先ほどの接近戦で嫌という程技術の差を痛感させられたんだから。

  一人じゃ勝てない。でも私と一緒なら、二人でなら……。

 

「あなたの意見を聞かせてちょうだい、フラン」

 

  そこまで考えた時、フランは何かに気づいたようだ。

  顔をハッと上げ、私の目を真剣に見つめてくる。

  そしてその口から出てきたのは。

 

「……いらない。お姉さんは下がってて」

 

  私の提案を拒否するという彼女自身が導き出した答えだった。

  ……そうか、ようやく気づいたんだね。

 

「ここでお姉さんの力を借りたら多分お姉様にも勝てるんだと思う。でも、それは私の力じゃない! 私は、私自身の力でお姉様から勝利を奪ってみせる!」

 

  そう言い切ったフランの目は力で溢れていた。強い眼差しが視線の先にいるレミリアを貫いている。

 

  それでいい。それで。

  妖怪とは精神に依存する存在。自分の力が及ばないと認めた時点で、すでに負けは決まってるんだよ。だからこそ私たち(妖怪)はどんな相手だろうと戦うんだ。おのれの尊厳を、誇りを守るために。

  それがわかったんだったら……立派な一人前だ。

 

「いくよ、お姉様っ!」

「来なさいフラン! 私とあなた、どっちが優れているのか決着をつけるわよ!」

 

  フランとレミリアが夜の空を飛び回り、花火のように綺麗な弾幕がいくつもばら撒かれる。

  これで憂いは消えた。あとは……。

  フランたちの戦いに背を向ける。そしてナイフを構えたまま臨戦体勢を取っている咲夜へ切っ先を突きつけた。

 

「待ってくれてありがとね。敵ながらお優しいこと」

「ぬかさないでほしいわね。妹様と話してる時もずっとこちらを警戒していたくせに。下手に踏み込んだところを狙い撃つつもりだったんでしょ?」

「はてさて、心当たりがありませんなぁ」

 

  きっと今の私は悪どい笑みを浮かべていただろう。その表情のまま懐から一枚のカードを取り出し、真上に投げ捨てる。

 

「フランを信用してないわけじゃないんだけど、念のためにね? —–—–滅符『大紅蓮飛翔衝竜撃』」

 

  私の背中からそれぞれ炎と氷で形作られた巨翼が生えてくる。そして一回羽ばたくだけで、風圧が二つの属性を纏って周囲のものを燃やし、また氷漬けにする。

 

「さぁ、第二ラウンドを始めようじゃないか」

「そっちがその気ならこっちも。ラストワード『デフレーションワールド』」

 

 

  ♦︎

 

 

「これでもくらえ!」

「叩き潰せ!」

 

  妖力で形作られた紅い槍と赤い剣がぶつかり合う。

  それらはグングニルやレーヴァテインほどではないが、かなりの妖力が込められていた。数秒か均衡し、その後衝撃波と爆音を撒き散らして消え去る。

 

「まだまだよ!」

 

  しかしレミリアの方が一枚上手だった。槍の後ろに彼女は小型のレーザーをいくつも放っており、それが硬直していたフランを襲う。

 

「くっ……やぁっ!」

 

  かろうじてそれらを避けて反撃の弾幕を繰り出すも、すでにそこにはレミリアの姿はない。

 

  さすがは吸血鬼といったところか。スピードが尋常ではない。

  しかしそれはフランも同じことだ。枯れ枝に宝石がついたような奇妙な翼を羽ばたかせ、竹林を飛び回る姉の後を追う。

  —–—–が、フランはレミリアに追いつくことができなかった。

 

「うっ……いつもなら追いつけるのに!」

 

  身体能力の点でいうなら、フランはレミリアを上回っているだろう。しかし追いつけない理由はこの竹林にある。

 

  ここには楼夢が苦戦していたように、高い竹が数えきれないほど生えている。それが障害物となってフランの最高速度を抑えているのだ。

  特にこの件に関しては技術差が浮き彫りになる。レミリアが小回りを効かせて竹を避けていく中、フランは一々速度を落とさなければそれを避けることができなかった。

  そんな中でスピードに差がつくのは当たり前のことだ。

 

「だったら……!」

 

  手のひらにあるものを握りつぶすような動作を取り、能力を発動。狙いはレミリア—–—–ではなく、その周りにある竹だ。

  それらは内側から爆発し、次々と自壊していく。

 

「っと、危ないじゃないの、よっ!」

 

  弾け飛んだ竹の破片がレミリアに当たりそうになる。フランはこれを狙っていたのだ。

 

  しかしレミリアは凄まじい反応速度でそれらを避けると、弾幕を放ち飛んでくるものを片っ端から撃ち落としていく。

 

  だがフランもフランで次の対策を取っていた。周りの竹がなくなったことで彼女の飛行を遮るものはもうない。すぐにレミリアに追いつくと、妖力で作り上げた赤剣を、今度は三つ同時に飛ばす。

 

  落ちてくる竹の一部の処理に意識を向けていたレミリアは反応が少し遅れてしまう。そして命中はしなかったものの、今度は彼女が体に傷を作ることになった。

 

「痛っ……やるじゃない。でもこれでお終いよ! ラストワード『スカーレットディスティニー』!!」

 

  とうとうレミリアが最後のスペルを唱えた。そして彼女の正真正銘の切り札が発動する。

 

  彼女を中心に数十数百の真紅の剣と弾幕が展開される。そしてそれらが互いに隙間を埋めながら、恐ろしく速い速度で全方位にばらまかれた。

 

「避け切れ……っ!?」

 

  動こうとした合間にいくつもの剣がフランの体を浅く切り裂いた。幸いかすっただけなのでセーフだが、彼女の体からは隠し切れない量の血が滲み出る。

 

  このままではいずれ被弾してしまう。

  しかしフランにはこのスペカと同等のもの—–—–処遇ラストワードと呼ばれるものを持っていなかった。

  『スターボウブレイク』、『カタディオプトリック』、『フォーオブアカインド』……持っているものを一通り頭に思い浮かべるが、どうしても現状を打破出来そうなものがない。

  しかし贅沢は言っていられない。現在ある中で最も可能性の高いものをぶつけるしかない。

 

「QED『495年の……きゃっ!?」

 

  スペカを掲げて技名を叫ぼうとするが、運が悪いことに剣の一つがフランの手元に向かってきてしまう。そしてとっさに避けようとしたが間に合わず、剣はフランが掲げていたカードに突き刺さり、そのままカードごと地面に落ちていった。

 

  カードを失って呆然とするフランの目に、真紅の剣の雨が降り注いでいく。

  ……ああ、ここで負けちゃうのかな。

  この先の運命を悟ると、何故だか世界がゆっくりになった気がする。しかし今となってはどうでもいいことだ。

  ゆっくりと(まぶた)を閉じる。

  レミリアは、姉はフランより強かった。だから彼女に負けるのも、従わなければいけないのも仕方がない。仕方がないんだ……。

 

「い……やだっ!」

 

  そんな訳があるか! このまま負けて自由を奪われるなんて真っ平御免だ!

  心の声がそう叫ぶと、フランはカッと目を見開く。そして迫り来る真紅の剣の雨あられを睨みつけた。

 

「このままじゃ終われない……! 終わってたまるもんかぁぁぁぁ!!」

 

  懐に仕込んでいた無印のカードが突如光り輝く。

  それを見もせずに手を取ると、ありったけの声でフランはその名を叫んだ。

 

「—–—–『歪月(まがつき)』ッ!!」

 

  体を前に突き出し、獣のような咆哮をあげる。それにつられてフランの全妖力が解放された。

  具現化し、周囲を覆い尽くすほどの妖力はやがて色を失い白色になっていく。そしてそれら全てが数百数千の弾幕と化して、レミリアを超える速度で放たれた。

 

「私が、まさか押されるなんて……っ!」

「いっけぇぇぇぇっ!!」

「っ、負けてたまるかぁぁぁぁぁ!!」

 

  無数の紅剣と無限の白弾幕が激突する。

  あまりのぶつかり合いに、溢れた妖力が衝撃波と化してフランとレミリアのちょうど境目の地面にクレーターを作っていく。真上の空に浮かぶ巨大雲には穴が空き、彼女らだけを包むように月光のカーテンが下りていた。

 

  徐々に、徐々にだが白弾幕がレミリアへと近づいてくる。

  しかしレミリアも負けてはいられない。今この時だけは異変解決のことを完全に忘れ、フランと同じように全妖力をスペルに注ぎ込んだ。

 

  「「ハァァァァァァッ!!!」」

 

  轟音。そして目も眩むほどの閃光と大爆発が二人を包み込む。

  そのあまりの爆風によってフランの体は吹き飛ばされ、体中を紅剣に貫かれながら落下していった。

  しかしレミリアも無事とは言えなかったらしい。

 

「くっ……うぅ……!」

「ハァッ……ハァッ……ぐっ……!?」

 

  レミリアの体のほとんどの部分が焼け焦げている。それだけではなく、左腕に至っては肘から先が消し飛んでいた。

 

「これじゃあ、どっちが勝ったかなんて……」

「わからないわ、ねっ……」

 

  どっちが先に当たったのか。それについては判別がつくことはなかった。……いや、永遠につかなくていいのかもしれない。

 

  三枚目のスペルの終了。と同時にこの弾幕ごっこの幕も下りる。

 

  改めて、二人は互いの姿を見つめ合う。そしてそのみすぼらしい姿に思わず吹き出してしまった。

 

「あははははっ! お姉様の顔が真っ黒になってる! あははっ!」

「そっちこそ服が破けてはしたなくなってるわよ。まったく、私の妹はいつのまにか露出狂になったのやら……」

「言ったなー!」

 

  後腐れも何も、彼女たちの心には残っていなかった。

  全てを出し切ったのだ。残るものも残らないだろう。今だけはフランもレミリアも、お互いの恨みや懺悔を忘れてひたすら笑いあった。

 

  それから何分の時かの時が過ぎ、二人は疲れて地面に寝転がる。

  竹の天蓋が壊されて、空には満面の星々が浮かんでいた。残念ながら月は偽物だが、今はそんなことは些細なことだ。

 

「綺麗ね……腕の痛みも忘れさせてくれるわ」

「……腕、大丈夫なの?」

「私は吸血鬼の王よ? そんなことよりも、あなたは体に空いた風穴の心配をしときなさい」

「私だって吸血鬼だもん。このくらいの怪我、すぐに治るよ」

 

  この時になって初めて、フランは己の傷の痛みを自覚した。それはおそらくレミリアもだろう。

  それを忘れてしまうほど、激しい戦いだった。しかしなぜか不快感はなく、ただ心に残っていた突っかかりが外れたようだ。

 

「……結局、どっちが勝ったんだろうね」

「引き分けでいいじゃない。今日はそれで私は満足よ

 

「—–—–あーごめん、私たちの勝ちなんですわこれ」

 

  いい雰囲気をぶち壊すかのように、とある人物の声がかけられた。

  桃色の髪に美しい美貌。

  楼夢だ。

  あまりの疲労に、どうやら彼女が近づいていることに気づかなかったらしい。

 

「……あなたたちの勝ちってのはどういうことかしら?」

「それは彼女に直接聞けばいいんじゃないかな?」

 

  そう言って楼夢は横へ移動する。そしてその背後から姿を現したのは、自慢のメイド服をボロボロに汚した咲夜だった。

 

「申し訳ございません……っ、お嬢様……! 耐えきることができませんでした……っ!」

「……ちっ、そういうことね」

 

  咲夜は悔しそうに顔を歪めると、地面につきそうになるほど頭を深く下げて謝罪する。

  レミリアもフランも、彼女に起きたこと、そして弾幕ごっこの勝敗の結果を理解したようだ。

 

「してやられたわ……まさか初めから私を咲夜から引き剥がすのが目的だったなんて」

「ごめんねーフラン。あなたを信用してなかったわけじゃないけど、私は負けるわけにはいかないんだ」

「……っ」

 

  終始おちゃらけた雰囲気の楼夢だったが、負けられないという言葉のみは何故だか重みと気迫を感じられた。

  利用されたことに関してフランは多少文句を言いたくなったが、それを聞いて思わず押し黙ってしまう。

 

「やっぱりあんたは嫌いよ……せっかくのいい雰囲気が台無しじゃない」

「はて? なんで私が他人の空気を察してあげなきゃいけないのかな?」

 

  その一言で楼夢以外のこの場の全員が理解してしまった。

  彼女は鼻から自分の利益のことだけしか考えていない。

  まさに、()()()()()であると。

 

「もうこれじゃあ戦えそうにないね。フラン、今日は紅魔館に帰ってゆっくり休みなさい」

「お、お姉さん、私……」

「それじゃあ私は行くね。次の敵が待ってるから」

 

  いつものように優しそうな笑みを浮かべてフランの頭を撫でて、その後楼夢は彼女らに背を向け、竹林に向かって歩いていく。

  しかしその姿が竹の中に完全に消え去る前に。

 

「—–—–そうそう、一つ言い忘れてたことがあるんだ。仲直り成功、おめでとう」

 

  振り返ってはそう言い残し、今度こそ竹やぶの奥に消えていった。

 




「フランのラストワードはお気づきの方もいらっしゃるでしょうが、紅魔郷改造パッチで出てくるあれをモデルにしています。そしてこの回でフランのレミリアに対する好感度が上がりました。やったねお姉ちゃん! 作者です」

「そして楼夢に対する好感度が若干下がったな。ザマァ見やがれ! 狂夢だ」


「今回は疲れましたー」

「おいおい、今は三連休なんだぜ? テメェにはあと二日でまた投稿してもらうからな」

「え、いや、それはご勘弁を……」

「そんなことよりも、今回は姉妹回だったな」

「今回の話で二人の関係はある程度は修復できたと思います」

「その後登場した空気の読めないやつのせいで台無しだがな」

「仕方がないですよ。幼体化楼夢さんは自己中の塊ですから、地雷を余裕で踏み抜いちゃうんですよ」

「まあ、『妖怪は孤立した存在』を最も純粋に現してるのが今の姿なんだろうな」

「前編の西行妖戦ではあんなに漢気があったのに……どうしてこうなったのやら」

「大人状態は典型的なラノベ主人公みたいな性格してるが、幼体化はけっこう捻くれているよな」

「そしてその捻くれている方が書いてて楽しい、というのも問題ですよね」
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